食事制限中の高齢者の筋肉維持にプロテインは役立つ?

食事制限中の高齢者の筋肉維持にプロテインは役立つ?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効かない

筋肉を守る主役は筋トレです。プロテインを足すだけでは効きません。

根拠

サルコペニア肥満の人を対象にした比較試験のまとめ(全体で12件・863人)では、低カロリーで高たんぱくの食事でも、低たんぱくの食事より除脂肪量は増えませんでした [1]。2021年の試験でも、高たんぱく食と通常の食事で脚の筋肉量の変化に差はありませんでした [2]。一方、肥満の高齢者の食事制限に筋トレを加えると、減る除脂肪量の93.5%を防げました [3]。

この答えの範囲

食事制限で減量する50歳以上の人(主に太りぎみ)の話です。

じゃあ、どうする?

減量中は、プロテインを足すより先に、筋トレを予定に入れるのが研究に沿った使い方です。食事だけを減らすと筋肉が減りやすいので、体を動かす計画とセットで始めましょう。持病や服薬がある人は、食事を変える前に医師や管理栄養士に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。12 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 84 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量16.220研究件数と参加人数
一致度18.925結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 90.1 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 4 本・RCT のメタ解析 2 本。 この上限により、強度を A から B に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

プロテインとは

プロテインは、たんぱく質を手軽にとれるように、粉末や飲料にした食品です。牛乳由来のホエイや大豆などの種類があり、筋肉の材料になるとされています。減量中は食事の量が減るため、たんぱく質を補う目的で使われます。注意点は、持病がある人や服薬中の人は、量を増やす前に医師へ相談することです。ここは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、香港の香港理工大学などの研究チームが2020年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、似た試験の結果をまとめて分析する方法です。サルコペニア肥満(筋肉が少なく脂肪が多い状態)の人を対象に、運動や食事の工夫などを調べた比較試験12件・863人が集められ、期間は8〜28週でした。このうち、低カロリー・高たんぱくの食事と低カロリー・低たんぱくの食事の比較が、ここでの答えの根拠です。

研究の種類比較試験のメタ解析
対象サルコペニア肥満の人(メタ解析全体で12件・863人。たんぱく質の比較に使われた数は要旨に書かれていません)
比べたもの低カロリー・高たんぱくの食事と、低カロリー・低たんぱくの食事
結果高たんぱくの食事は、除脂肪量を増やさなかった
メタ解析の結果高たんぱくの食事は、低たんぱくの食事より除脂肪量を増やしませんでした [1]。

別のメタ解析も、低カロリー・高たんぱくの食事は脂肪を減らしたものの、筋肉量や握力には影響しなかったと報告しています [4]。

試験の単位でも同じ傾向です。アメリカのジョージア大学などが2021年に発表した試験では、平均69.2歳の閉経後の女性72人が6か月減量し、高たんぱく食でも脚の筋肉量の変化はふつうのたんぱく質の食事と差がありませんでした [2]。運動をしない試験でも、閉経後の太りぎみの女性54人で、体重1kgあたり1.5gの高たんぱく食の除脂肪量の減り方は、ふつうのたんぱく質の食事と同じでした [5]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

2016年のメタ解析(比較試験20件)は、50歳以上の減量で、たんぱく質が多い食事のほうが除脂肪量が多く残ったと報告しています [6]。肥満と2型糖尿病のある高齢者123人の試験では、運動を含む生活改善の中でロイシンとビタミンDを加えたホエイたんぱく飲料を飲んだ人のほうが、手足の筋肉量が0.36kg多くなりました [7]。

手足の筋肉量が多かった試験肥満と2型糖尿病のある高齢者 123人

13週の生活改善中に、ロイシンとビタミンDを加えたたんぱく質飲料の人は同じカロリーの飲料の人より手足の筋肉量が0.36kg多くなりました。

試験ごとに、対象(サルコペニア肥満か、ふつうの肥満か)、運動の有無、飲料の中身が違います。

筋肉を守る主役は筋トレ

肥満の高齢者の食事制限に筋トレを加えると、食事制限で減る除脂肪量の93.5%を防げました。これはたんぱく質ではなく筋トレの効果です [3]。55〜70歳の太りぎみの人を対象にしたネットワークメタ解析は、食事制限だけでは筋肉量が減りやすく、食事制限に筋トレなどの運動と高たんぱく食を組み合わせるのが最も効果的だったとしています [8]。2021年の試験は、減量中は運動が筋力を保つ鍵で、高たんぱく食は運動と組み合わせても筋肉量や筋力に影響しなかったと結論しています [2]。筋トレの回数は 筋トレは週何回がいい? で解説しています。

筋力や体の動きはどうか

筋力は、プロテインを足しても変わらない試験が多く、根拠の確かさは低めです。研究の数が4件と少ないためです。閉経後の肥満女性70人の試験では、ホエイプロテインは筋力に影響しませんでした [9]。一方、運動をしない閉経後の女性54人の12週の試験では、ふつうのたんぱく質の減量食で握力が1.7kg下がり、高たんぱく食では変わりませんでした [5]。一方、体の動きが衰えた肥満の高齢者67人が6か月減量した試験では、毎食たんぱく質を30g以上とった人の体の動きの点数が+2.4点で、ふつうの減量の+0.9点より大きく改善しました [10]。ただし、1本の小さな試験の結果です。

よく言われていることは本当?

  • ダイエット中にプロテインをとると筋肉が落ちにくい効きません。 サルコペニア肥満の比較試験のまとめ(全体で12件)では増えませんでした [1]。2016年のメタ解析は残ったと報告しており、結果は割れています [6]。
  • 筋トレと組み合わせると効果が高い本当です。 ただし、守る主役は筋トレです [3]。
  • 筋力や体の動きを保ち、転倒を防ぐ効きません。 筋力は差がない試験が多く、根拠の確かさは低めです [9]。転倒そのものを測った減量中の研究は見つかっていません。
  • たんぱく質を多めにすると脂肪が落ちやすい条件によります。 2016年のメタ解析では体脂肪が多く減りましたが [6]、2021年の試験では差がありませんでした [2]。加水分解ホエイを足した群だけ多く減った試験もあります [11]。
  • 目安は体重1kgあたり1.0〜1.2g研究が足りません。 量を比べた試験は無く、減量中の肥満の高齢者60人の探索的な分析で、1.2g/kgより多くとった人に手足の筋肉が増えた人が多かった、という報告があるだけです [12]。

02注意点

研究の対象は、主に太りぎみ・肥満の50歳以上で、女性だけの試験も多くあります。たんぱく質を増やした量は試験ごとに違い、たとえば閉経後の女性の試験では体重1kgあたり1.5gの食事が12週続けられました [5]。副作用は、この記事で使った要旨には書かれていません。持病がある人、服薬中の人、食事の量を大きく減らす人は、医師や管理栄養士に確認してください。

減量は筋トレとセットで考える

食事だけを減らすと筋肉が減りやすいので、運動を合わせる計画を医師や管理栄養士と立ててください。

03まとめ

食事制限中の高齢者の筋肉は、プロテインを足すだけでは守れず、守る主役は筋トレです。
当てはまるのは減量する50歳以上の人で、たんぱく質の適切な量は研究で確かめられていません。
プロテインを買う前に、筋トレを減量の予定に入れましょう。

04よくある質問

Q筋トレができないときは、プロテインを足す意味がありますか?

運動をしない試験で、体重1kgあたり1.5gの高たんぱく食でも除脂肪量の減り方は同じでした [[33975325]]。筋トレの代わりにはなりません。

Q1日にどのくらいとればいいですか?

量を比べた試験は無く、研究では確かな目安は言えません。減量中の肥満の高齢者60人の探索的な分析に1.2g/kgの数字がありますが [[25788405]]、これは目安を探る段階の結果です。

Q腎臓が心配です。

高たんぱく食と腎臓の関係は [高たんぱく食は腎臓に悪いって本当?](/evidence/high-protein-kidney-myth) で解説しています。腎臓に持病がある人は、医師に相談してから量を変えてください。

Q年齢を限らないダイエット中のプロテインは?

年齢を限らない場合は [ダイエット中にプロテインを飲む意味はある?](/evidence/protein-during-diet) で扱っています。この記事は50歳以上が対象です。

05参照した論文

判定に使った主な論文(12本)

[1]サルコペニア肥満の薬以外の対策を比べたメタ解析

発表年
2020年
研究機関
香港・香港理工大学
掲載誌
Experimental gerontology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
863人
結果の向き
差なし

サルコペニア肥満の人の比較試験12件・863人をまとめ、高たんぱくの食事は除脂肪量を増やさなかった。

[2]減量中の高齢女性の筋力と体の動きへの運動とたんぱく質の影響

発表年
2021年
研究機関
アメリカ・ジョージア大学
掲載誌
Medicine and science in sports and exercise
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
72人
結果の向き
差なし

閉経後の女性72人が6か月減量し、高たんぱく食でも脚の筋肉量の変化に差はなかった。

[3]肥満の高齢者の食事制限による筋肉の減少を筋トレが防ぐか

発表年
2018年
研究機関
ブラジル・カンピーナス大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究6件を統合
結果の向き
良い方向

食事制限に筋トレを加えると、食事制限で減る除脂肪量の93.5%を防げた。

[4]サルコペニア肥満への運動と栄養の効果を調べたメタ解析

発表年
2019年
研究機関
台湾・国立陽明大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究15件を統合
結果の向き
差なし

低カロリー・高たんぱくの食事は脂肪を減らしたが、筋肉量や握力には影響しなかった。

[5]閉経後の女性の減量中のたんぱく質量と除脂肪量の維持を調べた試験

発表年
2021年
研究機関
ドイツ・フルダ応用科学大学
掲載誌
Obesity facts
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
54人
結果の向き
差なし

太りぎみの女性54人で、運動なしの高たんぱく減量食でも除脂肪量の減り方は同じだった。

[6]高齢の人の減量中のたんぱく質と体組成の変化

発表年
2016年
研究機関
アメリカ・パデュー大学
掲載誌
Nutrition reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究20件を統合
結果の向き
良い方向

比較試験20件をまとめ、たんぱく質が多い食事で除脂肪量が多く残り、体脂肪が多く減った。

[7]肥満と2型糖尿病の高齢者の生活改善中のたんぱく質飲料の効果

発表年
2020年
研究機関
オランダ・アムステルダム応用科学大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
123人
結果の向き
良い方向

高齢者123人で、たんぱく質飲料の人は手足の筋肉量が0.36kg多かった。

[8]栄養と運動の組み合わせが体組成に与える影響を比べたネットワークメタ解析

発表年
2023年
研究機関
オーストリア・グラーツ医科大学
掲載誌
Advances in nutrition (Bethesda, Md.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,957人
結果の向き
良い方向

食事制限に運動と高たんぱく食を組み合わせるのが、ほぼすべての結果で最も効果的だった。

[9]減量中のたんぱく質の補給が筋肉量と筋力に与える影響

発表年
2018年
研究機関
アメリカ・ワシントン大学
掲載誌
Obesity (Silver Spring, Md.)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
70人
結果の向き
結果が割れている

閉経後の肥満女性70人で、減量中のホエイプロテインは筋力に影響しなかった。

[10]体の動きが衰えた肥満の高齢者の、毎食のたんぱく質量と体の動き

発表年
2016年
研究機関
アメリカ・デューク大学
掲載誌
The journals of gerontology. Series A, Biological sciences and medical sciences
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
67人
結果の向き
良い方向

高齢者67人で、毎食たんぱく質を30g以上とった人の体の動きの点数がより改善した。

[11]食事制限中の高齢女性に対する乳清プロテインの影響

発表年
2022年
研究機関
中国・蘇州大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
60人
結果の向き
差なし

高齢女性60人で、除脂肪量は3群で差がなく、加水分解ホエイの群は体脂肪がより減った。

[12]減量中の肥満の高齢者に必要なたんぱく質量を探る分析

発表年
2016年
研究機関
オランダ・アムステルダム応用科学大学
掲載誌
Clinical nutrition (Edinburgh, Scotland)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
60人
結果の向き
良い方向

高齢者60人で、体重あたり1.2g/kgより多くとった人は手足の筋肉が増えた人の割合が高かった。

ほかに参考にした論文(7本)

判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。