[1]心血管病の予防に向けたグルテン減量食のコクランレビュー
- 発表年
- 2022年
- 研究機関
- ドイツ・フライブルク大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
- 対象
- 60人
- 結果の向き
- 差なし
一般の大人のBMIは、グルテンを減らした食事で差がなかった(平均差 -0.1)。

セリアック病でない大人では、グルテンを減らしても体重に差は出ていません。学術論文としては、まだ断定できていません。
セリアック病ではない大人の体重を調べた結果です。一般の大人60人の試験と、セリアック病の人も含む27研究のまとめで確かめています。
体重のためだけにグルテンを抜く理由は、今の研究からは見えません。長引く下痢や腹痛など、セリアック病が心配な症状があるときは、自己判断で抜く前に医師に相談を。試すなら体重とお腹の調子を記録して、自分の変化を確かめましょう。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 14.8 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 2 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 91.8 点を、エビデンス強度 D の範囲(5〜39 点)に収めて、スコアは 39 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 2 本・観察研究 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「非常に低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から D に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
グルテンフリーは、小麦・大麦・ライ麦などに含まれるたんぱく質、グルテンを避ける食事です。もともとは、グルテンで腸が傷つくセリアック病の治療として続けられてきました。パンや麺、小麦粉のお菓子を控えるのが中心で、米やそばを使った食品もあります。注意点は、グルテンを減らしても、ほかの食べ物が増えれば総カロリーは変わりうることです。
答えの中心は、ドイツのフライブルク大学などの研究チームが2022年に発表した系統的レビューです [1]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する研究を集め、結果を整理する方法です。心臓や血管の病気のない一般の大人を調べた試験が集められ、その中でBMIを調べた試験は1件でした。
| 研究の種類 | 一般の大人を対象にしたコクランの系統的レビュー |
|---|---|
| 対象 | 心臓や血管の病気のない一般の大人(BMIを調べたのは60人・6か月の試験) |
| 比べたもの | グルテンを減らした食事と通常の食事 |
| 結果 | BMIに差はなかった(平均差 -0.1) |
27研究をまとめた2023年のメタ解析でも、体重(平均差 +1.20kg)・BMI・腹囲・体脂肪のどれにも有意な変化はありませんでした [2]。
BMIの結果は1件の試験に基づき、研究の確実性は非常に低いと評価されています。27研究の解析にはセリアック病の人も含まれ、体重の増え方はセリアック病の人のほうが、そうでない人より大きくなっていました。つまり「差は出ていない」ことは言えますが、「差がない」と言い切れるだけの研究はまだありません。
病気のある人を対象にした研究には、体重の指標が下がったものがあります。セリアック病ではない橋本病の人110人(RCT3件)のメタ解析では、体重の差ははっきりせず、BMIは平均1.80下がりましたが、根拠はとても不確かとされています [3]。
グルテンフリー食の群は、通常の食事の群より腹囲が有意に減りました [4]。
一方、脂肪肝の患者60人に生活指導を行い、グルテンフリー食を3か月上乗せした試験では、BMIや腹囲の変化は指導だけの群と差がありませんでした [5]。線維筋痛症の人75人を24週間追った試験でも、カロリーを控えた食事と比べて、BMIを含むどの項目にも差はありませんでした [6]。病気や比べた相手が違うので、結果が割れて見えます。健康な大人に当てはめられるかは分かりません。
セリアック病の人では、グルテンフリー食の間にBMIが上がる研究があります。子どもと大人7959人(45研究)の観察研究のメタ解析で、BMIは平均1.14上がりました [7]。ただし、診断時のBMIは健康な人より低く、太りすぎ・肥満の区分に移ったのは9%で、20%はむしろ低い区分に移りました。
セリアック病の大人2450人(10研究)のメタ解析では、BMIの区分が変わる確率に全体で有意な差はありませんでしたが、もともと太りぎみ(BMI 25〜30)の人では区分が変わりやすい結果でした [8]。フィンランドの698人では、1年後にやせていた人の69%は体重が増え、太りぎみの人の18%と肥満の人の42%は体重が減りました [9]。観察研究なので原因は断定できません。全体としては「太る」とは言えない結果ですが、太りぎみの人は経過に気をつけたほうがよいでしょう。
アメリカのスキッドモア大学の研究チームは、若い女性11人に同じカロリー・栄養素の食事を食べてもらうクロスオーバー試験を行いました [10]。グルテンフリー食品の食事は、加工の少ない食事より食後の熱産生(消費カロリー)が1食あたり20.94kcal少なく、満腹感も低くなりました。ただし1回の食事を見た小さな試験で、体重の変化は調べていません。
研究で使われた食事は、病気の治療やその上乗せとして行われたものが中心です。たとえば脂肪肝の患者60人の試験は、グルテンフリー食を3か月上乗せし、どの群に入るかを本人も医師も知っている形で行われました [5]。食事の制限は、食べ物の選び方しだいで栄養が偏ることもあります。持病や服薬がある人、お腹の不調が続く人は、始める前に医師や管理栄養士に相談してください。
長引く下痢や腹痛などがあるときは、自己判断でグルテンを抜く前に医師に相談してください。
セリアック病でない大人では、グルテンフリーの食事で体重やBMIに差は出ていません。
セリアック病の人がグルテンフリーを続けても、「太る」とは言えません。
体重が目的なら、パンや麺を一律に避ける前に、食事全体を見直す選び方もあります。たとえば パンを食べると太るって本当? も参考になります。
健康な大人60人の試験で、グルテン2g/日の低グルテン食は、18g/日の高グルテン食よりお腹の張りの自覚を改善しました [[30425247]]。著者は、効果の多くは食物繊維の質の変化によるものかもしれないとしています。体重が減るかどうかは、この結果からは分かりません。
両方を直接比べた研究は、調べた範囲で見つかっていません。食事の見直しは、[玄米や雑穀米は白米より痩せやすい?](/evidence/brown-rice-weight-loss) のように、主食ごとに研究を確かめた記事もあります。
体重への効果そのものが確かめられていないため、いつからとは言えません。研究の期間は6週間から1年ほどでした。
食後の熱産生が少なく満腹感も低かった小さな試験があります [[32659919]]。長期の体重への影響は、一般の人では研究で確かめられていません。
一般の大人のBMIは、グルテンを減らした食事で差がなかった(平均差 -0.1)。
27研究のまとめで、体重・BMI・腹囲・体脂肪に有意な変化はなかった。
橋本病の人110人(RCT3件)で、体重の差ははっきりしなかった。
メタボリックシンドロームの人50人で、8週間のグルテンフリー食は腹囲を有意に減らした。
脂肪肝の患者60人で、BMIや腹囲の変化は指導だけの群と差がなかった。
線維筋痛症の人75人を24週間比べ、BMIを含むどの項目にも差はなかった。
7959人(45研究)で、BMIは平均1.14上がり、太りすぎに移ったのは9%だった。
2450人(10研究)で、BMIの区分が変わる確率に全体で有意な差はなかった。
大人698人で、1年後にやせていた人の69%は体重が増え、肥満の人の42%は減った。
若い女性11人で、グルテンフリー食品の食事は食後の熱産生が1食あたり20.94kcal少なかった。
111人(RCT2件)で、症状は減る傾向(リスク比0.42)だが有意ではなかった。
グルテン過敏の人などの研究をまとめたメタ解析で、グルテンフリー食はお腹の症状と生活の質を改善した(効果の大きさ0.88)が、研究ごとのばらつきが非常に大きかった
この記事のエビデンス強度は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。