妊娠中のインフルエンザワクチンで赤ちゃんの感染は防げる?

妊娠中のインフルエンザワクチンで赤ちゃんの感染は防げる?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え効く

防げます。生後2か月までは、赤ちゃんの感染が約半分に減ります。

根拠

ランダム化比較試験2件・5883人のメタ解析で、妊娠中に接種した母親の赤ちゃんは、検査で確かめたインフルエンザにかかるリスクが0.66倍でした [1]。3つの試験をまとめた解析では、予防効果は生後2か月までが56%、生後4〜6か月は19%で差がはっきりしませんでした [2]。妊婦自身への効果は、根拠の確かさは低めです。対象の試験が2件と少ないためです [1]。

この答えの範囲

検査で確かめたインフルエンザの話です。症状だけで診断したインフルエンザでは差がありませんでした。

じゃあ、どうする?

接種は、赤ちゃんを守る手段の一つです。生後6か月未満の赤ちゃんは自分で接種できないので、生まれたあとも家族の手洗いなどを続けましょう。接種するかどうかは、妊娠の経過を知る産科の医師と相談してください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。11 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 84 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量12.620研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 92.6 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「高い」で、これを強度の上限にしています。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

妊娠中のインフルエンザワクチンとは

妊娠中のインフルエンザワクチンは、妊婦が受けるワクチンです。生後6か月未満の赤ちゃんは自分で接種できないため、母親が受けて赤ちゃんを守れるかが調べられてきました。注意点は、効果の出方が赤ちゃんの月齢で変わることです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、オランダのユトレヒト大学医療センターなどの研究チームが2023年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、複数の試験の結果を統計でひとつにまとめる方法です。妊婦向けワクチンのランダム化比較試験が集められました。

研究の種類妊婦向けワクチンのランダム化比較試験のメタ解析
対象妊娠中に接種した母親と赤ちゃん(5883人)
比べたもの偽薬または接種なし
結果検査で確かめた赤ちゃんのインフルエンザが98件対148件で、リスクは0.66倍
まとめて分析した結果母親が接種した赤ちゃんは、検査で確かめたインフルエンザにかかるリスクが0.66倍でした [1]。

母親自身のリスクも0.58倍で、57件対98件でした [1]。

赤ちゃんの月齢で、効き方が変わる

3つのランダム化比較試験をまとめたアメリカのイェール大学などの2020年の解析では、生後6か月までの予防効果は35%でした [2]。月齢で分けると、差がはっきり出ます。

  • 生後2か月まで: 56%
  • 生後2〜4か月: 39%
  • 生後4〜6か月: 19%(差がはっきりしない)

個々の試験も同じ向きです。バングラデシュの母親340人の試験では、赤ちゃんの検査で確かめたインフルエンザが6件対16件で、予防効果は63%でした [3]。マリの妊婦4193人の試験では、生後6か月までが33.1%、生後4か月までは67.9%でした [4]。生まれてすぐの時期にいちばん守られる、と読むのが正確です。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

同じメタ解析で、症状から診断したインフルエンザは、赤ちゃんで差がありませんでした [1]。検査で確かめた病気は減っても、熱やせきなど症状だけの診断は減っていない、という結果です。

差がなかった結果症状から診断した赤ちゃんのインフルエンザ(5883人)

リスク比は0.99で、1371件対1378件でした。

よく言われていることは本当?

  • 妊婦が接種すると、赤ちゃんのインフルエンザを防げる効きます。 検査で確かめたインフルエンザが減りました [1]。「9割以上防げる」というほどではなく、生後6か月までの予防効果は全体で35%、生後2か月までで56%でした [2]。
  • 妊婦自身のインフルエンザも防げる効きます。 リスクは0.58倍でした。根拠の確かさは低めです。対象の試験が2件と少ないためです [1]。
  • 流産・先天異常など、赤ちゃんへの悪影響はない増えるという結果は見つかっていません。 インフルエンザワクチンの試験2件を含む、妊婦向けワクチンのランダム化比較試験6件のまとめで、早産・死産・先天異常などに差はありませんでした [1]。先天異常は15件の研究でも、オッズ比0.96でした [5]。ただし観察研究が中心で、研究が足りない部分もあります。
  • 接種すると早産や低出生体重が減る研究が足りず、まだ分かりません。 3つの試験の統合解析では、早産・低出生体重との関連は全体として見られませんでした [2]。ネパールの試験では低出生体重が減ったという報告もあります [6]。観察研究63件の系統的レビューで、早産との関連は見られませんでした [7]。48件のメタ解析でも、早産のオッズ比は0.945でした [8]。以前の解析には早産が少ないという結果もありました [9]が、新しい解析では確かめられていません。

日本の研究と、入院の研究

日本の1つの産院の観察研究では、母親が接種した群の赤ちゃんはインフルエンザが0人、しなかった群は5人でした [10]。アメリカの観察研究では、母親の接種は赤ちゃん3764人のインフルエンザによる入院・救急受診が34%少ないことと関連していました [11]。観察研究なので、接種だけが原因とは言い切れません。

02注意点

接種の安全性は、ここまでの研究では差が見られていません。ただ、インフルエンザワクチンのランダム化比較試験は少なく、3つの試験の統合解析が中心です [2]。バングラデシュの試験は、インフルエンザワクチンか別のワクチンに母親を割り付け、生後24週まで赤ちゃんを調べました [3]。持病がある人、過去にワクチンで強い反応が出た人は、産科の医師に確認してください。

接種の判断は、妊娠の経過を知る医師と

妊娠の時期や体調によって判断が変わるため、自己判断で決めないでください。

03まとめ

妊娠中のインフルエンザワクチンは、赤ちゃんのインフルエンザを減らします。
効果は生まれてすぐの時期にいちばん大きく、4〜6か月では差がはっきりしません。
早産が減るわけではないので、赤ちゃんを守る目的で医師と相談しましょう。

04よくある質問

Q接種すると早産は減りますか?

減るという結果は確かめられていません。48件のメタ解析で、早産のオッズ比は0.945でした [[31412058]]。

Q妊娠初期に受けても赤ちゃんに影響はありませんか?

妊娠初期の接種でも、先天異常との関連は見られませんでした(オッズ比1.03)[[26444106]]。

Q日本の赤ちゃんでも効果はありますか?

日本の1つの産院の観察研究では、接種した母親の赤ちゃんでインフルエンザは0人でした [[26670462]]。人数が少ない観察研究のため、効果の大きさは言えません。

Q生後6か月をすぎたらどうなりますか?

生後4〜6か月では予防効果の差がはっきりしませんでした [[32526188]]。それ以降の月齢は、ここで使った研究では調べられていません。

Q「9割以上防げる」は本当ですか?

研究では、生後6か月までの予防効果は全体で35%、生後2か月までで56%でした [[32526188]]。9割には届きません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(11本)

[1]妊婦向けワクチンの有効性と安全性を調べたRCTの系統的レビュー

発表年
2023年
研究機関
オランダ・ユトレヒト大学医療センター
掲載誌
BMJ global health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
5,883人
結果の向き
良い方向

妊婦向けワクチンのRCTをまとめ、赤ちゃんの検査確定インフルエンザのリスクは0.66倍だった。

[2]妊娠中のインフルエンザ接種の予防効果・持続期間・出生時の結果をまとめたRCTの統合解析

発表年
2020年
研究機関
アメリカ・イェール大学
掲載誌
The Lancet. Respiratory medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
9,800人
結果の向き
良い方向

3件の試験をまとめ、生後6か月までの予防効果は35%、生後4〜6か月は19%だった。

[3]母親へのインフルエンザ接種の母子への効果を調べた試験

発表年
2008年
研究機関
バングラデシュ・国際下痢性疾患研究センター
掲載誌
The New England journal of medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
340人
結果の向き
良い方向

母親340人の試験で、赤ちゃんの検査確定インフルエンザは6件対16件、予防効果は63%だった。

[4]マリで妊婦に不活化インフルエンザワクチンを接種した乳児への予防効果の試験

発表年
2016年
研究機関
アメリカ・メリーランド大学
掲載誌
The Lancet. Infectious diseases
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
4,193人
結果の向き
良い方向

妊婦4193人の試験で、生後6か月までの予防効果は33.1%だった。

[5]妊娠中のインフルエンザ接種と先天異常のメタ解析

発表年
2015年
研究機関
ギリシャ・イアソ総合病院
掲載誌
Obstetrics and gynecology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究15件を統合
結果の向き
差なし

15件の研究で、先天異常のオッズ比は0.96。妊娠初期でも1.03だった。

[6]Year-round influenza immunisation during pregnancy in Nepal: a phase 4, randomised, placebo-controlled trial.

発表年
2017年
研究機関
アメリカ・Steinhoff MCほかの研究チーム
掲載誌
The Lancet. Infectious diseases
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

ネパールの試験で、生後6か月までの赤ちゃんへの予防効果は30%だった(採用したメタ解析に含まれるため参考扱い)

[7]妊娠中のインフルエンザワクチンの安全性の系統的レビュー

発表年
2023年
研究機関
カナダ・オタワ病院研究所
掲載誌
BMJ open
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究63件を統合
結果の向き
差なし

観察研究63件で、早産・流産などとの関連は見られなかった。確実性は非常に低い。

[8]妊婦のインフルエンザ接種と出生時の悪影響のベイズ法メタ解析

発表年
2019年
研究機関
アメリカ・ヘブライシニアライフ老化研究所
掲載誌
PloS one
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究48件を統合
結果の向き
差なし

48件のメタ解析で、早産のオッズ比は0.945で、早産・低出生体重・先天異常に差はなかった。

[9]妊娠中のインフルエンザ接種が出生時の結果に与える影響の系統的レビュー

発表年
2016年
研究機関
南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学
掲載誌
American journal of perinatology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

観察研究中心のメタ解析で、早産のオッズ比は0.87だった。

[10]日本の乳児における母親のインフルエンザ接種の効果

発表年
2016年
研究機関
日本・杉村こどもクリニック
掲載誌
Pediatrics international : official journal of the Japan Pediatric Society
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

母親が接種した群の赤ちゃんはインフルエンザが0人、しなかった群は5人だった。

[11]母親のワクチン接種と乳児のインフルエンザ入院・救急受診の関連

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・ベイラー医科大学
掲載誌
JAMA pediatrics
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
3,764人
結果の向き
良い方向

生後6か月未満の赤ちゃん3764人で、入院・救急受診が34%少ない関連があった。

ほかに参考にした論文(9本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。