[1]歯みがきに足す歯間清掃の道具で歯周病とむし歯を防げるか、のコクランのレビュー
- 発表年
- 2019年
- 研究機関
- イギリス・コクラン口腔保健グループ
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
- 対象
- 585人
- 結果の向き
- 良い方向
成人のRCT35件・3929人を集め、フロスを足すと1か月後の歯ぐきの炎症が小さかった(8件・585人)。確かさは低い。

歯みがきに足すと、歯ぐきの炎症が減ります。
歯ぐきの炎症(歯肉炎)の話です。歯垢・虫歯・口臭は研究が弱く、歯を失うかどうかを調べた試験もほとんどありません。
歯ぐきから血が出やすい人は、1日1回、歯みがきに足す価値があります。歯間ブラシが無理なく通るすき間なら歯間ブラシ、狭いところはフロスが、欧州歯周病学会の合意です [2]。出血が続くときや歯がぐらつくときは、歯科で相談を。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 14.2 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 17.9 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 87.1 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 6 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から C に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
フロスは、歯と歯の間に通して汚れをかき出す糸です。歯間ブラシは、そのすき間に差し込む小さなブラシです。歯ブラシが届きにくい部分の汚れを取り、歯ぐきの炎症を防ぐために使われます。虫歯への効果は、あとで述べるとおり研究が足りません。すき間が広い人は歯間ブラシ、狭い人はフロスを使うのが一般的です。
答えの中心は、マンチェスター大学などの研究チームが2019年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で比較試験を集めて整理する、信頼されている系統的レビューです。成人を対象にした試験35件・3929人が集められました。
| 研究の種類 | ランダム化比較試験を集めたコクランレビュー |
|---|---|
| 対象 | 成人(35件・3929人) |
| 比べたもの | 歯みがきにフロスや歯間ブラシを足す場合と、歯みがきだけの場合 |
| 結果 | 1か月後の歯ぐきの炎症は、フロスを足した人のほうが小さかった |
3か月後、6か月後も同じ向きでしたが、根拠の確かさは低いと評価されています [1]。
標準化平均差は、測り方の違う研究を同じ物差しにそろえた差で、マイナスが炎症の小さいほうです。
ここで大事な点があります。コクラン自身が、全体の根拠は確かさが低い〜非常に低いもので、観察された効果の大きさは臨床的に重要でない場合がある、と書いています [1]。試験は短期間で、もともと歯ぐきの炎症が軽い人が多く含まれていました。炎症が減る向きの結果はそろっていますが、「大きく変わる」とまでは言えません。
コクランレビューのあとにも、歯肉炎のある成人の試験が出ています。
続く3本とも、炎症や出血は減り、歯垢は変わりませんでした。フロスは歯垢の量でなく、歯ぐきの状態に差が出る、という見え方です。ただし3本のうち2本は、フロスや洗口液の企業の研究者による試験です。
コクランレビューのうち、両方を直接比べた9件では、歯間ブラシのほうが1か月後と3か月後の歯ぐきの炎症を減らしました。歯周ポケットの深さには差がありませんでした。根拠の確かさは低めです [1]。欧州歯周病学会の合意も、歯間ブラシが無理なく通るところは歯間ブラシを第一選択としています [2]。詳しくは歯間ブラシとフロス、効果が高いのはどっち?で扱っています。
中等度〜重い歯肉炎の成人372人を6週間比べた試験では、歯ぐきの炎症の減り方は、歯みがきだけ-2.10%、フロス追加2.82%、歯間ブラシ追加2.60%でした。ほかより良いと統計的に示されたのは、電動の水流フロッサーだけでした [9]。この試験は水流フロッサーのメーカーの研究者によるものです。
フロス追加と歯間ブラシ追加は、歯みがきだけと統計的な差が示されませんでした。
試験によって結果が違う理由は、要旨からははっきりしません。期間(4週間から12週間)、対象者の炎症の強さ、フロスを見守りのもとで使ったかどうかは、試験ごとに違います。
歯みがきに足す使い方で、コクランレビューは、装置が原因の重い有害事象は報告されていない、としています [1]。使い方が強すぎると歯ぐきを傷つけることがあるため、歯ぐきに沿わせて動かします。血が止まらない、痛みが続く、歯がぐらつく人は、歯科医師や歯科衛生士に相談してください。
出血が1〜2週間続くときは、道具の使い方を歯科で確認しましょう。
フロスや歯間ブラシは、歯ぐきの炎症を減らします。ただし根拠の確かさは低めで、効果の大きさも小さい場合があります。
歯ぐきから血が出る人や、歯と歯の間が気になる人は、歯みがきに足す価値があります。
通るすき間なら歯間ブラシ、狭いところはフロスと、1日1回を目安に試してみましょう。
毎日の使用を調べた試験が多く、週に何回なら効くかを調べた試験はほとんどありません。欧州歯周病学会の合意は、歯肉炎のある人に1日1回の歯間清掃を勧めています [[25639826]]。
コクランレビューの試験は、もともと歯ぐきの炎症が軽い人が多く含まれていました [[30968949]]。ただ、歯ぐきが健康な人が使わない場合に何が起きるかは、研究では確かめられていません。
大人で虫歯を調べた試験はありません。子どもでは、専門家がかけたフロスで虫歯が減った試験がありますが、自分でするフロスでは減りませんでした [[16567548]]。虫歯対策は[フッ素入り歯みがき粉で虫歯は防げる?安全性は?](/evidence/fluoride-toothpaste-cavities)も見てください。
成人のRCT35件・3929人を集め、フロスを足すと1か月後の歯ぐきの炎症が小さかった(8件・585人)。確かさは低い。
歯肉炎のある人に一日一回の歯間清掃を勧め、歯間ブラシが通るところは歯間ブラシを第一選択とする合意。
歯間清掃をする人は歯ぐきの出血を自覚する割合が低かったが、進んだ病気が少ないことは示されなかった。
4〜13歳808人の試験6件。専門家のフロスで虫歯のリスクが40%低かったが、自分でするフロスでは減らなかった。
健康な成人75人を60日間比べ、フロスを足した群のほうが歯ぐきの炎症の減り方が大きかった。
歯肉炎のある成人270人。フロスの群は4週と12週で出血が34.6%・31.4%少なく、歯垢に差はなかった。
歯肉炎のある成人213人。フロスの群は歯肉炎が9.2%、出血が17.5%少なく、歯垢に差はなかった。
成人156人。どちらのフロスでも歯と歯の間の歯肉炎と出血が減り、歯垢には差がなかった。
成人372人。差が示されたのは水流フロッサーだけで、フロス追加は2.82%、歯間ブラシ追加は2.60%の減少だった。
4週間後の歯ぐきの炎症の減り方は、歯みがきだけ2.80%、歯間ブラシ追加11.32%で、統計的な差が示されたのは電動の水流フロッサー(20.87%)と他の群の間だけだった
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。