葉酸はいつから飲み始めると妊娠に良い?

葉酸はいつから飲み始めると妊娠に良い?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.01
答え妊娠前から飲む

妊娠前から毎日飲み始めると効きます。神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍になりました。

根拠

妊娠を考えている女性7391人の比較試験5件をまとめたコクラン・レビューで、妊娠前から妊娠初期まで毎日葉酸を飲んだ人は、飲まなかった人より神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍でした。研究の確実性は高いとされています [1]。7391人のうち2033人は以前に神経管閉鎖障害の妊娠を経験した人、5358人は経験のない人です。神経管は受精からおよそ28日でできあがり、その時期は、ほとんどの女性がまだ妊娠に気づいていません [2]。

この答えの範囲

神経管閉鎖障害は、脳や背骨のもとになる神経管が閉じない先天異常(二分脊椎・無脳症)で、調べられたのはこれだけです。初めての妊娠の予防は比較試験1件では差が確定せず、観察研究が支えます。妊娠が分かってから始めた場合は、比較試験がなく、観察研究の結果も割れています。

じゃあ、どうする?

妊娠を考え始めた時点から毎日飲み始めるのが、研究の条件に近い使い方です。選ぶときの条件は次のとおりです。

  • 葉酸が1日400µg以上のもの [1]
  • 試験では、妊娠の少なくとも1か月前から飲んでいた [3]
  • 毎日400µgでも、血液の葉酸が目安に届いた人は8週後で54.5%。数週間かかるので、早めに始める [4]
    持病や服薬がある人は、医師か薬剤師に量を確認してください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。高い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 88 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量14.820研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ310最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 87.8 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 88 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「高い」で、これを強度の上限にしています。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

葉酸とは

葉酸は、ビタミンB群の一種で、野菜や豆などの食べ物にも含まれ、サプリメントでも摂れます。細胞が新しくつくられるときに使われ、妊娠を考える女性が摂ると、赤ちゃんの神経管閉鎖障害を防ぐとされています。神経管閉鎖障害は、脳や背骨のもとになる神経管がうまく閉じない先天異常で、二分脊椎や無脳症があります。注意点は、持病や服薬がある人は量を医師や薬剤師に確認することです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、カナダのマイクロニュートリエント・イニシアティブなどの研究チームが2015年に発表したコクラン・レビューです [1]。コクラン・レビューとは、質の高い比較試験を決めた手順で集め、結果をまとめる方法です。調べられたのは、妊娠前から妊娠初期まで毎日飲む使い方です。

研究の種類ランダム化比較試験5件をまとめたコクラン・レビュー
対象妊娠を考えている女性7391人(以前に神経管閉鎖障害の妊娠を経験した2033人と、経験のない5358人。6708件の出産で確認)
比べたもの毎日の葉酸(単独またはビタミン・ミネラルと一緒)と、葉酸なし
結果神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍
まとめて分析した結果妊娠前後に毎日葉酸を飲んだ人は、飲まなかった人より神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍でした [1]。

経験のない人の初めての妊娠だけを見た比較試験は1件で差が確定せず、観察研究(北米の症例対照研究で0.4倍)が支えます [5]。

神経管はいつ閉じる?

神経管は、受精からおよそ28日ごろにできあがります [2] [6]。ほとんどの女性は、この時期にまだ妊娠に気づいていません [2]。葉酸が足りないとDNAの合成や修復がうまく進まず、神経管閉鎖障害の原因になると考えられています [7]。そのため、アメリカの予防医療作業部会は、妊娠を計画している人に、妊娠の少なくとも1か月前から妊娠の最初の2〜3か月間、毎日400〜800µgの葉酸を含むサプリメントをすすめています。(厚生労働省「統合医療」情報発信サイトの解説による)

飲み始めてから、体内の葉酸が届くまで

葉酸は、飲んだ日にすぐ目安の量に届くわけではありません。デンマークの、妊娠していない女性198人の試験では、1日400µgを飲んで、赤血球の葉酸が神経管閉鎖障害のリスクが低い目安に届いた人は、**4週後に31.3%、8週後に54.5%**でした [4]。数字は血液の葉酸が目安に届いた人の割合で、病気の減り方ではありません。

妊娠が分かってから始めたら?

「遅い」と断定できる研究は見つかっていません。一方で、「間に合う」と確かめた比較試験もありません。アメリカ・カリフォルニアの症例対照研究では、妊娠後の最初の3か月に葉酸入りのビタミン剤を飲んでいた人は、神経管閉鎖障害のリスクが低い関連がありました(オッズ比0.60)[8]。ただし、妊娠後に飲んでいたかを聞いた調査で、始めた時期を調べた研究ではありません。

始めた時期を調べた観察研究は結果が割れています。中国の女性17,713人の研究では、妊娠1か月目に飲み始めた人は先天異常全体のリスクが低い関連がありました(オッズ比0.55)[9]。デンマークとノルウェーの研究では、妊娠後0〜4週に始めた人で赤ちゃんの心臓の病気に差はありませんでした(相対リスク1.09)[10]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

差がはっきりしなかった研究西オーストラリアの症例対照研究。神経管閉鎖障害の赤ちゃんの母親77人と対照を比較

妊娠最初の6週間の葉酸はオッズ比0.74で、著者は、研究が小さく効果がないとは言い切れないとしています [11]。

よく言われていることは本当?

  • 妊娠の1か月以上前から飲むと防げるハンガリーの試験では、妊娠の少なくとも1か月前から葉酸0.8mg入りのビタミン剤を飲んだグループで神経管閉鎖障害は1件もなく、微量元素だけの錠剤を飲んだ対照のグループで6件でした [3]。 ただしコクラン・レビューの分析では差が確定しませんでした。1か月前と直前を比べた研究ではありません。

  • 妊娠に気づいてから飲み始めると間に合わないことがある神経管ができる時期は、ほとんどの女性がまだ妊娠に気づいていない時期と重なります [2]。 ただ、気づいてから始めると間に合わないと確かめた研究は見つかっていません。

  • 妊娠が分かってからでも、すぐ飲み始めたほうがよい根拠は弱めです。 比較試験はなく、観察研究の結果も上の節のとおり割れています。

  • 食事だけでは足りないイギリス・北アイルランドの41人の小さな試験で、葉酸の多い普通の食べ物を増やしても、赤血球の葉酸は上がりませんでした。 サプリでは上がりました [12]。

  • 妊娠12週までが特に大切12週までの摂取がすすめられていますが [7]、12週で止めた場合と続けた場合を比べた研究は見つかりませんでした。

  • 授乳期の終わりまで飲み続ける授乳期の葉酸サプリの効果を調べた研究は、今回の検索の範囲では見つかっていません。

02注意点

試験で使われた量は、1日400µg以上です [1]。副作用や飲みすぎの上限は、今回集めた研究では調べていません。日本の妊婦11,562人の調査では、食事からの葉酸が少ない人のうち、適切な時期から飲んでいた人は18.0%でした [13]。持病や服薬がある人、以前に神経管閉鎖障害の妊娠を経験した人は、量を医師や薬剤師に確認してください。

量と飲み始めの時期を、研究の条件と照らして考える

妊娠を考え始めたら、早めに医師や薬剤師に相談して始めましょう。

03まとめ

妊娠前から毎日飲み始めると、神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍になりました。
体内の葉酸が目安に届くまで数週間かかるので、妊娠を考え始めた時点が飲み始めの目安です。
妊娠が分かってからの場合は、遅いと決めつけず、すぐ医師に相談しましょう。

04よくある質問

Q妊娠が分かってから飲み始めても意味はありませんか?

意味がないとは言えません。妊娠後に飲んでいた人を調べた観察研究では、リスクが低い関連があった研究と、はっきりした差がなかった研究があります。始めた時期を調べた研究ではなく、比較試験もないので、気づいたらすぐ医師に相談してください。

Qいつまで飲めばよいですか?

妊娠前から妊娠初期の終わりまで、1日400µgがすすめられています [[38728462]]。12週で止めた場合と続けた場合を比べた研究は、見つかりませんでした。

Q毎日400µgより多く飲むと早く届きますか?

試験では、目安に届いた人は8週後に400µgで54.5%、800µgで83.8%でした [[28447203]]。病気を防ぐ効果が上がるかは確かめられていません。量は医師に相談してください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]妊娠前後の葉酸サプリで先天異常を防げるかを調べたコクランレビュー

発表年
2015年
研究機関
カナダ・マイクロニュートリエント・イニシアティブ
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
6,708人
結果の向き
良い方向

妊娠前後に毎日葉酸を飲むと、神経管閉鎖障害のリスクが0.31倍でした。

[2]神経管閉鎖障害の世界の頻度・原因・予防のレビュー

発表年
2023年
研究機関
アメリカ・エモリー大学
掲載誌
Child's nervous system : ChNS : official journal of the International Society for Pediatric Neurosurgery
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

神経管は受精からおよそ28日ごろにでき、多くの女性は妊娠に気づいていません。

[3]妊娠前後のビタミン剤で神経管閉鎖障害の初発を防ぐ試験

発表年
1992年
研究機関
ハンガリー・国立衛生研究所
掲載誌
The New England journal of medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
4,753人
結果の向き
良い方向

妊娠の少なくとも1か月前から飲んだグループでは、神経管閉鎖障害が1件もありませんでした。

[4]妊娠していない女性で葉酸400µgと800µgの血中濃度を比べた試験

発表年
2018年
研究機関
デンマーク・オーフス大学
掲載誌
European journal of nutrition
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
198人
結果の向き
良い方向

400µgで目安に届いた人は、4週後31.3%、8週後54.5%でした。

[5]妊娠前後の葉酸の使用と神経管閉鎖障害のリスクを調べた症例対照研究

発表年
1993年
研究機関
アメリカ・ボストン大学
掲載誌
JAMA
研究の種類
症例対照研究ある病気の人とそうでない人で、過去の生活習慣などを比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

最後の生理の28日前から28日後まで毎日飲んだ人は、リスクが0.4倍でした。

[6]葉酸と先天異常の予防の30年を振り返るレビュー

発表年
2022年
研究機関
アメリカ・アメリカ疾病予防管理センター
掲載誌
Annual review of nutrition
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

神経管は受精後28日までにできあがります。

[7]葉酸サプリと神経管閉鎖障害の予防についての系統的レビュー

発表年
2024年
研究機関
エチオピア・アンボ大学
掲載誌
Medicine
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

妊娠前から妊娠初期の終わりまで1日400µgがすすめられています。

[8]妊娠前後のビタミン剤の使用と神経管閉鎖障害の症例対照研究

発表年
1995年
研究機関
アメリカ・カリフォルニア州先天異常監視プログラム
掲載誌
Epidemiology (Cambridge, Mass.)
研究の種類
症例対照研究ある病気の人とそうでない人で、過去の生活習慣などを比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

妊娠後の最初の3か月に飲んだ人は、リスクが低い関連がありました(オッズ比0.60)。

[9]葉酸を飲み始めた時期と期間が先天異常の予防に与える関連を調べた研究

発表年
2023年
研究機関
中国・復旦大学
掲載誌
BMC medicine
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
17,713人
結果の向き
良い方向

妊娠1か月目に飲み始めた人は、先天異常全体のリスクが低い関連がありました(オッズ比0.55)。

[10]母親の葉酸サプリと赤ちゃんの心臓の病気の関連を調べたデンマーク・ノルウェーの出生コホート

発表年
2019年
研究機関
ノルウェー・ベルゲン大学
掲載誌
Journal of the American Heart Association
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
197,123人
結果の向き
差なし

妊娠後0〜4週に飲み始めた人で、心臓の病気にはっきりした差はありませんでした(相対リスク1.09)。

[11]西オーストラリアの症例対照研究と関連論文のレビュー

発表年
1992年
研究機関
オーストラリア・プリンセス・マーガレット病院
掲載誌
Journal of epidemiology and community health
研究の種類
症例対照研究ある病気の人とそうでない人で、過去の生活習慣などを比べる研究。
対象
—
結果の向き
差なし

妊娠最初の6週間の葉酸は、はっきりした差がありませんでした(オッズ比0.74)。

[12]食事の葉酸を増やしたときの赤血球の葉酸の変化を調べた試験

発表年
1996年
研究機関
イギリス・北アイルランドのアルスター大学
掲載誌
Lancet (London, England)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
41人
結果の向き
良い方向

葉酸の多い普通の食べ物を増やしても、赤血球の葉酸は上がりませんでした。

[13]日本の妊婦の葉酸サプリ使用を調べた東北メディカル・メガバンクの研究

発表年
2022年
研究機関
日本・東北大学
掲載誌
The journal of maternal-fetal & neonatal medicine : the official journal of the European Association of Perinatal Medicine, the Federation of Asia and Oceania Perinatal Societies, the International Society of Perinatal Obstetricians
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
11,562人
結果の向き
差なし

食事の葉酸が少ない妊婦11,562人のうち、適切な時期から飲んでいた人は18.0%でした。

ほかに参考にした論文(8本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。