[1]大人の不眠に音楽を聞くことの効果(コクランレビュー)
- 発表年
- 2022年
- 研究機関
- デンマーク・オーフス大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 708人
- 結果の向き
- 良い方向
不眠のある大人708人で、音楽を聴くと睡眠の質の点数が平均2.79点良かった。

良くなります。不眠のある大人では、睡眠の質の点数が平均2.79点良くなりました。
眠りに悩みのある大人と高齢者の話です。睡眠に問題のない大人では差が見られませんでした。録音された落ち着いた曲を、寝る前に聴いた研究が中心です。
眠りに悩んでいるなら、寝る前に落ち着いた曲を聴く価値があります。研究では25〜60分を毎日、3日〜3か月続けています [1]。曲が頭に残って夜中に目が覚めるようなら、別の曲に変えてみてください。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 16 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 19.5 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 90.5 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 3 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
睡眠用の音楽は、寝る前に聴く、ゆっくりで落ち着いた曲のことです。リラックスして眠りやすくなるとされ、配信サービスにはα波やバイノーラルビートをうたう音源もあります。研究で使われたのは、主に録音された音楽でした。注意点は、曲の種類や聴き方で結果が変わりうることです。
答えの中心は、デンマークのオーフス大学などの研究チームが2022年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で関連する比較試験を集め、結果を整理する方法です。不眠のある大人を対象にした13件・1007人の試験が集められました。
| 研究の種類 | 不眠のある大人を調べた比較試験のコクランレビュー |
|---|---|
| 対象 | 不眠の症状がある大人(10件・708人) |
| 比べたもの | 録音された音楽を毎日25〜60分、3日〜3か月聴くグループと、何もしない・ふだんどおりのグループ |
| 結果 | 睡眠の質の点数(PSQI、0〜21点で低いほど良い)が平均2.79点良かった |
研究の質は中程度とされ、信頼区間は3.86点から1.72点の改善の範囲でした [1]。
睡眠の質の点数は、質問票に本人が答える方式です。夜中の目覚めや眠りの深さを機械で測った結果ではない点は、頭に入れておいてください。
睡眠に問題のない大人424人(研究6件)では、音楽を聴いても睡眠の質に差が見られませんでした。平均0.8点の差で、信頼区間は0を含みます [3]。ただし3週間以上続けた研究(3件)に限ると、点数は改善していました。研究どうしの結果にはばらつきがあります。
平均0.8点の差で、統計的には差と言えない範囲でした。
寝つきについては、コクランレビューが自己申告の寝つきの問題が減ると報告する一方、機器で測った寝つきでは改善が見られなかったとしています [1]。寝つくまでの時間を分で示した数値は、今回集めた研究にはありません。寝つきを早くしたいときの方法は寝れないときはどうする?にまとめています。
アメリカのベイラー大学の2021年の実験では、平均21.2歳の50人が、寝る前に人気曲の歌詞なし版か歌詞あり版を聴きました。歌詞なし版のほうが、夜中に曲が頭の中で流れることが増え、脳波などで測った睡眠の質が下がりました [6]。比べた相手は歌詞あり版で、音楽を聴かない場合ではありません。この実験は「音楽を聴くと眠りが浅くなる」ことを示したものではありません。根拠の確かさは低めです。人数が50人の実験1件のためです。
α波やθ波をうたうバイノーラルビートは、研究が足りず、まだ分かりません。ビートの無い音楽と比べた試験の結果はそろっていません。
研究の多くは、不眠の症状がある人や高齢者が対象でした。うつ病の試験では、音楽をやめて4週間後に差がほぼ消えており、効果は聴いている間の話と読むのが無難です [4]。眠れない状態が続く、日中に強い眠気がある場合は、医師に相談してください。イヤホンで聴くなら、耳に負担がかからない音量にするのが一般に勧められています。
睡眠に問題のない大人では、差が見られなかったまとめがあります。
音楽は、眠りに悩む大人と高齢者の睡眠の質を良くします。
睡眠に問題のない人や、寝つきを機器で測った場合は、同じ結果とは言えません。
寝る前に落ち着いた曲を試し、曲が頭に残るなら別の曲に変えてみましょう。ほかの方法は睡眠の質を高める方法は?で比べています。
研究では、録音された落ち着いた曲が使われています。大学生の試験では、クラシックとジャズで差はありませんでした。曲のジャンルごとの優劣は、研究では確かめられていません。
一晩中流す聴き方を調べた研究は、今回集めた中にありません。研究で多かったのは、寝る前に25〜60分聴く方法です。
研究は3日〜3か月と幅があります。高齢者のまとめでは、4〜8週間、30〜45分を週7回の介入で改善が大きい傾向でした。
ビートを加えても音楽だけと差がなかった試験があり、結果はそろっていません。ビートの有無より、落ち着いた曲を聴くことのほうが研究の裏づけがあります。
不眠のある大人708人で、音楽を聴くと睡眠の質の点数が平均2.79点良かった。
高齢者1,730人で、睡眠の質の点数が平均3.37点良かった。
睡眠に問題のない大人424人では、睡眠の質に差は見られなかった。
うつ病に伴う不眠のある大人112人で、4週間音楽を聴くと点数が2.1点良かった。
眠りに悩む大学生75人で、寝る前に音楽を聴くと5週間後の睡眠の質が良かった。
50人の実験で、歌詞なし版の曲は歌詞あり版より睡眠の質が下がった。
軽い不眠のある大人43人で、ビートを加えても不眠の重さに差はなかった。
介護施設の高齢者64人で、ビート入りの曲を聴くと睡眠の質が良くなった。
健康な大人217人で、寝つくまでの時間が短くなったのは女性だけだった。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。