EMS(電気刺激)で筋肉はつく?

EMS(電気刺激)で筋肉はつく?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え良い関連がある

全身EMSは、筋肉量・筋力と関連しています。腹筋ベルトなど部分的なEMSは、引き締めを確認できていません。

根拠

全身EMSの試験をまとめたメタ解析(26件・1183人)で、EMSをした人は対照より筋肉量が多く(標準化平均差0.36)、筋力も高い結果でした(0.54)[1]。ただし集められたのは対照群のある試験で、ランダム化に限らないため、EMSが原因とは言えません。根拠の確かさは低めです。ランダムに分けていない試験を含み、対象者の年齢も期間もさまざまな試験の寄せ集めのためです。

この答えの範囲

専用スーツ型の全身EMSの話です。

じゃあ、どうする?

筋肉量や筋力が目的なら、全身EMSを試す価値はあります。ただし研究は決まった期間つづけた全身EMSの結果で、日常動作の改善までは確認されていません [2]。腹筋ベルトでの引き締めは期待しすぎないでください。持病や植込み型の機器がある人は、先に医師に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。12 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン2440いちばん信頼できる研究の種類
研究の量17.320研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 81.3 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、観察研究 1 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

EMSとは

EMS(電気刺激)は、皮膚に当てた電極から電気を流し、筋肉を縮ませる方法です。筋力トレーニングの補助やリハビリに使われ、体を引き締める効果があるとされています。専用スーツで全身を刺激する「全身EMS」と、腹筋ベルトやパッドのように体の一部だけに使う「部分的なEMS」があり、研究が多いのは全身EMSです。注意点は、心臓の持病や植込み型の機器がある人、妊娠中の人は、使う前に医師への確認が必要なことです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、スペインのエストレマドゥーラ大学などの研究チームが2023年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、複数の研究の結果をまとめて、全体としてどのような違いがあるかを調べる方法です。全身EMSの試験26件・1183人が集められました。

研究の種類全身EMSの試験をまとめたメタ解析対照群のある試験を集めたもの(ランダム化に限らない)
対象平均20.4〜77.4歳の成人。運動習慣のある人とない人を含む
比べたもの全身EMSをした群 / 対照群
結果筋肉量が多い(標準化平均差0.36)
まとめて分析した結果全身EMSをした人は、対照より筋肉量が多い結果でした [1]。

差は小さめで、介入期間は4〜54週間とばらつきがありました。

標準化平均差とは、研究ごとに単位が違う結果を同じ物差しにそろえた値で、0に近いほど差が小さいことを表します。筋力も対照より高く(標準化平均差0.54、中程度の差)、体脂肪は少ない結果でした [1]。ただし、ランダムに群を分けた試験に限られていません。もともと違う人たちを比べた差が混ざる可能性があるため、「EMSが原因で増えた」とまでは言えません。根拠の確かさは低めです。

よく言われていることは本当?

  • お腹に巻く・貼るだけで腹筋が割れる、引き締まる研究では確かめられていません。 部分的なEMSの試験では、お腹まわりが太めの成人60人で腹囲が平均5.2cm減り、偽の刺激の群の2.9cmより大きく減った試験がある一方 [3]、体重・体脂肪・見た目に差がなかった試験(27人)[4]や、腹囲の減りが有意ではなかった試験(26人)もありました [5]。
  • 運動しなくても筋肉がつく根拠は弱いです。 メタ解析の対象は運動習慣のある人とない人を含み [1]、EMSだけの効果と運動との組み合わせの効果を分けた結果は確認できていません。
  • きつい筋トレをしなくても筋力アップできる筋力は高まりますが、根拠は弱めです。 健康な成人10件のレビューでは、全件で筋力が向上した一方、筋力に関わる日常動作の指標は改善していませんでした [2]。
  • 脂肪が燃えて痩せる結果がそろっていません。 26件のメタ解析では体脂肪が少し少ない結果(標準化平均差-0.38)でしたが [1]、別のメタ解析(16件・897人)では有意な差がありませんでした [6]。
  • 筋肉が増えて基礎代謝が上がる上がったとする結果は確認できていません。 運動経験のある閉経後の女性30人が14週間つづけた試験で、普段の運動にEMSを加えた群と加えなかった群の安静時の代謝に、有意な差はありませんでした [7]。強めの全身EMSの1回直後に約25%上がった研究(16人)もありますが、つづけたときの変化ではありません [8]。筋トレそのものの話は、筋トレで代謝は上がる?にまとめています。
  • 腰痛がやわらぐ慢性の腰痛では、何もしない場合よりは痛みが減りました。 ただし普通の運動より優れてはおらず、根拠は限られています(EMSの研究6件のメタ解析)[9]。背中を鍛える運動と12週間比べた試験でも、どちらも痛みが減り、差はありませんでした [10]。
  • 高齢者の筋力低下(フレイル・サルコペニア)を防ぐ高齢者だけを分けた結果は確認できていません。 高齢者の筋トレ・振動・EMSを比べたメタ解析では、EMSの効果は結論が出ていないとされました [11]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

ドイツのエルランゲン・ニュルンベルク大学の2021年のメタ解析(16件・897人)では、筋肉量の差は標準化平均差1.23と大きく出ています [6]。ただし対象の試験が重なっているとみられるため、別々の裏づけとしては数えません。運動しながらEMSを重ねる方法のレビュー(24件)では、筋肉量は増えた研究2件、差がなかった研究2件に分かれています [12]。

02注意点

研究の対象は、平均20.4〜77.4歳の成人で、期間は4〜54週間でした [1]。結果は、専用スーツ型の全身EMSを一定期間つづけた場合のものです。たとえば慢性の腰痛がある40〜70歳の試験では、全身EMSを週1回20分、12週間つづけました [10]。副作用は、この研究データでは確かめられていません。体に電気を流すため、心臓の持病や植込み型の機器がある人、妊娠中の人、持病や服薬のある人は、使う前に医師に確認してください。

全身EMSの結果を、手軽な機器に当てはめない

研究の対象はスーツ型の全身EMSで、体の一部だけに使う場合は別の話です。

03まとめ

全身EMSは筋肉量や筋力と関連していますが、根拠の確かさは低めです。
腹筋ベルトで引き締まる、基礎代謝が上がる、という話は、研究では支持されていません。
全身EMSを試すなら、持病や植込み型の機器がないか医師に確認してから始めましょう。

04よくある質問

QEMSだけで筋肉は大きくなりますか?

全身EMSをした人の筋肉量が対照より多い結果はありますが、ランダム化に限らない試験のまとめで、根拠の確かさは低めです。EMSだけの効果を分けた結果は、この記事の研究では確認していません。

Q腹筋ベルトでお腹は引き締まりますか?

部分的なEMSの試験3件では、結果が割れていました。お腹が引き締まるとは言えません。

Q週に何回、どのくらいつづけた研究ですか?

メタ解析の介入期間は4〜54週間で、回数ごとの違いは確認できていません [[36827042]]。慢性の腰痛がある人の試験では全身EMSを週1回20分、12週間 [[31687394]]、腹筋ベルトの試験では週3回 [[11991766]] や週5回・12週間 [[31065133]] でした。

Q普通の筋トレの代わりになりますか?

確かめられていません。ある程度運動している男性20人で全身EMSと普通の筋トレを6週間比べた試験では、体脂肪などの体組成に差はありませんでした [[36159315]]。小さな試験なので、どちらが優れるとは言えません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(12本)

[1]全身EMSが体組成と筋力に与える影響のメタ解析

発表年
2023年
研究機関
スペイン・エストレマドゥーラ大学
掲載誌
Medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,183人
結果の向き
良い方向

全身EMSの26件・1183人で、筋肉量と筋力が対照より高かった。

[2]健康な成人の電気刺激と筋力向上の系統的レビュー

発表年
2023年
研究機関
シンガポール・南洋理工大学
掲載誌
Journal of strength and conditioning research
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
174人
結果の向き
結果が割れている

10件・174人で全件が筋力向上を報告。日常動作の指標は改善していなかった。

[3]お腹まわりが太めの成人でのEMSと腹囲の試験

発表年
2018年
研究機関
韓国・釜山大学校
掲載誌
JNMA; journal of the Nepal Medical Association
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
60人
結果の向き
良い方向

60人で、12週間のEMSの腹囲の減りは、偽の刺激の群より大きかった。

[4]EMSが体組成・筋力・見た目に与える影響の試験

発表年
2002年
研究機関
アメリカ・ウィスコンシン大学ラクロス校
掲載誌
Journal of strength and conditioning research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
27人
結果の向き
差なし

27人で、体重・体脂肪・周囲径・筋力・見た目に偽の刺激との有意な差はなかった。

[5]お腹と太ももの筋力強化への電気刺激の試験

発表年
2022年
研究機関
アメリカ・スキンケア・フィジシャンズ皮膚科クリニック
掲載誌
Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.]
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
26人
結果の向き
差なし

26人の小さな試験で、腹囲は平均で減ったが有意な差ではなかった。

[6]運動習慣のない成人での全身EMSの効果のメタ解析

発表年
2021年
研究機関
ドイツ・エルランゲン・ニュルンベルク大学
掲載誌
Frontiers in physiology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
897人
結果の向き
良い方向

16件・897人で筋肉量の差は大きく、体脂肪に有意な差はなかった。

[7]閉経後の女性での全身EMSと安静時代謝の試験

発表年
2010年
研究機関
ドイツ・エルランゲン・ニュルンベルク大学
掲載誌
Journal of strength and conditioning research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
30人
結果の向き
差なし

30人で、14週間のEMSの追加による安静時代謝の群の差は有意ではなかった。

[8]強めの全身EMS1回のエネルギー消費への影響

発表年
2018年
研究機関
ドイツ・エルランゲン・ニュルンベルク大学
掲載誌
Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
16人
結果の向き
良い方向

16人で、1回のあと安静時の代謝が約25%上がった。

[9]慢性腰痛へのEMS・TENSなど電気療法のメタ解析

発表年
2024年
研究機関
カナダ・コンコルディア大学
掲載誌
Frontiers in pain research (Lausanne, Switzerland)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究6件を統合
結果の向き
良い方向

EMSは何もしない対照よりは痛みを減らしたが、運動などより優れてはいなかった。

[10]全身EMSと背中の運動を比べた慢性腰痛の試験

発表年
2019年
研究機関
ドイツ・エルランゲン・ニュルンベルク大学
掲載誌
BioMed research international
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

全身EMSと普通の運動を12週間比べ、どちらも痛みが減り差はなかった。

[11]高齢者の筋トレ・EMS・全身振動を比べたメタ解析

発表年
2020年
研究機関
スロベニア・プリモルスカ大学
掲載誌
Journal of clinical medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

高齢者では、EMSの効果はまだ結論が出ていないとされた。

[12]運動にEMSを重ねて筋力と筋肉量を高める方法のレビュー

発表年
2023年
研究機関
イタリア・ローマ・フォロ・イタリコ大学
掲載誌
European journal of sport science
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究24件を統合
結果の向き
良い方向

24件のレビューで筋力は多くが高まり、筋肉量は2件が増え2件は差がなかった。

ほかに参考にした論文(4本)

判定「良い関連がある」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。