[1]高齢者の身体機能を高める漸進的筋力トレーニング
- 発表年
- 2009年
- 研究機関
- アメリカ・インディアナ大学インディアナポリス校
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 1,179人
- 結果の向き
- 良い方向
高齢者の筋トレの試験24件・1179人で、歩く速さが平均0.08m/秒速くなった。

運動で、歩く速さは速くなります。効果は小さめです。
運動をしない人と比べて、歩く速さがどう変わったかの話です。数年かけて歩く力を保てるかを直接調べた結果ではありません。転倒の減り方は運動の種類で分かれます。
筋トレに、バランスや歩く練習を組み合わせた運動を、指導を受けながら続けるのが研究の条件に近い形です。自宅で一人で行うだけの筋トレや、転倒予防を目的にしたアプリ・ヨガは、結果が分かれています。持病や痛みがある人は、始める前に医師や理学療法士に相談を。筋トレそのものは 筋トレで高齢になっても筋力は戻る? で。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 19.3 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 16.9 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 91.2 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 5 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
高齢者の体操・運動は、筋トレ、バランスや歩く練習、太極拳、これらを組み合わせた複合運動などの総称です。足腰の筋力や体を動かす力を保つとされ、教室で行うものから自宅で一人で行うものまであります。注意点は、運動の種類と進め方で結果が変わることです。
答えの中心は、アメリカのインディアナ大学インディアナポリス校などの研究チームが2009年に発表した Cochrane のレビューです [1]。Cochrane のレビューとは、決めた手順で試験を集めて結果をまとめる方法です。6700人分の試験が集められ、そのうち歩く速さは24件・1179人で比べられました。
| 研究の種類 | ランダム化比較試験のまとめ (Cochrane のレビュー) |
|---|---|
| 対象 | 高齢者 (歩く速さは24件・1179人) |
| 比べたもの | だんだん負荷を上げる筋トレ と 筋トレをしない場合 |
| 結果 | 歩く速さが平均0.08m/秒速くなった |
いすからの立ち上がりも改善し、多くの試験で筋トレは高い強度で行われ、重い副作用はまれでした。
0.08m/秒は、速さでいえば小さな差です。「歩く速さがぐんと上がる」ではなく、「少しずつ、確かに上がる」と読むのが正確です。
同じ虚弱な高齢者でも、集めた研究の範囲や測り方で歩く速さの結果が分かれています。このため、運動の種類、指導の有無、測り方によって結果が変わるのが実際のところです。
地域で暮らす高齢者12,981人・59研究を集めた Cochrane のレビュー (オーストラリアのシドニー大学の研究チーム、2019年) では、運動で転ぶ回数が23%減りました。根拠の確実性は高いと評価されています [9]。転んだ人の割合も15%減り、効いていたのは主にバランスと日常動作の運動でした。
一方、個別の試験では結果が分かれます。
つまり、転倒は「運動なら何でも防げる」わけではありません。歩く速さが上がることと、転ぶ回数が減ることは別の結果として見る必要があります。
運動の効果は、対象や進め方で結果が割れます。
脚の筋力は上がりましたが、歩く速さ・立って歩いて戻るテスト・立つ歩く総合点は改善しませんでした。
研究の対象は60歳以上の高齢者が中心で、地域で暮らす人と虚弱な人が含まれます。筋トレの試験は高い強度で行われ、重い副作用はまれでした [1]。体の働きが落ち始めた人のプログラムでも、重い有害事象の割合は運動の群と健康教育の群で差がありませんでした [15]。持病や痛みがある人、転びやすい人は、始める前に医師や理学療法士に確認してください。
自宅で一人で行うときは、教室や専門家の指導を併用することを考えてください。
運動で歩く速さは速くなります。効果は小さめですが、地域で暮らす人にも虚弱な人にも出ています。
指導者なしの自宅の筋トレや、転倒を減らす目的の一部の運動では、結果が分かれます。
指導を受けながら、筋トレとバランス運動を組み合わせて続けましょう。
運動全体では転ぶ回数が23%減りましたが、効いていたのは主にバランスと日常動作の運動です [[30703272]]。アプリでの一人運動や一部のヨガでは、はっきり減りませんでした。
ストレッチだけを調べた研究は、今回の結果には入っていません。研究では確かめられていません。
虚弱な高齢者の28件・4857人では、複合運動で歩く速さが改善しました [[39426607]]。地域で暮らす虚弱な人の19研究では差がなく、結果は割れています [[38908349]]。
寝たきりそのものは調べていませんが、400mを歩けなくなる人は、運動を続けた群で少なくなりました。体の働きが落ち始めた70歳以上の試験で30.1%対35.5% [[24866862]]、虚弱な人に運動と栄養指導を組み合わせた試験で46.8%対52.7%でした [[35545258]]。
高齢者の筋トレの試験24件・1179人で、歩く速さが平均0.08m/秒速くなった。
健康な高齢者5114人(103研究)で、運動は歩く速さとバランスのテストの成績を改善した。
虚弱な高齢者4857人(RCT28件)で、複合運動により歩く速さが改善した。効果は小さめ。
自宅で指導者なしの筋トレ(21研究・4053人)では、脚の筋力は少し上がったが歩く速さは改善しなかった。
日常の動作をまねた機能的な運動で、歩く速さや歩幅、バランスが改善した。
サルコペニアの高齢者で、運動により脚の筋力と歩く速さが改善した。筋肉の量は増えなかった。
地域で暮らす虚弱な高齢者(19研究)で、筋力やバランスは改善したが、歩く速さには差がなかった。
虚弱・虚弱の手前の高齢者で、筋トレだけではふだんの歩く速さは改善しなかった。
高齢者12,981人(59研究)で、運動により転ぶ回数が23%減った。確実性は高い。
アプリでバランス運動をした503人は、最初の12か月で転ぶ回数に有意な差がなかった。
アプリの自宅運動(1628人)は、転ぶ回数を有意には減らさなかったが、転んだ人の割合は11%少なかった。
18試験・5960人で、けがをする転倒は減ったが、転ぶ回数全体には有意な差がなかった。
60歳以上の700人で、ヨガの運動をした群は、座ってするヨガの群より転ぶ回数がかえって多かった。
高齢女性914人で、指導付きのジムと太極拳の教室により転ぶ回数が14.3%減った。
運動を続けた群は、健康教育の群より400mを歩けなくなる人が少なかった(30.1%対35.5%)。
フレイルとサルコペニアのある1205人で、運動と栄養指導により400mを歩けなくなる人が少なかった(46.8%対52.7%)。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。