フロスや歯間ブラシは必要?

フロスや歯間ブラシは必要?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

歯みがきに足すと、歯ぐきの炎症が減ります。

根拠

成人の試験35件を集めたコクランレビューのうち、1か月後の歯ぐきの炎症を調べた8件・585人で、歯みがきにフロスを足した人のほうが炎症が小さくなりました [1]。歯間ブラシはフロスより炎症を減らしました [1]。根拠の確かさは低めです。試験が短い期間で、もともと炎症が軽い人が中心のためです。コクラン自身が、観察された効果の大きさは臨床的に重要でない場合がある、と書いています。

この答えの範囲

歯ぐきの炎症(歯肉炎)の話です。歯垢・虫歯・口臭は研究が弱く、歯を失うかどうかを調べた試験もほとんどありません。

じゃあ、どうする?

歯ぐきから血が出やすい人は、1日1回、歯みがきに足す価値があります。歯間ブラシが無理なく通るすき間なら歯間ブラシ、狭いところはフロスが、欧州歯周病学会の合意です [2]。出血が続くときや歯がぐらつくときは、歯科で相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。9 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量14.220研究件数と参加人数
一致度17.925結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 87.1 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 6 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

フロスと歯間ブラシとは

フロスは、歯と歯の間に通して汚れをかき出す糸です。歯間ブラシは、そのすき間に差し込む小さなブラシです。歯ブラシが届きにくい部分の汚れを取り、歯ぐきの炎症を防ぐために使われます。虫歯への効果は、あとで述べるとおり研究が足りません。すき間が広い人は歯間ブラシ、狭い人はフロスを使うのが一般的です。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、マンチェスター大学などの研究チームが2019年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で比較試験を集めて整理する、信頼されている系統的レビューです。成人を対象にした試験35件・3929人が集められました。

研究の種類ランダム化比較試験を集めたコクランレビュー
対象成人(35件・3929人)
比べたもの歯みがきにフロスや歯間ブラシを足す場合と、歯みがきだけの場合
結果1か月後の歯ぐきの炎症は、フロスを足した人のほうが小さかった
まとめて分析した結果歯みがきにフロスを足すと、1か月後の歯ぐきの炎症は歯みがきだけより小さくなりました(8件・585人、標準化平均差 -0.58)。

3か月後、6か月後も同じ向きでしたが、根拠の確かさは低いと評価されています [1]。

標準化平均差は、測り方の違う研究を同じ物差しにそろえた差で、マイナスが炎症の小さいほうです。

ここで大事な点があります。コクラン自身が、全体の根拠は確かさが低い〜非常に低いもので、観察された効果の大きさは臨床的に重要でない場合がある、と書いています [1]。試験は短期間で、もともと歯ぐきの炎症が軽い人が多く含まれていました。炎症が減る向きの結果はそろっていますが、「大きく変わる」とまでは言えません。

よく言われていることは本当?

  • 歯周病の予防になる歯ぐきの炎症(歯肉炎)には効きます。 ただし歯を支える組織が失われる歯周炎や、歯を失うことを防ぐかを調べた試験はほとんどありません。アメリカの成人の追跡調査でも、歯間清掃をする人は歯ぐきの出血を自覚する割合が低い一方、進んだ病気が少ないことは示されませんでした [3]。
  • 虫歯の予防になる研究が足りません。 専門家が学校のある日に子どもの歯にフロスをかけた試験では歯と歯の間の虫歯のリスクが40%低かった一方、子ども自身がするフロスでは減りませんでした [4]。大人で虫歯を調べた試験は、コクランレビューにも1件もありませんでした [1]。
  • 歯と歯の間の歯垢が取れる研究がそろっていません。 フロスの歯垢への効果は、コクランレビューでは結果が一致しませんでした [1]。歯間ブラシが歯みがきだけより歯垢を減らしたという結果はありますが、こちらも確かさは低いです。「歯ブラシだけでは何割しか落ちない」という具体的な数字の出典になる研究は、見つかりませんでした。
  • 口臭の予防になる研究が足りません。 小さな試験が見つかっているだけで、結果も割れています。12〜21歳の双子を2週間比べた試験では、フロスを足しても口臭の指標の減り方に差はありませんでした。健康な19人の試験では、フロスは臭いの官能評価を改善しませんでしたが、口臭ガスの濃度は下げました。朝の口臭に最も効いたのは舌の清掃でした。口臭全般は口臭に効く対策は?も参考になります。
  • フロスには効果がないほぼウソです。 確かさが低いのは本当ですが、歯ぐきの炎症を減らす向きの結果が大半です。

最近の試験でも、出血は減っています

コクランレビューのあとにも、歯肉炎のある成人の試験が出ています。

  • 75人を60日間比べた試験では、歯みがきだけでも歯と歯の間の炎症は減りましたが、フロスを足した群のほうが減り方が大きくなりました [5]。
  • 270人を12週間比べた試験では、歯みがき+フロスの群は、歯みがきだけの群より歯ぐきの出血が4週で34.6%、12週で31.4%少なくなりました。歯と歯の間の歯垢には差がありませんでした [6]。
  • 213人を12週間比べた試験では、歯肉炎が9.2%、歯ぐきの出血が17.5%少なくなりました。歯垢には差がありませんでした [7]。
  • 156人を12週間比べた試験では、歯科衛生士のフロスでも見守りのもとの自分でのフロスでも、歯と歯の間の歯肉炎と出血が減りました。歯垢には差がありませんでした [8]。

続く3本とも、炎症や出血は減り、歯垢は変わりませんでした。フロスは歯垢の量でなく、歯ぐきの状態に差が出る、という見え方です。ただし3本のうち2本は、フロスや洗口液の企業の研究者による試験です。

歯間ブラシとフロスは、どちらがいい?

コクランレビューのうち、両方を直接比べた9件では、歯間ブラシのほうが1か月後と3か月後の歯ぐきの炎症を減らしました。歯周ポケットの深さには差がありませんでした。根拠の確かさは低めです [1]。欧州歯周病学会の合意も、歯間ブラシが無理なく通るところは歯間ブラシを第一選択としています [2]。詳しくは歯間ブラシとフロス、効果が高いのはどっち?で扱っています。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

中等度〜重い歯肉炎の成人372人を6週間比べた試験では、歯ぐきの炎症の減り方は、歯みがきだけ-2.10%、フロス追加2.82%、歯間ブラシ追加2.60%でした。ほかより良いと統計的に示されたのは、電動の水流フロッサーだけでした [9]。この試験は水流フロッサーのメーカーの研究者によるものです。

差が示されなかった試験歯肉炎のある成人372人(6週間)

フロス追加と歯間ブラシ追加は、歯みがきだけと統計的な差が示されませんでした。

試験によって結果が違う理由は、要旨からははっきりしません。期間(4週間から12週間)、対象者の炎症の強さ、フロスを見守りのもとで使ったかどうかは、試験ごとに違います。

02注意点

歯みがきに足す使い方で、コクランレビューは、装置が原因の重い有害事象は報告されていない、としています [1]。使い方が強すぎると歯ぐきを傷つけることがあるため、歯ぐきに沿わせて動かします。血が止まらない、痛みが続く、歯がぐらつく人は、歯科医師や歯科衛生士に相談してください。

炎症が軽くても、続けて確かめる

出血が1〜2週間続くときは、道具の使い方を歯科で確認しましょう。

03まとめ

フロスや歯間ブラシは、歯ぐきの炎症を減らします。ただし根拠の確かさは低めで、効果の大きさも小さい場合があります。
歯ぐきから血が出る人や、歯と歯の間が気になる人は、歯みがきに足す価値があります。
通るすき間なら歯間ブラシ、狭いところはフロスと、1日1回を目安に試してみましょう。

04よくある質問

Qフロスや歯間ブラシは、毎日使わないと意味がありませんか?

毎日の使用を調べた試験が多く、週に何回なら効くかを調べた試験はほとんどありません。欧州歯周病学会の合意は、歯肉炎のある人に1日1回の歯間清掃を勧めています [[25639826]]。

Q歯ぐきが健康なら、使わなくてもいいですか?

コクランレビューの試験は、もともと歯ぐきの炎症が軽い人が多く含まれていました [[30968949]]。ただ、歯ぐきが健康な人が使わない場合に何が起きるかは、研究では確かめられていません。

Qフロスで歯と歯の間の虫歯は防げますか?

大人で虫歯を調べた試験はありません。子どもでは、専門家がかけたフロスで虫歯が減った試験がありますが、自分でするフロスでは減りませんでした [[16567548]]。虫歯対策は[フッ素入り歯みがき粉で虫歯は防げる?安全性は?](/evidence/fluoride-toothpaste-cavities)も見てください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(10本)

[1]歯みがきに足す歯間清掃の道具で歯周病とむし歯を防げるか、のコクランのレビュー

発表年
2019年
研究機関
イギリス・コクラン口腔保健グループ
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
585人
結果の向き
良い方向

成人のRCT35件・3929人を集め、フロスを足すと1か月後の歯ぐきの炎症が小さかった(8件・585人)。確かさは低い。

[2]歯肉炎を防ぎ歯周炎を予防する方法についての専門家の合意報告

発表年
2015年
研究機関
イギリス・バーミンガム大学
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

歯肉炎のある人に一日一回の歯間清掃を勧め、歯間ブラシが通るところは歯間ブラシを第一選択とする合意。

[3]アメリカの成人で歯間清掃と口の健康を追った調査

発表年
2020年
研究機関
アメリカ・カリフォルニア大学サンフランシスコ校
掲載誌
Journal of dental research
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

歯間清掃をする人は歯ぐきの出血を自覚する割合が低かったが、進んだ病気が少ないことは示されなかった。

[4]フロスと歯と歯の間の虫歯の関係を調べた系統的レビュー

発表年
2006年
研究機関
アメリカ・ワシントン大学
掲載誌
Journal of dental research
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
808人
結果の向き
結果が割れている

4〜13歳808人の試験6件。専門家のフロスで虫歯のリスクが40%低かったが、自分でするフロスでは減らなかった。

[5]歯みがきに毎日のフロスを足す効果を調べたRCT

発表年
2022年
研究機関
ブラジル・サンタマリア連邦大学
掲載誌
Clinical oral investigations
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
75人
結果の向き
良い方向

健康な成人75人を60日間比べ、フロスを足した群のほうが歯ぐきの炎症の減り方が大きかった。

[6]フロスと洗口液の組み合わせを12週間比べたRCT

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
BMC oral health
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
270人
結果の向き
良い方向

歯肉炎のある成人270人。フロスの群は4週と12週で出血が34.6%・31.4%少なく、歯垢に差はなかった。

[7]歯みがき・フロス・うがいの組み合わせを12週間比べた試験

発表年
2022年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
Journal of dental hygiene : JDH
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
213人
結果の向き
良い方向

歯肉炎のある成人213人。フロスの群は歯肉炎が9.2%、出血が17.5%少なく、歯垢に差はなかった。

[8]フロスと洗口液の組み合わせを12週間比べたRCT

発表年
2022年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
Journal of dental hygiene : JDH
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
156人
結果の向き
良い方向

成人156人。どちらのフロスでも歯と歯の間の歯肉炎と出血が減り、歯垢には差がなかった。

[9]歯肉炎のある大人で、フロス・歯間ブラシ・水流式フロッサーを6週間比べた試験

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
Compendium of continuing education in dentistry (Jamesburg, N.J. : 1995)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
372人
結果の向き
差なし

成人372人。差が示されたのは水流フロッサーだけで、フロス追加は2.82%、歯間ブラシ追加は2.60%の減少だった。

A Randomized, Parallel Design Study to Compare the Effects of Two Different Interdental Cleaning Modalities on Gingivitis and Plaque After a 4-Week Period of Home Use.

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・Li Jほかの研究チーム
掲載誌
Compendium of continuing education in dentistry (Jamesburg, N.J. : 1995)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
189人
結果の向き
差なし

4週間後の歯ぐきの炎症の減り方は、歯みがきだけ2.80%、歯間ブラシ追加11.32%で、統計的な差が示されたのは電動の水流フロッサー(20.87%)と他の群の間だけだった

ほかに参考にした論文(10本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。