栄養補助食品で高齢者の低栄養は改善する?

栄養補助食品で高齢者の低栄養は改善する?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え

低栄養のおそれがある高齢者では、体重が平均2.2%多く増えました。学術論文としては、まだ断定できていません。

根拠

低栄養のおそれがある高齢者の試験42件のまとめで、栄養補助食品をとった人は体重が平均2.2%多く増えました [1]。虚弱な高齢者の試験11件・822人 [2] や、はっきり低栄養と診断された高齢者の試験6件 [3] に絞ると、体重の差ははっきりしませんでした。合併症は、大腿骨骨折の高齢者の試験11件のまとめで、飲む栄養補助食品をとった人で減りました [4]。低栄養の改善については、学術論文としては、まだ断定できていません。

この答えの範囲

低栄養のおそれがある高齢者で確かめた結果です。ここでの栄養補助食品は、エネルギーとたんぱく質を補う飲料などを食事に上乗せするものです。

じゃあ、どうする?

食が細くなった親には、まず食事の内容と量を見直し、補助食品は食事に足す形で。体重が減り続けるときは、原因を調べるために医師や管理栄養士に相談を。筋力は、栄養だけでなく運動との組み合わせも フレイルは運動と栄養をあわせると予防しやすい?。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。限定的
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。12 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 39 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量2020研究件数と参加人数
一致度16.725結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 91.7 点を、エビデンス強度 D の範囲(5〜39 点)に収めて、スコアは 39 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 3 本・観察研究 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「非常に低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から D に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

栄養補助食品とは

栄養補助食品 (経口栄養補助食品) は、エネルギーやたんぱく質を少ない量で補う飲み物などです。食が細くなった高齢者の食事に足して使われ、市販の飲むタイプが多く研究されています。注意点は、食事の代わりではなく上乗せで使うことと、味や量が合わず続かない人がいることです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

体重は増えるのか

答えの中心は、Milneらの研究チームが2009年に発表した Cochrane のレビューです [1]。Cochrane のレビューとは、決めた手順で試験を集めて結果をまとめる方法です。高齢者の試験62件・10,187人が集められました。

研究の種類ランダム化比較試験のまとめ (Cochrane のレビュー)
対象低栄養、またはそのおそれがある高齢者 (試験62件・10,187人)
比べたもの栄養補助食品あり と なし (または通常のケア)
結果体重の変化率が、補助食品ありで平均2.2%多かった (試験42件)
まとめて分析した結果低栄養のおそれがある高齢者では、体重が平均2.2%多く増えました [1]。

多くの試験は質が低く、入院日数は短くなりませんでした。

根拠の確かさは低めです。試験の質に弱さがあるためです。さらに、対象を絞ると結果が変わります。

虚弱な人、低栄養と診断された人を調べた研究

  • 虚弱な高齢者: イギリスのニューカッスル大学の研究チームが2022年に発表した試験11件・822人のまとめでは、体重の差ははっきりしませんでした。確実性は非常に低く、11件のうち6件は企業が資金を出していました [2]。
  • はっきり低栄養と診断された高齢者: スペインのラモン・イ・カハール大学病院などの研究チームが2019年に発表した試験6件のまとめでも、体重の差ははっきりしませんでした [3]。
  • 個別の試験は割れています。スリランカのコロンボ大学の50人の試験 (低栄養またはそのおそれのある高齢者) では、12週間で体重が平均1.68kg増えました [5]。中国の99人の試験では、運動と健康教育に足しても差がありませんでした [6]。

つまり、体重が増えやすいのは「低栄養のおそれがある」段階の人で、すでに虚弱だったり、診断がついていたりする人では、増えるとは言い切れません。

よく言われていることは本当?

  • 体重・BMI が増えて低栄養が改善する対象によります。 低栄養のおそれがある人では体重が増えましたが、虚弱な人・診断された人では差がはっきりしません [1] [2] [3]。
  • 食が細くても少ない量でエネルギー・たんぱく質を補える研究が足りません。 虚弱な高齢者では食事からのエネルギー量がやや増えましたが、確実性は非常に低いです [7]。
  • 筋肉量・筋力・歩く力が戻り、フレイル予防になるほとんど差が出ていません。 診断された高齢者では筋力・日常生活の動作・立って歩く時間が改善しませんでした [3]。握力が改善した試験もあり [8]、60歳を超える高齢者全般の6件では握力が改善しました [9]。
  • 血液のアルブミンなど栄養の指標がよくなる研究が見つかりませんでした。
  • 入院中・手術後の合併症や再入院を防ぐ合併症は本当です。 再入院は研究で割れています (下記)。

合併症は減る、再入院は割れる

アバディーン大学 (イギリス) の研究チームが2016年に発表した Cochrane のレビューは、大腿骨骨折の高齢者の試験11件で、合併症 (床ずれ・感染症・血栓など) が減ったと報告しています (相対リスク0.71、確実性は低い) [4]。死亡にはっきりした差はありませんでした。低栄養のおそれがある高齢者全体でも、合併症はやや少なくなりました (相対リスク0.86、試験24件) [1]。

再入院は結果が分かれます。内科の入院患者 (成人) の27件では予定外の再入院が少なく [10]、65歳以上の5件では減りませんでした [11]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

地域で暮らす高齢者811人に、HMB (筋肉に関わるとされる成分) とビタミンD入りの栄養補助食品を、食事指導とともに180日とってもらった試験では、体重が5%以上増えた人は36.2%で、偽の飲料の群 (9.4%) より多くなりました。一方、入院 (再入院) と生存には差がありませんでした [12]。体重は増えても、入院は減らなかった例です。

入院に差がなかった試験地域で暮らす低栄養のおそれがある高齢者 811人

体重は増えましたが、再入院と生存は偽の飲料と差がありませんでした。

02注意点

研究の対象は、低栄養またはそのおそれがある65歳以上の人が中心で、期間は最長18か月です [1]。スリランカの試験では、寝る前に247kcal・たんぱく質12gの補助食品を毎日12週間とった例があります [5]。補助食品は食事の代わりではなく上乗せです。持病や服薬がある人、飲み込みにくさがある人は、医師や管理栄養士に確認してください。

体重が減り続けるときは原因を調べる

補助食品で補う前に、食欲が落ちた理由を医療者と確かめてください。

03まとめ

低栄養のおそれがある段階の高齢者では、補助食品で体重が増えましたが、学術論文としては、まだ断定できていません。
手術後などの合併症は、補助食品で減りました。
食事の工夫を土台にして、補助食品は足す形で使いましょう。

04よくある質問

Q筋力や歩く力は戻りますか?

診断された低栄養の高齢者の試験では、筋力や日常生活の動作に差が出ませんでした [[30391755]]。握力が改善した試験もあり、結果はそろっていません。

Q再入院は減りますか?

研究で割れています。内科の入院患者の27件では減り [[31747030]]、65歳以上の5件では差がありませんでした [[30144892]]。

Q血液のアルブミンはよくなりますか?

高齢者全般で調べたまとめ研究は見つかっていません。研究では確かめられていません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]栄養が不足するおそれのある高齢者へのたんぱく質・エネルギー補給 (Cochrane のレビュー)

発表年
2009年
研究機関
イギリス・Milne ACほかの研究チーム
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
10,187人
結果の向き
良い方向

高齢者の試験62件・10,187人をまとめ、体重の変化率が補助食品ありで平均2.2%多かった。

[2]虚弱で低栄養またはそのおそれのある高齢者への口からの栄養介入

発表年
2022年
研究機関
イギリス・ニューカッスル大学
掲載誌
Health technology assessment (Winchester, England)
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
822人
結果の向き
差なし

虚弱な高齢者の試験11件・822人で、体重の差ははっきりしなかった。確実性は非常に低い。

[3]高齢者の低栄養に対する薬を使わない介入の効果

発表年
2019年
研究機関
スペイン・ラモン・イ・カハール大学病院
掲載誌
Ageing research reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究6件を統合
結果の向き
差なし

はっきり低栄養と診断された高齢者の試験をまとめ、体重の差ははっきりしなかった。

[4]大腿骨骨折後の高齢者への栄養補助

発表年
2016年
研究機関
イギリス・アバディーン大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,881人
結果の向き
良い方向

大腿骨骨折の高齢者の試験11件で、合併症が起きた人が減った。確実性は低い。

[5]高齢者の体組成への栄養補助食品の影響

発表年
2024年
研究機関
スリランカ・コロンボ大学
掲載誌
Journal of human nutrition and dietetics : the official journal of the British Dietetic Association
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
50人
結果の向き
良い方向

低栄養またはそのおそれのある高齢者50人で、12週間で体重が平均1.68kg増え、対照は0.46kg減った。

[6]高齢者の低栄養への複合的な介入の無作為化試験

発表年
2024年
研究機関
中国・南京医科大学附属第一医院
掲載誌
Clinical nutrition ESPEN
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
99人
結果の向き
差なし

介護施設の99人で、補助食品を足しても体重の増え方に差がなかった。

[7]虚弱な高齢者への経口栄養補助食品の効果と費用対効果

発表年
2022年
研究機関
イギリス・ニューカッスル大学
掲載誌
The lancet. Healthy longevity
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
822人
結果の向き
良い方向

虚弱な高齢者で、食事からのエネルギー量がやや増えた可能性がある。確実性は非常に低い。

[8]栄養補助食品による低栄養の高齢者の身体機能の向上

発表年
2024年
研究機関
スリランカ・コロンボ大学
掲載誌
BMC geriatrics
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

低栄養の高齢者で、12週間後に握力・膝を伸ばす力・歩く速さが水の群より改善した。

[9]高齢者の身体能力と筋力への栄養補助のメタ解析

発表年
2019年
研究機関
イタリア・イタリア国立研究評議会
掲載誌
Ageing research reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
780人
結果の向き
良い方向

高齢者の試験6件・780人で、複数の栄養素を含む補助食品により握力が改善した。

[10]低栄養の内科入院患者への栄養サポートと臨床結果

発表年
2019年
研究機関
スイス・アーラウ州立病院
掲載誌
JAMA network open
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

内科の入院患者の試験27件・6803人で、予定外の再入院が少なかった。

[11]入院中の高齢者への多職種の栄養サポート

発表年
2018年
研究機関
デンマーク・西ユトランド地域病院
掲載誌
Clinical nutrition ESPEN
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
598人
結果の向き
差なし

65歳以上の入院患者の試験5件・598人で、再入院は減らなかった。

[12]地域で暮らす高齢者への特別な栄養補助食品の無作為化試験

発表年
2021年
研究機関
シンガポール・チャンギ総合病院
掲載誌
Clinical nutrition (Edinburgh, Scotland)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

地域で暮らす高齢者811人で、体重は増えたが入院と生存には差がなかった。

Effectiveness of nutritional interventions in older adults at risk of malnutrition across different health care settings: Pooled analyses of individual participant data from nine randomized controlled trials.

発表年
2019年
研究機関
オランダ・Reinders Iほかの研究チーム
掲載誌
Clinical nutrition (Edinburgh, Scotland)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
990人
結果の向き
良い方向

低栄養のおそれがある高齢者990人 (試験9件) の個人データをまとめると、栄養の介入を受けた人は体重が1.0kgを超えて増えやすかった (オッズ比1.58)。食事の指導と栄養補助食品を組み合わせたときが最も効果が大きかった

ほかに参考にした論文(9本)

この記事のエビデンス強度は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。