[1]呼吸器ウイルスの広がりを防ぐ物理的な方法のコクランレビュー
- 発表年
- 2023年
- 研究機関
- イギリス・オックスフォード大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
- 対象
- 13,919人
- 結果の向き
- 差なし
地域でマスクを着けても、検査で確かめた感染はほとんど変わりませんでした。

防げません。地域で着けても、家庭で看病する人が着けても、検査で確かめた感染は変わりません。
地域で暮らす一般の人が主にサージカルマスクを着けた場合と、家族がかかった家庭で看病する人が着けた場合の結果です。医療現場で働く人や子どもには、そのまま当てはまりません。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 15.7 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 2 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 92.7 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「中程度」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から B に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
ここでいうマスクは、薬局などで売られている不織布のサージカルマスクが中心です。せきやくしゃみの飛沫を防ぐ目的で作られ、医療の現場でも使われます。N95のような高性能マスクや布マスクもあり、研究では種類ごとに結果を分けて調べるものもあります。
答えの中心は、イギリスのオックスフォード大学などの研究チームが2023年に発表したコクランの系統的レビューです [1]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する試験を集め、結果をまとめる方法です。地域で暮らす人が医療用・サージカルマスクを着ける群と着けない群を、くじ引きで分けて比べた試験が集められました。
| 研究の種類 | くじ引きで分けた試験を集めた系統的レビュー(コクラン) |
|---|---|
| 対象 | 地域で暮らす人 |
| 比べたもの | マスクを着ける群と、着けない群 |
| 結果 | 検査で確かめた感染は、ほとんど変わらなかった(リスク比1.01) |
リスク比は、マスクを着けた人の発症の割合が、着けない人の何倍かを表します。1に近いほど差がありません。
多くの試験でマスクを着ける人の割合が低かった点は、結果を読むときの注意です。それでも、著者らは根拠の確かさを中程度としています。2025年のインドの試験でも、布マスクを配って着用を呼びかけた村と何もしない村で、新型コロナの患者数に、はっきりした差はありませんでした(率比0.96)[5]。2024年のノルウェーの試験でも、新型コロナの感染(本人の報告)に、はっきりした差はありませんでした(オッズ比1.07)[6]。
インフルエンザのような症状が出る人の割合も、コクランの分析ではほとんど変わりませんでした(9件・276,917人、リスク比0.95)[1]。一方で、ノルウェー公衆衛生研究所のチームが2024年に発表した試験では、公共の場で14日間サージカルマスクを着けた人のうち、呼吸器の感染症のような症状を報告した人が8.9%でした。着けなかった人は12.2%でした [6]。コクランの分析は、症状についても根拠の確かさを中程度としており、全体では差がありません。この試験では症状が少なくなりましたが、全体の結果とはそろっていません。
症状は本人の申告で、検査で確かめたものではありません。新型コロナの感染(本人の報告)は、はっきり変わりませんでした(オッズ比1.07)。
つまり、マスクで減ったのは「本人が申告した症状」で、検査で確かめた感染は減っていません。症状と感染は分けて読む必要があります。
新型コロナの観察研究9件(コホート研究2件・症例対照研究7件)のまとめでは、サージカルマスクを着けていたことは、感染の少なさと関連していました(オッズ比0.51)[7]。ただし研究の質は低く、くじ引きで分けた試験ではありません。メッカ巡礼の観察研究10件・5007人のまとめでは、マスクを着けた人の呼吸器の感染症は、はっきりとは少なくありませんでした(リスク比0.78)。ほとんどいつも着けていた人は、ときどき着けた人より少なく、その差は関連として見えています(リスク比0.59)[8]。
観察研究では、マスクを着ける人がもともと感染に気をつけている人、という違いが結果に混ざります。くじ引きで分けた試験では、その違いがならされます。検査で確かめた感染に差が出なかったのは、こちらの結果です。
家族がインフルエンザにかかった家庭で、マスクや手洗いが家族への感染を防ぐかを調べた、ランダム化試験9件のレビューがあります。2025年に香港大学などのチームが発表したもので、家族の中で広がるのを防ぐという結果は、はっきりとは見つかりませんでした [2]。
個々の試験も同じ傾向です。バンコクの家庭では、手洗いとマスクを勧めても家族への感染は減りませんでした(オッズ比1.16)[9]。フランスの家庭では、本人がマスクを着けても、家族に症状が出た人は16.2%と15.8%で差がありませんでした [10]。
全体では差がはっきりしませんでしたが、家族の発症から36時間以内にマスクと手洗いを始めた家庭では、検査で確かめた感染が少なくなりました(オッズ比0.33)[3]。ドイツの試験も、全体では差がなく、36時間以内に始めた家庭だけを取り出すと感染が少なくなりました(オッズ比0.16)[4]。
どちらも、試験全体の結果ではなく、早く始めた家庭だけを取り出した一部の分析です。確かな結論とまでは言えません。家庭内の感染は、家族がインフルエンザのとき、家庭内の感染は防げる?で詳しく扱っています。
研究の多くは、一般の人が日常でサージカルマスクを使った条件です。ノルウェーの試験では、買い物や公共交通機関などで14日間着けるという条件でした [6]。医療現場の結果や、子どもの結果は別に考える必要があります。子どものマスクで新型コロナの感染が減るかを調べたランダム化試験はありませんでした [13]。
体への影響を調べたレビューは、もとの研究87件をまとめています。確かさが低い項目も多く、学術論文としては、まだ断定できていません。持病のある人や息苦しさを感じる人は、医師・薬剤師に確認してください [12]。
家族が発症したときは、早めの対応と、症状が重いときの受診を優先してください。
地域で暮らす一般の人がマスクを着けても、検査で確かめたインフルエンザや新型コロナの感染は、ほとんど減りません。
家族を看病する人が着けた場合も同じで、症状の申告で差が出た試験は、検査での感染と分けて読みましょう。
感染対策の中心は、手洗い・うがいなど、ほかの方法に置いてください。
感染を防ぐ点では、地域で着けた場合に検査で確かめた感染がほとんど変わりませんでした [[36715243]]。ただしノルウェーの試験では、申告した症状が少ない結果も出ています [[39048132]]。着けるかどうかは、場面や好みで決めて大丈夫です。
家庭内で、かかった人が着けても家族の症状は変わらなかった試験があります(16.2%と15.8%)[[21103330]]。なお、全体では差がなかった試験の中で、早く始めた家庭だけを取り出すと感染が少なかった分析もありますが、一部の分析なので確かな結論ではありません [[19652172]]。
新型コロナのランダム化試験のまとめでは、サージカルマスクでは感染の低さとの関連がなく、N95では関連がありました。特に医療従事者での結果です [[37736310]]。コクランのレビューでは、N95とサージカルマスクを比べても、検査で確かめたインフルエンザの感染はほとんど変わりませんでした [[36715243]]。一般の人が日常で使った場合の結果とは分けて考えてください。
健康な大人の心拍数や呼吸数は、ほとんど変わりませんでした。血中の酸素の割合は、サージカルマスクで平均0.59%低い程度のごく小さな変化です [[39326926]]。
地域でマスクを着けても、検査で確かめた感染はほとんど変わりませんでした。
家庭内の手洗いとマスクの試験9件で、広がるのをはっきり防ぐ結果は見つかりませんでした。
全体では差がはっきりせず、36時間以内に始めた家庭だけ感染が少なくなりました。
全体では差がなく、36時間以内に始めた家庭だけ感染が少なくなりました。
布マスクを配っても、届け出された新型コロナの患者の数ははっきり変わりませんでした。
公共の場で14日間着けた人は、申告した症状が少なくなりました。
観察研究9件で、サージカルマスクは感染の少なさと関連していましたが、質は低めです。
巡礼の観察研究10件で、はっきりした差はなく、いつも着けた人は少なく関連しました。
手洗いとマスクを勧めても、家族への感染は減りませんでした。
本人がマスクを着けても、家族の症状は16.2%と15.8%で差がありませんでした。
しっかり着けているほど感染が少なく、サージカルマスクの効果の根拠は弱いとされました。
心拍数や呼吸数はほとんど変わらず、酸素飽和度はサージカルマスクで平均0.59%低い程度でした。
子どものマスクで新型コロナの感染が減るかを調べたランダム化試験はありませんでした。
判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。