睡眠時間を短くしても体は慣れる?

睡眠時間を短くしても体は慣れる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え注意が必要

慣れません。眠気の自覚はそれ以上強まらなくなっても、頭の働きは下がったままです。

根拠

睡眠を実験で短くした61件の研究をまとめた分析で、頭の働き全体が十分に眠った場合より下がっていました(効果量 g=-0.383)[1]。毎晩6時間の睡眠を平日5晩+週末の回復で2回くり返した試験では、2週目のほうが注意力の低下が速く進みました [2]。眠気の自覚は最初に強まったあとほとんど増えず、本人は低下にほとんど気づいていませんでした [3]。

この答えの範囲

健康な若者・大人が、睡眠を3〜6時間ほどに削る日を続けた実験の話です。

じゃあ、どうする?

削った睡眠で「慣れた」と感じても、判断や注意の働きは戻っていません。運転や仕事の大事な場面の前は、睡眠を削らず、足りない分は回復の睡眠で取り戻しましょう。短い睡眠が続いて日中の眠気が強いときは、医師に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。9 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 84 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン3240いちばん信頼できる研究の種類
研究の量17.720研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 89.7 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・観察研究 2 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

睡眠を短くして「慣れる」とは

睡眠を短くして慣れるとは、睡眠時間を削る日が続いても、眠気やだるさが減り、ふだんどおりに働けるようになることです。ショートスリーパーになる方法として、SNSなどでよく紹介されます。研究では、睡眠を実験で削った人たちの眠気の自覚と、注意力や記憶などの成績を、十分に眠った人と比べています。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、カナダのウォータールー大学などの研究チームが2017年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、条件のそろった複数の研究の結果を統計でまとめる方法です。睡眠時間を実験で短くした61件の研究が集められました。

研究の種類睡眠を実験で短くした研究のメタ解析
対象健康な若者・大人(61件の研究)
比べたもの睡眠を短くした場合と、十分に眠った場合
結果頭の働き全体が下がり、実行機能・持続的な注意・長期の記憶で低下がみられた
まとめて分析した結果睡眠を短くすると、頭の働き全体が十分に眠った場合より下がっていました(効果量 g=-0.383)[1]。

年齢・時間帯・短くした日数・眠気の自覚などで、低下の大きさは変わりました。

続けると慣れるのか

慣れるなら、日がたつにつれて成績は戻るはずです。実際は逆でした。毎晩6時間の睡眠を平日5晩+週末の回復で2回くり返した、21〜28歳の健康な若者52人の試験では、2週目のほうが注意力の低下が速く進みました [2]。慣れるどころか悪化していました。

さらに、毎晩4時間または6時間の睡眠を14日続けた健康な大人48人の試験では、すべての課題で、頭の働きが日を追うごとに、睡眠が短いほど大きく下がりました [3]。

1日あたり5.6時間の睡眠を、32日間または38日間続けた健康な26人の試験もあります。起きてすぐの作業の成績は、8時間眠る群より約10%悪く、その後も低いままでした [4]。

「慣れた」と感じるのはなぜ

眠気の自覚は、頭の働きとは別の動きをします。14日の試験では、眠気は睡眠を削った直後に強まり、その後の日はわずかしか増えず、6時間と4時間の差もはっきりしませんでした。頭の働きは日ごとに下がり続けていたので、本人は低下にほとんど気づいていませんでした [3]。

自己評価は、実際の成績を正しく表しません。5晩続けて4時間の睡眠にした男性20人の試験では、自分で感じる出来や眠気は回復の睡眠で元に戻りましたが、一人ひとりの自己評価は、実際の能力の低下を正しく表していませんでした [5]。

1日あたり5.6時間の睡眠を続けた群は、起きた直後の成績が悪かったのに、眠気の自覚は8時間眠る群と差がありませんでした [4]。「眠くない」は、「いつもどおり働ける」の証拠になりません。

よく言われていることは本当?

  • 訓練や慣れでショートスリーパーになれるほぼウソです。 睡眠を削る日が続いても、頭の働きは慣れて戻るのではなく、下がったままでした [1] [2]。
  • しばらくすると眠気を感じなくなる眠気の自覚は、最初に強まったあとほとんど増えません [3]。 ただし頭の働きは下がり続けていて、感覚は実際の低下を表していません [5]。
  • ショートスリーパーは生まれつきの体質で、なろうとしてなれるものではない短い睡眠で足りる体質の人がごく少数いる、とよく紹介されます。 この話は家系の遺伝子の解析が根拠で、睡眠を削る実験ではないため、この記事の分析には入れていません。
  • 睡眠時間が短いと健康や寿命に悪い悪い関連があります。 ふだんの睡眠が短い人は、ふつうに眠る人より死亡リスクが1.12倍高いことと関連していました(153件・5,172,710人の追跡研究のまとめ。観察研究なので因果は確かめられていません)[6]。
  • 睡眠の質を上げれば、短い睡眠でも大丈夫睡眠の質を上げて時間を減らしても能力が保てるかを確かめた研究は、今回の検索では見つかっていません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

睡眠を1晩だけ削った研究では、続けたときの慣れは分かりません。1晩だけ2〜6時間に削った44件のメタ解析でも、持続的な注意の反応時間は遅くなり、眠気の自覚ははっきり強まりました [7]。

1晩だけ削った研究1晩だけ睡眠を2〜6時間に制限した44件のメタ解析

眠気の自覚と反応の遅れが出ており、続けた場合の慣れを示す研究ではありません。

回復の睡眠でどこまで戻る?

15〜19歳の健康な高校生56人を、7晩5時間の群と9時間の群にくじで分けた試験では、睡眠を削った群は注意力・作業記憶・実行機能が日ごとに悪くなりました。回復の睡眠を2晩とっても、眠気の自覚と持続的な注意は元の水準に戻りませんでした [8]。

記憶についても、睡眠を3〜6.5時間に削ると、7〜11時間眠った場合より新しいことを覚える力が落ちていました(39報告・1234人。効果量 g=0.29)[9]。

02注意点

研究の多くは、寝床にいる時間を3〜6時間ほどに削って、数日から数週間続けた実験です。たとえば2003年の試験は、21〜38歳の健康な大人48人を対象に、4時間・6時間・8時間のいずれかを14日続けました [3]。高校生を対象にした試験は、寄宿舎で管理して行われました [8]。

実験の外の暮らしで、睡眠を削った人が何年もたって慣れるかは、この記事の研究では確かめていません。睡眠時間が短い状態が続いて、日中の強い眠気、居眠り、気分の落ち込みがある人は、医師に相談してください。持病や服薬中の人も同じです。

眠くないことと、働けることは別

睡眠を削って眠気の自覚が増えなくなっても、注意や判断の成績は戻っていません。

03まとめ

睡眠時間を短くしても、体は慣れません。眠気の自覚が増えなくなっても、頭の働きは下がったままです。
運転や仕事の大事な場面の前は、「慣れたから平気」と考えず、睡眠を削らないようにしましょう。
睡眠不足が続いたら、回復の睡眠を多めにとり、昼寝などで日中の眠気をやわらげる工夫も役立ちます。

04よくある質問

Q何日くらい続ければ慣れますか?

研究では、14日続けても、32日間または38日間続けても、頭の働きは戻っていませんでした [[12683469]] [[30722039]]。日数がたつほど悪化した試験もあります [[38219041]]。

Q眠くなくなれば、慣れたということですか?

いいえ。眠気の自覚は最初に強まったあと、ほとんど増えません [[12683469]]。眠気の自覚が同じでも、起きた直後の成績は悪いままでした [[30722039]]。

Q一晩だけ短くした場合はどうですか?

1晩だけでも、持続的な注意の反応時間は遅くなり、眠気の自覚は強まりました [[38759474]]。

Qコーヒーを飲めば、短い睡眠でも働けますか?

この記事の研究は、カフェインを使った場合は調べていません。コーヒーと集中力の研究は、[コーヒーを飲むと仕事に集中できる?](/evidence/coffee-work-focus)で解説しています。

05参照した論文

判定に使った主な論文(9本)

[1]睡眠制限の神経認知への影響のメタ解析

発表年
2017年
研究機関
カナダ・ウォータールー大学
掲載誌
Neuroscience and biobehavioral reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究61件を統合
結果の向き
悪い方向

睡眠を実験で短くした61件をまとめると、頭の働き全体が下がっていた。

[2]くり返す睡眠制限中の神経行動機能

発表年
2024年
研究機関
シンガポール・シンガポール国立大学
掲載誌
Sleep
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
52人
結果の向き
悪い方向

毎晩6時間の睡眠をくり返すと、2週目のほうが注意力の低下が速かった。

[3]睡眠制限が神経行動機能に与える用量反応

発表年
2003年
研究機関
アメリカ・ペンシルベニア大学
掲載誌
Sleep
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
48人
結果の向き
悪い方向

毎晩4時間または6時間を14日続けると、頭の働きが日ごとに下がった。

[4]慢性的な睡眠制限が起床直後の成績を大きく下げる

発表年
2019年
研究機関
アメリカ・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院
掲載誌
Sleep
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
26人
結果の向き
悪い方向

1日あたり5.6時間の睡眠で、起床直後の成績が約10%悪かった。

[5]累積的な睡眠制限が複数作業中の自己認識に与える影響

発表年
2013年
研究機関
フィンランド・フィンランド労働衛生研究所
掲載誌
Journal of sleep research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
20人
結果の向き
悪い方向

4時間睡眠を5晩続けた男性20人で、自己評価は実際の低下を正しく表さなかった。

[6]短い睡眠と健康への影響:系統的レビュー、メタ解析、メタ回帰

発表年
2017年
研究機関
日本・大分大学
掲載誌
Sleep medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
5,172,710人
結果の向き
悪い方向

153件・5,172,710人で、睡眠が短い人は死亡リスクが1.12倍高いことと関連していた。

[7]1晩の睡眠制限が眠気と認知機能に与える影響

発表年
2024年
研究機関
スイス・バーゼル大学
掲載誌
Sleep medicine reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究44件を統合
結果の向き
悪い方向

1晩だけ2〜6時間に削った44件で、反応時間が遅くなり眠気が強まった。

[8]7晩の睡眠制限が青年の注意・作業記憶・実行機能に与える影響

発表年
2016年
研究機関
シンガポール・デューク・シンガポール国立大学医学部
掲載誌
Sleep
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
56人
結果の向き
悪い方向

高校生56人で、7晩5時間の群は回復後も注意力が戻らなかった。

[9]睡眠を削ることが記憶の形成に与える影響のメタ解析

発表年
2024年
研究機関
イギリス・ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ
掲載誌
Neuroscience and biobehavioral reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,234人
結果の向き
悪い方向

39報告・1234人で、睡眠を削ると新しいことを覚える力が落ちていた。

ほかに参考にした論文(7本)

判定「注意が必要」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。