[1]男性不妊に対するサプリのランダム化比較試験のメタ解析
- 発表年
- 2025年
- 研究機関
- デンマーク・オールボー大学
- 掲載誌
- Nutrients
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 研究50件を統合
- 結果の向き
- 良い方向
サプリの RCT をまとめ、亜鉛と葉酸の組み合わせは精子の濃度を改善したが、妊娠・出産への効果は見られなかった。

精子の濃度には効きます。ただし研究の結果は割れていて、出産の割合は変わりません。
妊活中・不妊治療中の男性が飲むサプリの話です。効くとする根拠と差なしの根拠が、同じ重さで割れています。健康な男性や食事の葉酸は、この答えに入りません。
精液の値が気になるなら、まず検査で状態を知り、泌尿器科や不妊外来の医師と決めましょう。最大の RCT では、DNA に傷のある精子の割合が少し増えました (29.7%対27.2%) [3]。自己判断で量を増やさないでください。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 10 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 12.5 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 2 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 74.5 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 2 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
葉酸は、細胞が DNA をつくるときに使われるビタミン B 群の一つです。妊活では女性が飲むものというイメージが強いですが、精子も作り続けられるため、男性にも関係すると考えられてきました。亜鉛と組み合わせたサプリが多く、精子の数や動きを良くするとうたわれています。注意点は、男性への効果を調べた研究の結果が割れていることです。
答えの中心は、デンマークのオールボー大学などの研究チームが2025年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、同じ条件の試験の結果を集めて、数字で合わせて分析する方法です。男性不妊のサプリを12週以上飲んでプラセボと比べた RCT が集められました。
| 研究の種類 | 男性不妊のサプリの RCT をまとめた系統的レビューとメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 不妊の男性 (RCT 50件はサプリ全体の件数で、葉酸だけの件数ではありません) |
| 比べたもの | 12週以上飲んだサプリとプラセボ (亜鉛と葉酸の組み合わせを含む) |
| 結果 | 亜鉛と葉酸の組み合わせで精子の濃度が改善。運動率や形が良くなったとは書かれていない |
運動率や形の改善は、ほかの成分 (セレン・カルニチンなど) の結果で、葉酸ではありません。
この解析は、どのサプリについても納得できる根拠は無いと結論しており、研究の多くに偏りの懸念がありました。葉酸だけを見ると、さらに慎重な結果です。不妊の男性が葉酸5 mg を3〜6か月飲んだ RCT 4件をまとめた2020年の解析では、精子の濃度は対照より高めでしたが、はっきりした差とは言えませんでした (平均差3.54、95%信頼区間 -1.40〜8.48) [2]。
最大の RCT は、アメリカの国立小児保健発達研究所などが2020年に発表した FAZST という試験です [3]。不妊治療を受ける予定のカップルの男性が、葉酸5 mg と亜鉛30 mg を毎日6か月飲みました。精子の濃度・運動率・形などは、プラセボとほとんど差がありませんでした。
葉酸と亜鉛を6か月飲んでも、精液の値はプラセボと同じでした。
一方で、小さな試験には効いたという結果もあります。妊娠しにくい男性に亜鉛と葉酸を飲んでもらった2002年の試験では、正常な精子の総数が74%増えました [4]。精索静脈瘤の手術を受けた男性では、葉酸だけでも精子の数が増えました [5]。反対に、精子の数・運動率・形のすべてに異常がある男性では、16週飲んでも改善しませんでした [6]。
結果が割れる理由は、はっきり分かっていません。対象の男性 (手術後・異常の程度)、飲んだ期間、遺伝子の型の違いが候補です。葉酸の代謝にかかわる MTHFR という遺伝子が TT 型の人だけ、精液の値が改善した試験もあります [7]。
研究で使われた量は、葉酸5 mg の試験が中心です。FAZST では男性 (平均33歳) が葉酸5 mg と亜鉛30 mg を毎日6か月飲み、胃の不快感や吐き気がサプリのグループで多くなりました [3]。持病や服薬がある人、不妊治療中の人は、飲む前に医師や薬剤師に確認してください。葉酸と亜鉛を飲んで精子の DNA の傷が増えた報告があるため、量を自己判断で増やすのは避けましょう。
結果が割れているので、検査で状態を見ながら医師と決めるのが安全です。
葉酸は、精子の濃度を上げたという解析と、差はないという解析に割れています。出産の割合は変わらず、精子の DNA の傷はむしろ少し増えました。
葉酸を飲むなら、検査結果を持って医師に相談しましょう。パートナーの葉酸は別の話で、葉酸で妊娠しやすくなる? で扱っています。
研究は亜鉛との組み合わせがほとんどです。古い試験では精子の数が増えましたが [[11872201]]、最大の RCT では組み合わせでも精液の値に差はありませんでした [[31910279]]。
研究では確かめられていません。男性が葉酸を飲んでも、精子の DNA メチル化は変わりませんでした [[34656303]]。
FAZST では、葉酸5 mg と亜鉛30 mg を飲んだ男性に、胃の不快感や吐き気が多く見られました [[31910279]]。気になる症状が出たら、医師に相談してください。
サプリの RCT をまとめ、亜鉛と葉酸の組み合わせは精子の濃度を改善したが、妊娠・出産への効果は見られなかった。
葉酸を飲んだ人の精子の濃度は高めだったが、はっきりした差とは言えなかった。
男性が葉酸と亜鉛を飲んでも、精液の値と赤ちゃんが生まれた割合に差はなく、DNA に傷のある精子は少し増えた。
妊娠しにくい男性で、亜鉛と葉酸を一緒に飲むと正常な精子の総数が74%増えた。
精索静脈瘤の手術を受けた男性で、葉酸だけでも精子の数が増えた。
精子の数・運動率・形のすべてに異常がある男性では、亜鉛と葉酸を16週飲んでも精子の質は改善しなかった。
TT 型の人だけ精液の値が改善し、ほかの型では差がなかった。
葉酸を含む複数成分のサプリで、精液の値は改善せず、赤ちゃんが生まれた割合にも差がなかった。
葉酸を含む複数成分のサプリを飲んでも、妊娠が続いた割合はプラセボと差がなかった。
葉酸を3か月飲むと、精子の DNA の傷の指標が短くなった。
葉酸と亜鉛を6か月飲んでも、精子の DNA メチル化はプラセボと変わらなかった。
葉酸の摂取量が多い人ほど、染色体の数に異常のある精子が少なかった。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。