[1]人前で話す恐怖への心理的な介入のメタ解析
- 発表年
- 2019年
- 研究機関
- ノルウェー・ベルゲン大学
- 掲載誌
- Frontiers in psychology
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 1,355人
- 結果の向き
- 良い方向
RCT30件・1,355人の解析で、人前で話す恐怖が中くらい減った(効果量0.74)。

人前で話す練習を重ねると、緊張は小さくなります。呼吸法や「ワクワクしている」と言い換える方法も効きます。
人前の発表・試験・演奏・試合など、本番の緊張の話です。筋弛緩法と音楽の主な研究は患者が対象です。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 18.4 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 98.4 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 98 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本・観察研究 2 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
緊張は、人前での発表や試験、演奏、試合など、評価される場面で起きる心と体の高ぶりです。心臓がドキドキする、手や声が震える、汗が出る、頭が真っ白になるといった反応が出て、体を活動に備えさせる交感神経の働きによるとされています。注意点は、緊張が長く続いて生活に支障が出るときは、社交不安症などの不安症のことがあるので、医師に相談することです。
人に評価される場面は、体のストレス反応の強さと関連しています。アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校などの研究チームが2004年に発表したメタ解析(複数の研究をまとめて分析する方法)では、実験室の研究208件で、他人に評価される課題や自分ではどうにもできない課題で、ストレスホルモンのコルチゾールが上がりました [13]。根拠の確かさは低めです。実験室の研究が中心のためです。
緊張が強いほど本番の成績が低い関連もあります。試験の不安が強い学生ほど成績が低く、関係は小〜中くらいでした [14]。ただし関連で、原因とは言えません。
「声や手の震え、ドキドキは交感神経の働き」という説明そのものを調べた研究は、見つかっていません。関連として、交感神経の働きを抑えるβ遮断薬で、手術中の手の震えや、演奏の緊張による心拍と血圧の上昇が抑えられた試験があります [15] [16]。
答えの中心は、ノルウェーのベルゲン大学などの研究チームが2019年に発表したメタ解析です [1]。効果量は、差の大きさを表す数値です。
| 研究の種類 | 人前で話す恐怖への心理的な訓練のメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 人前で話すのが怖い人(30件・1,355人) |
| 比べたもの | 訓練を受けた群と、受けなかった群 |
| 結果 | 人前で話す恐怖が中くらい減った(効果量0.74) |
VRの聴衆の前での練習も、同じくらい減りました(-1.39)[17]。
イギリスのサセックス大学などの研究チームによる呼吸法(意識して呼吸を整える練習)のメタ解析(12件・785人)で、ストレスが小〜中くらい減りました(効果量-0.35)[2]。本番直前の深呼吸は、小学5年生の算数のテストで不安を減らし、成績も上げました [12]。射撃の課題では、成績は変わりませんでした [18]。「長く吐く」呼吸が特別に良いわけではなく、吐く息を長くしても、同じ長さの呼吸と差はありませんでした [19]。
緊張を「役に立つ高ぶり」と捉え直す方法は、スイスのベルン大学などの研究チームのメタ解析で、本番の成績が小さく上がりました(効果量0.23。人前で行う課題では0.34)[3]。大学生308人の試験でも点数が上がり、コルチゾールが減りました [11]。「落ち着こう」とした人より、「ワクワクしている」と言い換えた人の成績が良かった実験もあります [20]。ただし、ダーツ投げでは成績に差が出ませんでした [21]。
トルコのベイコズ大学などの研究チームのメタ解析(18件・1,275人)で、試験の不安が中〜大きく減りました(効果量-0.716)[4]。演奏の本番 [22] や試合 [23] の不安も減りました。
体の部位ごとに力を入れて抜く方法は、不安を大きく減らしました(31件・2,277人、効果量-1.11)[5]。手術を受ける人が聴く音楽も、不安を大きく減らしました(効果量-1.48)[6]。どちらも主な対象は患者で、健康な人の本番の緊張に同じだけ効くかは、確かめられていません。人前で評価される課題の前に音楽を聴いた健康な女性60人の実験では、心拍や本人の不安に差はありませんでした [24]。
試験の直前に不安を書き出す方法は、アメリカのコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジなどの研究チームのメタ解析(21件・1,457人)で、不安をほとんど減らしませんでした [8]。2011年の有名な実験では点数が上がりましたが [25]、メタ解析では、点数への効果も極端な一件を除くとはっきりしませんでした [8]。根拠の確かさは低めです。有名な実験とまとめた分析で結果が割れているためです。
デンマークのオーフス大学などの研究チームの73件のメタ解析では、気分や行動について、広がる姿勢とふつうの姿勢の差はほとんどありませんでした(効果量0.06)[9]。差が出たのは縮こまった姿勢と比べたときで、縮こまった姿勢が悪く働くためでした。
演奏家24人の試験では、演奏の出来が良くなりました [7]。筆記試験の学生では、不安も成績も変わりませんでした [26]。社交不安症などの患者5件・179人のメタ解析でも、効果は示されませんでした [27]。根拠の確かさは低めです。1970〜80年代の、参加者が数十人以下の試験が中心のためです。
健康な人では、カフェインと不安の強さが関連していました(14件・546人、効果量0.94)。とくに400mgを超えると目立ちました [10]。根拠の確かさは低めです。参加者が合わせて546人と少なく、結果の幅が広いためです。
β遮断薬は医師の処方が必要です。筆記試験の学生には、めまい・だるさ・頭痛を訴える人もいました [26]。自己判断で使わないでください。人前の場面で強く緊張する社交不安症の人では、480mgのカフェインでパニック発作が起きた人もいました [28]。持病や服薬中の人は、医師や薬剤師に確認してください。
この記事は本番の一時的な緊張の話で、不安症の治療の話ではありません。
緊張は、練習・呼吸・言い換え・マインドフルネスで小さくできます。
不安の書き出しとパワーポーズは、期待したほど効きません。
本番の一週間前・前日・直前に、一つずつ試しましょう。
おまじないそのものを調べた研究は、見つかっていません。効いたのは、練習・ゆっくりした呼吸・「ワクワクしている」と言い換える方法などです。
カフェインは、不安が強くなることと関連していました。とくに400mgを超えると目立ちました [[38362247]]。本番の前は控えめにするのが、研究に合います。
手術を受ける人では不安が減りましたが [[37276961]]、人前で評価される課題の前に聴いた健康な女性60人では差がありませんでした [[23940541]]。
RCT30件・1,355人の解析で、人前で話す恐怖が中くらい減った(効果量0.74)。
12件・785人の解析で、ストレスが小〜中くらい減った(効果量-0.35)。
RCTのメタ解析で、本番の成績が小さく上がった(効果量0.23)。
18件・1,275人の解析で、試験の不安が中〜大きく減った(効果量-0.716)。
31件・2,277人の解析で、不安が大きく減った(効果量-1.11)。主な対象は患者。
30件・2,280人の解析で、不安が大きく減った(効果量-1.48)。
演奏家24人の試験で、演奏の出来が良くなった。
21件・1,457人の解析で、試験の不安はほとんど減らなかった。
73件の解析で、広がる姿勢とふつうの姿勢の差はほとんどなかった(効果量0.06)。
14件・546人の解析で、不安が強くなった(効果量0.94)。
大学生308人で、次の試験の点数が高く、コルチゾールが少なかった。
小学5年生122人で、テスト前の深呼吸が不安を減らし成績も上げた。
208件の解析で、評価される課題でコルチゾールが上がった。
238件の解析で、試験の不安が強い学生ほど成績が低かった。
研修医5人で、本人の感じる不安と手の震えが減った。
プロの演奏家30人で、緊張による心拍と血圧の上昇が抑えられた。
11件・508人の解析で、現実の曝露もVRの曝露も不安を大きく減らした。
67人の試験で、頭の中の不安は減ったが成績はほとんど変わらなかった。
健康な大人100人の12週間の試験で、吐く息の長さによる差はなかった。
カラオケ・スピーチ・数学の実験で、言い換えた人の成績が良かった。
再評価した群は自信が高かったが、ダーツの成績に差はなかった。
1,983人の解析で、演奏の本番の不安が減った(効果量0.732)。
46件・2,049人の解析で、マインドフルネスを含む方法の効果の推定が最も大きかった。
健康な女性60人で、ストレス課題の前の音楽は心拍や不安に差がなかった。
試験の直前に心配を書き出した学生の点数が上がった。
筆記試験の前の薬で、脈は遅くなったが不安も成績も変わらなかった。
社交不安症やパニック症の患者で、β遮断薬はプラセボやベンゾジアゼピン系の薬と比べて不安を減らす効果を示さなかった
480mgのカフェインで、本番の場面だけ強く緊張する人にパニック発作が起きた。
26件・2,253人の解析で、不安が大きく減った(効果量1.17)。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。