歯ぐきから血が出るとき、歯みがきを増やすべき?

歯ぐきから血が出るとき、歯みがきを増やすべき?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

歯みがきを増やすより、歯と歯の間の掃除を足すと効きます。

根拠

歯みがきにフロスなどを足した効果を調べた比較試験のまとめ(8件・585人)で、歯ぐきの炎症の指数が歯みがきだけより下がりました [1]。口腔洗浄器などの電動の歯間清掃具でも、歯と歯の間の出血が減りました(16件・1258人)[2]。根拠の確かさは低めです。参加者の多くはもともと歯ぐきの炎症が軽く、結果の確実性が低いと評価されたためです。

この答えの範囲

大人の話です。出血が続くときは歯周病の場合もあるため、歯科での確認が必要です。

じゃあ、どうする?

出血する場所も、やさしく磨き続けてください。回数を増やす代わりに、毎日フロス・歯間ブラシ・口腔洗浄器のどれかを足すのが、研究の条件に近い使い方です [1]。違いは 歯間ブラシとフロスの記事 へ。血中のビタミンCが少ない人では、補った群のほうが出血しやすさが少ない、という関連も報告されています。根拠の確かさは低めです [3]。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。12 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量16.320研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 96.3 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 3 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

歯ぐきの出血とは

歯ぐきから血が出るのは、歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間に汚れがたまり、歯ぐきが炎症を起こしているサインとされます。軽い段階を歯肉炎といい、進むと歯を支える骨まで傷む歯周炎(歯周病)になります。汚れを落とすと落ち着くとされますが、出血が続く、腫れる、膿が出る場合は歯科での確認が必要です。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

歯みがきの回数を増やす効果は、まだ分かっていません

歯みがきの回数を増やしたときに出血が減るかを確かめた比較試験は、見つかっていません。観察研究14件のまとめでは、歯みがきの回数が少ない人ほど歯周炎の人の割合が高い、という関連が見られました [4]。ただし、これは回数を増やせば良くなる、という意味ではありません。

歯みがきの習慣を変える指導(目標づくり・記録など)を調べた比較試験25件・1422人のまとめも、研究の確実性が非常に低く、出血が減るかの結論は出ていません [5]。

歯と歯の間の掃除を足すと、出血の指標が下がる

答えの中心は、イギリスのコクラン口腔保健グループが2019年に発表した系統的レビューです [1]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する研究を集め、結果を整理する方法です。家庭でフロスなどを歯みがきに足した人と、歯みがきだけの人が比べられています。

研究の種類歯間清掃の道具を比べた比較試験の系統的レビュー
対象大人(参加者の多くはもともと歯ぐきの炎症が軽い)
比べたもの歯みがき+フロスなど と 歯みがきだけ
結果フロスを足した群のほうが、歯ぐきの炎症の指数が低い(8件・585人)
系統的レビューの結果歯みがきにフロスを足すと、歯みがきだけより歯ぐきの炎症の指数が下がりました。

出血する部位の割合では、結果が一定しませんでした [1]。

根拠の確かさは低めです。参加者の多くがもともと炎症の軽い人で、研究の確実性が低いと評価されているためです。

道具ごとの結果は次のとおりです。

  • フロス: 炎症の指数が下がりました(8件・585人)[1]
  • 電動の歯間清掃具(口腔洗浄器など): 毎日足すと歯と歯の間の出血が減り、効果はフロスと同じくらいでした(16件・1258人)[2]
  • ウォーターフロス: 手みがきだけやフロスより、出血の指数がわずかに良くなりました(18件)[6]
  • 歯間ブラシ: 既存の系統的レビュー6本をまとめた結果、歯と歯の間の歯垢を落とすのに最も効果的とされました [7]
  • ゴム製の歯間クリーナー: 出血の全体の値は、フロスや歯間ブラシと差がありませんでした。歯ぐきの傷は少なくなりました [8]

よく言われていることは本当?

  • 出血しても歯みがきはやめない研究が足りません。 回数を増やす効果を調べた比較試験はなく、回数が少ない人に歯周炎が多いという関連だけが分かっています [4]
  • フロス・歯間ブラシを足すと出血が減る効きます。 根拠の確かさは低めですが、炎症の指数は歯みがきだけより下がりました [1]
  • ウォーターフロスで出血が減る効きますが、差はわずかです。 手みがきだけやフロスより出血の指数が少し良くなりました [6]
  • 電動歯ブラシのほうが歯ぐきに良い効きますが、差は小さいです。 下の節で説明します [9]
  • ビタミンCをとると出血が減る血中のビタミンCが少ない人では、出血しやすさが少ないという関連があります。 根拠の確かさは低めです。下の節で説明します [3]
  • 硬い歯ブラシで強くこすりすぎるのが原因研究が見つかりませんでした。 歯ブラシの硬さと出血を比べたメタ解析は、今回の検索では確認できていません

ほかの研究では、結果が異なる場合も

電動歯ブラシは手みがきより、1〜3か月で歯ぐきの炎症を減らしました。コクランレビューのRCT44件・3345人で、確実性は中程度でした。歯肉炎の指数で6%ほどの差で、小さい違いです [9]。

一方、企業の研究部門が1つのメーカーの回転・振動型歯ブラシの試験だけを集めた解析では、出血する部位が手みがきより平均8.9か所少なくなりました [10]。企業の試験だけを集めたもので、上のコクランレビューの結果と並べて読む必要があります。方式の比較では、回転・振動型が歯垢と歯ぐきの炎症を減らす効果で最上位でした(RCT19件)[11]。

1つのメーカーの試験だけを集めた解析回転・振動型の歯ブラシと手みがきを比べた、5件の比較。

出血する部位は手みがきより平均8.9か所少なく、企業の試験だけの集計です。

ビタミンCは、血中が少ない人で出血しやすさが少ない

ビタミンCの補給を調べた比較試験15件・おもに健康な1140人のメタ解析です [3]。血中のビタミンCが28μmol/L未満の人では、補った群のほうが出血しやすさが少ない、という関連が見られました(標準化平均差-0.83)。十分ある人(48μmol/L超)では、はっきり減ったとは言えませんでした [3]。ランダム化された試験かどうかは要旨に書かれておらず、根拠の確かさは低めです。自分が足りているかは、血液で測らないと分かりません。

歯肉炎では出血が改善した一方、歯周炎では改善しなかったという系統的レビューもあります [12]。

02注意点

歯間清掃の研究は、おもに歯ぐきの炎症が軽い大人が参加しています [1]。進んだ歯周炎や、出血が続く場合の治療の話ではありません。腫れ、膿、歯のぐらつきがあるときは、道具を足すより先に歯科で確認してください。血が止まりにくい薬を飲んでいる人や持病がある人は、医師・薬剤師に相談してください。

出血が続くときは、歯科で見てもらう

道具を足しても出血が続く場合は、歯周病が進んでいる場合があります。

03まとめ

歯みがきの回数を増やす効果は確かめられておらず、歯と歯の間の掃除を足す効果は確かめられています。
歯ぐきの炎症が軽い大人なら、毎日フロス・歯間ブラシ・口腔洗浄器のどれかを足すのが、研究に近い選び方です。
ビタミンCは血中で少ない人で関連が見られる程度、電動歯ブラシは差が小さいことを頭に置いて、出血が続くなら歯科へ。

04よくある質問

Q血が出るなら、磨くのをやめたほうがいい?

磨くのをやめた場合の影響を調べた比較試験は見つかっていません。回数が少ない人ほど歯周炎が多いという関連は分かっています [[25255820]]。やさしく磨き続け、出血が続くときは歯科へ。

Qウォーターフロスだけで足りますか?

手みがきだけやフロスより、出血の指数がわずかに良くなりました [[39997271]]。電動の歯間清掃具はフロスと同じくらいの効果でした [[36562267]]。使い続けやすいものを選べば十分です。

QビタミンCのサプリを飲めば出血は止まりますか?

血中のビタミンCが少ない人では、補った群のほうが出血しやすさが少ない、という関連が見られました。十分ある人では、はっきり減ったとは言えません。根拠の確かさは低めです [[33517432]]。出血が続くなら歯科で確認してください。

Q電動歯ブラシに替えれば解決しますか?

手みがきより歯ぐきの炎症は減りますが、差は歯肉炎の指数で6%ほどと小さいです [[24934383]]。企業の試験だけを集めた解析は、差が大きく出やすい点に注意してください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(12本)

[1]歯みがきに足す歯間清掃の道具で歯周病とむし歯を防げるか、のコクランのレビュー

発表年
2019年
研究機関
イギリス・コクラン口腔保健グループ
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
585人
結果の向き
良い方向

歯みがきにフロスを足すと、歯みがきだけより歯ぐきの炎症の指数が下がった(8件・585人、確実性は低い)。

[2]水流式・電動の歯間清掃具とフロスを比べたメタ解析

発表年
2023年
研究機関
スウェーデン・マルメ大学
掲載誌
Clinical and experimental dental research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,258人
結果の向き
良い方向

歯肉炎の人で、電動の歯間清掃具を毎日足すと歯と歯の間の出血が減った(16件・1258人)。

[3]出血しやすさとビタミンCの必要量:比較試験のメタ解析

発表年
2021年
研究機関
アメリカ・ワシントン大学
掲載誌
Nutrition reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,140人
結果の向き
良い方向

血中のビタミンCが少ない人では、補った群のほうが出血しやすさが少ない関連が見られた(15件・1140人)。

[4]歯みがきの回数は歯周炎の危険因子か?の系統的レビュー

発表年
2015年
研究機関
ドイツ・ハイデルベルク大学
掲載誌
Community dentistry and oral epidemiology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究14件を統合
結果の向き
良い方向

歯みがきの回数が少ない人は、多い人より歯周炎がある割合が高かった(観察研究14件)。

[5]歯周病のある大人の口腔衛生を良くする行動介入のコクランレビュー

発表年
2026年
研究機関
イギリス・コクラン口腔保健グループ
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
1,422人
結果の向き
差なし

習慣を変える指導で歯ぐきの出血が減るかは、確実性が非常に低く結論が出なかった(25件・1422人)。

[6]一般の人と矯正中の人の歯垢と歯肉炎に対する口腔洗浄器のメタ解析

発表年
2025年
研究機関
サウジアラビア・キング・アブドゥルアズィーズ大学
掲載誌
Healthcare (Basel, Switzerland)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究18件を統合
結果の向き
良い方向

ウォーターフロスは、手みがきだけやフロスより出血の指数がわずかに良かった(18件)。

[7]歯みがきに足す歯間清掃の系統的レビューを集めたメタレビュー

発表年
2015年
研究機関
ドイツ・キール大学
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

既存の系統的レビュー6本をまとめ、歯間ブラシが歯と歯の間の歯垢を落とすのに最も効果的とされた。

[8]ゴム製の歯間クリーナーと口の中の軟らかい組織の系統的レビュー

発表年
2022年
研究機関
オランダ・アムステルダム歯学アカデミックセンター
掲載誌
International journal of dental hygiene
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

ゴム製の歯間クリーナーは、出血の全体の値に差がなく、歯ぐきの傷は少なかった。

[9]電動歯ブラシと手みがきを比べたコクランのレビュー

発表年
2014年
研究機関
マレーシア・マレーシア国際イスラム大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,345人
結果の向き
良い方向

電動歯ブラシは手みがきより1〜3か月で歯ぐきの炎症を減らした(44件・3345人、確実性は中程度)。

[10]回転振動式の電動歯ブラシと手みがきを比べたメタ解析

発表年
2020年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
American journal of dentistry
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究5件を統合
結果の向き
良い方向

回転・振動型は手みがきより、出血する部位が平均8.9か所少なくなった(5件)。

[11]電動歯ブラシの方式別の歯垢・歯肉炎の減らし方:ネットワークメタ解析

発表年
2026年
研究機関
中国・西南医科大学附属口腔医院
掲載誌
Clinical oral investigations
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究19件を統合
結果の向き
良い方向

回転・振動型が歯垢と歯ぐきの炎症を減らす効果で最上位、手みがきは最下位だった(19件)。

[12]ビタミンCと歯周病の関係の系統的レビュー

発表年
2019年
研究機関
日本・兵庫大学
掲載誌
International journal of environmental research and public health
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究14件を統合
結果の向き
結果が割れている

ビタミンCの補給は、歯肉炎の出血を改善したが、歯周炎では改善しなかった(14件)。

ほかに参考にした論文(3本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。