メンタルは訓練で強くなる?

メンタルは訓練で強くなる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

強くなります。立ち直る力の点数が上がり、ストレスも減ります。

根拠

医療職を対象にしたランダム化比較試験のまとめ(コクランレビュー)で、トレーニングを受けた人は受けない人より、立ち直る力の点数が中くらいの大きさで高く、感じるストレスも低くなりました [1]。医療系の学生でも同じ向きでした [2]。運動のプログラムでも点数が上がっています [3]。根拠の確かさは低めです。研究の作りに弱さがあり、確実性が「非常に低い」と評価されているためです。

この答えの範囲

医療職・医療系の学生・働く人など、心の病気の治療中ではない大人で確かめた結果です。立ち直る力の質問票の点数が対象です。

じゃあ、どうする?

考え方の練習(認知行動療法)、マインドフルネス、ポジティブ心理学(良かったことや強みに目を向ける練習)のどれでも、点数は上がっています。講習は対面のグループ形式が多く、運動は8週間を超えて続けた方が効果が大きい結果でした [3]。運動でストレスは減る?も参考になります。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。11 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量17.820研究件数と参加人数
一致度20.425結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 93.2 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 3 本・RCT のメタ解析 5 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「非常に低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

レジリエンス・トレーニングとは

レジリエンスは、困難やストレスから立ち直る力のことです。レジリエンス・トレーニングは、その力を高めるために、考え方の練習やマインドフルネス(今の体験に注意を向ける練習)などを講習やオンラインで学ぶ方法です。研究では、立ち直る力の質問票の点数で効果を測ります。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、ドイツのライプニッツ・レジリエンス研究所などの研究チームが2020年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で関連する試験を集め、結果をまとめる方法です。医療職を対象にした試験が分析されました。

研究の種類ランダム化比較試験を集めたメタ解析(コクランレビュー)
対象看護師・医師・病院職員などの医療職(平均年齢 27〜52.4 歳)
比べたものレジリエンス・トレーニングを受けた人と、受けない人
結果立ち直る力の点数が高く、ストレスも低かった
まとめて分析した結果立ち直る力の点数が中くらいの大きさで高くなりました(12件・690人、標準化平均差 0.45)。

感じるストレスも低く(17件・997人、標準化平均差 -0.61)、落ち込みの点数も低くなりました [1]。

医療系の学生でも同じ向きです。9件・561人で立ち直る力の点数が高く、ストレスも低くなりました [2]。2018年のメタ解析(11件)も、中くらいの大きさの効果を報告しています [4]。根拠の確かさは低めです。Cochrane のレビューが、研究の確実性を「非常に低い」と評価しているためです。

どんな練習が効いている?

医療職のネットワークメタ解析(2025年)は、練習の種類ごとに比べました [5]。立ち直る力の点数は、ポジティブ心理学が最も大きく上がり、マインドフルネス、認知行動療法(考え方の練習)が続きました。

  • ポジティブ心理学(良かったことや強みに目を向ける練習など): 標準化平均差 0.57
  • マインドフルネス: 0.50
  • 認知行動療法: 0.47

ストレスを下げたのも、この3つでした(ポジティブ心理学 -0.69、認知行動療法 -0.58、マインドフルネス -0.58)。3つの数値の幅は重なっています。

運動でも上がる

運動のプログラム10件をまとめた2026年のメタ解析では、立ち直る力の点数が上がりました(標準化平均差 0.49)。8週間を超えるプログラムでは 0.64、8週間以下では 0.30 でした [3]。長く続けるほど効果が大きい結果です。この解析は、ランダム化比較試験とそうでない研究(準実験)を合わせたもので、ランダム化比較試験だけに絞ると 0.56 でした。

よく言われていることは本当?

  • メンタルの強さは練習で鍛えられる鍛えられます。 トレーニングを受けた人は、受けない人より立ち直る力の点数が高くなっています [1] [4]。
  • 考え方の練習でストレスに強くなる強くなります。 認知行動療法のプログラムで、ストレスの点数が下がりました [5]。
  • 筋トレ・運動でメンタルが強くなる運動のプログラムで立ち直る力の点数が上がります [3]。 筋トレだけを取り出した結果ではなく、運動全体のまとめです。
  • 小さな目標を達成して成功体験を重ねると折れにくくなる小さな目標の達成だけを調べた研究は、今回の調査では見つかっていません。 トレーニングの一部に含まれることがあります。
  • 1日の良かったことを振り返ると心が安定する振り返りだけを調べた研究は見つかっていません。 良かったことや強みに目を向けるポジティブ心理学のプログラムでは、立ち直る力の点数が最も上がりました [5]。朝のルーティンそのものを調べた研究も見つかっていません。
  • 弱い自分を受け入れると自信がつく自分を受け入れることだけを調べた研究は、今回の調査では見つかっていません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

オンラインのトレーニングは、解析によって結果が割れています。22件・2876人をまとめた2022年の解析は、終了直後も追跡でも、点数が中くらいから大きく上がったと報告しています [6]。一方、11件をまとめた別の解析では、立ち直る力の点数に統計的な差が出ませんでした [7]。対象の幅(大人と思春期)や、幸福感などの近い指標を混ぜてまとめた点が違います。

差がなかった試験大学生 216人(自分で進めるオンラインのトレーニング)

最後まで続けた人が少なく、立ち直る力に良い変化は見られませんでした [8]。

一方、仕事の負担を感じている会社員 352人の試験では、ウェブとアプリで自分で進めるトレーニングで、順番待ちの人より立ち直る力が高くなりました [9]。18〜54歳の 174人が6週間(短い動画12本)のオンライン講座を受けた試験でも、点数が上がっています [10]。心の病気のない大人のオンライン介入101件・20010人のまとめでは、心の不調が小さく減り、効果は対面と同じくらいでした [11]。

02注意点

研究の多くは、グループで対面の講習を受けた医療職が対象です(12時間を超える長い講習も含まれます)[1]。効果の大きさは研究によってばらつきがあり、「誰でも同じだけ強くなる」という意味ではありません。眠れない、気分の落ち込みが続くなど、つらさが強いときは、医師や心理の専門家に相談してください。

自分で進めるオンラインの講座は、結果が割れています

最後まで続けた人が少なかった試験では、効果が見られませんでした。

03まとめ

メンタルは、考え方の練習・マインドフルネス・運動などの訓練で強くなります。
効果は「立ち直る力の質問票の点数」で確かめられたもので、根拠の確かさは低めです。
続けやすい形を選びましょう。マインドフルネスでストレスは減る?や感謝を書き出すと幸福感は上がる?も参考になります。

04よくある質問

Qメンタルは生まれつきで、訓練しても変わらないのでは?

変わります。トレーニングを受けた人は、受けない人より立ち直る力の点数が高くなる結果が、複数のメタ解析でそろっています [[32627860]] [[29903782]]。

Qどのくらいの期間やればいいですか?

医療職の試験では対面のグループ講習が多く、12時間を超える長いものも含まれていました [[32627860]]。運動は8週間を超えるプログラムのほうが効果が大きい結果でした [[42251398]]。6週間のオンライン講座で点数が上がった試験もあります [[40159648]]。

Qオンラインや独学でも強くなれますか?

上がった解析もあれば、差が出なかった解析もあります [[35460533]] [[34240159]]。最後まで続けた人が少ない試験では効果が見られませんでした [[42686878]]。

Q根性や気合いで鍛えるものではないのですか?

研究で効果が確かめられているのは、考え方の練習・マインドフルネス・ポジティブ心理学・運動といった具体的なプログラムです [[40664044]] [[42251398]]。気合いの強さを調べた結果ではありません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(11本)

[1]医療職の立ち直る力を高める心理的介入

発表年
2020年
研究機関
ドイツ・ライプニッツ・レジリエンス研究所
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
690人
結果の向き
良い方向

医療職で、トレーニングを受けた人は立ち直る力の点数が高く、ストレスが低かった。

[2]医療系の学生の立ち直る力を高める心理的介入

発表年
2020年
研究機関
ドイツ・ライプニッツ・レジリエンス研究所
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
561人
結果の向き
良い方向

医療系の学生 561人で、立ち直る力の点数が高く、ストレスが低かった。

[3]運動が心理的な立ち直る力を高める効果のメタ解析

発表年
2026年
研究機関
中国・北京師範大学
掲載誌
BMC psychology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究10件を統合
結果の向き
良い方向

運動のプログラム 10件で、立ち直る力の点数が上がった。

[4]レジリエンスのトレーニングと介入のメタ解析

発表年
2018年
研究機関
オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学
掲載誌
BMJ open
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究11件を統合
結果の向き
良い方向

RCT 11件で、立ち直る力の点数が中くらいの大きさで上がった。

[5]医療職の立ち直る力とストレスへの介入のネットワークメタ解析

発表年
2025年
研究機関
台湾・台北医学大学
掲載誌
International journal of nursing studies
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

ポジティブ心理学・マインドフルネス・認知行動療法の順に、立ち直る力が上がった。

[6]立ち直る力を育てるデジタル・トレーニングのメタ解析

発表年
2022年
研究機関
シンガポール・シンガポール国立大学
掲載誌
Stress and health : journal of the International Society for the Investigation of Stress
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,876人
結果の向き
良い方向

オンラインやアプリのトレーニングの RCT 22件・2876人で、点数が上がった。

[7]立ち直る力を目的としたオンライン介入の効果のメタ解析

発表年
2021年
研究機関
スペイン・サラゴサ大学
掲載誌
European journal of public health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究11件を統合
結果の向き
差なし

オンライン介入の RCT 11件をまとめた解析では、統計的な差が出なかった。

[8]大学生向けの自分で進めるオンライン・レジリエンス介入

発表年
2026年
研究機関
ドイツ・マインツ大学
掲載誌
Scientific reports
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
216人
結果の向き
差なし

大学生 216人の RCT で、立ち直る力に良い変化は見られなかった。

[9]働く人のための自分で進めるウェブ・アプリ型レジリエンス介入

発表年
2026年
研究機関
ドイツ・リューネブルク大学
掲載誌
Journal of medical Internet research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
352人
結果の向き
良い方向

働く人 352人の RCT で、立ち直る力が高く、ストレスが低かった。

[10]働く世代の立ち直る力を高める6週間のオンライン介入

発表年
2025年
研究機関
オーストリア・グラーツ医科大学
掲載誌
Applied psychology. Health and well-being
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
174人
結果の向き
良い方向

18〜54歳の 174人の RCT で、立ち直る力の点数が上がった。

[11]心理的な立ち直る力を育てるデジタル介入のメタ解析

発表年
2024年
研究機関
ドイツ・ライプニッツ・レジリエンス研究所
掲載誌
NPJ digital medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
20,010人
結果の向き
良い方向

オンラインのトレーニングの RCT 101件・20010人で、心の不調が小さく減った。

ほかに参考にした論文(6本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。