オレンジなど柑橘の香りは不安を和らげる?

オレンジなど柑橘の香りは不安を和らげる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

和らげます。ビターオレンジの精油で、不安の点数が平均9.62点下がっています。

根拠

不安のある人への精油の効果を調べたランダム化比較試験のネットワークメタ解析(44件・3419人。人数は柑橘以外の精油も含む)で、ビターオレンジの精油は比較対照より「いまの不安」の点数を平均9.62点下げました [1]。レモンの精油も、ふだんの不安の点数を平均8.48点下げています [1]。出産中の妊婦のスイートオレンジ、集中治療室の患者のベルガモットでも、不安が下がっています [2] [3]。

この答えの範囲

検査や手術の前の患者、出産中の妊婦など、不安が強まる場面の研究が中心です。

じゃあ、どうする?

不安が高まる場面の前に、好みの柑橘の香りを嗅いでみる価値があります。妊婦の試験では、精油 5 滴をしみ込ませたマスクを 1 日に二度・20 分ずつ吸う方法でした [4]。妊娠中や持病のある人、薬を使っている人は、医師や薬剤師に確認してから。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。高い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。15 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 99 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量18.820研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 98.8 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 99 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 4 本・RCT のメタ解析 1 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

柑橘の香りとは

柑橘の香りは、オレンジ・レモン・ベルガモットなどの果実の皮から取る精油(植物の香り成分を濃縮したもの)の香りです。気持ちを落ち着かせたり、気分を明るくしたりするとされ、ディフューザー(香りを空気中に広げる器具)や、精油をしみ込ませたマスクなどで嗅ぎます。ビターオレンジ、スイートオレンジ、レモン、ベルガモットなど、元になる果実で香りが違うのが特徴です。注意点は、精油が濃縮されたものであることで、妊娠中の人、持病のある人、薬を使っている人は医師や薬剤師に確認してください。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、中国中医科学院西苑医院などの研究チームが2023年に発表したネットワークメタ解析です [1]。ネットワークメタ解析とは、複数の試験をまとめ、直接比べていない組み合わせも含めて全体の違いを調べる方法です。不安のある人を対象に、10種類の精油(植物から取り出した香り成分を濃縮したもの)を比べた試験が集められました。

研究の種類ランダム化比較試験を集めたネットワークメタ解析(精油と不安を調べた44件・3419人)
対象不安のある人(精油は10種類)
比べたもの精油の香り / 比較対照
結果ビターオレンジの精油で「いまの不安」の点数が平均9.62点低下
まとめて分析した結果ビターオレンジの精油は、比較対照より「いまの不安」の点数を平均9.62点下げていました。

レモンの精油も、ふだんの不安(特性不安)の点数を平均8.48点下げていました。

「いまの不安」はその時の緊張の強さ、「ふだんの不安」は日ごろから感じやすい不安の傾向を、質問票で測った点数です。3419人は柑橘以外も含む全体の人数で、ビターオレンジの推定の幅(信頼区間)は5.93点から13.32点の低下です [1]。レモンは幅が広く、0.33点から16.67点の低下で、下限はほぼ差のない値です [1]。

どの柑橘が検証されている?

  • ビターオレンジ(Citrus aurantium): 上のまとめ解析で効果あり。妊婦68人の試験では、不安の点数の変化が -3.37点 対 +0.79点(無臭のアーモンドオイル)でした [4]
  • スイートオレンジ(Citrus sinensis): 出産中の妊婦で、蒸留水を嗅いだグループより不安が下がりました [2]
  • ベルガモット: 外科の集中治療室の患者54人で、不安の点数が下がりました [3]
  • レモン: 上のまとめ解析でふだんの不安が低下。看護学生46人の試験でも、試験前の不安が対照より低くなりました [5]

ビターオレンジはスイートオレンジとは別の種類です。大きな差が出たのは、ビターオレンジとレモンです。ただし香りの種類を直接比べた試験ではないので、どれが一番とは言えません。

よく言われていることは本当?

  • 不安や緊張が和らぐ研究で確かめられています。 上のまとめ解析が根拠で、患者・妊婦の研究が中心です [1]。健康な男性40人の実験では、スイートオレンジの香りを嗅ぐと、不安を起こすテスト中も不安の点数が上がりませんでした [6]
  • 気分が明るくなる・落ち込みが和らぐ小規模な試験で支持されています。 妊婦68人では抑うつの点数が -4.80点 対 +1.03点(無臭の油)で、産後の女性60人でもベルガモットで低くなりました [4] [7]。大学生48人の試験では抑うつは副次評価で、参加者は中身を知っていました [8]。根拠の確かさは中程度です。試験は3件と少なく、対象も妊婦・産後の女性・大学生に限られます
  • 寝る前に嗅ぐとよく眠れる結果が割れています。 ビターオレンジで睡眠の質の点数が良くなった試験が2件(閉経後の女性80人、妊婦68人)ある一方 [9] [10]、ベルガモットで良くなった試験も2件(集中治療室の患者54人、大学生48人)あります [3] [8]。一方、産後の女性のベルガモットと、冠動脈の治療を受ける患者85人のビターオレンジでは差がありませんでした [7] [11]
  • レモンの香りで集中力が上がる研究では支持されていません。 柑橘の香りで集中力を調べた比較試験は見つかった範囲で 1 件だけで、反応は速くなったものの、抑制と記憶の成績は悪くなり、香りのない油でも同じ結果でした
  • グレープフルーツの香りでやせる人で香りと体重・体脂肪を調べた試験は見つかっていません。 あるのは動物実験などで、やせる効果の研究ではありません

なお、妊婦68人の不安・抑うつの結果と睡眠の結果は、同じ試験の別の結果です [4] [10]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

全部の試験で差が出たわけではありません。2024年のICUの看護師の試験では、スイートオレンジなどを混ぜた精油と偽物で、不安に差がありませんでした [12]。中絶手術前の女性66人の試験では、ベルガモットなどの精油と、ヘアコンディショナーの香りで差がありませんでした [13]。歯科の患者486人の試験では、オレンジなどの香りを部屋に流すと不安の点数がわずかに低かったものの、はっきりした差は女性など一部だけでした [14]。放射線治療中の患者では、ラベンダー・ベルガモットなどを混ぜた精油のほうが、香りのない油より不安の点数が高くなった試験もあります [15]。

差がなかった試験ICUの看護師(スイートオレンジなどを混ぜた精油)

偽物と比べて、不安の点数に統計的な差はありませんでした。

差が出なかった試験の多くは、柑橘以外の精油が混ざっているか、比べた相手が別の香りでした。「柑橘が効かない」とは言えず、何と比べるか・どんな場面かで差の出方が変わる可能性があります。しくみは、この解析では確かめられていません。

02注意点

研究で使われた条件は試験ごとに違います。妊婦68人の試験は、精油5滴のマスクを1日に二度・20分ずつ、1か月です [4]。集中治療室の患者54人の試験は、精油3滴を枕に垂らして20分、2晩でした [3]。看護学生の試験では、レモンの精油を15分嗅ぎました [5]。長期の使用の安全性は、ここで扱った研究からは判断できません。妊娠中の人、持病のある人、薬を使っている人は、医師や薬剤師に確認してください。

研究の対象と、自分の条件を分けて考える

患者や妊婦の結果を、健康な人の日常の不安にそのまま当てはめないでください。

03まとめ

柑橘の香りは、不安の点数を下げる方向の結果が多くの試験でそろっています。
気分は小規模な試験で支持され、睡眠は割れていて、集中力とやせる効果は研究が見つかっていません。
不安が高まる場面の前に、好みの香りを試してみましょう。

04よくある質問

Q誰でも不安が和らぎますか?

誰でもとは言えません。点数が下がった試験が多い一方、偽物と差がなかった試験もあります。香りの好みにも個人差があります。

Q定番のラベンダーと比べてどうですか?

2023年のまとめ解析では、「いまの不安」の点数の低下は、ビターオレンジが平均9.62点、ラベンダーが平均5.41点でした [[37325306]]。香りを直接比べた試験ではなく、推定の幅も重なるため、どちらが上とは言えません。

Q精油ではなく、果物の皮や芳香剤の香りでも同じですか?

研究では確かめられていません。ここで扱った試験は、精油を使ったものです。

Q香りで不安の病気は治りますか?

研究では確かめられていません。このページで扱ったのは、アンケートで測った不安の点数の変化です。つらい状態が続くときは、医療機関に相談してください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(15本)

[1]精油の香りは不安にどう影響するか、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析

発表年
2023年
研究機関
中国・中国中医科学院西苑医院
掲載誌
Frontiers in public health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,419人
結果の向き
良い方向

精油と不安を調べた44件・3419人のまとめ。ビターオレンジで「いまの不安」が平均9.62点低下。

[2]出産中の痛みと不安に対するスイートオレンジ精油の香りの効果

発表年
2025年
研究機関
ブラジル・セルジッペ連邦大学
掲載誌
Explore (New York, N.Y.)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

出産中の妊婦で、スイートオレンジの精油を嗅いだグループは蒸留水より不安が下がった。

[3]外科ICU患者の不安と睡眠に対するラベンダーとベルガモットの香りの効果

発表年
2024年
研究機関
トルコ・イスタンブール・アトラス大学
掲載誌
Explore (New York, N.Y.)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
54人
結果の向き
良い方向

外科ICUの患者54人で、ベルガモットの精油を嗅いだグループの不安の点数が下がった。

[4]妊婦の抑うつ・ストレス・不安に対するビターオレンジ精油の効果

発表年
2025年
研究機関
オーストラリア・モナシュ大学
掲載誌
Taiwanese journal of obstetrics & gynecology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
68人
結果の向き
良い方向

妊婦68人で、ビターオレンジの精油を1か月嗅ぐと不安の点数が -3.37点 対 +0.79点。

[5]看護学生の試験不安に対するレモン精油の効果

発表年
2022年
研究機関
トルコ・イスタンブール・サバハッティン・ザイム大学
掲載誌
Explore (New York, N.Y.)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

看護学生46人で、レモンの精油を15分嗅いだグループは試験不安の点数が対照より低かった。

[6]スイートオレンジの香りが実験で起こした不安に与える効果

発表年
2012年
研究機関
ブラジル・セルジッペ連邦大学
掲載誌
Journal of alternative and complementary medicine (New York, N.Y.)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

健康な男性40人で、スイートオレンジの香りを嗅ぐと、不安を起こすテスト中も不安の点数が上がらなかった。

[7]産後の女性に対するベルガモット精油の香りの効果

発表年
2022年
研究機関
台湾・国立台湾大学
掲載誌
The journal of nursing research : JNR
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
60人
結果の向き
良い方向

産後の女性60人で、ベルガモットの香りを嗅いだグループは水の香りより気分の落ち込みの点数が低く、睡眠の質には差がなかった。

[8]大学生のベルガモット精油スプレーと睡眠

発表年
2023年
研究機関
日本・星薬科大学
掲載誌
Complementary therapies in medicine
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
48人
結果の向き
良い方向

大学生48人のクロスオーバー試験。ベルガモットのスプレーで不安などの点数が改善した。

[9]閉経後の女性の睡眠障害に対するビターオレンジ精油の効果

発表年
2022年
研究機関
イラン・アフヴァーズ・ジュンディシャプール医科大学
掲載誌
International journal of community based nursing and midwifery
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
80人
結果の向き
良い方向

眠りに悩む閉経後の女性80人で、ビターオレンジの精油を4週間嗅ぐと睡眠の質の点数が良かった。

[10]睡眠障害のある妊婦に対するビターオレンジ精油の効果

発表年
2022年
研究機関
イラン・マシュハド医科大学
掲載誌
International journal of community based nursing and midwifery
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
68人
結果の向き
良い方向

眠りに悩む妊婦68人で、ビターオレンジの精油を嗅いだグループは睡眠の質の点数が良かった。

[11]冠動脈の治療を受ける患者の睡眠に対する香りと指圧の効果

発表年
2020年
研究機関
イラン・セムナン医科大学
掲載誌
Complementary therapies in clinical practice
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
85人
結果の向き
差なし

冠動脈の治療を受ける患者85人で、ビターオレンジの香りは偽の香りと睡眠の点数がほぼ同じだった。

[12]ICU看護師の不安に対するアロマセラピーの効果

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・カリリオン・クリニック
掲載誌
Nursing
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

ICUの看護師で、柑橘などを混ぜた精油は偽物と比べて不安に差がなかった。

[13]中絶手術前の女性の不安に対する精油の効果

発表年
2000年
研究機関
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学
掲載誌
Effective clinical practice : ECP
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

中絶手術前の女性66人で、精油はヘアコンディショナーの香りと不安の下がり方に差がなかった。

[14]歯科の不安に対する精油の香りの効果、クラスターランダム化試験

発表年
2024年
研究機関
ドイツ・シャリテ・ベルリン医科大学
掲載誌
Scientific reports
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

歯科の患者486人で、オレンジなどの香りを流すと不安の点数がわずかに低く、はっきりした差は一部だけだった。

[15]放射線治療中の吸入アロマセラピー、プラセボ対照のランダム化試験

発表年
2003年
研究機関
オーストラリア・セント・ジョージ病院
掲載誌
Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
悪い方向

放射線治療中の患者で、ラベンダー・ベルガモット・シダーウッドの精油は香りのない油より不安の点数が高かった。

ほかに参考にした論文(27本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。