感謝を書き出すと幸福感は上がる?

感謝を書き出すと幸福感は上がる?
読了目安 3〜5分最終更新日 2026.11.06
答え効く

書き出すと、幸福感はわずかに上がります。

根拠

145本の論文・28か国・24,804人を集めたメタ解析で、感謝の練習をした人の幸福感は小さく上がりました(効果の大きさ0.19)[1]。ただし、日常の出来事を書くなど別の前向きな作業と比べると、差がはっきりしない研究もあります [2]。根拠の確かさは低めです。研究によって結果のばらつきが大きいためです。

この答えの範囲

感謝日記・よかったことを書く・感謝の手紙など、感謝を書く練習の話です。

じゃあ、どうする?

続けやすい形で試す価値はあります。効果は大きくないので、期待しすぎず、その日のよかったことを書く日記でも似た結果の研究がある、と知っておくと気が楽です。気分の落ち込みが続くときは、日記だけに頼らず医療機関に相談してください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。9 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量2020研究件数と参加人数
一致度13.825結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 88.8 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 4 本・観察研究 1 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

感謝を書き出すとは

感謝を書き出すとは、感謝していることを日記や手紙に書く心理学の練習です。幸福感や前向きな気分を高めるとされ、感謝日記、その日のよかったことを書く方法、感謝の手紙などがあります。道具が要らず、数日から数週間続ける形がよく使われます。注意点は、効果が大きいわけではないことです。ここでの説明は一般的な紹介で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、韓国の慶熙大学などの研究チームが2025年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、複数の研究の数値をまとめ直して、全体の傾向を見る方法です。145本の論文が集められました。

研究の種類感謝の練習の効果を調べた、事前登録のあるメタ解析
対象28か国の24,804人(145本の論文)
比べたもの感謝の練習をした人と、しなかった人など
結果幸福感が小さく上がった(効果の大きさ0.19)
まとめて分析した結果感謝の練習をした人は、幸福感が小さく上がっていました [1]。

前向きな気分で測ったとき、複数の種類の練習を組み合わせたとき、ランダム化比較試験のときに、効果が大きくなっていました。

効果の大きさ0.19は「小さい」にあたります。向きはそろっていますが、劇的に変わるわけではない、と読むのが正確です。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

感謝の練習を、別の作業と比べた研究では、差が小さくなります。2016年のメタ解析では、別の作業をしたグループより心理的な幸福感がわずかに高い一方、心理的に効果のある別の練習と比べた9件では差がありませんでした [3]。44本の論文の系統的レビューも、前向きな作業をした対照グループを上回るという強い証拠はない、と結論しています [2]。

感謝日記と日常の出来事の日記を比べた試験日本の会社員100人(12日間のオンライン日記)

人生の満足度は、感謝日記のグループも日常の出来事を書いたグループも上がっていました [4]。

この試験では、仕事への熱意は感謝日記のほうが上がっています [4]。「書くこと自体」の効果と「感謝を書くこと」の効果を、分けて見る必要があります。

よく言われていることは本当?

  • 感謝を書くと幸福感が上がる・前向きになる効きますが、効果はわずかです。 上のメタ解析で小さく上がっています [1]。根拠の確かさは低めです。
  • 気分の落ち込みや不安が減る結果が割れています。 ランダム化比較試験64件のメタ解析は症状が減ったと報告しました [5]。一方、医療従事者223人の試験では抑うつの点数に差がなく [6]、大学生120人の3週間のアプリでも全体では差がありませんでした [7]。
  • よく眠れるようになる睡眠を調べた8件のうち5件で、自分で感じる睡眠の質が良くなりました [8]。 多くの研究に偏りのおそれがあり、著者はさらに研究が必要としています。寝る前の習慣の全体像は睡眠の質を高める方法は?にあります。
  • やる気が続く・創造性が高まる・引き寄せが起こる研究が足りず、この記事では確かめていません。

気分の落ち込みや不安は、研究が割れている

働く人9件の系統的レビューでは、感謝リストでストレスと抑うつが改善しました。ただし、感謝リストが4回以下の介入では、どの結果にも変化がありませんでした [9]。大学生120人の試験では、全体では差がなく、もともと中程度以上の症状があった人に限ると症状が下がっています [7]。回数や対象者によって結果が変わる可能性を示しますが、まだ確かな結論は出ていません。

02注意点

研究で使われた期間は、12日間のオンライン日記(日本の会社員100人)[4]や3週間のアプリ(大学生120人)[7]のように、数日から数週間の短いものが中心です。長く続けたときの効果は、この記事の研究では確かめられていません。気分の落ち込みや不安が強い人、日常生活に支障がある人は、日記だけで対処せず、医師や心理の専門家に相談してください。

日記だけで抱え込まない

気分の落ち込みが2週間以上続くときは、医療機関に相談してください。

03まとめ

感謝を書き出すと、幸福感はわずかに上がります。
日常の出来事を書く日記でも似た結果の研究があるので、書きやすい題材で続けるのが現実的です。
気分の落ち込みが気になるときは、日記と並行して専門家に相談しましょう。

04よくある質問

Q毎日書かないと効果はありませんか?

研究では、毎日かどうかを比べた結果は確かめていません。働く人のレビューでは、感謝リストが4回以下の介入で変化が見られませんでした [[34762326]]。

Q感謝日記と普通の日記で違いはありますか?

幸福感や人生の満足度では、差がない研究が目立ちます [[41047408]] [[38047154]]。仕事への熱意は感謝日記のほうが上がった試験もあります。

Qどんな人に効きやすいですか?

人生の満足度は、西洋の国の人で効果の証拠がより強いと報告されています [[38047154]]。日本人だけで十分に確かめた結果は、この記事の研究にはありません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(9本)

[1]28か国で見る、感謝の練習が幸福感に与える効果のメタ解析

発表年
2025年
研究機関
韓国・慶熙大学
掲載誌
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
24,804人
結果の向き
良い方向

145本の論文・24,804人を集めたメタ解析で、感謝の練習をした人の幸福感は小さく上がっていました。

[2]感謝が人生の満足度に与える効果の系統的レビュー

発表年
2023年
研究機関
アメリカ・ペンシルベニア大学
掲載誌
Psychology research and behavior management
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
16,529人
結果の向き
結果が割れている

44本の論文(16,529人)で、効果の証拠は割れており、前向きな作業の対照を上回る強い証拠はありませんでした。

[3]ささいなことへの感謝:感謝の練習のメタ解析

発表年
2016年
研究機関
アメリカ・ジョージア州立大学
掲載誌
Journal of counseling psychology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究20件を統合
結果の向き
良い方向

別の作業と比べて幸福感はわずかに高く、心理的に効果のある別の練習と比べた9件では差がありませんでした。

[4]日本の会社員における12日間のオンライン感謝日記と仕事への熱意

発表年
2025年
研究機関
日本・立命館大学
掲載誌
BMC psychology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
100人
結果の向き
差なし

会社員100人で、感謝日記も日常の出来事の日記も人生の満足度が同じように上がりました。

[5]感謝の練習の効果:系統的レビューとメタ解析

発表年
2023年
研究機関
ブラジル・プレナエ
掲載誌
Einstein (Sao Paulo, Brazil)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究64件を統合
結果の向き
良い方向

ランダム化比較試験64件で、感謝の練習をした人は不安とうつの症状が少なかったと報告されました。

[6]医療従事者向け「よかったこと3つ」デジタル介入のランダム化比較試験

発表年
2023年
研究機関
アメリカ・ミシガン大学
掲載誌
Annals of family medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

医療従事者223人で、抑うつの点数はグループ間で差がありませんでした。

[7]大学生の感謝アプリと、うつ・不安・ストレスの症状

発表年
2025年
研究機関
カナダ・セントメアリーズ大学
掲載誌
JMIR mHealth and uHealth
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
120人
結果の向き
差なし

大学生120人で、3週間の感謝アプリは全体では対照と差がなく、中程度以上の症状のあった人では症状が下がりました。

[8]感謝の練習とからだの健康・健康行動の系統的レビュー

発表年
2020年
研究機関
ニュージーランド・オークランド大学
掲載誌
Journal of psychosomatic research
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究8件を統合
結果の向き
良い方向

睡眠を調べた8件のうち5件で、自分で感じる睡眠の質が良くなりました。著者はさらに研究が必要としています。

[9]働く人の心の健康と幸福感への感謝の練習の効果:系統的レビュー

発表年
2021年
研究機関
日本・東京大学
掲載誌
Journal of occupational health
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究9件を統合
結果の向き
結果が割れている

働く人のランダム化比較試験9件で、感謝リストはストレスと抑うつを改善しましたが、幸福感への効果は研究によって一致しませんでした。

ほかに参考にした論文(7本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。