バランス運動で高齢者の転倒は減らせる?

バランス運動で高齢者の転倒は減らせる?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え効く

減らせます。バランス運動で、転倒の回数は約24%減ります。

根拠

地域で暮らす高齢者を対象にしたコクランのレビュー(RCT39件・7920人)で、バランス運動・機能的な運動をした人は、運動しない人より転倒の回数が24%少なくなりました [1]。太極拳も、転倒の回数が19%少なくなりました [1]。根拠の確かさは低めです。RCT7件と研究の数が少なく、効果の推定の幅も広いためです。

この答えの範囲

60歳以上で、主に自宅で暮らす人の話です。アプリでの自宅運動(最初の12か月)、つまずき練習、講習会で教わるだけの自宅運動は、転倒の回数に差が出ませんでした。

じゃあ、どうする?

バランス運動に、筋トレを組み合わせると、転倒の回数が34%少なくなりました [1]。足を踏み出す練習も試す価値があります [2]。介護施設の研究では、やめると差がなくなりました。無理のない形で続けましょう。持病や痛みがある人は、医師や理学療法士に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。11 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 84 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量19.720研究件数と参加人数
一致度18.625結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 93.3 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 3 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「中程度」で、これを強度の上限にしています。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

バランス運動とは

バランス運動は、片脚で立つ、足を踏み出す、立ち座りを繰り返すなど、体の安定を保つ力を鍛える運動です。転倒予防体操や機能的な運動とも呼ばれ、自治体の教室でもよく行われます。筋トレや太極拳と組み合わせる方法もあります。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、シドニー大学などの研究チームが2019年に発表したコクランのレビューです [1]。コクランのレビューとは、決めた手順で比較試験を集め、結果をまとめる方法です。60歳以上で地域に暮らす人のRCTが、全体で108件・23,407人(平均76歳、77%が女性)集められました。

研究の種類RCTを集めたコクランのレビュー(メタ解析)
対象60歳以上で地域に暮らす高齢者(バランス運動の解析は39件・7920人)
比べたものバランス運動・機能的な運動と、運動をしない対照
結果転倒の回数が24%少なかった
まとめて分析した結果**バランス運動をした人は、転倒の回数が24%少なくなりました。**

研究の確実性は高いと評価されています [1]。

足を踏み出す練習だけを集めた2017年のメタ解析(RCT7件・660人)では、転倒の回数が約半分になりました [2]。障害物をよけるなど歩き方を状況に合わせる練習では、転倒の回数が42%少なくなりました [3]。

筋トレと組み合わせるとどうなる?

同じコクランのレビューで、バランス運動と筋トレなど複数の運動を組み合わせると、転倒の回数が34%少なくなりました(RCT11件・1374人、確実性は中程度) [1]。別のメタ解析(RCT10件・648人)でも、筋トレ・体幹・バランスを組み合わせ、週5回以上、32週以上続ける方法がより効果的でした [4]。

太極拳はどうか?

太極拳は、転倒の回数が19%少なくなりました(RCT7件・2655人) [1]。2023年のRCT24件のメタ解析も、転倒のリスクが低いと報告しています [5]。ただしコクランは、確実性を低いと評価しています。

よく言われていることは本当?

  • バランス運動(転倒予防体操)で転倒が減る本当です。 転倒の回数が24%少なくなりました [1]。
  • 筋トレを含む複合的な運動が最も有効効きます。 34%少なくなりましたが、比べた運動の優劣を直接決めた研究ではありません [1]。
  • 太極拳で転倒が減る効きます。 ただし根拠の確かさは低めです [1]。
  • 片足立ちの練習でふらつきが改善する研究が足りません。 片脚立ちだけで転倒を測ったメタ解析は見つかっていません。
  • 足指体操でバランス感覚が強まる研究が足りません。 足指体操だけで転倒を測った質の高い研究は見つかっていません。
  • 運動で転倒による骨折も防げるこの記事では確かめていません。

差が出なかった研究もあります

どの運動でも減るわけではありません。個別の試験には、統計的な差が出なかったものがあります。

アプリで行う自宅運動70歳以上の503人。アプリのバランス運動を週2時間、2年間続けても、最初の12か月の転倒の回数は健康教育だけの人と差がありませんでした。24か月では16%少なくなりました [6]。
ランニングマシンでのつまずき練習平均72歳の140人。わざとつまずかせる・滑らせる20分の練習を4回しても、12か月の転倒の回数はふつうに歩く練習と差がありませんでした [7]。
講習会で教わる自宅運動65歳以上の617人。講習会で教わった自宅でのバランスと脚の筋トレは、腕の筋トレと比べて12か月の転倒の回数に差がありませんでした [8]。

つまり、運動の中身と続け方が大事です。理学療法士が指導した自宅運動では、転んだ経験のある70歳以上の345人で転倒の回数が少なくなりました(比0.64) [9]。

介護施設では、続けている間だけ

介護施設で暮らす人(13件)では、運動の期間中は転倒の回数が少なくなりましたが、やめたあとの追跡期間では差がありませんでした [10]。

02注意点

研究の対象は60歳以上で地域に暮らす人が中心です。転びやすい人を問診票で選んで運動を勧めた英国の70歳以上9803人(3群)の試験では、運動の群でも18か月の転倒の回数は減りませんでした [11]。運動が合うかは人によって違います。ふらつきや痛み、持病がある人、運動を始める前の人は、医師や理学療法士に確認してください。

転倒しないよう、安全な場所で行う

壁や手すりのそばで、つかまれる状態から始めてください。

03まとめ

バランス運動で、高齢者の転倒の回数は減ります。
筋トレとの組み合わせや足を踏み出す練習が、より効果的です。
アプリや講習会だけで終わらせず、続けられる運動を、できれば指導を受けて始めましょう。

04よくある質問

Qどのくらい続ければ効果が出ますか?

筋トレ・体幹・バランスを組み合わせ、週5回以上、32週以上続けた方法がより効果的でした [[34886293]]。ただし、何回から効くかを決めた研究ではありません。

Q運動をやめると効果はなくなりますか?

介護施設で暮らす人では、運動期間中は転倒の回数が少なく、やめたあとの追跡期間では差がありませんでした [[38109410]]。続けることが大切です。

Q太極拳とバランス運動はどちらがよいですか?

どちらも転倒の回数が減りましたが、直接比べた結果ではありません [[30703272]]。太極拳は根拠の確かさが低めです。

Q片足立ちだけでも転倒は減りますか?

片脚立ちだけで転倒を測った研究は見つかっておらず、研究では確かめられていません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(11本)

[1]地域で暮らす高齢者の転倒を防ぐ運動

発表年
2019年
研究機関
オーストラリア・シドニー大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
7,920人
結果の向き
良い方向

バランス運動・機能的な運動で、転倒の回数が24%少なかった。RCT39件・7920人。

[2]足を踏み出す練習が反応時間・歩行・バランスを改善し転倒を減らす

発表年
2017年
研究機関
オーストラリア・ニューロサイエンス・リサーチ・オーストラリア
掲載誌
British journal of sports medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
660人
結果の向き
良い方向

RCT7件・660人で、ステップ練習により転倒の回数が約半分だった。

[3]歩き方を状況に合わせる練習が転倒と骨折に与える効果

発表年
2021年
研究機関
デンマーク・オールボー大学病院
掲載誌
Age and ageing
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,131人
結果の向き
良い方向

RCT7件のメタ解析で、歩き方を状況に合わせる練習により転倒の回数が42%少なかった。

[4]高齢者の転倒リスクを下げる運動介入のメタ解析

発表年
2021年
研究機関
中国・北京体育大学
掲載誌
International journal of environmental research and public health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
648人
結果の向き
良い方向

RCT10件・648人で、複合運動を週5回以上、32週以上続ける方法がより効果的だった。

[5]高齢者の転倒予防とバランス改善に対する太極拳

発表年
2023年
研究機関
中国・華南理工大学
掲載誌
Frontiers in public health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究24件を統合
結果の向き
良い方向

RCT24件のメタ解析で、太極拳をした人は転倒のリスクが低かった。

[6]アプリで行うバランス運動による転倒予防の2年間の試験

発表年
2021年
研究機関
オーストラリア・ニューロサイエンス・リサーチ・オーストラリア
掲載誌
BMJ (Clinical research ed.)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
503人
結果の向き
差なし

70歳以上の503人で、アプリの運動は最初の12か月の転倒の回数に差が出なかった。

[7]ランニングマシンでのつまずき練習が転倒に与える効果

発表年
2023年
研究機関
デンマーク・オールボー大学病院
掲載誌
JAMA network open
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
140人
結果の向き
差なし

140人で、つまずき・滑りの練習を4回しても、転倒の回数に差が出なかった。

[8]講習会で教える自宅運動プログラムの転倒予防効果

発表年
2022年
研究機関
オーストラリア・イラワラ・ショールヘイブン地域保健区
掲載誌
BMC geriatrics
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
617人
結果の向き
差なし

65歳以上の617人で、講習会で教わった自宅運動は12か月の転倒の回数に差が出なかった。

[9]転倒後の高リスク高齢者に対する自宅運動プログラムの効果

発表年
2019年
研究機関
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学
掲載誌
JAMA
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
345人
結果の向き
良い方向

70歳以上の345人で、自宅での筋トレとバランス運動により、転倒の回数が少なかった。

[10]介護施設での転倒予防の運動

発表年
2023年
研究機関
オーストラリア・フリンダーズ大学
掲載誌
Age and ageing
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究13件を統合
結果の向き
良い方向

介護施設の13件で、運動期間中は転倒の回数が少なく、やめたあとは差がなかった。

[11]プライマリケアでの転倒予防介入のクラスターRCT

発表年
2021年
研究機関
イギリス・ウォーリック大学
掲載誌
Health technology assessment (Winchester, England)
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
9,803人
結果の向き
差なし

70歳以上の9803人で、運動を勧める方法は18か月の転倒の回数を減らさなかった。

ほかに参考にした論文(8本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。