おしゃぶりを寝るときに使うと赤ちゃんの突然死は減る?

おしゃぶりを寝るときに使うと赤ちゃんの突然死は減る?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え良い関連がある

寝るときにおしゃぶりを使う赤ちゃんは、突然死が少ないことと関連しています。

根拠

症例対照研究7件をまとめた解析で、最後に眠ったときにおしゃぶりを使っていた赤ちゃんは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のオッズが0.39倍でした [1]。2024年のメタ解析8件のまとめでも0.44倍で、同じ向きです [2]。ただし観察研究だけで、ランダム化比較試験は1件もありません [3]。根拠の確かさは低めです。研究の作りに弱さがあるためです。

この答えの範囲

1歳未満の赤ちゃんが寝るときの話です。「関連」であり、使えば防げるという意味ではありません。添い寝のときだけ関連した英国の結果や、関連が薄れたという英国の結果もあります。

じゃあ、どうする?

おしゃぶりは母乳で育てている赤ちゃんの母乳育児の割合を変えませんでした [4]。一方、毎日使うと開咬との関連があります [5]。使うかどうかは、この両方を見て、小児科医や歯科医と決めてください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン2440いちばん信頼できる研究の種類
研究の量6.120研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 70.1 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、観察研究 4 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

おしゃぶりと乳幼児突然死症候群とは

おしゃぶりは、赤ちゃんが吸って落ち着くための育児用品です。乳幼児突然死症候群(SIDS)は、それまで元気だった赤ちゃんが、主に眠っている間に突然亡くなり、調べても原因が見つからない病気です。おしゃぶりを寝るときに使うと少ないとされ、母乳育児や歯並びへの影響が心配されることもあります。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、アメリカのバージニア大学などの研究チームが2005年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、複数の研究の結果を統計的にまとめる方法です。亡くなった赤ちゃんの家族と、そうでない赤ちゃんの家族に、あとから寝たときの様子を聞いて比べる症例対照研究が集められました。

研究の種類症例対照研究のメタ解析
対象1歳未満の赤ちゃん(症例対照研究7件)
比べたもの最後に眠ったときにおしゃぶりを使っていたか、使っていなかったか
結果使っていた赤ちゃんのSIDSのオッズが0.39倍(信頼区間0.31〜0.50)
まとめて分析した結果最後に眠ったときにおしゃぶりを使っていた赤ちゃんは、SIDSのオッズが0.39倍でした。

1966年から2004年5月までの研究が対象で、前向きの観察研究は含まれていませんでした [1]。

オッズは、起こりやすさの比べ方の一つです。1より小さいほど、使っていた赤ちゃんに突然死が少なかったことを表します。

2024年にまとめられた、メタ解析8件(元の論文152件)のアンブレラレビューでも、おしゃぶりのオッズは0.44倍で同じ向きでした。あおむけ寝は0.48倍でした。ただしこの評価では、おしゃぶりの根拠の強さは「弱い」とされています [2]。アメリカ・カリフォルニア州の研究では、亡くなった赤ちゃん185人と対照の312人で0.08倍でした [6]。ドイツの研究でも0.39倍でした [7]。

ここまでが「関連」である理由

コクランの系統的レビューは、おしゃぶりとSIDSを調べたランダム化比較試験を1件も見つけられませんでした [3]。観察研究では、おしゃぶりを使う家庭と使わない家庭で、ほかの育児の習慣も違う可能性があります。そのため「使ったから減った」とは言い切れません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

英国の2つの症例対照研究を統合した解析では、おしゃぶりの使用がリスク低下と関連していたのは、添い寝をしていた赤ちゃんだけでした [8]。英国南西部の研究では、10年前の同じ地域の研究と比べて、おしゃぶりの使用などの要因の重要性が薄れていました [9]。

英国の統合解析添い寝の赤ちゃんと、ひとりで寝る赤ちゃん

関連が見られたのは、添い寝の赤ちゃんだけでした。

なぜ関連するのか

理由は研究ではまだ確かめられていません。健康な赤ちゃん30人の睡眠検査では、おしゃぶりを使っても自然な目覚めの回数は変わりませんでした [10]。目覚めやすくなるから、という説明は、この試験では支持されませんでした。

母乳育児への影響は?

母乳で育てている健康な赤ちゃん1228人(ランダム化比較試験2件)では、おしゃぶりを使っても、3か月時点で母乳だけで育っている割合は変わりませんでした(リスク比1.01)[4]。ランダム化比較試験10件のメタ解析でも、2・3・4・6か月のどの時点でも、おしゃぶりを控えた群と自由に使った群の母乳育児の割合は同じくらいでした [11]。

歯並びへの影響は?

観察研究などのメタ解析で、おしゃぶりを毎日使う子どもは、前歯が閉じない開咬のオッズが10.22倍でした(信頼区間5.36〜19.49、研究3件)[5]。研究17件の系統的レビューも、おしゃぶりの使用が開咬と奥歯の交叉咬合(噛み合わせのずれ)に関連すると結論しています [12]。癖の期間が長いほど、噛み合わせの問題が出やすいという報告もあります [13]。これも観察研究が中心で、根拠の確かさは低めです。

よく言われていることは本当?

  • 寝るときにおしゃぶりを使うと突然死を防げる関連しています。 ただし観察研究だけで、防げると断定できる試験はありません [1] [3]。
  • おしゃぶりを使うと母乳育児がうまくいかなくなるほぼウソです。 ランダム化比較試験のメタ解析で、母乳育児の割合に差はありませんでした [4]。
  • おしゃぶりを使うと歯並び・噛み合わせが悪くなる毎日使うと開咬と関連しています。 長く使うほど関連が強い傾向です [5] [13]。
  • おしゃぶりで赤ちゃんが落ち着く・泣きやむ研究が足りません。 健康な赤ちゃんの家庭での泣きを主な結果にしたメタ解析は見つかっていません。
  • 言葉の発達が遅れる、やめ時は1歳までがよい研究が足りません。 言葉の発達ややめる時期そのものを比べた研究は、今回は確認できていません。

02注意点

研究で調べられたのは、「最後に眠ったときに使っていたか」です。カリフォルニア州の研究は、保護者への聞き取りで比べました [6]。副作用として、毎日使う場合の開咬との関連があります。使うか迷う人、赤ちゃんの睡眠環境に不安がある人は、小児科の医師に相談してください。歯並びが気になるときは、歯科医にも相談できます。

睡眠環境の基本を先に

おしゃぶりだけでなく、あおむけ寝も同じ向きの関連が報告されています [2]。

03まとめ

寝るときのおしゃぶりは、SIDSが少ないことと関連していますが、因果は確かめられていません。
母乳育児の割合は変わらず、毎日の長い使用は開咬と関連します。
使うなら、小児科医・歯科医と相談しながら、使い方を決めましょう。

04よくある質問

Qおしゃぶりを使えば、突然死は防げますか?

防げるとは言えません。観察研究で少ないことと関連していますが、ランダム化比較試験は1件もありません [[28378502]]。

Q母乳をあげているのに使っても大丈夫ですか?

母乳で育てている赤ちゃん1228人の試験で、3か月時点の母乳育児の割合は変わりませんでした [[27572944]]。

Q添い寝のときも関連はありますか?

英国の統合解析では、関連が見られたのは添い寝の赤ちゃんだけでした [[25238618]]。

Qいつまで使ってよいですか?

やめる時期そのものを比べた研究は確認できていません。使う期間が長いほど噛み合わせの問題が出やすいという報告があります [[38548628]]。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]おしゃぶりは乳幼児突然死症候群のリスクを下げるか:メタ解析

発表年
2005年
研究機関
アメリカ・バージニア大学
掲載誌
Pediatrics
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究7件を統合
結果の向き
良い方向

症例対照研究7件のメタ解析で、最後に眠ったときにおしゃぶりを使っていた赤ちゃんのSIDSのオッズは0.39倍でした。

[2]乳幼児突然死症候群に関わる妊娠中・出生後の要因:メタ解析のアンブレラレビュー

発表年
2024年
研究機関
韓国・慶熙大学
掲載誌
World journal of pediatrics : WJP
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

メタ解析8件をまとめ、おしゃぶりの使用はSIDSのオッズ0.44倍と関連。根拠の強さは弱いと評価されました。

[3]乳幼児突然死症候群のリスク低減のためのおしゃぶり(コクラン)

発表年
2017年
研究機関
オーストラリア・ウェスタンシドニー大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

おしゃぶりとSIDSを調べたランダム化比較試験は1件も見つかりませんでした。

[4]母乳育児の赤ちゃんでおしゃぶりを控えると母乳育児が長続きするか

発表年
2016年
研究機関
マレーシア・リージェンシー専門病院
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,228人
結果の向き
差なし

1228人(RCT2件)で、おしゃぶりを使っても3か月時点で母乳だけで育つ割合は変わりませんでした。

[5]非栄養的吸啜習慣と前歯部開咬の関連:系統的レビューとメタ解析

発表年
2025年
研究機関
中国・温州医科大学
掲載誌
BMC oral health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究3件を統合
結果の向き
悪い方向

おしゃぶりを毎日使う子どもは、開咬のオッズが10.22倍でした(研究3件)。

[6]睡眠中のおしゃぶり使用と乳幼児突然死症候群:人口ベースの症例対照研究

発表年
2006年
研究機関
アメリカ・カイザーパーマネンテ北カリフォルニア
掲載誌
BMJ (Clinical research ed.)
研究の種類
症例対照研究ある病気の人とそうでない人で、過去の生活習慣などを比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

亡くなった赤ちゃん185人と対照312人の比較で、SIDSのオッズが0.08倍でした。

[7]ドイツにおけるSIDSの修正可能な危険因子

発表年
2005年
研究機関
ドイツ・ミュンスター大学
掲載誌
Acta paediatrica (Oslo, Norway : 1992)
研究の種類
症例対照研究ある病気の人とそうでない人で、過去の生活習慣などを比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

最後に眠ったときにおしゃぶりを使っていた赤ちゃんのSIDSのオッズは0.39倍でした。

[8]危険な状況がない添い寝とSIDS:英国の2つの症例対照研究の解析

発表年
2014年
研究機関
イギリス・ブリストル大学
掲載誌
PloS one
研究の種類
症例対照研究ある病気の人とそうでない人で、過去の生活習慣などを比べる研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

おしゃぶりの使用がSIDSのリスク低下と関連したのは、添い寝の赤ちゃんだけでした。

[9]危険な添い寝環境と改善できる危険因子:英国南西部のSIDSの症例対照研究

発表年
2009年
研究機関
イギリス・ブリストル大学
掲載誌
BMJ (Clinical research ed.)
研究の種類
症例対照研究ある病気の人とそうでない人で、過去の生活習慣などを比べる研究。
対象
—
結果の向き
差なし

10年前の同じ地域の研究と比べ、おしゃぶりの使用などの要因の重要性が薄れていました。

[10]おしゃぶりは健康な正期産児の睡眠と自然な覚醒パターンを変えない

発表年
2014年
研究機関
オーストラリア・モナシュ大学
掲載誌
Acta paediatrica (Oslo, Norway : 1992)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

健康な赤ちゃん30人の睡眠検査で、おしゃぶりを使っても自然な目覚めの回数は変わりませんでした。

[11]正期産児と早産児におけるおしゃぶりの使用と母乳育児:系統的レビューとメタ解析

発表年
2022年
研究機関
フィンランド・東フィンランド大学
掲載誌
European journal of pediatrics
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究10件を統合
結果の向き
差なし

ランダム化比較試験10件のメタ解析で、母乳育児の割合は2・3・4・6か月のどの時点でも同じくらいでした。

[12]おしゃぶり吸啜が口腔顔面の構造に及ぼす影響:系統的文献レビュー

発表年
2018年
研究機関
スイス・バーゼル大学
掲載誌
Progress in orthodontics
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究17件を統合
結果の向き
悪い方向

研究17件のレビューで、おしゃぶりの使用は開咬と交叉咬合に関連していました。

[13]非栄養的吸啜習慣が不正咬合に及ぼす影響:系統的レビュー

発表年
2024年
研究機関
スペイン・アルフォンソ10世大学
掲載誌
The Journal of clinical pediatric dentistry
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
悪い方向

研究21件のレビューで、癖の期間が長いほど噛み合わせの問題が出やすいという結果でした。

ほかに参考にした論文(14本)

判定「良い関連がある」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。