フレイルは運動と栄養をあわせると予防しやすい?

フレイルは運動と栄養をあわせると予防しやすい?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

運動と栄養を合わせると、通常のケアよりフレイルの状態が良くなります。

根拠

運動と栄養を組み合わせた取り組みを通常のケアと比べると、フレイルの点数や状態が良くなりました。RCT22件・2,055人の解析 [1] と、31件・4,794人の解析(リスク比0.62)[2] です。運動だけでも効きます [2]。栄養を足した上乗せは、握力では見られますが、フレイルそのものではまだはっきりしません [3] [4]。運動の解析は研究の質が低い〜非常に低いと評価されています [5]。

この答えの範囲

60歳以上の高齢者の研究です。栄養を足す上乗せの大きさは、フレイルそのものではまだ決められません。持病がある人は主治医に相談を。

じゃあ、どうする?

まずは運動から始めましょう。研究の裏づけが厚いのは運動で、筋トレを含む組み合わせがよく調べられています [6]。食事は、3食しっかり食べてたんぱく質を意識すると、運動の効果を後押しする使い方になります。食事の中身は栄養士や主治医に相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。高い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。11 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 99 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量19.220研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 99.2 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 99 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 2 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

フレイルとは

フレイルは、年を重ねて体力や気力が落ち、健康と要介護の中間にいる状態です。歩く速さが遅くなる、疲れやすくなる、筋肉が減るといった変化が重なります。その手前の段階はプレフレイルと呼ばれ、運動や食事の見直しで元の状態に近づけるとされています。対策には運動と栄養がよく挙げられ、研究では筋トレ、たんぱく質などの栄養補助食品、食事の指導が使われています。ここは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、中国の中国中医科学院西苑病院などの研究チームが2026年に発表したネットワークメタ解析です [1]。ネットワークメタ解析とは、複数の方法を同じ土俵で比べるまとめ方です。60歳以上のRCT22件・2,055人が集められました。

研究の種類RCT22件のネットワークメタ解析
対象60歳以上の高齢者(2,055人)
比べたもの運動、栄養補助食品、その組み合わせ、通常のケア
結果運動と栄養の組み合わせが、比べた方法の中でフレイルの点数の改善がいちばん大きかった(SMD -0.92)
まとめて分析した結果運動と栄養を組み合わせると、通常のケアよりフレイルの点数が良くなりました [1]。

地域で暮らす60歳以上の31件・4,794人の解析でも、フレイルの状態が良くなりました(リスク比0.62)[2]。

スペインの診療所の高齢者191人の試験(2026年)でも、運動プログラムと栄養の助言を組み合わせた人は、12週後にフレイルの判定か体の動きの点数が良くなった人が70.4%で、通常のケアの49.5%より多くなりました [7]。

運動だけでも効きます

「合わせないと効かない」わけではありません。運動だけの解析でも、フレイルは減りました。

  • 地域で暮らす60歳以上の解析: 運動だけでフレイルが減りました(リスク比0.63)[2]
  • まだフレイルではない60歳以上842人の解析: 運動でフレイルになる割合が下がりました(リスク比0.26)[4]
  • 69件のRCTの解析: 調べた対策の中で運動の効果がいちばん大きく、運動の種類では筋トレがいちばん大きくなりました [6]

組み合わせ(SMD -0.92)と運動だけ(SMD -0.78)の点数の差は少しありますが、両者を直接比べた差の検定は要旨に書かれていません [1]。

栄養を足す上乗せは、まだはっきりしません

栄養を足すと、握力や筋肉量は運動だけより良くなります。ただしフレイルそのものでは、上乗せがあるとは言い切れません。

  • 握力: サルコペニアか身体的フレイルのある65歳以上の解析(RCT13件・1,057人)で、運動にたんぱく質を足すと握力が平均2.64kg強くなりました。筋肉量の指標も平均0.89kg/m²増えました [3]
  • 握力(別の解析): サルコペニアかその手前の高齢者のRCT18件・1,341人でも、握力が強くなりました(SMD 0.39)。立って歩いて戻る時間には差がありませんでした [8]
  • フレイルになる割合: まだフレイルではない842人の解析では、栄養の要素で差が見られませんでした(リスク比1.16)[4]
  • 系統的レビュー: 地域で暮らすフレイルの65歳以上の10本の論文を整理し、栄養を足すと上乗せがあるかを決めるには根拠が足りないと結論しました [9]

握力や筋肉量が良くなっても、それが「フレイルになりにくい」ことに結びつくかは、研究がまだ足りません。

研究の質について

運動の解析は、研究の質が低い〜非常に低いと評価されています [5]。握力の解析も、質は非常に低いと評価されています [3]。入院中の高齢者の研究では、運動と栄養の組み合わせでフレイルの点数が下がりましたが、研究の質は弱いと著者が書いています [10]。方向はそろっていますが、効果の大きさは目安として読むのが正確です。

よく言われていることは本当?

  • 運動と栄養を同時に改善すると、より高い予防・改善の効果がある本当です。 通常のケアよりフレイルの状態が良くなる結果がそろっています。ただし運動だけの場合との差は、直接比べた検定が確かめられていません [1]
  • 運動でフレイルを予防できる本当です。 運動だけでフレイルが減り、まだフレイルではない人でも、なる割合が下がりました [4]
  • たんぱく質を足すと、運動の上乗せがある半分本当です。 握力と筋肉量は運動だけより良くなりますが、フレイルそのものでは上乗せがあるとは言い切れません [3] [9]
  • 歩数の目安で筋力の低下を防げる研究が見つかっていません。 歩数を介入にして比べた試験やメタ解析は、今回の検索で見つかりませんでした。
  • 社会参加(人とのつながり)もフレイル予防の柱この記事は運動と栄養の組み合わせが範囲のため、扱っていません。
  • 早めに対策すれば、健康な状態に戻れる運動や栄養の対策でフレイルから抜け出す人が増えました。 アイルランドの試験では、3か月後にフレイルの人が6.3%(通常のケア18.2%)でした [11]

02注意点

研究の対象は主に60歳以上です。スペインの試験は平均78.1歳で、プレフレイルかフレイルなどの人が運動プログラムと栄養の助言を受け、12週後と32週後に比べました [7]。たんぱく質などの栄養補助食品は、腎臓の病気や持病のある人では量の調整が必要なことがあります。運動も、心臓や関節に持病がある人は、始める前に主治医に確認してください。

持病がある人は、運動と食事の内容を主治医と決める

研究の運動プログラムは、本人の体力に合わせて組まれたものです。

03まとめ

運動と栄養を合わせると、フレイルは通常のケアより良くなります。
運動だけでも効くので、栄養の上乗せは握力や筋肉量で見られる効果と考えておきましょう。
筋トレを含む運動から始め、食事は3食しっかり食べて、たんぱく質を意識してみてください。

04よくある質問

Q運動と栄養は、どちらを先に始めるといいですか?

運動のほうが、フレイルそのものへの効果が多くの解析で確かめられています [[36746389]]。まず運動を始め、食事を整えることを並べて進めるのが、研究の条件に近い形です。

Qどんな運動がいちばん効きますか?

69件のRCTの解析では、筋トレの効果がいちばん大きくなりました。有酸素運動、心と体の運動、いろいろな運動の組み合わせも、通常のケアよりフレイルの軽減と関連していました [[36746389]]。

Qプロテインを飲んだほうがいいですか?

握力や筋肉量は良くなりますが、フレイルそのものへの上乗せは確かめられていません [[39955964]] [[42949507]]。食事で足りているかは、栄養士や主治医に確認してください。筋トレとたんぱく質の量は [筋トレするならタンパク質は1日何gとればいい?](/evidence/protein-intake-muscle-gain) も参考になります。

Q運動の質の低さは気にすべきですか?

運動の解析は、研究の質が低い〜非常に低いと評価されています [[31564464]]。ただし効果の向きは、別の解析でもそろっています [[32032375]]。

05参照した論文

判定に使った主な論文(11本)

[1]高齢者のフレイルに対する運動と栄養の取り組みを比べたネットワークメタ解析

発表年
2026年
研究機関
中国・中国中医科学院西苑病院
掲載誌
BMC geriatrics
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,055人
結果の向き
良い方向

60歳以上の2,055人(RCT22件)で、運動と栄養の組み合わせがフレイルの点数をいちばん改善した。

[2]地域で暮らす高齢者へのフレイル対策のメタ解析

発表年
2020年
研究機関
アイルランド・ダブリン大学ユニバーシティ・カレッジ
掲載誌
PloS one
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,794人
結果の向き
良い方向

60歳以上の31件・4,794人で、運動と栄養補助食品の組み合わせも運動だけも、フレイルを減らした。

[3]サルコペニアや身体的フレイルの高齢者への運動とたんぱく質補給のメタ解析

発表年
2025年
研究機関
日本・熊本リハビリテーション病院
掲載誌
Archives of gerontology and geriatrics
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,057人
結果の向き
良い方向

RCT13件・1,057人で、運動にたんぱく質を足すと運動だけより握力が平均2.64kg強くなった。

[4]まだフレイルでない高齢者の予防策の要素別メタ解析

発表年
2024年
研究機関
ドイツ・ハイデルベルク大学病院
掲載誌
European geriatric medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
842人
結果の向き
良い方向

842人(9件の試験)で、運動はフレイルになる割合を下げたが、栄養の要素では差が見られなかった。

[5]フレイルの予防・改善策を比べたネットワークメタ解析

発表年
2019年
研究機関
カナダ・マクマスター大学
掲載誌
Journal of the American Medical Directors Association
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

RCT21件・5,262人で、運動は通常のケアよりフレイルを減らした。研究の質は低い〜非常に低い。

[6]高齢者のフレイル対策を比べたネットワークメタ解析

発表年
2023年
研究機関
中国・中南大学
掲載誌
Age and ageing
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

69件のRCTで、運動が調べた対策の中で効果がいちばん大きく、運動の種類では筋トレがいちばん大きかった。

[7]診療所の高齢者に運動と栄養の助言を行った試験

発表年
2026年
研究機関
スペイン・カタルーニャ保健研究所
掲載誌
Journal of the American Geriatrics Society
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
191人
結果の向き
良い方向

運動プログラムと栄養の助言を合わせると、12週後に良くなった人が70.4%(通常のケア49.5%)だった。

[8]サルコペニアの高齢者への運動と栄養補給のメタ解析

発表年
2026年
研究機関
中国・陝西師範大学
掲載誌
Frontiers in nutrition
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,341人
結果の向き
良い方向

RCT18件・1,341人で、栄養補給を足すと運動だけより握力が強くなった(SMD 0.39)。

[9]地域で暮らすフレイルの高齢者への栄養と運動の系統的レビュー

発表年
2026年
研究機関
スウェーデン・ヨーテボリ大学
掲載誌
Nutrition and health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究10件を統合
結果の向き
差なし

論文10本を整理し、栄養を足す上乗せがあるかを決めるには根拠が足りないと結論した。

[10]入院中のフレイルの高齢者への運動と栄養のメタ解析

発表年
2020年
研究機関
オーストラリア・フリンダース大学
掲載誌
BMJ open
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

入院中の高齢者では、運動と栄養の組み合わせでフレイルの点数が下がった。研究の質は弱い。

[11]高齢者への自宅運動とたんぱく質の食事指導の試験

発表年
2023年
研究機関
アイルランド・ダブリン大学ユニバーシティ・カレッジ
掲載誌
Age and ageing
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

3か月続けると、フレイルの人が6.3%(通常のケア18.2%)になった。

ほかに参考にした論文(11本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。