運動で高齢者の骨密度は上がる?

運動で高齢者の骨密度は上がる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

上がります。ただし差は小さく、骨が減るのを抑える程度です。

根拠

40歳以上を対象にしたランダム化比較試験124件・18429人の解析で、有酸素運動と筋トレを組み合わせた運動は、運動しない人より腰椎の骨密度が平均0.013 g/cm2高くなりました [1]。閉経後の女性の別のメタ解析も、腰椎で0.01 g/cm2高いと報告しています [2]。根拠の確かさは低めです。運動の種類や量が研究ごとに違い、結果のばらつきが大きいためです。

この答えの範囲

中高年から高齢者の話で、研究の多くは閉経後の女性です。ウォーキングだけでは差が出なかった解析もあります。骨折を防げるかは別の話です。

じゃあ、どうする?

歩くだけの人は、筋トレを足すと研究の条件に近づきます。筋トレ、またはジョギングや速歩きとの組み合わせを、続けるのが近い使い方です。持病や骨粗しょう症のある人は、始める前に医師に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量2020研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 100 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 4 本・観察研究 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

骨密度の運動とは

骨密度は、骨にカルシウムなどがどれだけ詰まっているかを示す数値です。年を重ねると少しずつ下がり、閉経後の女性では下がり方が大きくなるとされます。ここで言う運動は、筋トレ、ジョギングや速歩きなどの有酸素運動、ジャンプのように骨に衝撃を与える運動です。この記事で扱うのは、骨密度が大きく増える話ではなく、減るのを抑える程度の変化です。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、中国の第940病院などの研究チームが2026年に発表したネットワークメタ解析です [1]。ネットワークメタ解析とは、運動の種類が複数あるとき、直接比べていない組み合わせも含めて効き方を比べる方法です。40歳以上を対象にしたランダム化比較試験124件・18429人が集められました。

研究の種類運動の種類ごとに骨への効果を比べたネットワークメタ解析
対象40歳以上の中高年・高齢者(124件・18429人)
比べたもの運動の種類と量。運動をしない対照と比較
結果有酸素運動と筋トレの組み合わせで、腰椎の骨密度が平均0.013 g/cm2高かった
まとめて分析した結果有酸素運動と筋トレを組み合わせると、腰椎の骨密度は運動しない人より平均0.013 g/cm2高くなりました [1]。

速歩きやジョギングでも同じ0.013 g/cm2の差でしたが、こちらは根拠の確かさが低い評価です。

0.013 g/cm2は小さな差です。骨密度を大きく増やすというより、年齢とともに減るのを抑える程度の変化と読むのが正確です。骨密度に意味のある差が出る目安は、腰椎で週400 METs・分、大腿骨で週600 METs・分ほどとされています [1]。METs・分は運動の強さに時間をかけた単位で、速歩きやジョギングなら週2〜3時間ほどです。

同じ向きの結果は、ほかの解析にもあります。60歳以上の閉経後の女性のRCT53件・2896人では、腰椎の骨密度が平均0.01 g/cm2高くなりました [2]。閉経後の女性の比較試験80件・5581人でも、運動をした人は大腿骨頸部の骨密度が高い結果でした [3]。

運動の種類で何が違う?

研究で調べられた主な運動と、分かったことです。

  • 筋トレ: 65歳以上のRCT14件で、だんだん負荷を上げる筋トレは、大腿骨・股関節の骨密度の変化が平均2.77%上回りました。腰椎には差がありませんでした [4]。
  • 筋トレだけ: 高齢者370人(研究7件)の解析で、股関節と背骨はわずかに増え、大腿骨頸部は増えませんでした [5]。
  • 運動の強さ: 健康な閉経後の女性のRCT53件で、中くらいの強さの運動は腰椎が平均0.012 g/cm2高く、強い運動は0.031 g/cm2とさらに大きい結果でした [6]。
  • 衝撃のある運動: ジャンプなど衝撃のある運動だけのプログラムは、どの部位の骨密度も増やしませんでした。筋トレやジョギングと組み合わせると効きました [7]。
  • 組み合わせ: 2010年までの研究をまとめたコクランレビューでは、背骨の骨密度に複数の運動を組み合わせたプログラムが最も効きました [8]。

ウォーキングだけでは差が出なかった解析もある

ウォーキングは続けやすい運動ですが、それだけで骨密度が上がるかは分かれています。閉経前後の女性を対象にした比較試験10件の解析では、ウォーキングだけでは腰椎の骨密度に有意な差はありませんでした。大腿骨頸部は、6か月以上続けた試験に限ると増えていました [9]。

差がなかった解析閉経前後の女性 比較試験10件

ウォーキングを唯一の運動にすると、腰椎の骨密度に有意な差はありませんでした。

別の8件の解析でも、運動習慣のない閉経後の女性で、腰椎の骨密度に有意な変化はありませんでした [10]。一方、速歩きとジョギングをひとまとめにした先ほどの大きな解析では、差が出ています [1]。違いの背景として、ジョギングが含まれる点と、集めた研究が異なる点が考えられます。歩くだけで足りるとは言えず、筋トレやジョギングを足した組み合わせのほうが、結果がそろっています。

よく言われていることは本当?

  • 筋トレ(ダンベル体操・スクワットなど)で骨密度が上がる効きます。 ただし差は小さく、解析ごとのばらつきが大きい結果です [4]。
  • ウォーキングで骨密度が保てる・上がる条件によります。 速歩きやジョギングでは腰椎が高い結果ですが、ウォーキングだけの解析では差が出ていません [1] [9]。
  • ジャンプやかかと落としなど骨に衝撃を与える運動が効く衝撃だけでは効きません。 衝撃のある運動だけのプログラムは骨密度を増やさず、筋トレなどとの組み合わせで効きました [7]。かかと落としそのものを調べた試験は見つかっていません。
  • 運動で骨折・寝たきりを防げる条件によります。 45歳以上の比較試験20件では、骨折の発生率が0.67倍でした [11]。一方、RCT26件の解析では、骨折が減りそうなのは有酸素運動を組み合わせたプログラムと太極拳などの心身運動だけでした [1]。
  • 牛乳・カルシウム・ビタミンDと組み合わせると良い運動を足しても差は見られていません。 薬・サプリを使っている閉経後の女性1249人(研究19件)では、運動を加えても腰椎と股関節の骨密度は薬・サプリだけの場合と差がありませんでした [12]。

02注意点

65歳以上の筋トレの解析で行われたのは、レッグプレスや膝伸ばしなど、脚の筋トレの負荷を少しずつ上げる方法でした [4]。強い運動のほうが効果は大きい結果が多い一方、骨粗しょう症の閉経後の女性では、強い筋トレが中くらいの強さより腰椎の骨密度を上げたものの、研究の確実性は非常に低いと評価されています [13]。骨が弱っている人が自己流で強い負荷をかけると、転倒やけがにつながるおそれがあります。持病や骨粗しょう症のある人、膝や腰に痛みのある人は、医師や理学療法士に確認してください。

負荷は少しずつ上げる

骨粗しょう症や持病のある人は、運動の種類と強さを医師に相談してから始めてください。

03まとめ

運動は、中高年・高齢者の骨密度が減るのを抑える程度に効きますが、差は小さく根拠の確かさは低めです。
歩くだけで済ませず、筋トレや、ジョギング・速歩きとの組み合わせにすると、研究の条件に近くなります。
始める前に、骨の状態や持病を医師に伝え、負荷は少しずつ上げましょう。

04よくある質問

Qどのくらい続ければいいですか?

閉経後の女性のRCT74件の解析では、52週以上続けた運動のほうが、短い運動より効果が安定していました [[41617082]]。ただし、何週間で何%増えるかまでは、研究から言えません。

Q男性にも当てはまりますか?

65歳以上の男女を対象にした筋トレのRCT14件では、大腿骨・股関節の骨密度が平均2.77%上回りました [[35608815]]。ただ、骨密度の研究の多くは閉経後の女性が対象で、男性だけの結果は多くありません。

Q筋トレそのものは、高齢でも効果がありますか?

筋力については [筋トレで高齢になっても筋力は戻る?](/evidence/resistance-training-older-adults) で扱っています。この記事は骨密度の話に絞っています。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]中高年・高齢者の運動と骨の健康:ネットワークメタ解析

発表年
2026年
研究機関
中国・第940病院
掲載誌
BMJ (Clinical research ed.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
18,429人
結果の向き
良い方向

40歳以上のRCT124件の解析。有酸素運動と筋トレの組み合わせで、腰椎の骨密度が平均0.013 g/cm2高かった。

[2]高齢の閉経後女性の運動と骨密度:RCTのメタ解析

発表年
2022年
研究機関
イラン・ハキム・サブゼヴァリ大学
掲載誌
Archives of osteoporosis
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,896人
結果の向き
良い方向

60歳以上の閉経後女性2896人(研究53件)で、運動をした人は腰椎の骨密度が平均0.01 g/cm2高かった。

[3]閉経後の女性の運動と骨密度:最新のメタ解析

発表年
2023年
研究機関
ドイツ・エアランゲン・ニュルンベルク大学
掲載誌
Osteoporosis international : a journal established as result of cooperation between the European Foundation for Osteoporosis and the National Osteoporosis Foundation of the USA
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
5,581人
結果の向き
良い方向

閉経後の女性5581人(研究80件)で、運動をした人は大腿骨頸部の骨密度が高かった。

[4]高齢者の筋トレと筋力・骨密度

発表年
2022年
研究機関
オーストラリア・ビクトリア大学
掲載誌
Sports medicine (Auckland, N.Z.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究14件を統合
結果の向き
良い方向

65歳以上のRCT14件で、負荷を上げる筋トレをすると大腿骨・股関節の骨密度の変化が平均2.77%上回った。

[5]高齢者の筋トレと骨密度:メタ解析

発表年
2022年
研究機関
ブラジル・サンパウロ州立大学
掲載誌
Healthcare (Basel, Switzerland)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

高齢者370人(研究7件)の筋トレだけの解析で、股関節と背骨の骨密度はわずかに増え、大腿骨頸部は増えなかった。

[6]閉経後の女性の運動の強さと骨:メタ解析

発表年
2021年
研究機関
オーストラリア・グリフィス大学
掲載誌
Bone
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究53件を統合
結果の向き
良い方向

健康な閉経後の女性のRCT53件で、中くらいの強さの運動は腰椎の骨密度が平均0.012 g/cm2高く、強い運動は0.031 g/cm2高かった。

[7]衝撃のある運動と閉経後の骨量減少:メタ解析

発表年
2009年
研究機関
イギリス・リーズ・メトロポリタン大学
掲載誌
British journal of sports medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

衝撃のある運動だけのプログラムは骨密度を増やさず、衝撃のある運動と筋トレなどの組み合わせは効いた。

[8]閉経後女性の骨粗しょう症の予防と治療のための運動

発表年
2011年
研究機関
イギリス・グラスゴー・カレドニアン大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,320人
結果の向き
良い方向

閉経後の女性4320人(RCT43件)のコクランレビューで、背骨の骨密度には複数の運動を組み合わせたプログラムが最も効いた。

[9]ウォーキングが閉経前後の女性の骨密度に与える効果

発表年
2013年
研究機関
中国・北京協和医学院
掲載誌
Menopause (New York, N.Y.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究10件を統合
結果の向き
差なし

比較試験10件で、ウォーキングだけでは腰椎の骨密度に有意な差はなかった。大腿骨頸部は6か月以上続けた試験に限ると増えていた。

[10]閉経後の女性のウォーキングと骨密度:メタ解析

発表年
2008年
研究機関
イギリス・リーズ・メトロポリタン大学
掲載誌
Bone
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究8件を統合
結果の向き
差なし

運動習慣のない閉経後の女性の試験8件で、ウォーキングで腰椎の骨密度に有意な変化はなかった。

[11]運動は成人の骨折を減らすか:指導の有無の違い

発表年
2022年
研究機関
ドイツ・エアランゲン・ニュルンベルク大学
掲載誌
Journal of bone and mineral research : the official journal of the American Society for Bone and Mineral Research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究20件を統合
結果の向き
良い方向

45歳以上の比較試験20件で、運動をした人は軽い転倒などで起こる骨折の発生率が0.67倍に下がった。

[12]閉経後の女性の運動と骨密度・身体機能

発表年
2024年
研究機関
台湾・国立陽明交通大学
掲載誌
PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

薬・サプリを使っている閉経後の女性1249人(研究19件)では、運動を加えても骨密度に差がなかった。

[13]骨粗しょう症の閉経後女性の運動の強さの比較

発表年
2022年
研究機関
日本・信州大学
掲載誌
Bone reports
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

骨粗しょう症の閉経後女性(研究6件・391人)で、強い筋トレは中くらいの強さより腰椎の骨密度が上がったが、確実性は非常に低い。

ほかに参考にした論文(4本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。