風邪のとき牛乳を飲むと痰は増える?

風邪のとき牛乳を飲むと痰は増える?
読了目安 3〜5分最終更新日 2026.11.02
答え効かない

風邪のとき牛乳を飲んでも、痰や鼻水は増えません。

根拠

風邪のウイルスに感染させた大人51人を10日間記録した研究で、牛乳・乳製品を多く飲んでも、鼻水の量や鼻づまりは増えませんでした [1]。ぜんそくのある子・ない子に牛乳を飲ませた試験でも、症状は変わりませんでした [2]。根拠の確かさは低めです。風邪の人を調べた研究が少なく、人数も限られるためです。

この答えの範囲

風邪をひいた大人の鼻水・鼻づまりの話です。粘液が続く人の自己評価では、乳製品を抜くと減った試験もあり、風邪の人での確認ではありません。

じゃあ、どうする?

風邪のときも、牛乳を無理に避ける必要はありません。飲んで口やのどのねばつきが気になる人は、量を減らしても構いません。この感覚は豆乳でも同じように起こります [3]。痰が長引く、息苦しい、ゼーゼーするときは、受診してください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。7 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン3240いちばん信頼できる研究の種類
研究の量10.120研究件数と参加人数
一致度17.125結果の向きがそろっているか
新しさ610最新の研究が何年以内か
精度05信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 65.2 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・観察研究 1 本。 この上限により、強度を B から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

牛乳で痰が増える説とは

風邪のときに牛乳を飲むと、痰や鼻水が増えると言われてきました。飲んだあとに、口やのどに膜が張ったようなねばつきを感じる人がいるためです。この説が本当かどうかを、人を対象にした試験で確かめた研究があります。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、オーストラリアのアデレード大学などの研究チームが1990年に発表した研究です [1]。健康な大人60人に風邪のウイルス(ライノウイルス2型)を感染させ、10日間、毎日の牛乳・乳製品の量と症状を記録しました。鼻水の量は、使ったティッシュの重さで測っています。記録がそろったのは51人です。

研究の種類風邪のウイルスを感染させた大人の観察
対象健康な大人(記録がそろった51人)
比べたもの毎日の牛乳・乳製品の量(多い人で最大11杯)と、症状の出方
結果鼻水の量や鼻づまりなどの症状は、牛乳・乳製品の量が多くても増えなかった
試験の結果牛乳・乳製品を多く飲んでも、鼻水の量や鼻づまりは増えませんでした [1]。

この結果は、風邪の症状を直接記録した研究のものです。

風邪の人を調べた研究は多くなく、根拠の確かさは低めです。ただ、ほかの研究も同じ方向を示しています。6〜18歳の96人に牛乳か豆乳を目隠しで一度飲ませた試験では、120分後まで症状や肺の働きに変化は見られませんでした [2]。

よく言われていることは本当?

  • 牛乳を飲むと痰・鼻水が増える増えません。 風邪の人の記録で、鼻水の量は変わりませんでした [1]。
  • 牛乳のとろみで、痰が増えたように感じる感覚としては本当です。 牛乳でも見分けのつかない豆乳300mlでも、膜が張る感じは39%、つばのねばつき感は42%増えました [3]。牛乳だけで起こる感覚ではありません。
  • 牛乳をやめると粘液が減る風邪の人では確かめられていません。 粘液が続くと訴えた耳鼻科の大人では、乳製品を抜くと自己評価の粘液が減りました [4]。
  • 痰が出る」と信じる人は症状が強い総説によると、風邪のウイルスに感染させた人で牛乳と症状の関係は見られませんでしたが、信じる人は牛乳のあとに症状を多く訴えます [5]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

イギリスのリスター病院などの研究チームが2019年に発表した試験では、乳製品を抜くと粘液が減りました [4]。ただし対象は風邪の人ではなく、鼻やのどの粘液が多いと訴える大人です。粘液の量も、本人が1〜100の目盛りで答えた自己評価です。風邪のときの話に、そのまま当てはめることはできません。

粘液が続くと訴える人の試験耳鼻科に来た大人108人(男性26人・女性82人)

6日間乳製品を抜いたあと、乳製品入りの補助食をとった群で、自己評価の粘液が増えました。

なぜ「痰が増えた」と感じるのか

牛乳で痰が出ると感じる人が訴えるのは、痰が多く出ることより、飲み込みにくさやねばつきの感覚でした [6]。少しの牛乳で起こり、短時間で消えます。牛乳に含まれる成分が気道の粘液を増やすという説もありますが、ヒトでは確かめられていません [7]。

02注意点

研究で使われたのは、風邪のウイルスを感染させた大人への10日間の記録(最大11杯)です [1]。牛乳アレルギーや乳糖不耐症のある人の話ではありません。飲んでおなかや皮膚の調子が悪くなる人は、牛乳を控えてください。痰が長引くときや、息苦しさがあるときは、医師に相談してください。

風邪の人の直接の研究は少ない

結果は同じ向きでそろっていますが、根拠の確かさは低めです。

03まとめ

風邪のときに牛乳を飲んでも、痰や鼻水が増えるという結果は出ていません。
口やのどのねばつきは牛乳に限らず起こるので、気になる人は量や飲み物を変えて様子を見られます。
食欲があるなら、いつもどおり飲んで構いません。ほかの風邪の疑問は乳酸菌で風邪をひきにくくなる?も見てください。

04よくある質問

Q冷たい牛乳を飲むと咳が出ますか?

冷たい牛乳と咳を調べたヒトの研究は見つかっていません。研究では確かめられていません。

Q豆乳にすれば粘液は減りますか?

風邪の人では確かめられていません。口やのどのねばつきは、牛乳と口当たりを似せた豆乳でも同じように増えました [[8452378]]。

Q「牛乳で痰が出る」と思うと、症状が強く出ますか?

総説によると、そう信じる人は牛乳のあとに呼吸器の症状を多く訴えます [[16373954]]。ただし鼻水の量は変わりませんでした [[2154152]]。

05参照した論文

判定に使った主な論文(7本)

[1]ライノウイルスを感染させた大人での、牛乳の摂取量と粘液の関係

発表年
1990年
研究機関
オーストラリア・アデレード大学
掲載誌
The American review of respiratory disease
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
51人
結果の向き
差なし

風邪のウイルスに感染させた大人51人で、牛乳・乳製品を多く飲んでも鼻水の量や鼻づまりは増えなかった。

[2]ぜんそくのある子・ない子に牛乳を一度飲ませたときの呼吸への影響

発表年
2020年
研究機関
イスラエル・ダナ・ドウェク小児病院
掲載誌
BMC pediatrics
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
96人
結果の向き
差なし

6〜18歳の96人に牛乳か豆乳を飲ませても、症状や肺の働きに変化は見られなかった。

[3]牛乳で痰が出るという思い込み:牛乳と豆乳の感覚を比べる

発表年
1993年
研究機関
オーストラリア・フリンダース大学
掲載誌
Appetite
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

膜が張る感じは牛乳でも豆乳でも同じように増え、牛乳だけで起こる感覚ではなかった。

[4]乳製品の食事が鼻やのどの粘液に与える影響

発表年
2019年
研究機関
イギリス・リスター病院
掲載誌
The Laryngoscope
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
108人
結果の向き
悪い方向

粘液が多いと訴える大人108人で、乳製品を抜くと自己評価の粘液が減った。

[5]牛乳は粘液の産生やぜんそくの発症につながらない

発表年
2005年
研究機関
スイス・チューリッヒ大学病院
掲載誌
Journal of the American College of Nutrition
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
差なし

牛乳と鼻水・咳・鼻づまりの関係は見られなかったが、信じる人は症状を多く訴える。

[6]牛乳で痰が出るという思い込み:感覚と信じる人の特徴

発表年
1993年
研究機関
オーストラリア・フリンダース大学
掲載誌
Appetite
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
差なし

訴えは痰の増加より、飲み込みにくさやねばつきの感覚だった。

[7]牛乳は粘液の産生を増やすか

発表年
2010年
研究機関
ニュージーランド・カウンティーズ・マヌカウ地区保健局
掲載誌
Medical hypotheses
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
悪い方向

牛乳の成分が気道の粘液を増やすという仮説の論文。ヒトでは確かめられていない。

判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。