[1]うつ病に対する運動
- 発表年
- 2026年
- 研究機関
- イギリス・ランカシャー大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 2,189人
- 結果の向き
- 良い方向
運動しない対照と比べたRCT57件(2189人)で、運動をした人はうつ症状が中くらい軽くなった(標準化平均差 -0.67)。研究の確実性は低い。

運動、睡眠の改善、触れ合いは、気分に効きます。
気分・うつ症状・不安への効果の話です。どの研究も、脳のセロトニンが増えたかは測っていません。うつ病の疑いがあるときは、医師に相談してください。
運動と睡眠の見直しから始めましょう。運動は、うつ症状では心理療法や薬との差がほとんどありませんでした [1]。サプリは、薬との飲み合わせがあるため、飲む前に医師・薬剤師に確認してください。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 20 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 100 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 5 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
答えの中心は、イギリスのランカシャー大学などの研究チームが2026年に発表したコクランレビューです [1]。
| 研究の種類 | 運動とうつ症状のコクランレビュー(RCTをまとめた研究) |
|---|---|
| 対象 | 18歳以上のうつ病の大人 |
| 比べたもの | 運動と、運動しない(通常のケアなど) |
| 結果 | RCT57件・2189人で、うつ症状が軽くなった |
質の高い7件(447人)に絞ると -0.46 と、やや小さくなりました [1]。
根拠の確かさは低めです。コクランが確実性を低いと評価し、本人が症状の点数をつける試験が多いためです。心理療法(10件・414人)や薬(5件・330人)と比べると、差はほとんどありませんでした。長期の効果は分かっていません。
不安も軽くなります。診断のある大人のRCT11件で標準化平均差 -0.66、メタ解析81本の研究で -0.47 でした [15] [16]。不安は確実性が未評価で、うつより確かとは言えません。
運動でセロトニンが増えたから効く、とは言えません。セロトニンなど体内の物質を調べたRCT30件のレビューは、結果が少なくばらついていました [17]。
光の療法は、うつ病の人に効きます。冬季うつのRCT18件・610人で、明るい光は偽の光よりうつの点数を下げました(標準化平均差 -0.37)[5]。季節性でないうつ病では、薬などに光を加えた人の40.7%で症状がほぼ消え、加えない人の23.5%より多くなりました(RCT11件・858人)[4]。高齢者では、10,000ルクス以上の光のほうが効果が大きくなりました [18]。根拠の確かさは低めです。冬季うつの試験は、偏りの危険が中くらいから高いと評価されているためです [5]。
研究で使われたのは光の療法の器具で、朝日や日光浴ではありません。健康な人の気分は、日中に働く人の照明の研究(5件・282人)で結果が分かれ、まだ分かりません [19]。
睡眠を良くする取り組みを調べたRCT65件・8608人(うつ以外の心の不調も含めた全体の数)のまとめで、睡眠が良くなると、うつ症状は中くらい軽くなりました(g -0.63)[2]。逆に、睡眠を削る実験の研究64件では、前向きな気分が大きく減りました(g -0.94)[20]。睡眠は睡眠の質を高める方法は?も参考に。
ガムを噛むと、健康な大人や学生のその場のストレスや不安の感じ方が少し下がりました(RCT4件)[21] [22]。根拠の確かさは低めです。参加者が数十人の短い試験が中心で、本人の申告で測り、1件は製造会社の研究者によるためです [23]。長期の効果は分かっていません。
5-HTP とトリプトファンは、うつ病の人で、2002年のコクランレビューではプラセボより症状が和らぎました(オッズ比 4.10)。ただし質の条件を満たした試験は2件・64人だけで、著者は結論できる質ではないとしています [11]。2022年のガイドラインも、トリプトファン単独を推奨していません [24]。
プロバイオティクスは、うつ症状を減らしますが、減り方は対象で大きく違います。診断を受けた人で標準化平均差 -0.96(18件)[25]、症状のある人の混合ではプレバイオティクス(善玉菌のえさ)なども含めて -0.53(63件)[13]、健康な働く大人では -0.21(12件・3350人)と小さい値です [26]。研究の質は限られ、結果のばらつきも大きいとされています [13]。一般の人では差がないとするメタ解析もあります [27]。
ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品は、よく食べる人でうつ病のリスクがやや低いことと関連していました(コホート8件・83,533人、オッズ比 0.89。ヨーグルト 0.84、チーズ 0.91)[28]。観察研究なので、食べるとうつを防ぐとは言えません。
健康な女性17人がトリプトファンを1日5.0gまで21日間とった研究では、気分は変わらず、有害な影響も見られませんでした [29]。ただし、トリプトファンと5-HTPは、命に関わることもある好酸球増多筋痛症候群(筋肉の痛みなどが出る病気)との関連が、まだ解明されていません [11]。薬との飲み合わせがあるため、サプリは飲む前に医師・薬剤師に確認してください。
抗うつ薬などを飲んでいる人は、薬を変えたりサプリを足したりする前に医師・薬剤師へ。落ち込みが続くときは受診を。
気分への効果で、研究がいちばん多いのは運動です。睡眠、触れ合い、うつ病の人への光も効きます。
朝日・リズム運動・バナナでセロトニンが増えるとは、まだ確かめられていません。
まず運動と睡眠から。サプリは医師・薬剤師に確認を。
バナナ単独の研究は無く、まだ分かりません。トリプトファンを追加でとる試験も、結果が分かれています [[32272859]]。
研究では確かめられていません。朝日を浴びた人のセロトニンを測った研究は見つかっていません [[31574513]]。
ウォーキング・ジョギング(Hedges g -0.62)、ヨガ(-0.55)、筋トレ(-0.49)のどれでも、うつ症状が軽くなりました。種類による差ははっきりしません [[38355154]] [[42338734]]。
運動しない対照と比べたRCT57件(2189人)で、運動をした人はうつ症状が中くらい軽くなった(標準化平均差 -0.67)。研究の確実性は低い。
睡眠を良くする取り組みのRCT65件(8608人)で、睡眠が良くなると、うつ症状が中くらい軽くなった(g -0.63)。
触れ合いで大人の気分の落ち込みが減った(Hedges g 0.59)。病気のある人(0.63)のほうが健康な人(0.37)より効果が大きかった。
季節性でないうつ病858人(RCT11件)で、光の療法を加えた人は症状がほぼ消えた割合が40.7%で、加えなかった人の23.5%より多かった。
冬季うつの大人のRCT18件(610人)で、明るい光の療法は偽の光よりうつの点数を下げた(標準化平均差 -0.37)。
脳以外のセロトニンのほとんどは腸の細胞で作られるが、血液脳関門をほとんど通れず、脳のセロトニンとは別々に働くと説明した総説。
脳と腸などでセロトニンを作る酵素が別で、血液脳関門がセロトニンを通さないため、2つの仕組みが分かれていると説明した総説。
健康な人が自転車を15分こぐと、落ち込んだ気分が減り血液中のセロトニンが上がった。比べる群のない前後比較。
坐禅をしたことのない健康な15人が呼吸法を20分続けると、落ち込んだ気分が減り血液中のセロトニンが上がった。比べる群はない。
健康な成人のRCT11件の系統的レビュー。4件でトリプトファンの群のほうが嫌な気分が少なく、明るい気分が多かった。数値の統合解析はない。
5-HTPまたはトリプトファンはプラセボより症状を和らげた(オッズ比 4.10)が、質の条件を満たした研究は2件・64人だけだった。
トリプトファンを一時的に減らす実験45件のメタ解析で、健康な人では気分は下がらなかった。家族にうつ病の人がいる人ではわずかに下がった。
うつ症状や不安のある人で、プロバイオティクスなどはプラセボよりうつ症状を減らした(標準化平均差 -0.53)。研究の質は限られ、ばらつきが大きかった。
大人のRCT15件(1344人)で、笑いの療法を受けた人はストレスが大きく減った(標準化平均差 -1.41)。結果のばらつきが非常に大きい。
うつ病や不安症と診断された大人のRCT11件で、有酸素運動や筋トレをした人は不安の症状が中くらい軽くなった(標準化平均差 -0.66)。
メタ解析81本(研究1079件)で、運動により不安の症状が軽くなった(標準化平均差 -0.47)。有酸素運動の効果がいちばん大きかった。
うつ病の人の運動のRCT30件(2194人)のレビューで、セロトニンなど体内の物質の変化を調べた結果は少なく、ばらつきがあった。
うつ症状のある高齢者の研究22件(1290人)で、光療法はうつ症状を中くらい減らした。10,000ルクス以上の明るい光のほうが効果が大きかった。
日中に働く人の照明の研究5件(282人)で、青みの強い職場の照明では気分は変わらなかった。研究の質は非常に低い。
睡眠を削る・徹夜する実験の研究64件で、睡眠不足のあとは前向きな気分が大きく減り(g -0.94)、否定的な気分が中くらい増えた(g 0.45)
実験室でストレスのかかる作業をした40人で、ガムを噛むと不安・ストレスの感じ方と唾液のコルチゾールが低かった。
模擬の就職面接をした36人で、ガムを噛んだ人は不安の上がり方が小さかった。
ネット調査の2つの研究(280人と212人)で、ガムを噛む期間は不安の点数が下がった。気分は本人の自己申告。
国際的な学会のガイドラインで、うつ病に対するトリプトファン単独の使用は現時点では推奨しないとされた。
うつ病・不安症と診断された人で、プロバイオティクスはうつ症状を大きく減らした(標準化平均差 -0.96)。結果のばらつきが大きかった。
心の病気のない働く大人3350人(12件)で、プロバイオティクスは軽いうつ・不安・ストレスの症状を少し減らした(標準化平均差 -0.21)。
二重盲検のプラセボ対照試験19件(1901人)で、うつ症状が良くなったのはうつ病の人だけで、一般の人では差がなかった。
コホート研究8件(83,533人)で、発酵した乳製品をよく食べる人は、うつ病のリスクがやや低いことと関連した(オッズ比 0.89)。観察研究。
健康な日本人女性17人が、トリプトファンを1日5.0gまで21日間とっても、気分の検査は変わらず、有害な影響も見られなかった。
うつ病の人で、ウォーキングやジョギングは通常のケアなどと比べてうつ症状を中くらい軽くした(Hedges g -0.62・1210人。研究の確実性は低い)。ヨガ(-0.55)や筋トレ(-0.49)も効果があった
レビュー97本(RCT1039件)をまとめると、体を動かすことで、通常のケアと比べてうつ症状が中くらい軽くなった(効果量の中央値 -0.43)
RCT23件(1830人)で、運動をした人は対照と比べてうつ症状が軽くなった(標準化平均差 -0.67)
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。