[1]短い睡眠と健康への影響:系統的レビュー、メタ解析、メタ回帰
- 発表年
- 2017年
- 研究機関
- 日本・大分大学
- 掲載誌
- Sleep medicine
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 5,172,710人
- 結果の向き
- 悪い方向
追跡研究 153 件のメタ解析。睡眠が短い人は、その後に肥満になるリスクが 1.38 倍と関連していた。

睡眠が短い人は、肥満と関連しています。ただし、睡眠不足が太らせると言い切れる段階ではありません。
大人の話です。観察研究のまとめが中心で、原因までは確かめていません。睡眠時間を延ばす指導だけでは BMI に差が出ませんでした [4]。
睡眠を削ると食べる量が増える結果は実験でそろっています [5]。夜ふかしの日は間食や夜食が増えやすいと知っておくと、食べる量を意識しやすくなります。睡眠を整えるなら、時間を延ばすだけでなく、寝つきや眠りの質も見直す方法が研究されています。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 20 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 20.9 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 95.9 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 96 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 2 本・観察研究 4 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
睡眠不足は、ふだんの睡眠時間が短い状態のことです。睡眠が短いと食欲や食べるものが変わり、太りやすくなるとよく言われます。調べ方は大きく 2 つあります。人の睡眠時間を長く追いかけて肥満との関係を見る「観察研究」と、睡眠を実際に削って体重の変化を測る「実験」です。観察研究で言えるのは「関連」までで、「原因」とは分けて読む必要があります。
答えの中心は、日本の大分大学などの研究チームが2017年に発表した、前向きコホート研究のメタ解析です [1]。前向きコホート研究とは、最初に睡眠時間を聞き、その後の健康状態を追いかける方法です。メタ解析は、複数の研究の結果を合わせて分析する方法です。
| 研究の種類 | 前向きコホート研究 153 件のメタ解析(観察研究) |
|---|---|
| 対象 | 大人(のべ 5,172,710 人、追跡は 1 年以上) |
| 比べたもの | 睡眠が短い人と、ふつうに眠る人 |
| 結果 | 睡眠が短い人は、その後に肥満になるリスクが 1.38 倍と関連 |
これは「関連」の結果で、睡眠不足が肥満の原因だと証明したものではありません。
別のまとめでも同じ向きです。大人を追った研究 12 件(154,936 人)をまとめた 2020 年の解析では、睡眠が短い人の肥満リスクはオッズ比(起こりやすさの比)1.412 でした [6]。高齢者の研究 15 件でも、睡眠が短い人は肥満と関連していました [7]。ただし、どれも「睡眠が短い人に、ほかの生活習慣の違いもあった」可能性を完全には除けません。
睡眠を実際に削る実験では、体重への影響が割れています。健康な大人の実験 41 件のまとめでは、部分的な睡眠不足で体重が 0.34kg 増えました [2]。一方、大人 6 件・275 人をまとめた別の解析では、体重にも体脂肪にもはっきりした差は出ませんでした [3]。睡眠を操作した実験のまとめ(2015 年)も、食べる量は増えたが体重への影響は一貫しなかったと報告しています [8]。差があっても 0.34kg 程度と小さく、観察研究の 1.38 倍とは別の尺度の話です。
体重にも体脂肪にも、はっきりした差は出ませんでした [3]。
実験で一貫しているのは、食べる量の増加です。睡眠を削った介入研究のまとめでは、1 日に食べる量が平均 204kcal 増え、脂質・たんぱく質・炭水化物のどれも増えました [5]。健康な大人の実験 41 件のまとめでも、毎日 252.8kcal 多く食べ、空腹感も強くなりました [2]。一方、消費エネルギーや安静時の代謝には、はっきりした変化がありませんでした [9]。ただし、食べる量の増加が体重の増加にどう結びつくかは、実験では一貫していません [8]。
睡眠の問題がある大人への介入 25 件のメタ解析では、睡眠時間を延ばす指導だけ(5 件・138 人)では BMI(体格の指数)に差が出ませんでした [4]。一方、不眠の認知行動療法や睡眠衛生の指導(8 件・1,384 人)では、BMI が平均 0.64 下がりました。睡眠が短く太りぎみの大人 80 人の試験では、睡眠を延ばす指導を受けた人は睡眠が約 1.2 時間増え、食べる量が毎日 270kcal 減りました [12]。睡眠時間そのものより、眠りを整える方法が体重と結びついている可能性はありますが、研究はまだ少ない段階です。
因果の確かめ方には限りがあります。遺伝子を使って因果を調べた分析では、不眠の症状があると BMI と腹囲が増える方向の結果でした [13]。ただし、これは不眠の症状の話で、睡眠時間を削った場合の結果とは同じではありません。体重や食欲、睡眠の悩みが強い人、持病のある人は、医師に相談してください。
睡眠が短い人に肥満が多いことと、睡眠を削ると太ることは、別の話として読んでください。
睡眠が短い人は肥満と関連していますが、睡眠不足が原因だと言い切れる結果ではありません。
睡眠を削ると食べる量が増えることは、実験で一貫して確かめられています。
睡眠時間を延ばすだけで体重が変わるとは言えないので、寝つきや眠りの質を整える方向で見直しましょう。睡眠時間そのものは 睡眠時間は何時間がいちばん健康的? も参考になります。
睡眠が短い人は肥満と関連していますが、原因と言い切れる結果ではありません。睡眠を削る実験では、体重の差は小さく、結果も割れています。
関連はごくわずかで、まとめによって結果が分かれています [[30107483]] [[32527625]]。
睡眠時間を延ばす指導だけでは、BMI に差は出ませんでした [[42044907]]。ダイエットの手段としては、研究では確かめられていません。
グレリンはやや高い結果がありますが、睡眠を奪う実験ではレプチンは下がっていません [[32537891]]。ホルモンだけで説明できるとは言えません。
追跡研究 153 件のメタ解析。睡眠が短い人は、その後に肥満になるリスクが 1.38 倍と関連していた。
健康な大人の実験 41 件のメタ解析。睡眠を削ると体重が 0.34kg 増え、毎日 252.8kcal 多く食べた。
実験で睡眠を削った研究 6 件(275 人)のメタ解析。体重にも体脂肪にもはっきりした差は出なかった。
睡眠時間を延ばす指導だけ(5 件・138 人)では BMI に差が出ず、不眠の認知行動療法などでは BMI が平均 0.64 下がった。
睡眠を削った介入研究をまとめると、1 日に食べる量が平均 204kcal 増えた。
大人を追った研究 12 件(154,936 人)で、睡眠が短い人の肥満リスクはオッズ比 1.412 だった。
高齢者の観察研究 15 件のメタ解析。睡眠が短い人は肥満と関連していた(オッズ比 1.40)。
睡眠時間を操作したランダム化比較試験をまとめると、睡眠不足で食べる量は増えたが、体重への影響は一貫しなかった
睡眠を削った実験11件(172人)をまとめると、毎日の食べる量が385kcal増えた。一方、消費エネルギーや安静時の代謝には変化がなかった
睡眠が短い人は、食欲を高めるホルモンのグレリンがやや高かった。睡眠を奪う実験ではグレリンとレプチンがどちらも上がった(レプチンは下がらなかった)
長く眠る人(寝すぎ)は肥満のリスクがわずかに高かった(1.04倍)が、体重の増え方・BMIの変化とは関連がなかった
睡眠が6.5時間未満で太りぎみの大人80人で、睡眠を延ばす指導を受けたグループは睡眠が約1.2時間増え、食べる量が毎日270kcal減り、体重も減った(上のメタ解析に含まれる可能性が高いため数えない)
遺伝子を使った因果の分析(メンデルランダム化)で、不眠の症状があるとBMI・腹囲が増える方向の結果だった
大人を追跡した研究7件をまとめると、睡眠が短い人はおなか周りの肥満のリスクがわずかに高かった(1.08倍)
判定「注意が必要」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。