ツボ押しでストレスや緊張は和らぐ?

ツボ押しでストレスや緊張は和らぐ?
読了目安 6〜8分最終更新日 2026.11.06
答え効く

手術や検査を前にした人の不安は、大きく和らぎます。

根拠

手術前の人やがん患者など、病院の患者を調べたメタ解析(比較試験の結果をまとめ直した研究)5本が、いずれもツボ押しで不安が下がったと報告しています [1] [2] [3] [4] [5]。予定手術を受ける大人2537人(比較試験24件)では、ふだんのケアや偽のツボ押しより不安が大きく下がりました [1]。ただし研究ごとの結果のばらつきが大きく、病気ではない人のふだんのストレスでは、下がった試験と差がなかった試験に割れています。

この答えの範囲

病院で手術・検査・治療を待つ患者の不安の話です。仕事や日常のストレスは小規模な試験が中心です。

じゃあ、どうする?

手術や検査の前の不安なら、試す価値があります。押してよい場所や方法は、病院の医療者に聞いてください。ふだんのストレスや本番前の緊張は、効く人も変わらない人もいます。押して落ち着くと感じるなら、続けて構いません。強い不安が続くときは、医師に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。15 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 84 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量18.220研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 98.2 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 5 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「中程度」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から B に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

ツボ押しとは

ツボ押しは、体や耳にあるツボを指や器具で押す方法です。東洋医学で使われてきた手当てで、緊張やストレスを和らげるとされ、手のひらの労宮、手首の内関、頭の百会などがよく紹介されます。ただし、ツボごとの効果の違いは、研究では比べられていません。研究では、指で押す方法のほか、耳のツボに種やシールを貼って押す方法も調べられています。注意点は、押すツボや時間が研究ごとに違うことです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、中国の香港大学などの研究チームが2023年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、複数の比較試験の結果を統合して、ひとつの数字にまとめる方法です。予定手術を受ける大人2537人(比較試験24件)が対象でした。

研究の種類予定手術を受ける大人を対象にした、比較試験のメタ解析
対象予定手術を控えた大人(24件・2537人)
比べたものツボ押しと、ふだんのケア・偽のツボ押し
結果手術前の不安が大きく下がった(標準化平均差 -1.30)
メタ解析の結果ツボ押しをした人は、手術前の不安が大きく下がりました [1]。

心拍数は1分あたり4.58回、上の血圧は6.05 mmHg下がり、医療者が押しても自分で押しても効果に差はありませんでした [1]。

標準化平均差は、研究ごとに違う点数の尺度をそろえた差です。マイナスが不安の低下を表し、-1.30は大きな差にあたります。

同じ向きの結果は、ほかのメタ解析にもあります。

  • 入院中や手術前の患者などを対象にした比較試験27件のまとめで、不安がはっきり下がりました。指で押す方法のほうが効果は大きく出ました [2]
  • がんの患者では、ツボ押しで不安が下がりました。研究の確実性は中程度です [3]
  • 耳のツボを調べた25件・1909人のまとめでも、不安が下がりました。ただし25件中23件に偏りのおそれがありました [4]
  • 心臓のカテーテル検査を受ける573人(5件)では、痛みと不安が下がりましたが、血圧や心拍数は変わりませんでした [5]

結果の向きはそろっていますが、研究ごとのばらつきが大きく、偏りのおそれがある研究も多くあります。「大きく下がる」は、病院で調べた結果の目安として読むのが正確です。

病気ではない人のふだんのストレスでは、結果が割れる

学生や看護師など、病気ではない人を調べた比較試験は、10件でした。どれも小規模で、結果は割れています。

下がった試験:

  • 医学生114人で、耳の神門のツボを10分押した群は、耳たぶを押した偽の群より試験の不安が下がりました [6]
  • 看護学生118人で、試験の不安が押す前より下がり、心拍数と血圧の下がり方は何もしない群より大きくなりました [7]
  • 健康なボランティア25人で、眉間のツボを10分押すと、関係のない場所を押したときより自分で感じるストレスが下がりました [8]
  • 日本の大学生54人が首のツボを自分で2週間押すと、何もしない群より気分(緊張・不安など)が良くなりました [9]

差がなかった試験:

  • 健康な大学生109人に計算問題でストレスをかけた実験では、ツボ押し・偽のツボ押し・リラックスCDのどれでもストレス反応は下がりましたが、3つの間に差はありませんでした [10]
  • 首の痛みがある看護学生では、耳のツボ押しを4週間続けても、ストレスの点数は偽のツボ押しと差がありませんでした [11]
  • 看護学生で、試験の不安は下がりましたが、その時の不安や不安になりやすさには差がありませんでした [12]

ほかの研究では、結果が異なる場合も

同じ「耳のツボ押し」でも、試験の不安は下がり、ストレスの点数は変わらない、という試験があります。対象(学生・看護師)、測った点数(試験の不安・その時の不安・ストレス)、比べた相手(何もしない・偽のツボ押し)が研究ごとに違い、理由は要旨からは確認できません。

差がなかった試験健康な大学生109人(40分のツボ押しを1回)

ストレス反応は下がりましたが、本物・偽・リラックスCDの3群に差はありませんでした。

よく言われていることは本当?

  • ツボ押しでストレス・緊張・不安が和らぐ手術前やがん治療中など、病院の患者では効きます。 メタ解析5本で不安が下がりました [1] [2]。病気ではない人のふだんのストレスでは、結果が割れます。
  • ツボ押しで試験・本番前の緊張がほぐれる条件によります。 医学生114人など、試験の不安が下がった試験が3本ある一方、その時の不安やストレスの点数に差がない試験もあります [6] [7] [12]。根拠の確かさは低めです。参加者が少ない試験が中心のためです。
  • ツボは本当に効くのか(プラセボではないか)条件によります。 手術や治療を前にした人の比較試験5件のまとめでは、本物のツボ押しが偽のツボ押しより不安を下げました [13]。一方、がん患者のレビューと健康な大学生109人の試験では、本物と偽で差がありませんでした [3] [10]。耳のツボのメタ解析では、偽のツボ押しと比べなかった研究ほど効果が大きく、著者は偽のツボ押しによるプラセボ効果を示唆する結果だと述べています [4]。
  • 頭や手のツボ押しで自律神経が整う研究が足りず、まだ分かりません。 自律神経を直接測った研究は、ごくわずかです。代わりに心拍数と血圧を見た研究では、手術前の人で下がり、心臓カテーテル検査の人では変わりませんでした [1] [5]。
  • ツボ押しで眠りが良くなるこの記事の範囲外で、別の疑問として扱います。 看護師60人の試験では、耳のツボ押しを7週間続けて睡眠の質が良くなりました [14]。
  • 合谷などのツボで頭痛・肩こり・痛みが和らぐこの記事では評価しません。 心臓カテーテル検査を受ける人では痛みが下がりましたが、頭痛や肩こりを調べた研究ではありません [5]。

02注意点

研究で使われた方法は、医療者が押す方法も、自分で押す方法もあります。2012年の実験では、40分のツボ押しを1回だけ行いました [10]。看護師の試験では、耳のツボに種やシールを貼り、5〜7週間続けています [15] [14]。ツボ押しの有害事象を報告した研究は、27件のうち2件ありました [2]。内容は要旨からは分かりません。持病や服薬がある人、強い不安が続く人は、医師や薬剤師に確認してください。

病院で受ける治療の前は、医療者に聞く

押してよい場所や方法は、主治医や看護師に確認してから試してください。

03まとめ

手術や検査を前にした人の不安には、ツボ押しが効くという結果が研究でそろっています。
ふだんのストレスや本番前の緊張は、下がった試験と差がなかった試験に割れ、偽のツボ押しとの差も一定していません。
緊張しやすいときの方法は、緊張しやすいのはなぜ?緊張を和らげる方法も見てください。

04よくある質問

Q労宮や百会など、どのツボがいちばん効きますか?

研究では、ツボごとの比較はされておらず、どれが良いかは言えません。耳のツボでは、押すツボの数を増やしても、続ける期間を長くしても、効果は大きくなりませんでした [[38417402]]。

Q自分で押しても効きますか?

手術前の人では、医療者が押しても自分で押しても効果に差はありませんでした [[37321140]]。日本の大学生54人が首のツボを自分で2週間押した試験でも、気分が良くなりました [[25946916]]。

Q手首の内関のツボは、吐き気にも効きますか?

吐き気は別の疑問として調べています。[手首のツボ(内関)で吐き気はおさまる?](/evidence/acupressure-nausea)を見てください。

Q副作用はありますか?

有害事象を報告した研究が27件のうち2件ありましたが、内容は要旨からは分かりません [[35085025]]。強く押して痛みや不調が出たら、やめて医療者に相談してください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(15本)

[1]予定手術を受ける大人の手術前の不安に対するツボ押し:比較試験のメタ解析

発表年
2023年
研究機関
中国・香港大学
掲載誌
International journal of nursing studies
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,537人
結果の向き
良い方向

予定手術を受ける大人2537人(比較試験24件)で、ツボ押しをすると手術前の不安が大きく下がった。

[2]不安に対するツボ押しの効果:系統的レビューとメタ解析

発表年
2022年
研究機関
台湾・台北医学大学
掲載誌
Journal of integrative and complementary medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究27件を統合
結果の向き
良い方向

入院患者・手術前の患者などの比較試験27件のまとめで、ツボ押しにより不安がはっきり下がった。

[3]がん患者の不安と抑うつに対するツボ刺激の効果

発表年
2023年
研究機関
オーストラリア・チャールズ・ダーウィン大学
掲載誌
Complementary therapies in clinical practice
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究22件を統合
結果の向き
良い方向

がんの患者で、ツボ押しをすると不安が下がった。本物のツボと偽のツボの刺激には差がなかった。

[4]不安に対する耳のツボ押しの効果:メタ解析

発表年
2024年
研究機関
マレーシア・プトラ大学
掲載誌
Complementary medicine research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,909人
結果の向き
良い方向

耳のツボ押しを調べた25件・1909人のまとめで、不安がはっきり下がった。25件中23件に偏りのおそれがあった。

[5]心臓カテーテル検査を受ける人の痛みと不安に対するツボ押し

発表年
2025年
研究機関
ヨルダン・ハシェミテ大学
掲載誌
International journal of nursing practice
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
573人
結果の向き
良い方向

心臓のカテーテル検査を受ける573人(5件)で、痛みと不安が下がったが、血圧や心拍数は変わらなかった。

[6]医学生の試験不安に対する耳のツボ押しの効果

発表年
2023年
研究機関
イラン・ケルマンシャー医科大学
掲載誌
BMC medical education
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
114人
結果の向き
良い方向

試験を控えた医学生114人で、耳の神門を押した群は、耳たぶを押した偽の群より試験の不安が下がった。

[7]看護学生の試験不安とバイタルサインに対するツボ押し

発表年
2025年
研究機関
トルコ・東地中海大学
掲載誌
BMC psychology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
118人
結果の向き
良い方向

看護学生118人で、ツボ押しの群は試験の不安が下がり、心拍数と血圧の下がり方も何もしない群より大きかった。

[8]眉間のツボを押すとストレスが下がる:ボランティアでの試験

発表年
2003年
研究機関
ギリシャ・アレタイオン病院
掲載誌
Anesthesia and analgesia
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
25人
結果の向き
良い方向

健康なボランティア25人で、眉間のツボを10分押すと、関係のない場所を押したときより自分で感じるストレスが下がった。

[9]日本の大学生が自分で行うツボ押しによる気分の変化

発表年
2014年
研究機関
Horiuchi Sほかの研究チーム
掲載誌
Global journal of health science
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
54人
結果の向き
良い方向

日本の大学生54人が首のツボを自分で2週間押すと、何もしない群より気分が良くなった。

[10]大学生のストレス軽減に対するツボ押しの効果

発表年
2012年
研究機関
アメリカ・コロラド大学ボルダー校
掲載誌
Complementary therapies in medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
109人
結果の向き
差なし

健康な大学生109人で、ツボ押し・偽のツボ押し・リラックスCDのどれでもストレス反応は下がったが、群の間に差はなかった。

[11]首の痛みがある看護学生の痛みとストレスに対する耳のツボ押し

発表年
2025年
研究機関
韓国・乙支大学
掲載誌
Pain management nursing : official journal of the American Society of Pain Management Nurses
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

首の痛みがある看護学生で、耳のツボ押しを4週間続けても、ストレスの点数は偽のツボ押しと差がなかった。

[12]看護学生の試験前の不安に対するツボ押しの効果

発表年
2023年
研究機関
Lee Eほかの研究チーム
掲載誌
Alternative therapies in health and medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

看護学生で、耳のツボ押しは試験の不安を下げたが、その時の不安や不安になりやすさには差がなかった。

[13]不安に対するツボ押しの効果:系統的レビューとメタ解析

発表年
2015年
研究機関
香港・香港大学
掲載誌
Acupuncture in medicine : journal of the British Medical Acupuncture Society
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究5件を統合
結果の向き
良い方向

手術や治療を前にした大人の比較試験5件で、ツボ押しの群は偽のツボ押しの群より不安が下がった。

[14]看護師のストレス・睡眠・仕事への影響に対する耳のツボ押し

発表年
2025年
研究機関
韓国・東国大学
掲載誌
Holistic nursing practice
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
60人
結果の向き
差なし

看護師60人で、耳のツボ押しを7週間続けると、偽のツボ押しより睡眠の質は良くなった。

[15]外来看護師のストレス・不安・うつに対する耳のツボ押し

発表年
2021年
研究機関
韓国・国立がんセンター
掲載誌
Complementary therapies in clinical practice
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
54人
結果の向き
結果が割れている

外来の看護師54人で、耳のツボ押しを5週間続けると、偽のツボ押しよりうつの点数が下がった。

ほかに参考にした論文(8本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。