[1]妊婦向けワクチンの有効性と安全性を調べたRCTの系統的レビュー
- 発表年
- 2023年
- 研究機関
- オランダ・ユトレヒト大学医療センター
- 掲載誌
- BMJ global health
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 5,883人
- 結果の向き
- 良い方向
妊婦向けワクチンのRCTをまとめ、赤ちゃんの検査確定インフルエンザのリスクは0.66倍だった。

防げます。生後2か月までは、赤ちゃんの感染が約半分に減ります。
検査で確かめたインフルエンザの話です。症状だけで診断したインフルエンザでは差がありませんでした。
接種は、赤ちゃんを守る手段の一つです。生後6か月未満の赤ちゃんは自分で接種できないので、生まれたあとも家族の手洗いなどを続けましょう。接種するかどうかは、妊娠の経過を知る産科の医師と相談してください。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 12.6 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 92.6 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「高い」で、これを強度の上限にしています。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
妊娠中のインフルエンザワクチンは、妊婦が受けるワクチンです。生後6か月未満の赤ちゃんは自分で接種できないため、母親が受けて赤ちゃんを守れるかが調べられてきました。注意点は、効果の出方が赤ちゃんの月齢で変わることです。
答えの中心は、オランダのユトレヒト大学医療センターなどの研究チームが2023年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、複数の試験の結果を統計でひとつにまとめる方法です。妊婦向けワクチンのランダム化比較試験が集められました。
| 研究の種類 | 妊婦向けワクチンのランダム化比較試験のメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 妊娠中に接種した母親と赤ちゃん(5883人) |
| 比べたもの | 偽薬または接種なし |
| 結果 | 検査で確かめた赤ちゃんのインフルエンザが98件対148件で、リスクは0.66倍 |
母親自身のリスクも0.58倍で、57件対98件でした [1]。
3つのランダム化比較試験をまとめたアメリカのイェール大学などの2020年の解析では、生後6か月までの予防効果は35%でした [2]。月齢で分けると、差がはっきり出ます。
個々の試験も同じ向きです。バングラデシュの母親340人の試験では、赤ちゃんの検査で確かめたインフルエンザが6件対16件で、予防効果は63%でした [3]。マリの妊婦4193人の試験では、生後6か月までが33.1%、生後4か月までは67.9%でした [4]。生まれてすぐの時期にいちばん守られる、と読むのが正確です。
同じメタ解析で、症状から診断したインフルエンザは、赤ちゃんで差がありませんでした [1]。検査で確かめた病気は減っても、熱やせきなど症状だけの診断は減っていない、という結果です。
リスク比は0.99で、1371件対1378件でした。
日本の1つの産院の観察研究では、母親が接種した群の赤ちゃんはインフルエンザが0人、しなかった群は5人でした [10]。アメリカの観察研究では、母親の接種は赤ちゃん3764人のインフルエンザによる入院・救急受診が34%少ないことと関連していました [11]。観察研究なので、接種だけが原因とは言い切れません。
接種の安全性は、ここまでの研究では差が見られていません。ただ、インフルエンザワクチンのランダム化比較試験は少なく、3つの試験の統合解析が中心です [2]。バングラデシュの試験は、インフルエンザワクチンか別のワクチンに母親を割り付け、生後24週まで赤ちゃんを調べました [3]。持病がある人、過去にワクチンで強い反応が出た人は、産科の医師に確認してください。
妊娠の時期や体調によって判断が変わるため、自己判断で決めないでください。
妊娠中のインフルエンザワクチンは、赤ちゃんのインフルエンザを減らします。
効果は生まれてすぐの時期にいちばん大きく、4〜6か月では差がはっきりしません。
早産が減るわけではないので、赤ちゃんを守る目的で医師と相談しましょう。
減るという結果は確かめられていません。48件のメタ解析で、早産のオッズ比は0.945でした [[31412058]]。
妊娠初期の接種でも、先天異常との関連は見られませんでした(オッズ比1.03)[[26444106]]。
日本の1つの産院の観察研究では、接種した母親の赤ちゃんでインフルエンザは0人でした [[26670462]]。人数が少ない観察研究のため、効果の大きさは言えません。
生後4〜6か月では予防効果の差がはっきりしませんでした [[32526188]]。それ以降の月齢は、ここで使った研究では調べられていません。
研究では、生後6か月までの予防効果は全体で35%、生後2か月までで56%でした [[32526188]]。9割には届きません。
妊婦向けワクチンのRCTをまとめ、赤ちゃんの検査確定インフルエンザのリスクは0.66倍だった。
3件の試験をまとめ、生後6か月までの予防効果は35%、生後4〜6か月は19%だった。
母親340人の試験で、赤ちゃんの検査確定インフルエンザは6件対16件、予防効果は63%だった。
妊婦4193人の試験で、生後6か月までの予防効果は33.1%だった。
15件の研究で、先天異常のオッズ比は0.96。妊娠初期でも1.03だった。
ネパールの試験で、生後6か月までの赤ちゃんへの予防効果は30%だった(採用したメタ解析に含まれるため参考扱い)
観察研究63件で、早産・流産などとの関連は見られなかった。確実性は非常に低い。
48件のメタ解析で、早産のオッズ比は0.945で、早産・低出生体重・先天異常に差はなかった。
観察研究中心のメタ解析で、早産のオッズ比は0.87だった。
母親が接種した群の赤ちゃんはインフルエンザが0人、しなかった群は5人だった。
生後6か月未満の赤ちゃん3764人で、入院・救急受診が34%少ない関連があった。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。