妊娠中のマルチビタミンで低体重の出産は防げる?

妊娠中のマルチビタミンで低体重の出産は防げる?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え効く

防げます。低体重で生まれる赤ちゃんが12%少なくなりました。

根拠

18件の試験・68,801人をまとめたコクランレビューで、鉄と葉酸に複数のビタミン・ミネラルを足して飲んだ妊婦は、鉄と葉酸だけの妊婦より低出生体重の赤ちゃんが12%少なくなりました(リスク比0.88)[1]。早産については、はっきりした差はありません(リスク比0.95)[1]。日本のような高所得国の「小さく生まれる」ことについても、マルチビタミンを飲んだ妊婦で少ない結果ですが、観察研究が中心で、根拠の確かさは低めです。研究の作りに弱さがあるためです [2]。

この答えの範囲

比べた相手は、何も飲まない人ではなく、鉄と葉酸だけを飲む人です。試験は低・中所得国で行われ、日本の妊婦は含まれていません。

じゃあ、どうする?

日本の妊婦にも同じ差が出るかは、まだ確かめられていません。食事が偏りがちな人は、産婦人科でマルチビタミンが必要か相談してから始めましょう。複数のサプリを重ねると、同じ成分をとりすぎることがあるため、飲んでいるものは医師か薬剤師に見せてください。葉酸の飲み方は葉酸はいつから飲み始めると妊娠に良い?で。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。7 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 84 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量18.620研究件数と参加人数
一致度15.325結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 88.9 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「高い」で、これを強度の上限にしています。 根拠の研究が、この疑問の対象とは違う人たちのものだけなので、強度は B を上限にしています。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

妊娠中のマルチビタミンとは

妊娠中のマルチビタミンは、ビタミンとミネラルを複数まとめて補うサプリです。妊婦向けの商品が多く、鉄と葉酸を含むものが一般的です。研究では「複数の微量栄養素」と呼ばれ、鉄と葉酸だけのサプリと比べる形で調べられてきました。注意点は、研究の多くが栄養不足の多い国で行われていることです。ここまでは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、カナダのトロント小児病院などの研究チームが2019年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で関連する試験を集めて結果をまとめる方法です。鉄と葉酸を含む複数の微量栄養素のサプリを、鉄(葉酸あり・なし)だけのサプリと比べた試験が集められました。

研究の種類複数の微量栄養素のサプリを調べた試験のコクランレビュー(メタ解析)
対象妊婦(18件の試験・68,801人)
比べたもの鉄と葉酸に複数のビタミン・ミネラルを足したサプリと、鉄(葉酸あり・なし)だけのサプリ
結果低出生体重の赤ちゃんが12%少なかった(リスク比0.88)
まとめて分析した結果複数のビタミン・ミネラルを足して飲んだ妊婦は、低体重で生まれる赤ちゃんが12%少なくなりました [1]。

リスク比の95%信頼区間は0.85から0.91で、研究の質は高いと評価されています。

ただし、集められた試験はすべて低・中所得国で行われ、日本の妊婦は含まれていません。英国の1件はプラセボとの比較で、低出生体重に大きな差は見られませんでした。

早産には、はっきりした差がない

同じレビューで、早産はリスク比0.95でした。95%信頼区間は0.90から1.01で、統計的にはっきりした差はありません(18件の試験・91,425人)[1]。超音波で妊娠週数を確かめた7件の試験に絞っても、リスク比0.90で、差ははっきりしませんでした [3]。マルチビタミンは低体重の出産を減らしますが、早産を防ぐとは言えません。

よく言われていることは本当?

  • 赤ちゃんが小さく生まれるのを防ぐ低出生体重については、効きます。 鉄と葉酸だけと比べて12%少なくなりました [1]。
  • 妊娠週数に比べて小さい赤ちゃん(SGA)を減らす高所得国では、マルチビタミンを飲んだ妊婦でSGAが少ない結果でした(35件・98,926人でリスク比0.77)。 ただし35件のうち、ランダム化比較試験は4件だけです。根拠の確かさは低めです。研究の作りに弱さがあるためです [2]。
  • 早産を防ぐ効きません。 はっきりした差は見られていません [1]。
  • 栄養状態の良い国の妊婦には不要研究が足りません。 高所得国で鉄と葉酸だけと比べた研究は見つかっていません [2]。

飲み方と食事で、効き方は変わる

15件の試験・61,204人の個人データの解析では、サプリを90%以上きちんと飲んだ人で出生体重が56 g増えました。60%未満しか飲まなかった人では、鉄・葉酸だけと差がありませんでした [4]。

バングラデシュの試験の解析では、低体重を減らす効果は、食事の種類が少ない妊婦ほど大きくなりました。食事の種類が最も少ない妊婦でリスク比0.86、種類が多い妊婦で0.92です [5]。栄養が足りている人ほど、差は小さくなる傾向が見られます。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

ニジェールの農村の妊婦3,332人の試験では、複数のサプリと鉄・葉酸のサプリとで、出生体重に統計的な差はありませんでした(差は39 g)[6]。著者は、人数が足りず差を見つける力が限られていたと書いています。

差がなかった試験ニジェールの妊婦 3,332人

出生体重の差は39 gで、統計的な差はありませんでした。

英国ケンブリッジの観察研究では、マルチビタミンを飲んだ妊婦の赤ちゃんは出生体重が大きい一方、妊娠糖尿病になる割合が高く(リスク比1.86)、体重の差の一部は妊娠糖尿病に関連していた可能性があります [7]。観察研究のため、飲んだことが原因とは言えません。

02注意点

コクランレビューの試験は、いずれも栄養不足が多い地域の妊婦が対象でした。日本の妊婦に同じ差が出るかは、確かめられていません [1]。観察研究では、マルチビタミンと妊娠糖尿病の高さが関連していました [7]。サプリの種類や量は、持病や服薬の有無、妊娠の時期で変わります。始める前に、産婦人科の医師か薬剤師に確認してください。

鉄・葉酸だけと比べた結果です

何も飲まない場合との比較ではないため、結果をそのまま当てはめないでください。

03まとめ

妊娠中のマルチビタミンは、鉄と葉酸だけと比べて、低体重の出産を12%減らしました。
早産には、はっきりした差がなく、日本の妊婦での確認もまだです。
食事が偏りがちなら、産婦人科で相談してから選びましょう。

04よくある質問

Q早産も防げますか?

はっきりした差は見られていません。18件の試験・91,425人のまとめで、リスク比は0.95、信頼区間は0.90から1.01でした [[30873598]]。

Q日本の妊婦にも同じ効果がありますか?

研究では確かめられていません。コクランレビューの試験は、すべて低・中所得国で行われました [[30873598]]。

Q飲み忘れが多くても効果はありますか?

60%未満しか飲まなかった人では、鉄・葉酸だけと出生体重の差がありませんでした。90%以上飲んだ人では56 g増えました [[40451462]]。

Q葉酸のサプリとは別に飲む必要がありますか?

研究で比べたのは、鉄と葉酸を含むマルチと、鉄・葉酸だけのサプリです。上乗せの要否は医師に相談してください。葉酸の記事は[こちら](/evidence/folic-acid-when-to-start)です。

05参照した論文

判定に使った主な論文(7本)

[1]妊娠中の女性への複数の微量栄養素サプリのコクランレビュー

発表年
2019年
研究機関
カナダ・トロント小児病院
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
68,801人
結果の向き
良い方向

18件の試験・68,801人のまとめで、低出生体重の赤ちゃんが12%少なかった。試験はすべて低・中所得国。

[2]高所得国のマルチビタミン使用と出生結果のメタ解析

発表年
2017年
研究機関
デンマーク・コペンハーゲン大学病院
掲載誌
American journal of obstetrics and gynecology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
98,926人
結果の向き
良い方向

35件・98,926人のまとめで、SGAが少なかった(リスク比0.77)。ランダム化比較試験は4件だけ。

[3]妊娠中の複数の微量栄養素サプリと鉄・葉酸サプリの出生結果の比較

発表年
2023年
研究機関
アメリカ・ニューヨーク科学アカデミー
掲載誌
Maternal & child nutrition
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

超音波で妊娠週数を確かめた試験に絞っても、低出生体重を減らす結果は同じだった。

[4]妊娠中の複数の微量栄養素サプリで、飲んだ割合が効果に与える影響

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・ジョージ・ワシントン大学
掲載誌
Advances in nutrition (Bethesda, Md.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

15件の試験・61,204人の解析で、90%以上飲んだ人では出生体重が56 g増えた。

[5]妊娠中の食事の種類の多さが、サプリの効果に与える影響

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・ジョンズ・ホプキンス大学
掲載誌
The American journal of clinical nutrition
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

低出生体重を減らす効果は、食事の種類が少ない妊婦ほど大きかった。

[6]ニジェールの妊婦への複数の微量栄養素サプリと出生体重の試験

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院
掲載誌
BMJ global health
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
3,332人
結果の向き
差なし

ニジェールの妊婦3,332人で、出生体重に統計的な差はなかった(差は39 g)。

[7]妊娠中のマルチビタミンと出生体重・皮下脂肪の厚さの観察研究

発表年
2020年
研究機関
イギリス・ケンブリッジ大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

出生体重は大きかったが、妊娠糖尿病になる割合が高かった(リスク比1.86)。

ほかに参考にした論文(6本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。