ビタミンB6はつわりの吐き気を和らげる?

ビタミンB6はつわりの吐き気を和らげる?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え効く

つわりの吐き気には効きます。吐く回数と重いつわりには効きません。

根拠

つわりの治療を調べた系統的レビュー(78件・8930人)で、軽いつわりの吐き気にビタミンB6はプラセボ(偽薬)より良い結果でした [1]。18件をまとめた解析でも、吐き気のスコアが改善しています [2]。一方、吐く回数は結果が割れ、重いつわりで入院した92人の試験では差がありませんでした [3]。根拠の確かさは低めです。結果のばらつきが大きく、数値をまとめる解析ができなかったためです。コクランのレビューも、支持する根拠は限られると結論しています [4]。

この答えの範囲

妊娠初期の軽い〜中くらいのつわりで、B6を単独で飲む話です。入院が必要な重いつわりや、薬との配合は別です。

じゃあ、どうする?

試すなら、妊娠中の摂取は医師・助産師に相談してからにしましょう。高用量のB6はしびれなどの神経症状の報告があるので、量は自己判断で増やさないでください [5]。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。10 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量19.920研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度05信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 94.9 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 2 本・観察研究 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

ビタミンB6とは

ビタミンB6(ピリドキシン)は、たんぱく質の代謝に関わるビタミンです。魚や肉、野菜などの食品に含まれ、サプリメントにもなっています。つわりの吐き気を和らげるとされ、海外では医師が処方する薬の成分にも使われます。注意点は、摂りすぎるとしびれなどの神経症状が報告されていることです。ここまでは一般的な説明で、この記事の研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、イギリスのニューカッスル・アポン・タイン病院群などの研究チームが2016年に発表した系統的レビューです [1]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する研究を集め、結果を整理する方法です。つわりと重いつわり(妊娠悪阻)の治療を調べた78件・8930人が集められました。

研究の種類つわりと重いつわりの治療を調べた系統的レビュー
対象つわりのある妊婦(78件・8930人)
比べたものビタミンB6、しょうが、抗ヒスタミン薬、吐き気止めなどとプラセボ
結果軽いつわりの吐き気・嘔吐には、ビタミンB6はプラセボより良い結果
系統的レビューの結果軽いつわりの吐き気には、ビタミンB6を飲むとプラセボより良くなりました [1]。

研究のばらつきが大きく、数値をまとめる解析はできませんでした。根拠の質は全体として低いと評価されています。

別の解析も同じ向きです。ビタミンB6を単独、またはほかの成分と併用して飲んだ18件をまとめると、吐き気のスコア(Rhodesスコア)が0.78点改善しました [2]。2024年までの研究を対象にしたネットワークメタ解析でも、ビタミンB6は吐き気・嘔吐を和らげる方法の一つとされましたが、不確かさが大きいと注記されています [6]。

根拠の確かさは低めです。理由は、研究どうしの結果のばらつきが大きく、数値をまとめる解析ができなかったことです [1]。個別の試験では、妊娠17週以下の342人に毎日30mgを5日間飲んでもらった試験では、吐き気のスコアの下がり方がプラセボより大きくなりました [7]。

よく言われていることは本当?

  • ビタミンB6を飲むとつわりの吐き気が軽くなる軽くなります。 複数のまとめ研究で向きがそろっています [1] [2]。
  • ビタミンB6で吐く回数が減る効きません。 ただし研究の結果は割れています。342人の試験は、回数がより多く減ったものの統計的に意味のある差ではありませんでした [7]。59人の試験では、3日間のあとに吐いた人がB6群で31人中8人、プラセボ群で28人中15人と少なくなりました [8]。2本だけの比較なので、確かなことは言えません。
  • 重いつわりにもビタミンB6が役立つ役立ちません。 入院した92人の試験で、通常の治療に加えても再入院・吐く回数・吐き気は改善しませんでした [3]。
  • 日本人の妊婦でB6と葉酸が効いた研究が足りません。 メーカーの学会発表はありますが、査読を受けた論文は見つかっていません。
  • B6は摂りすぎるとしびれなどが出る本当です。 高用量を調べた系統的レビューで、摂りすぎの報告1226人中164人に、しびれ・ピリピリ感・ふらつきなどの神経症状が出ていました [5]。
  • 海外のB6とドキシラミンの配合薬が効くプラセボより症状は大きく改善しましたが、B6単独の効果ではありません [9]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

59人の試験では、吐き気が強い人ではビタミンB6のほうがプラセボより吐き気が軽くなりましたが、軽い〜中くらいの人や全体では差がありませんでした [8]。対象者の吐き気の強さで、結果が変わることが示された試験です。

差がなかった試験重いつわりで入院した妊婦92人

再入院は、B6群で37.5%、プラセボ群で21.1%で、統計的に意味のある差はありませんでした。

コクランのレビュー(41件・5449人)は、ビタミンB6などの薬が軽い〜中くらいの吐き気・嘔吐を和らげることを支持する根拠は限られていた、と結論しています [4]。効かないという意味ではなく、強い根拠がないという評価です。

02注意点

研究で使われた量は、25mgを8時間ごとに72時間(3日)[8]、40mgを1日2回 [10]、毎日30mgを5日間 [7]などです。いずれも短い期間の試験で、長く飲み続けた結果ではありません。高用量では神経症状の報告があります [5]。これらは試験で使われた量で、同じ量を自己判断で飲んでよいという意味ではありません。妊娠中にサプリを使うかどうか、量をどうするかは、医師・助産師に相談してください。

妊娠中のサプリは、相談してから

量を自己判断で増やさず、つわりが重いときは早めに受診してください。

03まとめ

ビタミンB6は、軽いつわりの吐き気を和らげます。
吐く回数や重いつわりには効かず、根拠の確かさも低めです。
使うかどうかは、医師・助産師と量を確かめて決めましょう。

04よくある質問

QビタミンB6はいつ飲むと効きますか?

研究では、3日から5日ほど飲んで吐き気を評価した試験があります [[2047064]] [[7573262]]。何時に飲むと効くかは、研究では確かめられていません。

QしょうがとビタミンB6はどちらが効きますか?

しょうがとビタミンB6を比べたまとめ研究では、症状・吐き気・嘔吐のいずれにも有意な差はありませんでした [[31937153]]。77人の試験でも、両者の合計スコアに差はありませんでした [[28629250]]。

Q重いつわりのときもB6を飲めばいいですか?

入院が必要な重いつわりでは、B6を加えても再入院や吐く回数は改善しませんでした [[19077388]]。水分がとれないほど重いときは、早めに受診してください。

Q食事からとるだけでも足りますか?

食事で吐き気が和らぐかどうかは、この記事の研究では確かめられていません。研究で調べられたのはサプリや錠剤です。

05参照した論文

判定に使った主な論文(10本)

[1]つわりと重いつわりの治療を調べた系統的レビュー

発表年
2016年
研究機関
イギリス・ニューカッスル・アポン・タイン病院群
掲載誌
JAMA
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
8,930人
結果の向き
良い方向

つわりの治療を広く調べ、軽いつわりの吐き気にはピリドキシンがプラセボより良い傾向でした。根拠の質は低めです。

[2]つわりに対するビタミンB6補充の系統的レビューとメタ解析

発表年
2023年
研究機関
スリランカ・コロンボ大学
掲載誌
Archives of gynecology and obstetrics
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究18件を統合
結果の向き
良い方向

18件をまとめ、ビタミンB6の単独または併用で吐き気のスコアが有意に改善しました。

[3]重いつわりに対する経口ピリドキシンのプラセボ対照試験

発表年
2009年
研究機関
マレーシア・マラヤ大学
掲載誌
Gynecologic and obstetric investigation
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

入院した92人で、ピリドキシンを加えても再入院・吐く回数・吐き気は改善しませんでした。

[4]妊娠初期の吐き気と嘔吐に対する対処法のコクランレビュー

発表年
2015年
研究機関
アイルランド・ダブリン・シティ大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

41件・5449人を調べ、ビタミンB6などの薬を支持する根拠は限られるとしました。

[5]つわりへの高用量ビタミンB6の危険性を調べた系統的レビュー

発表年
2025年
研究機関
中国・遵義医科大学
掲載誌
International journal of gynaecology and obstetrics: the official organ of the International Federation of Gynaecology and Obstetrics
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
悪い方向

摂りすぎの報告1226人中164人に、しびれやふらつきなどの神経症状が出ていました。

[6]つわりの薬やツボ押しなどを比べたネットワークメタ解析

発表年
2026年
研究機関
ハンガリー・センメルワイス大学
掲載誌
Nutrients
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,017人
結果の向き
良い方向

RCT24件・3017人をまとめ、ビタミンB6は和らげる方法の一つとされましたが、不確かさが大きい結果です。

[7]ピリドキシンの二重盲検プラセボ対照試験

発表年
1995年
研究機関
タイ・チェンマイ大学
掲載誌
American journal of obstetrics and gynecology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

妊娠17週以下の342人で、毎日30mgを飲んだ人は吐き気のスコアの下がり方が大きくなりました。

[8]ビタミンB6の二重盲検プラセボ対照試験

発表年
1991年
研究機関
アメリカ・アイオワ大学
掲載誌
Obstetrics and gynecology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

59人で、3日後に吐いた人はB6群31人中8人、プラセボ群28人中15人でした。

[9]ドキシラミンとピリドキシンの配合薬のプラセボ対照試験

発表年
2010年
研究機関
カナダ・トロント大学
掲載誌
American journal of obstetrics and gynecology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

配合薬はプラセボより症状を大きく改善しました。ピリドキシン単独の効果ではありません。

[10]しょうが・ビタミンB6・プラセボを比べた試験

発表年
2018年
研究機関
イラン・イラン医科大学
掲載誌
The journal of maternal-fetal & neonatal medicine : the official journal of the European Association of Perinatal Medicine, the Federation of Asia and Oceania Perinatal Societies, the International Society of Perinatal Obstetricians
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

77人で、B6はプラセボより症状を和らげ、しょうがと差はありませんでした。

ほかに参考にした論文(2本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。