フロスは歯みがきの前と後どっちがいい?

フロスは歯みがきの前と後どっちがいい?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え

歯垢全体は、前でも後でも差がありません。前歯の歯垢とフッ素は、先にフロスをするほうが有利です。

根拠

歯みがきの前後でフロスを使う順番を比べた2件の研究をまとめた2022年のメタ解析(60人)では、歯垢の減り方に統計的な差はありませんでした [1]。一方、2026年の大学生56人の試験では、前歯で先にフロスを使ったほうが歯垢が減り、ほかの部位は差がありませんでした [2]。2018年の歯学部の学生25人の試験では、先にフロスを使うと歯と歯の間の歯垢のフッ素濃度が高くなりました [3]。フッ素の根拠の確かさは低めです。試験が1件だけのためです。

この答えの範囲

大学生と歯学部の学生で確かめた結果です。歯垢全体は2件・60人のメタ解析、前歯の歯垢は56人の試験、フッ素は25人の試験です。

じゃあ、どうする?

先にフロスを使って不利になる結果は、集めた研究にはありませんでした。フッ素入りの歯みがき粉を使うなら、先にフロスを使うと歯と歯の間にフッ素が多く残る試験があります [3]。順番で迷って使わない日が出るより、続けられる順番を選んでください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。限定的
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。5 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。結果は混在
判定の内訳を見る(スコア 39 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン3040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量7.720研究件数と参加人数
一致度11.425結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度05信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 59.1 点を、エビデンス強度 D の範囲(5〜39 点)に収めて、スコアは 39 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・観察研究 1 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

フロスの順番とは

デンタルフロスは、歯ブラシが届きにくい歯と歯の間の汚れを取る、糸状の清掃用具です。歯みがきの前に使う「フロス→歯みがき」と、後に使う「歯みがき→フロス」の2通りがよく話題になります。歯垢とは、歯の表面につく細菌のかたまりのことです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、ブラジルのペルナンブコ大学などの研究チームが2022年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、同じ疑問を調べた複数の研究の結果をまとめて分析する方法です。フロスを使う順番を比べた2件の研究、60人が集められました。

研究の種類フロスの順番を比べた研究のメタ解析
対象平均年齢23.1歳の60人(2件の研究)
比べたもの歯みがきの前にフロスを使う場合と、後に使う場合
結果歯垢の減り方に統計的な差はなかった
まとめて分析した結果歯みがきの前に使っても後に使っても、歯垢の減り方に統計的な差はありませんでした [1]。

差は0.01で、信頼区間は-0.16〜0.18でした。

まとめられた2件は、どちらも個別の結果では、フロスを先に使った期間の歯垢の指標が低い結果でした [3] [4]。それでも、2件をまとめた解析では統計的な差は出ていません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

2026年に中国の同済大学などの研究チームが発表した試験では、大学生56人をランダムに2グループに分け、歯みがきとフロスの方法を指導したうえで、歯垢指数の減り方を比べました [2]。前歯(上と下)では、フロスを先に使ったグループのほうが歯垢がより減りました。ほかの部位では差がありませんでした。前歯だけ差が出た理由は、要旨では確認できません。

前歯で差があった試験大学生56人のランダム化比較試験

前歯は先にフロスを使った群で歯垢が多く減り、ほかの部位は差がありませんでした。

フッ素の残り方では

2018年にイランのマシュハド医科大学などの研究チームが発表した試験では、歯学部の学生25人が48時間歯みがきを止めたあと、2通りの順番を2週間の間隔をあけて両方試しました [3]。フロスを先に使ったときのほうが、歯と歯の間の歯垢に含まれるフッ素の濃度が高くなり、歯と歯の間の歯垢も全体の歯垢もより多く減りました。ただし、この結果は試験1件、25人だけです。根拠の確かさは低めです。研究の数が少ないためです。

順番そのものの比較ではありませんが、大人20人の別の試験では、フッ素入りの歯みがき粉で磨いたあとにフロスを足しても、唾液中のフッ素の残り方は歯みがきだけの場合とほとんど変わりませんでした [5]。

何を調べたか

  • 歯垢の減り方(全体): 前後で差なし(メタ解析、60人)
  • 前歯の歯垢: 先が多く減った(1試験、56人)
  • 前歯以外の歯垢: 差なし(1試験、56人)
  • 歯と歯の間の歯垢のフッ素: 先が高かった(1試験、25人)

よく言われていることは本当?

  • 歯みがきの前にフロスを使うほうが歯垢がよく取れる条件によります。 全体ではメタ解析で差がなく、前歯だけ差が出た試験が1件あります [1] [2]。
  • 先にフロスをすると歯みがき粉のフッ素が歯と歯の間に届きやすい本当です。 歯と歯の間の歯垢のフッ素濃度が高くなりました。ただし試験は1件・25人で、根拠の確かさは低めです。研究の数が少ないためです [3]。
  • フロスは歯みがきの後に使うのがよい後のほうが良いと示した研究は見つかっていません。 前後で差がないというメタ解析があります [1]。
  • 先にフロスするほうが習慣にしやすい研究では確かめられていません。 順番と続けやすさを比べた研究は見つかっていません。
  • 順番より毎日続けることが大事・夜寝る前がよい研究では確かめられていません。 時間帯や順番と続けやすさを比べた研究は見つかっていません。
  • フロスは虫歯・歯周病・口臭の予防になるこの記事では扱っていません。 歯間の清掃用具は 歯間ブラシとフロス、効果が高いのはどっち? や 歯周病を防ぐには何が効く? で扱っています。

02注意点

研究の対象は大学生や歯学部の学生で、2018年の試験は直前に48時間歯みがきを止めた条件でした [3]。ふだんの生活と同じ結果になるとは限りません。フロスを使って歯ぐきから血が出る、痛みが続くときは、歯科医師や歯科衛生士に使い方を確認してください。フッ素入りの歯みがき粉については フッ素入り歯みがき粉で虫歯は防げる?安全性は? も参考になります。

研究は小さく、順番の差は限られている

前後の差がはっきりしたのは、前歯の歯垢とフッ素の残り方で、どちらも試験1件です。

03まとめ

歯垢全体の減り方は、フロスが歯みがきの前でも後でも差がありません。
前歯の歯垢とフッ素の残り方は、先に使うほうが良い結果が1件ずつあります。
どちらの順番でも、歯みがきの中にフロスを入れることを続けましょう。

04よくある質問

Q夜だけフロスを使うのでも構いませんか?

フロスを使う時間帯を比べた研究は見つかっていません。研究では確かめられていません。

Q歯間ブラシも同じ順番でいいですか?

歯間ブラシを使う順番を比べた研究は、今回集めた中にはありません。歯間ブラシとフロスの違いは、[歯間ブラシとフロス、効果が高いのはどっち?](/evidence/interdental-brush-vs-floss) で扱っています。

Q結局、前と後のどちらにすればいいですか?

歯垢全体では差が見つかっていないので、続けやすいほうを選べます。フッ素入りの歯みがき粉を使うなら、先に使う順番に有利な試験が1件あります。

05参照した論文

判定に使った主な論文(5本)

[1]フロスを歯みがきの前と後のどちらに使うと歯垢が減るか:系統的レビューとメタ解析

発表年
2022年
研究機関
ブラジル・ペルナンブコ大学
掲載誌
International journal of dental hygiene
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
60人
結果の向き
差なし

平均年齢23.1歳の60人、2件の研究をまとめ、前後で歯垢の減り方に統計的な差はなかった。

[2]歯みがきとフロスの順番が歯垢除去に与える影響:単盲検ランダム化比較試験

発表年
2026年
研究機関
中国・同済大学
掲載誌
BMC oral health
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
56人
結果の向き
結果が割れている

大学生56人で、前歯は先にフロスを使うと歯垢がより減り、ほかの部位は差がなかった。

[3]歯みがきとフロスの順番が歯間の歯垢とフッ素の残り方に与える影響:ランダム化臨床試験

発表年
2018年
研究機関
イラン・マシュハド医科大学
掲載誌
Journal of periodontology
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
25人
結果の向き
良い方向

歯学部の学生25人で、先にフロスを使うと歯垢がより減り、歯間の歯垢のフッ素濃度も高かった。

[4]歯みがきとフロスの順番が歯垢と歯肉の炎症の管理に与える効果

発表年
2015年
研究機関
Torkzaban Pほかの研究チーム
掲載誌
Oral health & preventive dentistry
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
35人
結果の向き
良い方向

歯学部の学生35人で、フロスを先に使った2週間のほうが歯垢の指標が低かった。

[5]フッ素入り歯みがき粉で磨いたあとのフロスとフッ素洗口液が唾液中のフッ素の残り方に与える効果

発表年
2009年
研究機関
イギリス・Duckworth RMほかの研究チーム
掲載誌
Caries research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
20人
結果の向き
差なし

大人20人で、磨いたあとにフロスを足しても、唾液中のフッ素の残り方は歯みがきだけとほとんど変わらなかった。

この記事のエビデンス強度は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。