母乳の赤ちゃんにビタミンDのサプリは必要?

母乳の赤ちゃんにビタミンDのサプリは必要?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

血液中のビタミンDの濃度が上がり、足りない赤ちゃんが減ります。

根拠

母乳で育つ赤ちゃんに毎日400IUを飲ませた比較試験6件・334人をまとめたコクランのレビューで、血液中のビタミンDの濃度は飲ませない場合より平均22.63nmol/L高くなりました [1]。タイの試験でも、足りない赤ちゃんの割合が88.7%減りました [2]。根拠の確かさは低めです。人数の少ない試験が中心のためです。

この答えの範囲

母乳で育つ正期産の赤ちゃんの、血液中の濃度の話です。

じゃあ、どうする?

研究で使われた量は毎日400IUです。多く飲ませても良い結果は増えず、1,200IUではアレルギーの感作が増えるおそれの指摘もあります [3]。量や始める時期は、小児科や乳児健診で相談して決めましょう。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。8 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量1220研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 92 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 3 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

ビタミンDとは

ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨をつくるのに欠かせない栄養素です。日光を浴びると皮膚でもつくられ、魚やきのこにも含まれます。母乳にはビタミンDが少ないとされ、母乳だけで育つ赤ちゃんは足りなくなりやすいと言われています。サプリは、赤ちゃんに直接飲ませるドロップなどがあります。注意点は、量を多くしても良い結果が増えないことです。

ここまでは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

血液中の濃度は上がる

答えの中心は、マレーシアのRCSI・UCDなどの研究チームが2020年に発表したコクランのレビューです [1]。コクランのレビューとは、決めた手順で比較試験を集めて結果をまとめたものです。母乳で育つ赤ちゃんを対象にした試験が集められました。

研究の種類ランダム化比較試験のメタ解析(コクランのレビュー)
対象母乳で育つ正期産の赤ちゃん(6件・334人)
比べたもの毎日400IUのビタミンD、飲ませない場合
結果血液中のビタミンDの濃度が平均22.63nmol/L高い
まとめて分析した結果毎日400IUで、血液中のビタミンDの濃度は平均22.63nmol/L高くなりました [1]。

不足する割合も下がりました(相対リスク0.57、4件・274人)。

同じ結論は、あとの試験でも出ています。タイの母乳だけで育つ赤ちゃんでは、毎日400IUを飲ませた43人のうち6か月の時点で足りていた赤ちゃんは93.0%でした。飲ませなかった44人では43.2%で、足りない・欠乏の割合は88.7%減りました [2]。台湾の偽薬対照の試験でも、生後10日から飲ませると生後4か月の濃度が高くなりました [4]。

なお、根拠の確かさは低めです。試験の数が6件と少なく、人数も小さいためです。

日光浴と比べると

「日光浴で足りる」と言われますが、インド北部の80人の試験(非盲検)では、サプリ群のほうが日光浴群より生後6か月の濃度が1.36倍高くなりました [5]。足りている赤ちゃんの割合は、サプリ群で10.8%から35.1%に増え、日光浴群は13.9%のままでした。日光浴は体の40%を週に30分以上日に当てる条件でした。実際に守れた割合は日光浴群のほうが低く、著者は差の理由を続けやすさの違いとしています。比べた相手が「飲ませない」ではなく、1本の試験で、日本とは日照の条件も違います。サプリの効果の大きさそのものではなく、日光浴だけでは足りないことがある、という読み方になります。

骨とくる病は、まだ分からない

骨への効果は、研究が足りず確かめられていません。コクランのレビューでは、赤ちゃんへの補給で骨の量やくる病が減るかを判断するには研究が不足していました。この点を調べた結果の確かさは非常に低いとされています(19件・2837組のレビュー全体) [1]。

たとえば台湾の試験では、生後4か月の骨密度と身長に差は見られませんでした [4]。タイの試験でも、骨の代謝に関わる血液検査の値と体の成長に差はありませんでした [2]。ただし、これは「効かない」という意味ではありません。人数の少ない試験で差が見られなかっただけで、効くかどうかは判断できない、というのがコクランの結論です。インドの試験では、くる病になったのは日光浴群の2人でしたが、統計の比較はありません [5]。

お母さんが飲む方法もある

授乳中のお母さんが飲んでも、赤ちゃんの濃度は上がります。コクランのレビュー(7件・597人)で、平均24.60nmol/L高くなりました [1]。ただし、対象はビタミンD不足になりやすい集団です。お母さんが毎日4000IU以上を飲むと、赤ちゃんに毎日400IUを飲ませたときと同じくらいの濃度でした。別のメタ解析では、お母さんの量を1000IU増やすごとに、赤ちゃんの濃度は2.7ng/mL上がりました [6]。お母さんが飲む量は、自己判断で決めず、医師に相談してください。

よく言われていることは本当?

  • 母乳だけだと不足しやすい本当です。 飲ませなかった群では、6か月の時点で足りていた赤ちゃんは43.2%でした [2]。
  • 日光浴で足りる足りないことがあります。 インドの1本の試験で、サプリ群のほうが濃度が1.36倍高く、日光浴群は足りている割合がほぼ変わりませんでした [5]。
  • 補うと骨が丈夫になり、くる病を防ぐ研究が足りません。 骨密度などに差は見られず、くる病が減るかは確かめられていません [1]。
  • お母さんが飲めば赤ちゃんに届く効きます。 量が多い必要があり、根拠の確かさは低めです [1]。
  • アレルギーを予防できる研究が足りません。 系統的レビュー(研究5件)で、減るとは言えませんでした [7]。
  • 免疫が上がり風邪をひきにくくなる母乳の赤ちゃんに限った研究は見つかっていません。

アレルギーの予防は、まだ分からない

アレルギーになりやすい赤ちゃん(飲ませた97人と偽薬の98人)に生後6か月まで毎日400IUを飲ませた試験では、2.5歳まで追っても差はありませんでした [8]。この試験は、生まれたときにビタミンDが足りていた赤ちゃんだけが対象でした。一方、毎日1,200IUのような多い量は、アレルギーの感作を増やすおそれがあるとされています [3]。アレルギー予防の面では、赤ちゃんの保湿の記事も参考になります。

02注意点

研究で使われた量は、毎日400IUを生後6か月まで、というものが中心です [1]。400IUより多く飲ませても良い結果は増えませんでした [3]。コクランのレビューは、高カルシウム血症などの副作用については、判断できないとしています [1]。市販のドロップは1滴あたりの量が商品で違うため、与える量は小児科の医師や薬剤師に確認してください。早産の赤ちゃんや持病がある赤ちゃんは、この研究の対象外です。

量は、多ければよいわけではない

毎日400IUが研究の基準で、1,200IUでアレルギーの感作が増えるおそれの指摘があります。

03まとめ

母乳の赤ちゃんにビタミンDを毎日400IU飲ませると、血液中の濃度は上がります。
骨やくる病、アレルギーへの効果は、研究が足りず分かっていません。
始めるかどうかと量は、乳児健診や小児科で相談して決めましょう。

04よくある質問

Q日光浴だけで足りますか?

インド北部の1本の試験では、サプリ群のほうが日光浴群より濃度が1.36倍高くなりました。日光浴だけでは足りないことがあります。ただし、日光浴を守れた割合が低かったことも影響しています [[36148748]]。

Qいつまで飲ませればよいですか?

研究の多くは生後6か月までです。やめる時期は、離乳食の進み具合を見ながら、小児科で相談してください [[33305822]]。

Qお母さんが飲めば赤ちゃんは飲まなくてよいですか?

お母さんが毎日4000IU以上を飲むと、赤ちゃんに400IUを飲ませたときと同程度でした。対象は不足しやすい集団で、お母さんの量は医師に相談を [[33305822]]。

Qサプリでアレルギーは防げますか?

研究が足りず、減るとは言えませんでした [[28675776]]。多い量(毎日1,200IU)はアレルギーの感作を増やすおそれが指摘されています [[33741755]]。

05参照した論文

判定に使った主な論文(8本)

[1]母乳で育つ赤ちゃんへのビタミンD補給と、不足予防・骨の健康(コクランのレビュー)

発表年
2020年
研究機関
マレーシア・RCSI・UCD
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
334人
結果の向き
良い方向

赤ちゃんに毎日400IUで濃度は平均22.63nmol/L高くなった。骨とくる病は判断できなかった。

[2]タイの完全母乳の赤ちゃんで、ビタミンD補給の有無を比べた試験

発表年
2021年
研究機関
タイ・マヒドン大学ラマティボディ病院
掲載誌
BMC pediatrics
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

足りない・欠乏の割合が88.7%減った。骨の代謝の血液検査の値に差はなかった。

[3]乳児のビタミンD必要量を見直した系統的レビュー

発表年
2021年
研究機関
シャアレ・ツェデク医療センター
掲載誌
Current opinion in clinical nutrition and metabolic care
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

毎日400IUより多くても良い結果は増えず、1200IUは感作を増やすおそれがあるとした。

[4]完全母乳の新生児へのビタミンD3補給の効果を調べた二重盲検試験

発表年
2022年
研究機関
台湾・新竹馬偕紀念医院
掲載誌
Journal of bone and mineral research : the official journal of the American Society for Bone and Mineral Research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
72人
結果の向き
良い方向

生後10日から毎日400IUで生後4か月の濃度が高くなった。骨密度と身長に差はなかった。

[5]日光浴と飲むビタミンDを比べた、乳児期の不足予防の試験

発表年
2022年
研究機関
インド・ユニバーシティ・カレッジ医科大学
掲載誌
Indian pediatrics
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
80人
結果の向き
良い方向

サプリ群のほうが日光浴群より濃度が1.36倍高かった。

[6]授乳中のお母さんのビタミンD補給が母子の濃度に与える影響のメタ解析

発表年
2022年
研究機関
イラン・アルボルズ医科大学
掲載誌
Advances in nutrition (Bethesda, Md.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,337人
結果の向き
良い方向

お母さんの量を1000IU増やすごとに、赤ちゃんの濃度は2.7ng/mL上がった。

[7]アレルギー予防のためのビタミンD補給を調べた系統的レビュー

発表年
2018年
研究機関
カナダ・マクマスター大学
掲載誌
Allergy
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究5件を統合
結果の向き
差なし

5件のレビューで、アレルギーの病気が減るとは言えなかった。確かさは非常に低い。

[8]アレルギーになりやすい赤ちゃんへのビタミンD補給の試験

発表年
2020年
研究機関
オーストラリア・西オーストラリア大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

毎日400IUを飲ませても、2.5歳までのアレルギーの病気に差はなかった。

ほかに参考にした論文(5本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。