マスクでインフルエンザや風邪は防げる?

マスクでインフルエンザや風邪は防げる?
読了目安 7〜9分最終更新日 2026.11.06
答え効かない

防げません。地域で着けても、家庭で看病する人が着けても、検査で確かめた感染は変わりません。

根拠

コクランの系統的レビューは、地域で暮らす人がマスクを着けた試験をまとめ、検査で確かめたインフルエンザ・新型コロナの感染はほとんど変わらなかったと報告しています(6件・13,919人、リスク比1.01)[1]。家庭内で看病する人が着けた場合も、ランダム化試験9件のレビューで、家族への広がりをはっきり防ぐ結果は見つかりませんでした [2]。根拠の確かさは中程度です。

この答えの範囲

地域で暮らす一般の人が主にサージカルマスクを着けた場合と、家族がかかった家庭で看病する人が着けた場合の結果です。医療現場で働く人や子どもには、そのまま当てはまりません。

じゃあ、どうする?

マスクを着けるかどうかは、感染予防の効果ではなく、場面や好みで決めて大丈夫です。感染対策の中心は、ほかの方法に置きましょう。家族が発症したときは、全体では差がなかった試験の中で、発症から36時間以内にマスクと手洗いを始めた家庭だけを取り出すと感染が少なかった分析があります。ただし一部の分析なので、確かな結論ではありません [3] [4]。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 84 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量15.720研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度25信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 92.7 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「中程度」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から B に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

マスクとは

ここでいうマスクは、薬局などで売られている不織布のサージカルマスクが中心です。せきやくしゃみの飛沫を防ぐ目的で作られ、医療の現場でも使われます。N95のような高性能マスクや布マスクもあり、研究では種類ごとに結果を分けて調べるものもあります。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

地域で着けた場合:検査での感染は変わらない

答えの中心は、イギリスのオックスフォード大学などの研究チームが2023年に発表したコクランの系統的レビューです [1]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する試験を集め、結果をまとめる方法です。地域で暮らす人が医療用・サージカルマスクを着ける群と着けない群を、くじ引きで分けて比べた試験が集められました。

研究の種類くじ引きで分けた試験を集めた系統的レビュー(コクラン)
対象地域で暮らす人
比べたものマスクを着ける群と、着けない群
結果検査で確かめた感染は、ほとんど変わらなかった(リスク比1.01)
まとめて分析した結果検査で確かめたインフルエンザ・新型コロナの感染は、マスクの有無でほとんど変わりませんでした(6件・13,919人、リスク比1.01)[1]。

リスク比は、マスクを着けた人の発症の割合が、着けない人の何倍かを表します。1に近いほど差がありません。

多くの試験でマスクを着ける人の割合が低かった点は、結果を読むときの注意です。それでも、著者らは根拠の確かさを中程度としています。2025年のインドの試験でも、布マスクを配って着用を呼びかけた村と何もしない村で、新型コロナの患者数に、はっきりした差はありませんでした(率比0.96)[5]。2024年のノルウェーの試験でも、新型コロナの感染(本人の報告)に、はっきりした差はありませんでした(オッズ比1.07)[6]。

症状では差が出た試験もある

インフルエンザのような症状が出る人の割合も、コクランの分析ではほとんど変わりませんでした(9件・276,917人、リスク比0.95)[1]。一方で、ノルウェー公衆衛生研究所のチームが2024年に発表した試験では、公共の場で14日間サージカルマスクを着けた人のうち、呼吸器の感染症のような症状を報告した人が8.9%でした。着けなかった人は12.2%でした [6]。コクランの分析は、症状についても根拠の確かさを中程度としており、全体では差がありません。この試験では症状が少なくなりましたが、全体の結果とはそろっていません。

症状が少なかった試験ノルウェーの18歳以上の大人4647人(解析は4575人)

症状は本人の申告で、検査で確かめたものではありません。新型コロナの感染(本人の報告)は、はっきり変わりませんでした(オッズ比1.07)。

つまり、マスクで減ったのは「本人が申告した症状」で、検査で確かめた感染は減っていません。症状と感染は分けて読む必要があります。

観察研究では、効くように見えるのはなぜ?

新型コロナの観察研究9件(コホート研究2件・症例対照研究7件)のまとめでは、サージカルマスクを着けていたことは、感染の少なさと関連していました(オッズ比0.51)[7]。ただし研究の質は低く、くじ引きで分けた試験ではありません。メッカ巡礼の観察研究10件・5007人のまとめでは、マスクを着けた人の呼吸器の感染症は、はっきりとは少なくありませんでした(リスク比0.78)。ほとんどいつも着けていた人は、ときどき着けた人より少なく、その差は関連として見えています(リスク比0.59)[8]。

観察研究では、マスクを着ける人がもともと感染に気をつけている人、という違いが結果に混ざります。くじ引きで分けた試験では、その違いがならされます。検査で確かめた感染に差が出なかったのは、こちらの結果です。

家庭内で看病する人が着けた場合

家族がインフルエンザにかかった家庭で、マスクや手洗いが家族への感染を防ぐかを調べた、ランダム化試験9件のレビューがあります。2025年に香港大学などのチームが発表したもので、家族の中で広がるのを防ぐという結果は、はっきりとは見つかりませんでした [2]。

個々の試験も同じ傾向です。バンコクの家庭では、手洗いとマスクを勧めても家族への感染は減りませんでした(オッズ比1.16)[9]。フランスの家庭では、本人がマスクを着けても、家族に症状が出た人は16.2%と15.8%で差がありませんでした [10]。

早く始めた家庭で少なかった試験香港のインフルエンザの人がいる259世帯(家族794人)

全体では差がはっきりしませんでしたが、家族の発症から36時間以内にマスクと手洗いを始めた家庭では、検査で確かめた感染が少なくなりました(オッズ比0.33)[3]。ドイツの試験も、全体では差がなく、36時間以内に始めた家庭だけを取り出すと感染が少なくなりました(オッズ比0.16)[4]。

どちらも、試験全体の結果ではなく、早く始めた家庭だけを取り出した一部の分析です。確かな結論とまでは言えません。家庭内の感染は、家族がインフルエンザのとき、家庭内の感染は防げる?で詳しく扱っています。

よく言われていることは本当?

  • マスクで吸い込むウイルスが減り、インフルエンザにかかりにくくなる防げません。 地域では、検査で確かめた感染はほとんど変わりませんでした(リスク比1.01)[1]。
  • マスクを着ければ、かぜの症状を防げる防げません。 症状が出る人の割合は、コクランの分析でほとんど変わりませんでした(リスク比0.95)[1]。ノルウェーの試験だけが、申告した症状の減少を示しています [6]。
  • 家族がかかったら、看病する人がマスクを着ければうつりにくい防げません。 9件のレビューで、はっきりした予防は見つかっていません [2]。
  • かかった人がマスクを着ければ、ほかの人にうつしにくいはっきりした予防は見つかっていません。 途中で打ち切られた小さなフランスの試験ですが、家族の症状は16.2%と15.8%で差がありませんでした [10]。
  • 顔との隙間を作らず正しく着けると効果が上がる研究が足りません。 着け方で比べた試験は見つかっていません。きちんと着けた人ほど感染が少ないという分析はありますが、着ける人自身の違いが混ざる比較です [11]。
  • マスクでのどの乾燥を防ぎ、かぜを防ぐ研究が足りません。 のどの保湿でかぜが減るかを調べた研究は見つかっていません。
  • マスクは息苦しく、体に負担があるごく小さな変化です。 健康な大人の心拍数や呼吸数はほとんど変わらず、血中の酸素の割合はサージカルマスクで平均0.59%低い程度でした [12]。

02注意点

研究の多くは、一般の人が日常でサージカルマスクを使った条件です。ノルウェーの試験では、買い物や公共交通機関などで14日間着けるという条件でした [6]。医療現場の結果や、子どもの結果は別に考える必要があります。子どものマスクで新型コロナの感染が減るかを調べたランダム化試験はありませんでした [13]。

体への影響を調べたレビューは、もとの研究87件をまとめています。確かさが低い項目も多く、学術論文としては、まだ断定できていません。持病のある人や息苦しさを感じる人は、医師・薬剤師に確認してください [12]。

地域の結果を、医療現場や家庭内にそのまま当てはめない

家族が発症したときは、早めの対応と、症状が重いときの受診を優先してください。

03まとめ

地域で暮らす一般の人がマスクを着けても、検査で確かめたインフルエンザや新型コロナの感染は、ほとんど減りません。
家族を看病する人が着けた場合も同じで、症状の申告で差が出た試験は、検査での感染と分けて読みましょう。
感染対策の中心は、手洗い・うがいなど、ほかの方法に置いてください。

04よくある質問

Qマスクは意味がないのですか?

感染を防ぐ点では、地域で着けた場合に検査で確かめた感染がほとんど変わりませんでした [[36715243]]。ただしノルウェーの試験では、申告した症状が少ない結果も出ています [[39048132]]。着けるかどうかは、場面や好みで決めて大丈夫です。

Qうつさないためのマスクは?

家庭内で、かかった人が着けても家族の症状は変わらなかった試験があります(16.2%と15.8%)[[21103330]]。なお、全体では差がなかった試験の中で、早く始めた家庭だけを取り出すと感染が少なかった分析もありますが、一部の分析なので確かな結論ではありません [[19652172]]。

QN95のような高性能マスクなら防げますか?

新型コロナのランダム化試験のまとめでは、サージカルマスクでは感染の低さとの関連がなく、N95では関連がありました。特に医療従事者での結果です [[37736310]]。コクランのレビューでは、N95とサージカルマスクを比べても、検査で確かめたインフルエンザの感染はほとんど変わりませんでした [[36715243]]。一般の人が日常で使った場合の結果とは分けて考えてください。

Qマスクを着けると体に悪いですか?

健康な大人の心拍数や呼吸数は、ほとんど変わりませんでした。血中の酸素の割合は、サージカルマスクで平均0.59%低い程度のごく小さな変化です [[39326926]]。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]呼吸器ウイルスの広がりを防ぐ物理的な方法のコクランレビュー

発表年
2023年
研究機関
イギリス・オックスフォード大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
13,919人
結果の向き
差なし

地域でマスクを着けても、検査で確かめた感染はほとんど変わりませんでした。

[2]家庭内のインフルエンザを減らす非薬物介入のメタ解析

発表年
2025年
研究機関
中国・香港大学
掲載誌
International journal of infectious diseases : IJID : official publication of the International Society for Infectious Diseases
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究9件を統合
結果の向き
差なし

家庭内の手洗いとマスクの試験9件で、広がるのをはっきり防ぐ結果は見つかりませんでした。

[3]家庭内のインフルエンザを防ぐマスクと手洗いの集団ランダム化試験

発表年
2009年
研究機関
香港・香港大学
掲載誌
Annals of internal medicine
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

全体では差がはっきりせず、36時間以内に始めた家庭だけ感染が少なくなりました。

[4]ベルリンの家庭でのマスクと手洗いの集団ランダム化試験

発表年
2012年
研究機関
ドイツ・ロベルト・コッホ研究所
掲載誌
BMC infectious diseases
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

全体では差がなく、36時間以内に始めた家庭だけ感染が少なくなりました。

[5]インドの村で布マスクを配った集団ランダム化試験

発表年
2025年
研究機関
イギリス・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院
掲載誌
The Journal of infection
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

布マスクを配っても、届け出された新型コロナの患者の数ははっきり変わりませんでした。

[6]公共の場のサージカルマスクと自己申告の症状を比べた試験

発表年
2024年
研究機関
ノルウェー・ノルウェー公衆衛生研究所
掲載誌
BMJ (Clinical research ed.)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
4,575人
結果の向き
差なし

公共の場で14日間着けた人は、申告した症状が少なくなりました。

[7]新型コロナ流行中のマスクの効果:観察研究の系統的レビュー

発表年
2024年
研究機関
ブラジル・Floriano Iほかの研究チーム
掲載誌
Jornal brasileiro de pneumologia : publicacao oficial da Sociedade Brasileira de Pneumologia e Tisilogia
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究9件を統合
結果の向き
良い方向

観察研究9件で、サージカルマスクは感染の少なさと関連していましたが、質は低めです。

[8]メッカ巡礼でのマスクと呼吸器感染のメタ解析

発表年
2024年
研究機関
サウジアラビア・メッカ保健局
掲載誌
The American journal of tropical medicine and hygiene
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
5,007人
結果の向き
差なし

巡礼の観察研究10件で、はっきりした差はなく、いつも着けた人は少なく関連しました。

[9]バンコクの家庭での手洗いとマスクの試験

発表年
2011年
研究機関
タイ・タイ保健省・米国CDCの共同研究機関
掲載誌
Influenza and other respiratory viruses
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

手洗いとマスクを勧めても、家族への感染は減りませんでした。

[10]家庭内のインフルエンザにサージカルマスクを使う集団ランダム化試験

発表年
2010年
研究機関
フランス・パリ第6大学
掲載誌
PloS one
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
306人
結果の向き
差なし

本人がマスクを着けても、家族の症状は16.2%と15.8%で差がありませんでした。

[11]N95・サージカル・布マスクの効果を比べたネットワークメタ解析

発表年
2022年
研究機関
韓国・成均館大学
掲載誌
Reviews in medical virology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

しっかり着けているほど感染が少なく、サージカルマスクの効果の根拠は弱いとされました。

[12]マスク使用の安全面に関する系統的レビュー

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・メイヨー・クリニック
掲載誌
BMJ evidence-based medicine
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究87件を統合
結果の向き
結果が割れている

心拍数や呼吸数はほとんど変わらず、酸素飽和度はサージカルマスクで平均0.59%低い程度でした。

[13]子どものマスク義務化に関する系統的レビュー

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・Sandlund Jほかの研究チーム
掲載誌
Archives of disease in childhood
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

子どものマスクで新型コロナの感染が減るかを調べたランダム化試験はありませんでした。

ほかに参考にした論文(20本)

判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。