歯間ブラシとフロス、効果が高いのはどっち?

歯間ブラシとフロス、効果が高いのはどっち?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く方法がある

歯間ブラシは、歯ぐきの炎症をフロスより減らします。歯垢では結果が割れています。

根拠

歯みがきに足す道具を比べたコクランのレビュー(大人の比較試験35件・3929人)が中心です [1]。

  • 歯ぐきの炎症: 歯間ブラシの方がフロスより減らす。根拠の確かさは低めです。参加者の多くはもともと炎症が軽く、結果は主に短期間で、試験によって差の大きさにばらつきがあります [1] [2] [3]
  • 歯垢: 歯間ブラシとフロスで研究によって結果が割れている [1]
  • 虫歯: 大人では調べた試験がなく、分からない [1]
  • ウォーターフロスとフロス: 試験によって結果が割れている [4]

この答えの範囲

歯みがきに足して使う大人の話です。参加者の多くは歯ぐきの炎症が軽く、結果は主に短期間です。

じゃあ、どうする?

歯と歯の間にすき間があるなら、歯間ブラシを試す価値があります。歯間ブラシが無理なく通らない狭い所は、フロスで掃除します。この使い分けは研究ではなく歯科の常識です。サイズは歯科で選んでもらうと安心です。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。10 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量15.720研究件数と参加人数
一致度17.925結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度05信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 83.6 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

歯間ブラシとフロスとは

歯間ブラシとフロスは、歯ブラシが届きにくい歯と歯の間を掃除する道具です。歯垢を減らし、歯ぐきの炎症を防ぐとされています。歯間ブラシは小さなブラシをすき間に通して汚れをかき出し、フロスは糸を歯の側面に当ててこすります。水流で洗うウォーターフロスもあります。注意点は、誤った使い方で歯ぐきに傷ができた報告が少数あることです [4]。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、イギリスのマンチェスター大学などの研究チームが2019年に発表したコクランのレビューです [1]。コクランのレビューとは、決めた手順で比較試験を集めて整理する方法です。比較試験35件が集められました。

研究の種類歯みがきに足す道具を比べた比較試験のレビュー
対象大人(3929人)。多くはもともと歯ぐきの炎症が軽い人
比べたもの歯間ブラシ、フロス、ウォーターフロスなど
結果歯ぐきの炎症は歯間ブラシの方が減り、歯垢は結果が一致しない
まとめて分析した結果歯間ブラシとフロスを比べた9件では、歯間ブラシの方が歯ぐきの炎症を減らしました [1]。

根拠の確かさは低めです。歯周ポケットの深さに差はありませんでした。著者は、差が臨床的に大きくない可能性も指摘しています。

歯ぐきの炎症は、歯間ブラシの方が減らします

すき間がやや開いた大人60人の試験では、歯間ブラシを使った6週間の方が、ふつうのフロスの6週間より炎症の指標も歯垢も少なくなりました [2]。22件のメタ解析でも、歯みがきだけと比べた炎症の点数の下がり幅は歯間ブラシが最大(0.23点)、次がウォーターフロス(0.19点)で、フロスは下位でした [5]。ただし364人の試験は、炎症の減り方はフロス2.82%、歯間ブラシ2.60%でほぼ同じでした [3]。

歯垢は、結果が割れている

フロスと比べた研究の多くで、歯間ブラシの方が歯垢の指標は少なくなっています [6] [7]。一方、コクランのレビューは、9件で歯垢の結果が一致しないと評価しました [1]。

歯みがきだけと比べると

  • フロスを足す: 歯ぐきの炎症の指標が下がりました(8件・585人、標準化平均差-0.58。根拠の確かさは低め)。歯垢は15件で結果が一致せず、根拠の確かさは非常に低い [1]。
  • 歯間ブラシを足す: 歯垢が減りました(2件・93人、標準化平均差-1.07。根拠の確かさは低め)[1]。

標準化平均差は、測り方が違う研究をそろえた値で、マイナスは足した方が低いという意味です。

ウォーターフロスは、フロスの代わりになる?

結果が割れています。364人の試験では、炎症の減り方がウォーターフロス29.10%、フロス2.82%でした [3]。105人の試験でも、ウォーターフロスの方が炎症や出血が大きく減りました [8]。一方、16件(1258人)の試験を集めたメタ解析では、水流式や電動の器具とフロスを比べた分で、歯垢と出血は同じくらいでした [4]。新しい2つの試験は4〜6週間の短期間で、特定の製品を使い、364人の試験はそのメーカーの社員が書いています。

虫歯は、大人では分かっていない

大人で歯と歯の間の虫歯を調べた試験は、1件もありませんでした [1]。子ども808人の試験6件を集めたレビューでは、学校で専門家がフロスをすると虫歯のリスクが40%下がりました(相対リスク0.60)。しかし思春期のはじめの子どもが自分でするフロスでは減りませんでした(相対リスク1.01)。偏りの可能性は中〜大と評価されています [9]。

使い分けは、すき間の広さで考える

使い分けは、すき間の広さで考えるのが常識です。広さで比べた研究は少なく、見つかったのはすき間がやや開いた大人の試験 [2] でした。専門家の合意は、傷つけずに通る所は歯間ブラシを第一の選択としています [10]。

よく言われていることは本当?

  • 歯ブラシだけでは歯垢の5〜6割、フロスを足すと9割この数字の出典になる研究は見つかりません。 フロスを足して歯垢が減るかは、結果が一致せず、根拠の確かさも非常に低いと評価されています [1]。
  • 歯間ブラシの方が汚れ(歯垢)が落ちる研究が割れています。 フロスと比べて歯垢の指標が少なかった研究が多い一方 [6]、コクランは9件で結果が一致しないと評価しました [1]。
  • フロスや歯間ブラシで歯ぐきの炎症を防げる炎症の指標は少し下がります。 ただし短期間の研究が中心で、歯周病の進み方や歯を失うことを防ぐかは、ほとんど調べられていません [1]。
  • すき間が広い所は歯間ブラシ、狭い所はフロスと使い分ける研究では確かめられていません。 広さで比べた研究は少なく、専門家の合意と歯科の常識に支えられた使い方です [10]。
  • フロスで歯と歯の間の虫歯を防げる大人では確かめられていません。 大人の試験は1件もなく [1]、子どもでは学校で専門家がフロスをすると減りましたが、自分でするフロスでは減りませんでした [9]。
  • ウォーターフロスはフロスの代わりになる条件によります。 短期間の新しい試験では炎症が大きく減りましたが、メタ解析では歯垢と出血が同じくらいでした [8] [4]。
  • 使い方を誤ると歯ぐきを傷つける試験では歯ぐきの刺激に差はありませんでしたが [1]、誤った使い方で傷ができた報告も少数あります [4]。

02注意点

副作用を調べたコクランのレビューでは、重い副作用はなく、軽い刺激にも差はありませんでした [1]。すき間がやや開いた大人60人の試験でも、6週間使って目立った歯ぐきの傷は記録されませんでした [2]。電動の器具の誤った使い方で、少数の人の歯ぐきに傷ができた報告が1件あります [4]。サイズの選び方を比べた研究は見つかっていません。出血や痛みが続く人、矯正中の人は、歯科医師に相談してください。

サイズと使い方は、歯科で確かめる

無理に押し込まないようにしましょう。

03まとめ

歯ぐきの炎症は、歯間ブラシの方がフロスより減り、歯垢は結果が割れています。
すき間の広さで道具を使い分けるのは、研究ではなく常識の範囲です。
すき間が広い所は歯間ブラシ、通らない狭い所はフロスにして、気になる症状は歯科で相談しましょう。

04よくある質問

Q歯間ブラシとフロスは、両方使った方がいい?

歯間ブラシとフロスを両方使う場合を比べた試験は、この記事で集めた研究にはありません。専門家の合意では、歯間ブラシが通らない狭い所にフロスを使います。

Q歯周病は防げる?

炎症の指標は少し下がりますが、歯周病の進み方や歯を失うことを防ぐかは、ほとんど調べられていません。関連: [歯周病用の歯みがき粉は効く?](/evidence/periodontal-toothpaste)

Q歯みがきそのものは、電動の方がいい?

別の疑問です。[電動歯ブラシは手みがきより歯にいい?](/evidence/electric-toothbrush)にまとめています。

05参照した論文

判定に使った主な論文(10本)

[1]歯みがきに足す歯間清掃の道具で歯周病とむし歯を防げるか、のコクランのレビュー

発表年
2019年
研究機関
イギリス・コクラン口腔保健グループ
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
3,929人
結果の向き
良い方向

大人3929人の比較試験35件をまとめ、歯間ブラシはフロスより歯ぐきの炎症を減らした。根拠の確かさは低め。

[2]すき間がやや開いた人で、フロスと歯間ブラシを比べたクロスオーバー試験

発表年
2022年
研究機関
インド・ウッタランチャル歯科医学研究所
掲載誌
Journal of dental hygiene : JDH
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
60人
結果の向き
良い方向

大人60人で、歯間ブラシの期間は、ふつうのフロスの期間より炎症の指標と歯垢が少なかった。

[3]歯肉炎のある大人で、フロス・歯間ブラシ・水流式フロッサーを6週間比べた試験

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
Compendium of continuing education in dentistry (Jamesburg, N.J. : 1995)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
372人
結果の向き
差なし

大人364人で、炎症の減りはフロス2.82%、歯間ブラシ2.60%、水流式フロッサー29.10%だった。

[4]水流式・電動の歯間清掃具とフロスを比べたメタ解析

発表年
2023年
研究機関
スウェーデン・マルメ大学
掲載誌
Clinical and experimental dental research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,258人
結果の向き
差なし

RCT16件・1258人で、歯と歯の間の歯垢と出血は同じくらいだった。

[5]歯の間の清掃方法が炎症の指標を下げる効果のネットワークメタ解析

発表年
2018年
研究機関
アメリカ・ワシントン大学
掲載誌
Journal of periodontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

22件のRCTで、歯肉炎指数を下げる効果は歯間ブラシが最も大きく0.23点、次がウォーターフロスで0.19点だった。

[6]歯間ブラシをフロスなどと比べた研究の系統的レビュー

発表年
2008年
研究機関
オランダ・アムステルダム歯学アカデミックセンター
掲載誌
International journal of dental hygiene
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究9件を統合
結果の向き
良い方向

フロスと比べた研究の多くで、歯間ブラシの方が歯垢の指標が少なかった。

[7]歯みがきに足す歯間清掃の系統的レビューを集めたメタレビュー

発表年
2015年
研究機関
ドイツ・キール大学
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

系統的レビュー6本をまとめ、歯と歯の間の歯垢には歯間ブラシが最も効果的と結論した。

[8]ウォーターフロスとフロスを4週間比べたランダム化試験

発表年
2023年
研究機関
オランダ・アムステルダム大学
掲載誌
International journal of dental hygiene
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
105人
結果の向き
良い方向

大人105人で、ウォーターフロスはフロスより歯ぐきの出血、歯肉炎の指標、歯垢が大きく減った。

[9]フロスと歯と歯の間の虫歯の関係を調べた系統的レビュー

発表年
2006年
研究機関
アメリカ・ワシントン大学
掲載誌
Journal of dental research
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
808人
結果の向き
結果が割れている

子ども808人の試験6件で、専門家が学校でするフロスは虫歯のリスクが40%下がり、自分でするフロスは減らなかった。

[10]歯肉炎を防ぎ歯周炎を予防する方法についての専門家の合意報告

発表年
2015年
研究機関
イギリス・バーミンガム大学
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

歯間ブラシが傷つけずに通らない健康なすき間以外では、歯間ブラシが第一の選択とされた。

ほかに参考にした論文(14本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。