[1]睡眠制限の神経認知への影響のメタ解析
- 発表年
- 2017年
- 研究機関
- カナダ・ウォータールー大学
- 掲載誌
- Neuroscience and biobehavioral reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 研究61件を統合
- 結果の向き
- 悪い方向
睡眠を実験で短くした61件をまとめると、頭の働き全体が下がっていた。

慣れません。眠気の自覚はそれ以上強まらなくなっても、頭の働きは下がったままです。
健康な若者・大人が、睡眠を3〜6時間ほどに削る日を続けた実験の話です。
削った睡眠で「慣れた」と感じても、判断や注意の働きは戻っていません。運転や仕事の大事な場面の前は、睡眠を削らず、足りない分は回復の睡眠で取り戻しましょう。短い睡眠が続いて日中の眠気が強いときは、医師に相談を。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 32 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 17.7 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 89.7 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・観察研究 2 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
睡眠を短くして慣れるとは、睡眠時間を削る日が続いても、眠気やだるさが減り、ふだんどおりに働けるようになることです。ショートスリーパーになる方法として、SNSなどでよく紹介されます。研究では、睡眠を実験で削った人たちの眠気の自覚と、注意力や記憶などの成績を、十分に眠った人と比べています。
答えの中心は、カナダのウォータールー大学などの研究チームが2017年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、条件のそろった複数の研究の結果を統計でまとめる方法です。睡眠時間を実験で短くした61件の研究が集められました。
| 研究の種類 | 睡眠を実験で短くした研究のメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 健康な若者・大人(61件の研究) |
| 比べたもの | 睡眠を短くした場合と、十分に眠った場合 |
| 結果 | 頭の働き全体が下がり、実行機能・持続的な注意・長期の記憶で低下がみられた |
年齢・時間帯・短くした日数・眠気の自覚などで、低下の大きさは変わりました。
慣れるなら、日がたつにつれて成績は戻るはずです。実際は逆でした。毎晩6時間の睡眠を平日5晩+週末の回復で2回くり返した、21〜28歳の健康な若者52人の試験では、2週目のほうが注意力の低下が速く進みました [2]。慣れるどころか悪化していました。
さらに、毎晩4時間または6時間の睡眠を14日続けた健康な大人48人の試験では、すべての課題で、頭の働きが日を追うごとに、睡眠が短いほど大きく下がりました [3]。
1日あたり5.6時間の睡眠を、32日間または38日間続けた健康な26人の試験もあります。起きてすぐの作業の成績は、8時間眠る群より約10%悪く、その後も低いままでした [4]。
眠気の自覚は、頭の働きとは別の動きをします。14日の試験では、眠気は睡眠を削った直後に強まり、その後の日はわずかしか増えず、6時間と4時間の差もはっきりしませんでした。頭の働きは日ごとに下がり続けていたので、本人は低下にほとんど気づいていませんでした [3]。
自己評価は、実際の成績を正しく表しません。5晩続けて4時間の睡眠にした男性20人の試験では、自分で感じる出来や眠気は回復の睡眠で元に戻りましたが、一人ひとりの自己評価は、実際の能力の低下を正しく表していませんでした [5]。
1日あたり5.6時間の睡眠を続けた群は、起きた直後の成績が悪かったのに、眠気の自覚は8時間眠る群と差がありませんでした [4]。「眠くない」は、「いつもどおり働ける」の証拠になりません。
睡眠を1晩だけ削った研究では、続けたときの慣れは分かりません。1晩だけ2〜6時間に削った44件のメタ解析でも、持続的な注意の反応時間は遅くなり、眠気の自覚ははっきり強まりました [7]。
眠気の自覚と反応の遅れが出ており、続けた場合の慣れを示す研究ではありません。
研究の多くは、寝床にいる時間を3〜6時間ほどに削って、数日から数週間続けた実験です。たとえば2003年の試験は、21〜38歳の健康な大人48人を対象に、4時間・6時間・8時間のいずれかを14日続けました [3]。高校生を対象にした試験は、寄宿舎で管理して行われました [8]。
実験の外の暮らしで、睡眠を削った人が何年もたって慣れるかは、この記事の研究では確かめていません。睡眠時間が短い状態が続いて、日中の強い眠気、居眠り、気分の落ち込みがある人は、医師に相談してください。持病や服薬中の人も同じです。
睡眠を削って眠気の自覚が増えなくなっても、注意や判断の成績は戻っていません。
睡眠時間を短くしても、体は慣れません。眠気の自覚が増えなくなっても、頭の働きは下がったままです。
運転や仕事の大事な場面の前は、「慣れたから平気」と考えず、睡眠を削らないようにしましょう。
睡眠不足が続いたら、回復の睡眠を多めにとり、昼寝などで日中の眠気をやわらげる工夫も役立ちます。
研究では、14日続けても、32日間または38日間続けても、頭の働きは戻っていませんでした [[12683469]] [[30722039]]。日数がたつほど悪化した試験もあります [[38219041]]。
いいえ。眠気の自覚は最初に強まったあと、ほとんど増えません [[12683469]]。眠気の自覚が同じでも、起きた直後の成績は悪いままでした [[30722039]]。
1晩だけでも、持続的な注意の反応時間は遅くなり、眠気の自覚は強まりました [[38759474]]。
この記事の研究は、カフェインを使った場合は調べていません。コーヒーと集中力の研究は、[コーヒーを飲むと仕事に集中できる?](/evidence/coffee-work-focus)で解説しています。
睡眠を実験で短くした61件をまとめると、頭の働き全体が下がっていた。
毎晩6時間の睡眠をくり返すと、2週目のほうが注意力の低下が速かった。
毎晩4時間または6時間を14日続けると、頭の働きが日ごとに下がった。
1日あたり5.6時間の睡眠で、起床直後の成績が約10%悪かった。
4時間睡眠を5晩続けた男性20人で、自己評価は実際の低下を正しく表さなかった。
153件・5,172,710人で、睡眠が短い人は死亡リスクが1.12倍高いことと関連していた。
1晩だけ2〜6時間に削った44件で、反応時間が遅くなり眠気が強まった。
高校生56人で、7晩5時間の群は回復後も注意力が戻らなかった。
39報告・1234人で、睡眠を削ると新しいことを覚える力が落ちていた。
判定「注意が必要」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。