歯周病用の歯みがき粉は効く?

歯周病用の歯みがき粉は効く?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

歯ぐきの炎症・出血には効きます。フッ化スズ入りで出血部位は約51%減ります。歯周炎の進行を防ぐ根拠は、まだありません。

根拠

歯肉炎(歯ぐきの炎症)のある成人の比較試験72件をまとめた解析で、殺菌成分を歯みがきに加えると、3か月後の歯ぐきの炎症が減りました。歯みがき粉と洗口液の両方を含む解析です [1]。フッ化スズ入りの歯みがき粉は、普通のフッ素歯みがき粉との比較で、出血部位を平均16.3か所、約51%減らしています(RCT18件・2,890人)[2]。一方、歯周炎(歯を支える組織が失われる病気)の進行を防げるかは、研究の結果が割れています。この点の根拠の確かさは低めです。研究ごとの結果がそろっていないためです。36か月の研究では差がなく [3]、5年の試験では組織を失った部位が少なく [4]、2年の試験では差がありませんでした [5]。

この答えの範囲

歯ぐきの炎症や出血(歯肉炎)の話です。進んだ歯周炎が治る、という研究もありません。

じゃあ、どうする?

歯ぐきの腫れや出血が気になる段階なら、殺菌成分入りの歯みがき粉を試す価値があります。研究で確かめられているのは、成分表示に「フッ化第一スズ」(フッ化スズ)と書かれたものです。毎日の歯みがきに1日2回使うのが、研究の条件に近い使い方です [6]。出血が続く、歯がぐらつくときは歯科で相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。高い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。11 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 93 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量18.720研究件数と参加人数
一致度19.725結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 93.4 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 93 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 4 本・RCT のメタ解析 4 本・観察研究 1 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

歯周病用の歯みがき粉とは

歯周病用の歯みがき粉は、歯ぐきの炎症や出血を防ぐことをうたう、主に医薬部外品の歯みがき粉です。殺菌成分や抗炎症成分が配合され、日本ではCPCやIPMP(イソプロピルメチルフェノール)、トラネキサム酸などがよく使われています。研究で多く調べられているのは、フッ化スズとトリクロサンです。注意点は、進んだ歯周炎は歯みがき粉では治せず、歯科での処置が中心になることです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、スペインのマドリード・コンプルテンセ大学などの研究チームが2026年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、似た条件の試験の結果を集めて、まとめて計算し直す方法です。歯肉炎のある成人の比較試験72件が集められました。

研究の種類歯肉炎の成人を対象にした比較試験(RCT)のメタ解析
対象歯肉炎のある成人(RCT72件)
比べたもの殺菌成分を加えた歯みがき(歯みがき粉と洗口液)と、プラセボや普通の製品
結果3か月後の歯ぐきの炎症が、プラセボや普通の製品より減った
まとめて分析した結果フッ化スズ入りの歯みがき粉は、普通のフッ素歯みがき粉との比較で、歯ぐきの出血部位を平均16.3か所、約51%減らしました [2]。

RCT18件・2,890人をまとめた2019年の解析で、企業の研究部門による解析です。

72件の解析で、3か月後の確かさが「中程度」と評価されたのはフッ化スズだけです。クロルヘキシジン、精油、CPC(セチルピリジニウム塩化物)は、3か月後の確かさが低い〜非常に低いと評価されています [1]。

よく言われていることは本当?

研究があるのは、フッ化スズとトリクロサンの入った歯みがき粉だけです。日本の歯周病用に多いCPC、IPMP、トラネキサム酸は、歯みがき粉としての研究が見つかっていません。

  • 殺菌成分が歯ぐきの腫れ・出血を防ぐ本当です。 フッ化スズ入りで出血部位が約51%減り [2]、トリクロサン入りでも炎症の指数が22%下がりました [3]。
  • 歯垢を分解・除去し、付きにくくするトリクロサン入りで歯垢が22%減りました [3]。 デキストラナーゼやポリリン酸ナトリウムの歯みがき粉の研究は、見つかっていません。
  • 歯周病の予防・進行を防ぐ防ぐ効果は確認されていません。 根拠の確かさは低めで、下の節のとおり研究の結果が割れています。
  • 口臭を防ぐ効きます。 フッ化スズ入りは4件・100人の解析で、口臭の原因ガスが7.7〜24.5%多く減りました [7]。ただし根拠の確かさは低めです。数時間から3週間の短い研究ばかりで、コクランのレビューでも確実性は非常に低いと評価されています [8]。
  • CPC・IPMPなら効く歯みがき粉としての研究が見つかっていません。 CPCは洗口液を含む72件の解析で、確かさが低い〜非常に低いと評価されました [1]。
  • 抗炎症成分が炎症や出血を抑えるトラネキサム酸やグリチルリチン酸を歯みがき粉に入れた研究は見つかっておらず、効くかどうかは分かりません。
  • 歯ぐきを引き締める・修復するビタミンEなどを歯みがき粉に入れた研究も見つかっていません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

別の解析では、歯肉炎の指数のひとつ(GI)は小さく改善しましたが、もうひとつの指数(MGI)では差がはっきりしませんでした [9]。フッ化スズが働きにくい配合の試作品は、普通の歯みがき粉と差がありませんでした [10]。

差がはっきりしなかった指標フッ化スズ入りと普通のフッ素歯みがき粉を比べたRCT6件を統合

GIは小さく改善、MGIは差がはっきりしませんでした。

歯周炎の進行は、結果が割れています

歯周炎(歯を支える組織が失われる病気)を防げるかは、研究の向きがそろっていません。根拠の確かさは低めです。結果のばらつきが大きいためです。

  • トリクロサン入りを36か月使った研究(1件・480人)では、歯周炎になるリスクに差がなく、根拠の質は低めでした [3]
  • 心血管疾患の患者438人を5年追ったRCTでは、トリクロサン群で歯を支える組織を失った部位が、プラセボより平均21%少なくなりました [4]
  • 歯周炎の治療後の80人を2年追ったRCTでは、フッ化スズとアミンフッ化物の歯みがき粉と洗口液でも、歯周ポケットの深さや支える組織の量に差がありませんでした [5]

02注意点

研究の多くは、歯肉炎のある成人が、毎日の歯みがきに数週間から数か月使った条件です。たとえば3週間の試験では、朝と夜に1分ずつ歯みがきをしてもらっています [11]。フッ化スズ入りを1日2回、3か月使うと出血部位は普通のフッ素歯みがき粉より51.3%少なくなりましたが、朝だけ使った場合は32.5%少なく、減り方は小さくなりました [6]。効果は出血や炎症の指標で、歯を失うかどうかを調べた研究ではありません。72件の解析では、歯や口の中の軟部組織に出る局所の副作用が、研究によって0〜13.1%ありました [1]。

歯ぐきの出血や腫れが続く人、歯がぐらつく人は、歯科の医師に診てもらってください。持病や服薬がある人も、医師か薬剤師に相談すると安心です。

歯みがき粉は、丁寧な歯みがきの上乗せ

進んだ歯周炎の治療は、歯科での処置が中心になります。

03まとめ

殺菌成分入りの歯みがき粉は、歯ぐきの出血や炎症を減らしていました。
研究があるのはフッ化スズとトリクロサンで、歯周炎の進行は結果が割れています。
気になる症状が続くなら、歯科の受診を優先しましょう。

04よくある質問

Q医薬部外品と書いてあれば、歯周炎にも効きますか?

研究で確かめられたのは歯肉炎への効果です。歯周炎の進行は、3本の研究で結果が割れていて、防ぐ効果は確認されていません。根拠の確かさは低めです。研究ごとの結果がそろっていないためです。

Qどのくらい使えば出血は減りますか?

3週間の試験で出血部位が平均8.2か所少なくなり、3か月後の解析でも炎症が減っています。フッ化スズ入りでは、出血を減らす効果が1か月で現れ、3か月から6か月まで続いたという解析もあります [[37919970]]。個人差があるので、目安として考えてください。

Q歯みがき粉だけで歯周病は治りますか?

歯みがき粉だけで進んだ歯周炎が治るという研究はありません。出血が続くときは、歯科で診てもらってください。歯ぐきの炎症は、歯間ブラシがフロスより減らすという結果があります。根拠の確かさは低めです([歯間ブラシとフロス、効果が高いのはどっち?](/evidence/interdental-brush-vs-floss))。

05参照した論文

判定に使った主な論文(14本)

[1]歯肉炎の成人に殺菌成分を加えた歯みがきの効果をまとめた解析

発表年
2026年
研究機関
スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究72件を統合
結果の向き
良い方向

歯肉炎の成人のRCT72件を解析。3か月後の歯ぐきの炎症が、プラセボや普通の製品より減った。

[2]フッ化スズ入り歯みがき粉と歯ぐきの出血のメタ解析

発表年
2019年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,890人
結果の向き
良い方向

RCT18件・2,890人で、出血部位が普通のフッ素歯みがき粉より平均16.3か所、51%少なかった。

[3]トリクロサン入り歯みがき粉の効果を調べたコクランのレビュー

発表年
2013年
研究機関
イギリス・マンチェスター大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,743人
結果の向き
良い方向

20件・2,743人で、歯ぐきの炎症の指数が0.27点(22%)低かった。歯周炎では差がなかった。

[4]トリクロサン入り歯みがき粉を5年使った心血管疾患患者の試験

発表年
2017年
研究機関
オーストラリア・クイーンズランド大学
掲載誌
Journal of periodontal research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
438人
結果の向き
良い方向

心血管疾患の患者438人で、歯の間の歯ぐきの組織を失った部位がプラセボより平均21%少なかった。

[5]歯周炎の治療後にフッ化スズ製品を2年使った試験

発表年
2004年
研究機関
オランダ・アムステルダム歯学アカデミックセンター(ACTA)
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
80人
結果の向き
差なし

患者80人で、歯周ポケットの深さや支える組織の量は、フッ化ナトリウム製品と差がなかった。

[6]フッ化スズ入り歯みがき粉を1日2回3か月使った歯肉炎の試験

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
JDR clinical and translational research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

歯肉炎の成人で、1日2回3か月使うと出血部位が51.3%少なかった。朝だけの使用では32.5%少なかった。

[7]フッ化スズ入り歯みがき粉と口臭の原因ガスを比べた解析

発表年
2010年
研究機関
中国・上海交通大学
掲載誌
American journal of dentistry
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
100人
結果の向き
良い方向

口臭のある100人の4件の試験で、フッ化スズ入りは口臭の原因ガスを7.7%から24.5%多く減らした。

[8]口臭を管理する方法のコクランレビュー

発表年
2019年
研究機関
マレーシア・マニパル高等教育アカデミー
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
81人
結果の向き
良い方向

トリクロサン入りは普通の歯みがき粉より、歯科医がかいだ口臭の点数が3.48点低かった(1件・81人)。根拠の確実性は非常に低い。

[9]フッ化スズ入り歯みがき粉の歯肉炎への効果のレビュー

発表年
2020年
研究機関
カナダ・アルバータ大学
掲載誌
International dental journal
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究6件を統合
結果の向き
結果が割れている

6件の統合で、歯肉炎の指数GIは小さく改善したが、MGIでは差がはっきりしなかった。

[10]フッ化スズ歯みがき粉の配合を比べた歯肉炎の試験

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・企業の研究部門
掲載誌
American journal of dentistry
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
120人
結果の向き
結果が割れている

120人の試験で、スズが働きにくい配合の試作品は、普通のフッ素歯みがき粉と差がなかった。

[11]フッ化スズ歯みがき粉を3週間使った歯肉炎の試験

発表年
2021年
研究機関
イギリス・企業の研究部門
掲載誌
BMC oral health
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

軽度から中等度の歯肉炎の成人で、出血部位が普通の歯みがき粉より平均8.2か所(29.3%)少なかった。

フッ化スズ入り歯みがき粉の6か月間の歯肉炎への効果のレビュー

発表年
2019年
研究機関
スウェーデン・カロリンスカ研究所
掲載誌
Heliyon
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究21件を統合
結果の向き
良い方向

6か月間の歯肉炎の研究をまとめた解析で、フッ化スズ入りはほかの歯みがき粉より結果がよかったが、研究ごとのばらつきが大きかった。

フッ化スズ入り歯みがき粉の歯肉炎への効果を比べたメタ解析

発表年
2006年
研究機関
オランダ・アムステルダム歯学アカデミックセンター(ACTA)
掲載誌
Journal of clinical periodontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究15件を統合
結果の向き
良い方向

15件の論文をまとめた解析で、歯肉炎の指数GIが普通の歯みがき粉より平均0.15低かった。研究ごとのばらつきが大きかった。

歯ぐきの出血がある成人にスズ入りフッ素歯みがき粉を2週間使った試験

発表年
2021年
研究機関
中国・陝西省人民医院
掲載誌
American journal of dentistry
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
100人
結果の向き
良い方向

歯ぐきの出血がある成人で、2週間使うと出血部位がフッ化ナトリウム歯みがき粉より54.81%少なかった。

ほかに参考にした論文(25本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。