[1]妊娠前後の葉酸サプリで先天異常を防げるかを調べたコクランレビュー
- 発表年
- 2015年
- 研究機関
- カナダ・マイクロニュートリエント・イニシアティブ
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 6,708人
- 結果の向き
- 良い方向
妊娠前後に毎日葉酸を飲むと、神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍でした。

妊娠前から毎日飲み始めると効きます。神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍になりました。
神経管閉鎖障害は、脳や背骨のもとになる神経管が閉じない先天異常(二分脊椎・無脳症)で、調べられたのはこれだけです。初めての妊娠の予防は比較試験1件では差が確定せず、観察研究が支えます。妊娠が分かってから始めた場合は、比較試験がなく、観察研究の結果も割れています。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 14.8 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 3 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 87.8 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 88 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「高い」で、これを強度の上限にしています。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
葉酸は、ビタミンB群の一種で、野菜や豆などの食べ物にも含まれ、サプリメントでも摂れます。細胞が新しくつくられるときに使われ、妊娠を考える女性が摂ると、赤ちゃんの神経管閉鎖障害を防ぐとされています。神経管閉鎖障害は、脳や背骨のもとになる神経管がうまく閉じない先天異常で、二分脊椎や無脳症があります。注意点は、持病や服薬がある人は量を医師や薬剤師に確認することです。
答えの中心は、カナダのマイクロニュートリエント・イニシアティブなどの研究チームが2015年に発表したコクラン・レビューです [1]。コクラン・レビューとは、質の高い比較試験を決めた手順で集め、結果をまとめる方法です。調べられたのは、妊娠前から妊娠初期まで毎日飲む使い方です。
| 研究の種類 | ランダム化比較試験5件をまとめたコクラン・レビュー |
|---|---|
| 対象 | 妊娠を考えている女性7391人(以前に神経管閉鎖障害の妊娠を経験した2033人と、経験のない5358人。6708件の出産で確認) |
| 比べたもの | 毎日の葉酸(単独またはビタミン・ミネラルと一緒)と、葉酸なし |
| 結果 | 神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍 |
経験のない人の初めての妊娠だけを見た比較試験は1件で差が確定せず、観察研究(北米の症例対照研究で0.4倍)が支えます [5]。
神経管は、受精からおよそ28日ごろにできあがります [2] [6]。ほとんどの女性は、この時期にまだ妊娠に気づいていません [2]。葉酸が足りないとDNAの合成や修復がうまく進まず、神経管閉鎖障害の原因になると考えられています [7]。そのため、アメリカの予防医療作業部会は、妊娠を計画している人に、妊娠の少なくとも1か月前から妊娠の最初の2〜3か月間、毎日400〜800µgの葉酸を含むサプリメントをすすめています。(厚生労働省「統合医療」情報発信サイトの解説による)
葉酸は、飲んだ日にすぐ目安の量に届くわけではありません。デンマークの、妊娠していない女性198人の試験では、1日400µgを飲んで、赤血球の葉酸が神経管閉鎖障害のリスクが低い目安に届いた人は、**4週後に31.3%、8週後に54.5%**でした [4]。数字は血液の葉酸が目安に届いた人の割合で、病気の減り方ではありません。
「遅い」と断定できる研究は見つかっていません。一方で、「間に合う」と確かめた比較試験もありません。アメリカ・カリフォルニアの症例対照研究では、妊娠後の最初の3か月に葉酸入りのビタミン剤を飲んでいた人は、神経管閉鎖障害のリスクが低い関連がありました(オッズ比0.60)[8]。ただし、妊娠後に飲んでいたかを聞いた調査で、始めた時期を調べた研究ではありません。
始めた時期を調べた観察研究は結果が割れています。中国の女性17,713人の研究では、妊娠1か月目に飲み始めた人は先天異常全体のリスクが低い関連がありました(オッズ比0.55)[9]。デンマークとノルウェーの研究では、妊娠後0〜4週に始めた人で赤ちゃんの心臓の病気に差はありませんでした(相対リスク1.09)[10]。
妊娠最初の6週間の葉酸はオッズ比0.74で、著者は、研究が小さく効果がないとは言い切れないとしています [11]。
妊娠の1か月以上前から飲むと防げる
ハンガリーの試験では、妊娠の少なくとも1か月前から葉酸0.8mg入りのビタミン剤を飲んだグループで神経管閉鎖障害は1件もなく、微量元素だけの錠剤を飲んだ対照のグループで6件でした [3]。 ただしコクラン・レビューの分析では差が確定しませんでした。1か月前と直前を比べた研究ではありません。妊娠に気づいてから飲み始めると間に合わないことがある
神経管ができる時期は、ほとんどの女性がまだ妊娠に気づいていない時期と重なります [2]。 ただ、気づいてから始めると間に合わないと確かめた研究は見つかっていません。妊娠が分かってからでも、すぐ飲み始めたほうがよい
根拠は弱めです。 比較試験はなく、観察研究の結果も上の節のとおり割れています。食事だけでは足りない
イギリス・北アイルランドの41人の小さな試験で、葉酸の多い普通の食べ物を増やしても、赤血球の葉酸は上がりませんでした。 サプリでは上がりました [12]。妊娠12週までが特に大切
12週までの摂取がすすめられていますが [7]、12週で止めた場合と続けた場合を比べた研究は見つかりませんでした。授乳期の終わりまで飲み続ける
授乳期の葉酸サプリの効果を調べた研究は、今回の検索の範囲では見つかっていません。試験で使われた量は、1日400µg以上です [1]。副作用や飲みすぎの上限は、今回集めた研究では調べていません。日本の妊婦11,562人の調査では、食事からの葉酸が少ない人のうち、適切な時期から飲んでいた人は18.0%でした [13]。持病や服薬がある人、以前に神経管閉鎖障害の妊娠を経験した人は、量を医師や薬剤師に確認してください。
妊娠を考え始めたら、早めに医師や薬剤師に相談して始めましょう。
妊娠前から毎日飲み始めると、神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍になりました。
体内の葉酸が目安に届くまで数週間かかるので、妊娠を考え始めた時点が飲み始めの目安です。
妊娠が分かってからの場合は、遅いと決めつけず、すぐ医師に相談しましょう。
意味がないとは言えません。妊娠後に飲んでいた人を調べた観察研究では、リスクが低い関連があった研究と、はっきりした差がなかった研究があります。始めた時期を調べた研究ではなく、比較試験もないので、気づいたらすぐ医師に相談してください。
妊娠前から妊娠初期の終わりまで、1日400µgがすすめられています [[38728462]]。12週で止めた場合と続けた場合を比べた研究は、見つかりませんでした。
試験では、目安に届いた人は8週後に400µgで54.5%、800µgで83.8%でした [[28447203]]。病気を防ぐ効果が上がるかは確かめられていません。量は医師に相談してください。
妊娠前後に毎日葉酸を飲むと、神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍でした。
神経管は受精からおよそ28日ごろにでき、多くの女性は妊娠に気づいていません。
妊娠の少なくとも1か月前から飲んだグループでは、神経管閉鎖障害が1件もありませんでした。
400µgで目安に届いた人は、4週後31.3%、8週後54.5%でした。
最後の生理の28日前から28日後まで毎日飲んだ人は、リスクが0.4倍でした。
神経管は受精後28日までにできあがります。
妊娠前から妊娠初期の終わりまで1日400µgがすすめられています。
妊娠後の最初の3か月に飲んだ人は、リスクが低い関連がありました(オッズ比0.60)。
妊娠1か月目に飲み始めた人は、先天異常全体のリスクが低い関連がありました(オッズ比0.55)。
妊娠後0〜4週に飲み始めた人で、心臓の病気にはっきりした差はありませんでした(相対リスク1.09)。
妊娠最初の6週間の葉酸は、はっきりした差がありませんでした(オッズ比0.74)。
葉酸の多い普通の食べ物を増やしても、赤血球の葉酸は上がりませんでした。
食事の葉酸が少ない妊婦11,562人のうち、適切な時期から飲んでいた人は18.0%でした。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。