歯医者の歯石取りは歯周病を防ぐ?

歯医者の歯石取りは歯周病を防ぐ?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え効かない

効きません。ただし歯肉炎の人は、歯みがき指導とセットなら炎症が改善します。

根拠

歯科に定期的に通う、重い歯周病のない大人1087人(RCT2件)で、半年ごとの歯石取りをしても、予定しない場合と歯ぐきの炎症にほとんど差がありませんでした [1]。歯肉炎の人では、歯みがきが不十分なままだと歯石取りは効かず、歯みがき指導と組み合わせたときだけ炎症が改善しました [2]。根拠の確かさは低めです。歯肉炎の人の結果が、結果のばらつきの大きい少数の研究に基づくためです。

この答えの範囲

重い歯周病のない大人の予防の話です。すでに歯周病がある人の、歯ぐきの中の歯石取りは別で、治療として効果が報告されています。

じゃあ、どうする?

歯石取りは、歯周病を予防する主役ではありません。毎日の歯みがきの質を上げるほうが効きます。歯ぐきの腫れや出血があれば、歯みがき指導つきで受けると意味があります。歯周病を防ぐには何が効く?も参考に。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。6 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量12.320研究件数と参加人数
一致度16.925結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度25信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 81.2 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 2 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

歯石取りとは

歯石取りは、歯科医院で専用の器具を使い、歯についた歯石を取り除く処置です。歯石は、歯垢(プラーク)が固まったもので、自分の歯みがきでは取れないとされます。歯ぐきの上を清掃して磨く「スケーリングと研磨」と、歯周病の人に行う歯ぐきの中の歯石取りがあります。この記事では、予防と治療で研究の結果が違う点を分けて見ます。

ここまでは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、ダンディー大学などの研究チームが2018年に発表したコクランのレビューです [1]。コクランのレビューとは、決めた手順で比較試験を集め、結果を整理する方法です。

研究の種類ランダム化比較試験のまとめ (メタ解析)
対象英国の一般歯科に通う、重い歯周病のない大人 (1087人)
比べたもの半年ごと・年に一度の歯石取りと研磨、予定しない場合
結果歯ぐきの炎症、歯周ポケットの深さにほとんど差がない
試験のまとめの結果半年ごとに歯石取りをしても、予定しない場合と歯ぐきの炎症にほとんど差がありませんでした [1]。

歯周ポケットの深さにもほとんど差がなく、歯石の量は少し減りました。

評価は24〜36か月後です。副作用・歯を失うこと・口臭は測られていません。

歯肉炎の人では、歯みがき指導とセットで変わる

2026年のイタリアのフェラーラ大学などの系統的レビューは、歯垢による歯肉炎の大人で比べました [2]。治療から2〜6週間後の炎症を調べた4件(RCT3件を含む)の結果は、次のとおりです。

  • 自分の歯みがきが不十分なまま: 歯石取りの効果はない
  • 歯みがき指導と組み合わせた: 指導だけより炎症が改善

結果にばらつきがあり、根拠の確かさは低めです。歯石取りそのものより、歯みがきの質が変わったことが効いている、と読むのが正確です。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

カナダのダルハウジー大学などによる2025年の迅速レビューは、歯周病がないか軽い大人で歯科に定期的に通っている人について、臨床的な利点は小さい一方、歯を失うことや一部の医療費が減るという報告があったとしました [3]。上のコクランのレビューも含む整理で、歯石取り単独の効果を直接比べた結果ではありません。

歯を失うことや医療費の報告歯周病がないか軽い、歯科に定期的に通う大人(迅速レビュー)

歯ぐきの状態の利点は小さい一方、歯を失うことや一部の医療費が減るという報告がありました。

歯ぐきの中の歯石取りは、治療として効く

歯周炎と診断された人では話が変わります。9件のRCTをまとめた2020年のレビューでは、歯ぐきの中の歯石取りのあと6〜8か月で、歯周ポケットが平均1.4mm浅くなり、深いポケットの74%が閉じました [4]。ただし、これは治療前後の比較が中心です。歯ぐきの上だけの清掃と直接比べたRCTは1件だけでした。

その1件は、心臓病のある歯周炎の人303人の試験です。歯ぐきの中の歯石取りを受けた151人は、通常の歯科治療の152人より6か月後のポケットが浅くなりました。歯ぐきの付着や出血には差がありませんでした [5]。歯周病のある糖尿病の人では、治療から3〜4か月後の血糖値の指標(HbA1c)が0.43%低かったという、RCT30件・2443人のまとめもあります [6]。

よく言われていることは本当?

  • 定期的な歯石取りで歯周病を予防できる予防の効果は見られませんでした。 重い歯周病のない大人では、半年ごと・年に一度の歯石取りで歯肉炎に差がありませんでした [1]
  • 歯石を取ると歯ぐきの腫れが引き、出血が治まる条件つきです。 歯肉炎の人で歯みがき指導と組み合わせたときだけ改善しました。根拠の確かさは低めです [2]
  • 歯ぐきの中の歯石取りで歯周病の進行を止められる治療としては本当です。 歯周ポケットが浅くなりました。ただし何もしない場合との直接比較は少ない状況です [4]
  • 3か月に1度は必要研究が見つかりません。 3か月ごとと他の間隔を比べた研究は、今回見つかりませんでした
  • 歯石取りで口臭が減る・歯ぐきが下がる研究が見つかりません。 上のレビューの試験は口臭も副作用も測っていません [1]

02注意点

予防の結果は、英国の一般歯科に通う、重い歯周病のない大人が対象です。歯ぐきの腫れや出血が続く人、歯がぐらつく人は、予防ではなく治療が必要な状態の場合があります。歯科医師の診断を受けてください。糖尿病など持病のある人も、治療の進め方を主治医と歯科医師に相談してください。

「予防」と「治療」を分けて考える

歯周病がない人の定期的な歯石取りの研究は、副作用や口臭を測っていません。

03まとめ

歯周病のない人の定期的な歯石取りは、歯肉炎を減らしませんでした。
歯肉炎の人は、歯みがき指導とセットなら炎症が改善します。
歯周病の治療が必要な人は、歯ぐきの中の歯石取りを歯科医師と相談して受けましょう。

04よくある質問

Q歯石取りは受けなくてもいいですか?

歯周病のない人の予防としては、受けても歯肉炎に差が出ませんでした。ただし歯みがきの指導を受けられる機会としては意味があります。歯科医師の診断のうえで決めてください。

Q歯ぐきの中の歯石取りは効きますか?

歯周炎の人では、歯周ポケットが浅くなることがRCTのまとめで示されています。ただし根拠は治療前後の比較が中心で、何もしない場合と直接比べたRCTは1件だけです。

Qどのくらいの間隔で受けるのがいいですか?

研究では確かめられていません。半年ごとと年に一度を比べた試験では、歯肉炎に差がありませんでした。

Q歯石取りで歯が削れますか?

研究では確かめられていません。今回の試験は副作用を測っていません。気になる症状は歯科医師に伝えてください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(6本)

[1]歯ぐきの健康のための定期的な歯石取りと研磨

発表年
2018年
研究機関
イギリス・ダンディー大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,087人
結果の向き
差なし

重い歯周病のない大人1087人で、半年ごとの歯石取りでも歯ぐきの炎症にほとんど差がなかった。

[2]歯肉炎の人の歯科でのクリーニングと歯みがき指導のレビュー

発表年
2026年
研究機関
イタリア・フェラーラ大学
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究4件を統合
結果の向き
結果が割れている

歯みがきが不十分なままだと効果がなく、歯みがき指導と組み合わせると炎症が改善した。

[3]大人の歯石取りと研磨の利点を整理した迅速レビュー

発表年
2025年
研究機関
カナダ・ダルハウジー大学
掲載誌
JDR clinical and translational research
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

歯周病がないか軽い大人では、歯を失うことや一部の医療費が減るという報告があった。

[4]歯周炎の治療としての歯ぐきの中の歯石取りの系統的レビュー

発表年
2020年
研究機関
イギリス・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究9件を統合
結果の向き
良い方向

歯ぐきの中の歯石取りのあと6〜8か月で、歯周ポケットが平均1.4mm浅くなった。

[5]心臓病のある歯周炎の人を対象にした歯周治療の試験

発表年
2009年
研究機関
アメリカ・ノースカロライナ大学チャペルヒル校
掲載誌
Journal of periodontology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
303人
結果の向き
結果が割れている

通常の歯科治療より6か月後の歯周ポケットが浅くなったが、付着や出血には差がなかった。

[6]糖尿病の人の歯周炎の治療と血糖コントロールのコクランのレビュー

発表年
2022年
研究機関
イギリス・エディンバラ大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
2,443人
結果の向き
良い方向

歯周病のある糖尿病の人で、治療から3〜4か月後のHbA1cが0.43%低かった。

ほかに参考にした論文(2本)

判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。