歯周病を防ぐには何が効く?

歯周病を防ぐには何が効く?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く方法と効かない方法がある

殺菌成分入りの洗口液と歯みがき粉は、歯周病の手前の歯ぐきの炎症に効きます。

根拠

  • 効く: 歯みがきに殺菌成分入りの洗口液を足すと、歯肉炎の指標が下がります(クロルヘキシジンで0.21点、RCT10件・805人)[1]。殺菌成分入りの歯みがき粉も、ふつうのフッ素入りより歯ぐきの炎症が少なくなりました [2]。
  • 効く: 電動歯ブラシ [3]、フロス・歯間ブラシ [4]。根拠の確かさは低めです。差が小さく、使う道具を参加者に隠せない試験が中心のためです。
  • 効かない: 重い歯周病のない大人の定期クリーニング [5]。歯肉炎の差は確認されていません。根拠の確かさは低めです。条件に合う試験が2件(1711人)だけのためです。
  • 禁煙は、歯を失いにくいことと関連しています [6]。観察研究で結果のばらつきが大きく、根拠の確かさは低めです。

この答えの範囲

測っているのは歯ぐきの炎症(歯肉炎)です。歯みがき粉の研究は、トリクロサン入りとフッ化スズ入りが中心で、日本の商品に多い成分のものではありません。

じゃあ、どうする?

歯みがきを土台に、殺菌成分入りの洗口液か歯みがき粉を足すのが、研究の条件に近い使い方です。歯ぐきの炎症が気になる人は、1日1回の歯間清掃も加えましょう [7]。クロルヘキシジン入りは歯が着色するので、長く使う前に歯科で相談を。定期検診は、クリーニングの効果とは別に、歯周病を早く見つける場として考えましょう。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。高い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 94 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量14.520研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 94.5 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 94 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 3 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「高い」で、これを強度の上限にしています。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

歯周病とは

歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨が、歯垢(プラーク)にひそむ細菌の炎症で傷む病気です。初期は歯ぐきが赤く腫れて血が出やすい歯肉炎で、進むと骨が溶けて歯がぐらつく歯周炎になります。予防には、歯みがきに加えて、洗口液・歯みがき粉・電動歯ブラシ・フロスや歯間ブラシなどが使われます。注意点は、喫煙も歯周病に関わるとされることです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

研究が測っているのは、おもに歯周病の手前の歯肉炎の指標です。答えの中心は、アイルランドのコーク大学などの研究チームが2017年に発表したコクランのレビューです [1]。コクランのレビューとは、ランダム化比較試験(くじ引きで分けて比べる試験)を集めて分析する方法です。

研究の種類ランダム化比較試験を集めたコクランのレビュー
対象軽い歯肉炎のある人(10件・805人)
比べたもの歯みがき+クロルヘキシジンの洗口液 / プラセボや洗口液なし
結果4〜6週間で、歯肉炎の指標(0〜3点)が0.21点低かった
まとめて分析した結果クロルヘキシジンの洗口液で、歯肉炎の指標が0.21点下がりました [1]。

研究の確実性は高いと評価されていますが、著者はこの差を臨床的に意味のある大きさではないとしています。

クロルヘキシジンでは、歯の着色が大きく増えました。味覚の変化や口の粘膜の刺激といった副作用も報告されています [1]。

洗口液や歯みがき粉に入る殺菌成分は、歯垢の中の細菌を減らして歯ぐきの炎症を抑えると考えられています。CPC(塩化セチルピリジニウム)入りは、プラセボより歯間の歯肉炎の指標が0.38点多く下がり(研究間のばらつきは大きめ)[8]、精油入りは6か月以上使うとプラセボより0.52点低くなりました [9]。

よく言われていることは本当?

  • 毎日ていねいにみがくのが基本研究では確かめられていません。 みがく人とみがかない人を比べる試験がほぼ行われず、磨き方の効果は測られていないためです。予防の考え方をまとめたレビューは、歯垢を落とすことを基本としています [7]。
  • フロスや歯間ブラシで歯周病を防げる歯ぐきの炎症には効きます。 歯ブラシにフロスを足すと、1か月後の炎症が少なくなりました(RCT8件・585人)。歯間ブラシはフロスより炎症を減らす可能性もあります。根拠の確かさは低めです。歯周炎を防げるかは確かめられていません [4]。
  • 洗口液を併用すると効果が上がる歯ぐきの炎症には効きます。 上で見たとおり指標は下がりますが、差は小さめです。
  • 電動歯ブラシのほうが歯周病予防になる効きますが、差は小さいです。 3か月を超えて使った研究16件・1645人で、手みがきより歯肉炎が少なくなりました(標準化平均差-0.21。歯肉炎の指標で11%の減少)。根拠の確かさは低めです。著者は、臨床的な重要さははっきりしないとしています [3]。18歳までの子どもでは、歯肉炎の指標に差がありませんでした [10]。治療後の人も含むため、電動歯ブラシだけを調べた記事とは対象が違います。
  • 薬用の歯みがき粉を選ぶとよい歯ぐきの炎症には効きます。 トリクロサン入りは、ふつうのフッ素入りより歯ぐきの炎症が0.27点低くなりました(研究20件・2743人)[2]。フッ化スズ入りも、歯肉炎の指標が少し良くなりました(標準化平均差-0.14)。ただし別の指標では差がはっきりしませんでした [11]。36か月使った480人の1件では、歯周炎の発症に差が見られませんでした [2]。詳しくは歯周病用の歯みがき粉の記事へ。
  • 歯科の定期クリーニングでリスクが下がる歯肉炎には効きません。 重い歯周病のない大人では、6か月ごとの歯石取り・クリーニングを受けても、2〜3年後の歯肉炎はほとんど変わりませんでした(RCT2件・1711人、標準化平均差-0.01)。歯石は少し減りました。条件に合う試験が2件だけで、根拠の確かさは低めです [5]。早く見つける検診の価値を否定する研究ではありません。歯肉炎のある人では、歯みがきの指導と組み合わせると効果が上乗せされたという報告もありますが、根拠の確かさは低めです [12]。
  • 禁煙が予防になる歯を失いにくいことと関連しています。 観察研究のまとめで、今吸っている人は吸ったことがない人の2.60倍歯を失いやすく、やめた人は1.15倍で、はっきりした差がありませんでした [6]。観察研究のため原因とは言い切れず、研究ごとの結果のばらつきが大きいため、根拠の確かさは低めです。
  • よく噛む・甘いものを控える食事で防げる確かめられていません。 歯周病の予防を目的に調べた介入の研究は、今回集めていません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

歯周病の治療を終えてメインテナンス中の大人では、歯間ブラシで歯垢は減ったものの、歯ぐきの炎症を減らす点で手みがきだけより上位になる器具はありませんでした [13]。

差が見られなかった解析歯周病の治療後にメインテナンス中の大人

歯ぐきの炎症は、器具を足しても手みがきだけと変わりませんでした。

02注意点

洗口液の試験は、歯みがきに足して4〜6週間使う条件が中心です。クロルヘキシジンは長く使い続ける前に歯科で相談してください [1]。歯ぐきから血が出る、歯がぐらつくなどの症状があるときや、持病・服薬中の人は、歯科医師や薬剤師に確認してください。

指標が下がることと、歯周病を防げることは別

洗口液は歯みがきの代わりにはならず、歯ぐきの症状が続くときは歯科を受診してください。

03まとめ

殺菌成分入りの洗口液と歯みがき粉は、歯ぐきの炎症を減らすことが研究で確かめられています。
電動歯ブラシと歯間清掃も効きますが、根拠の確かさは低めです。重い歯周病のない大人の定期クリーニングでは、歯肉炎は変わりませんでした。
まずは歯みがきと1日1回の歯間清掃を土台に、洗口液か歯みがき粉を足してみましょう。

04よくある質問

Q洗口液だけで歯周病を防げますか?

そうとは言えません。研究で測っているのは歯肉炎の指標で、歯周炎になるかどうかは確かめられていません [[28362061]]。

Q電動歯ブラシに替えれば歯周病にならないのですか?

そうとは言えません。減るのは歯肉炎の指標で、差は小さめです [[24934383]]。

Qフロスと歯間ブラシは、どちらがよいですか?

歯間ブラシのほうが、フロスより歯ぐきの炎症を減らす可能性があるとされています。ただし根拠の確かさは低めです [[30968949]]。歯間ブラシが無理なく入らない狭いすき間では、フロスを使うと整理されています [[25639826]]。

05参照した論文

判定に使った主な論文(14本)

[1]歯肉炎に対するクロルヘキシジン洗口液の効果を調べたコクランのレビュー

発表年
2017年
研究機関
アイルランド・コーク大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
805人
結果の向き
良い方向

軽い歯肉炎のある805人で、洗口液を足すと歯肉炎の指標が0.21点下がった。歯の着色が大きく増えた。

[2]トリクロサン入り歯みがき粉の効果を調べたコクランのレビュー

発表年
2013年
研究機関
イギリス・マンチェスター大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,743人
結果の向き
良い方向

トリクロサン入りの歯みがき粉で、歯ぐきの炎症が0.27点低かった。

[3]電動歯ブラシと手みがきを比べたコクランのレビュー

発表年
2014年
研究機関
マレーシア・マレーシア国際イスラム大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,645人
結果の向き
良い方向

3か月を超えて使った研究16件・1645人で、電動歯ブラシは手みがきより歯肉炎が少なかった。

[4]歯みがきに足す歯間清掃の道具で歯周病とむし歯を防げるか、のコクランのレビュー

発表年
2019年
研究機関
イギリス・コクラン口腔保健グループ
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
585人
結果の向き
良い方向

歯ブラシにフロスを足すと、1か月後の歯ぐきの炎症が少なかった。研究の確実性は低い。

[5]歯ぐきの健康のための定期的な歯石取りと研磨

発表年
2018年
研究機関
イギリス・ダンディー大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,711人
結果の向き
差なし

重い歯周病のない1711人で、2〜3年後の歯肉炎にほとんど差がなかった。歯石は少し減った。

[6]禁煙と歯を失うリスクの関係を調べた観察研究のメタ解析

発表年
2019年
研究機関
ブラジル・サンパウロ大学
掲載誌
BMC oral health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究12件を統合
結果の向き
良い方向

今吸っている人は2.60倍、やめた人は1.15倍で、はっきりした差がなかった。

[7]歯肉炎を防ぎ歯周炎を予防する方法についての専門家の合意報告

発表年
2015年
研究機関
イギリス・バーミンガム大学
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

歯垢の除去が基本で、歯肉炎のある人には1日1回の歯間清掃が勧められる。

[8]CPC入り洗口液の歯垢と歯肉炎への効果のメタ解析

発表年
2021年
研究機関
ブラジル・リオグランデ・ド・スル連邦大学
掲載誌
Clinical oral investigations
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究8件を統合
結果の向き
良い方向

CPC入り洗口液で、歯間部の歯肉炎の指標がプラセボより0.38点多く下がった。

[9]精油入り洗口液の歯肉炎への効果のメタ解析

発表年
2016年
研究機関
ブラジル・リオグランデ・ド・スル連邦大学
掲載誌
Journal of dentistry
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究11件を統合
結果の向き
良い方向

精油入りの洗口液を6か月以上使うと、歯肉炎の指標がプラセボより0.52点低かった。

[10]子どもの電動歯ブラシと手みがきを比べたメタ解析

発表年
2025年
研究機関
オランダ・アムステルダム歯学アカデミックセンター
掲載誌
International journal of dental hygiene
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究12件を統合
結果の向き
差なし

18歳までの子どもでは、歯垢は少し多く取れたが、歯肉炎の指標には差が見られなかった。

[11]フッ化スズ入り歯みがき粉の歯肉炎への効果のレビュー

発表年
2020年
研究機関
カナダ・アルバータ大学
掲載誌
International dental journal
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究6件を統合
結果の向き
結果が割れている

フッ化スズ入りは、ふつうのフッ素入りより歯肉炎の指標が少し良かった。

[12]歯肉炎の人の歯科でのクリーニングと歯みがき指導のレビュー

発表年
2026年
研究機関
イタリア・フェラーラ大学
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究4件を統合
結果の向き
結果が割れている

歯みがき指導と組み合わせると、指導だけより効果が上乗せされた。

[13]歯周病のメンテナンス中の人の歯垢除去の系統的レビューとネットワークメタ解析

発表年
2020年
研究機関
オランダ・アムステルダム歯学アカデミックセンター
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究16件を統合
結果の向き
差なし

治療後のメインテナンス中の大人で、歯ぐきの炎症を減らす点で手みがきより上位の器具はなかった。

フロスと洗口液の組み合わせを12週間比べたRCT

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
BMC oral health
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
270人
結果の向き
良い方向

歯肉炎のある270人を、フロス追加や洗口液追加などの群に分けて12週間比べた。洗口液メーカーが行った研究。

ほかに参考にした論文(28本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。