レチノールはニキビ跡に効く?

レチノールはニキビ跡に効く?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

効きます。凹んだニキビ跡の数が減ります。

根拠

処方薬のレチノイド(トリファロテン)を塗った121人の試験で、24週後の凹んだ跡は平均5.9個減り、基剤の側は2.7個でした [1]。アダパレン配合薬の試験でも、跡は基剤の側より増えにくくなりました [2]。色素沈着も、タザロテンやトレチノインで基剤より薄くなりました [3] [4]。根拠の確かさは低めです。市販のレチノールだけを調べた比較試験がなく、処方薬の研究が中心のためです。

この答えの範囲

根拠は処方薬のレチノイドとレチナール入りクリームの研究です。

じゃあ、どうする?

凹みや色素沈着が気になるなら、研究の条件に近いのは皮膚科で処方薬のレチノイドを相談する方法です。市販のレチノールを使うなら、夜に少量から始め、日焼け止めを併せて使い、刺激の出方を見ながら続けるのが一般に勧められています。深い凹みは、レーザーなど別の治療も皮膚科で相談できます。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン3640いちばん信頼できる研究の種類
研究の量11.820研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度05信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 82.8 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 5 本。 この上限により、強度を A から C に下げました。 根拠の研究が、この疑問の対象とは違う人たちのものだけなので、強度は B を上限にしています。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

レチノールとは

レチノールは、ビタミンAの仲間で、化粧品に使われる成分です。肌のターンオーバーを助けるとされ、シワやニキビの悩みに使われます。同じ仲間に、処方薬のアダパレン・トリファロテン・トレチノイン・タザロテンと、化粧品成分のレチナールがあり、まとめて「レチノイド」と呼びます。刺激で赤みや皮むけが出やすいのが注意点です。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

凹んだニキビ跡(クレーター)

答えの中心は、アメリカのダームドックス皮膚科センターなどの研究チームが2023年に発表したランダム化比較試験です [1]。ランダム化比較試験とは、くじ引きで薬の側と基剤の側に分けて比べる方法です。

研究の種類顔の左右で比べたランダム化比較試験
対象17〜34歳の中等度〜重度のニキビとニキビ跡がある121人
比べたもの処方薬のレチノイド(トリファロテン)と、有効成分の入っていない基剤
結果24週(約6か月)後、凹んだ跡の数はトリファロテンの側で平均5.9個、基剤の側で2.7個減った
試験の結果凹んだ跡の数は、トリファロテンを塗った側のほうが多く減りました [1]。

処方薬のレチノイドの試験で、市販のレチノール化粧品そのものではありません。

アダパレンと過酸化ベンゾイルを混ぜた処方薬でも、同じ向きの結果が出ています。67人の試験では、24週後に凹んだ跡の数が配合ジェルの側で15.5%減り、基剤の側では14.4%増えました [2]。31人の試験では、6か月後の跡の数が配合ジェルの側で平均11.58個、基剤の側で13.55個でした [5]。韓国の49人の試験でも、24週後の跡の数は開始時に比べて配合ジェル群で27.3%、基剤群で96.5%でした [6]。ただし、どれも過酸化ベンゾイルが入った薬です。アダパレンだけの効果とは分けられません。

化粧品成分のレチナールでは、ニキビの治療歴がある145人が、レチナール0.1%・グリコール酸6%のクリームか基剤を毎晩3か月塗りました。きちんと塗った人では、跡の全体スコアが基剤より良くなり、主に赤みと色素沈着の改善によるものでした [7]。グリコール酸との配合で、凹みの改善とは言い切れません。

茶色い色素沈着

肌の色が濃い人のニキビ跡の色素沈着では、タザロテン0.1%クリームを毎日塗った74人で、18週以内に色素沈着の濃さと広さが基剤より大きく減りました [3]。黒人54人にトレチノイン0.1%クリームを40週間塗った試験では、色の測定で跡が40%薄くなり、基剤では18%でした [4]。こちらはニキビに限らない炎症後の色素沈着です。

一方、トリファロテンの123人の試験では、12週では基剤より色素沈着が改善しましたが、主な評価の24週では差がありませんでした [8]。炎症後の色素沈着の塗り薬を47研究でまとめた系統的レビューでは、質の高い研究が最も多かったのはレチノイド・ヒドロキシ酸・日焼け止めでした [9]。肌の色が濃い人の48研究のレビューは、どの治療も効果ははっきりしないとまとめています [10]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

日本人のニキビの126人の試験では、治療しない群は24週で凹んだ跡が3次元画像で悪化しました。アダパレン・過酸化ベンゾイル配合ジェル群は悪化せず、過酸化ベンゾイル単独の群も同じでした [11]。レチノイドを含まない薬でも同じ結果になるため、跡を増やさない効果がレチノイドによるものかは、この試験では分かりません。

過酸化ベンゾイル単独でも同じだった試験ニキビのある日本人126人

配合ジェル群と過酸化ベンゾイル単独群は悪化せず、治療しない群は悪化しました。

凹んだ跡36人で、タザロテン0.1%ジェルを3か月塗った側とダーマローラーの施術をした側は、6か月後の改善が同じくらいでした。基剤との比較ではありません [12]。ニキビ治療をまとめたコクランの総まとめでは、塗るレチノイドは質の高い系統的レビューが足りず、結論をまとめられませんでした [13]。

よく言われていることは本当?

  • コラーゲンを増やしてクレーターを改善する凹んだ跡の数が減る、増えにくくなる結果は出ています。 根拠の確かさは低めです。コラーゲンが増えたかどうかは、ここで集めた試験の主な評価ではありません [1]
  • ターンオーバーを早めて色素沈着を薄くする条件によります。 タザロテンとトレチノインでは薄くなりましたが、トリファロテンは24週で差がありませんでした [3] [4] [8]
  • ニキビそのものを抑えて、新しい跡をつくりにくくする研究が足りません。 跡が増えにくくなる結果はありますが、過酸化ベンゾイル単独でも同じで、レチノイドだけの効果とは分けられません [11]
  • 赤いニキビ跡(赤み)を消す研究が足りません。 赤みだけを主な評価にしたレチノイドの比較試験は見つかっていません。レチナール入りクリームの試験で、赤みと色素沈着の改善が跡の改善に寄与していました [7]

02注意点

試験の条件は、顔の半分ずつに毎日24週間塗る、保湿剤や日焼け止めなどのスキンケアを併せて使う、といったものでした [8]。レチノイドは赤みや皮むけなどの刺激が出ることがあり、日焼け止めの併用が勧められています。妊娠中・授乳中の人や、持病・服薬中の人は、使う前に医師か薬剤師に確認してください。

市販のレチノールに、試験の結果をそのまま当てはめない

試験の多くは処方薬で、市販品の濃度や使い方とは違います。迷うときは皮膚科で相談してください。

03まとめ

処方薬のレチノイドとレチナール入りクリームは、凹んだニキビ跡の数を減らし、色素沈着も薄くする結果が出ています。
市販のレチノールそのものを基剤と比べた試験はないため、同じ効果とは言えません。
気になる跡は、処方薬も含めて皮膚科で相談するところから始めましょう。関連する話はレチノールは何%から小ジワに効く?市販品でも効く?、ハイドロキノンでシミや色素沈着は薄くなる?、アゼライン酸はニキビに効く?にあります。

04よくある質問

Q市販のレチノールでも効きますか?

市販のレチノールだけを基剤と比べた試験は、見つかっていません。試験は処方薬のレチノイドと、グリコール酸を混ぜたレチナールのクリームです。同じ効果とは言えません。

Qどのくらい塗ると変わりますか?

凹んだ跡の試験は、24週(約6か月)で評価したものが中心です [[37838987]]。レチナールのクリームの試験は、3か月でした [[17377389]]。人によって違い、研究から「何日で」とは言えません。

Q深いクレーターも平らになりますか?

試験が調べたのは、凹んだ跡の数や全体スコアです。深い凹みが平らになるかは確かめられていません。タザロテンのジェルは、ダーマローラーの施術と同じくらいの改善でした [[30452511]]。深い跡は皮膚科で相談してください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]トリファロテンはニキビ跡の凹みを減らすか、顔の左右で比べた試験

発表年
2023年
研究機関
アメリカ・ダームドックス皮膚科センター
掲載誌
Dermatology and therapy
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
121人
結果の向き
良い方向

ニキビとニキビ跡のある121人の顔の左右で比べ、24週後の凹んだ跡の数はトリファロテン側で平均5.9個、基剤側で2.7個減った。

[2]アダパレンと過酸化ベンゾイルの合剤の試験

発表年
2018年
研究機関
フランス・ナント大学病院
掲載誌
American journal of clinical dermatology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
67人
結果の向き
良い方向

ニキビの67人で、24週後の凹んだ跡の数は配合ジェル側で15.5%減り、基剤側で14.4%増えた。

[3]タザロテンクリームの色素沈着への試験

発表年
2006年
研究機関
アメリカ・南カリフォルニア色素・白斑研究所
掲載誌
Cutis
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
74人
結果の向き
良い方向

肌の色が濃い人のニキビの74人で、タザロテン0.1%クリームを塗ると、18週以内に色素沈着が基剤より大きく減った。

[4]トレチノインによる炎症後色素沈着の試験

発表年
1993年
研究機関
ミシガン大学医療センター
掲載誌
The New England journal of medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
54人
結果の向き
良い方向

炎症後の色素沈着がある黒人54人で、トレチノイン0.1%クリームを40週間塗ると跡が40%薄くなり、基剤では18%だった。

[5]アダパレンと過酸化ベンゾイルの合剤で凹んだ跡が増えにくくなるかを調べた試験

発表年
2017年
研究機関
フランス・ナント大学病院
掲載誌
Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology : JEADV
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
31人
結果の向き
良い方向

ニキビの大人31人で、6か月後の凹んだ跡の数は配合ジェル側で平均11.58個、基剤側で13.55個だった。

[6]韓国人のニキビへのアダパレン・過酸化ベンゾイル配合ジェルの試験

発表年
2024年
研究機関
韓国・ソウル大学医学部
掲載誌
Italian journal of dermatology and venereology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
49人
結果の向き
良い方向

韓国人49人で、24週後の凹んだ跡の数は配合ジェル群で開始時の27.3%、基剤群で96.5%だった。

[7]レチナールとグリコール酸のクリームでニキビ跡を防ぎ治す試験

発表年
2007年
研究機関
ギリシャ・アテネ大学
掲載誌
Dermatology (Basel, Switzerland)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
145人
結果の向き
良い方向

ニキビの治療歴がある145人で、レチナール0.1%・グリコール酸6%のクリームを3か月塗ると、きちんと塗った人の跡のスコアが基剤より良くなった。

[8]トリファロテンの色素沈着への試験

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・ウェイル・コーネル医科大学
掲載誌
International journal of dermatology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
123人
結果の向き
結果が割れている

ニキビと色素沈着がある人で、トリファロテンは12週では基剤より改善したが、主な評価の24週では差がなかった。

[9]炎症後色素沈着の塗り薬の系統的レビュー

発表年
2022年
研究機関
カナダ・オタワ大学
掲載誌
The Journal of dermatological treatment
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

炎症後の色素沈着の塗り薬を調べた47研究のまとめで、質の高い研究が最も多かったのはレチノイド・ヒドロキシ酸・日焼け止めだった。

[10]肌の色が濃い人の炎症後色素沈着の治療レビュー

発表年
2024年
研究機関
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学
掲載誌
Journal of cutaneous medicine and surgery
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

肌の色が濃い人の48研究のまとめで、どの治療も効果ははっきりしないとされた。

[11]炎症が治まったあとの維持療法の試験

発表年
2023年
研究機関
日本・関西医科大学附属病院
掲載誌
The Journal of dermatology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

日本人のニキビの126人の試験で、治療しない群は凹んだ跡が悪化し、配合ジェル群と過酸化ベンゾイル単独群は悪化しなかった。

[12]タザロテンとマイクロニードルを比べた試験

発表年
2019年
研究機関
インド・インド医学教育研究大学院
掲載誌
JAMA facial plastic surgery
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

凹んだニキビ跡の36人で、タザロテン0.1%ジェルを3か月塗った側と施術をした側の6か月後の改善は同じくらいだった。

[13]ニキビの塗り薬・光・補完療法の系統的レビューのまとめ

発表年
2024年
研究機関
中国・北京中医薬大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

コクランの総まとめで、塗るレチノイドは質の高い系統的レビューが足りず、結論をまとめられなかった。

ほかに参考にした論文(3本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。