[1]乳酸菌は急性の上気道感染症を防ぐか(コクランレビュー)
- 発表年
- 2022年
- 研究機関
- 中国・四川大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
- 対象
- 4,798人
- 結果の向き
- 良い方向
RCT16件・4798人で、かぜを1回以上ひいた人の割合がリスク比0.76と少なかった。確実性は低い。

ひきにくくなります。かぜをひく人の割合が、偽薬より少なくなります。
健康な人の、かぜをひく回数の話です。
ヨーグルトや乳酸菌飲料を食事に足す意味はあります。ただし効果は大きくなく、手洗いや睡眠の代わりにはなりません。持病や免疫を下げる治療中の人は、医師や薬剤師に相談してください。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 20 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 13.7 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 88.7 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 2 本・RCT のメタ解析 6 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
乳酸菌は、糖を分解して乳酸をつくる細菌の仲間です。腸の環境を整えるとされ、ヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリなどでとれます。ビフィズス菌なども含めて、体に良い働きをする菌をまとめて「プロバイオティクス」と呼びます。菌の種類は非常に多く、同じ「乳酸菌」でも働きは同じではありません。ここまでは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。
答えの中心は、中国の四川大学などの研究チームが2022年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で世界中の比較試験を集め、結果を統合する方法です。子どもから高齢者までの試験16件・4798人が集められました。
| 研究の種類 | 比較試験(RCT)をまとめたコクランレビュー |
|---|---|
| 対象 | 子ども(1か月〜11歳)・大人・高齢者(平均84.6歳) |
| 比べたもの | 乳酸菌などと、偽薬または何もしない場合 |
| 結果 | かぜを1回以上ひいた人の割合がリスク比0.76で少なかった |
多くの研究は、菌を3か月より長くとっていました。
根拠の確かさは低めです。研究の作りに弱さがあり、結果のばらつきも大きいためです。ただ、向きは古い版のコクランレビューとそろっています。2015年の版ではオッズ比0.53でした [3]。
18〜65歳の成人に絞ったメタ解析(研究42件・9179人)でも、呼吸器の感染症に1回以上かかるリスクは偽薬より低く、相対リスクは0.91でした [2]。差は大きくありません。運動習慣のある人では効果が見られませんでした。
コクランレビューでは、かぜ1回あたりの期間が偽薬などより平均1.22日短い結果でした(6件・2406人)[1]。ここでも根拠の確かさは低めです。成人のネットワークメタ解析では、複数の菌を組み合わせたもので平均0.97日短くなりました [4]。
子どもでは、結果がそろっていません。子ども・思春期の試験21件(6603人)のネットワークメタ解析は、呼吸器の感染症の発生率が下がるという根拠は不足していたと結論しています [8]。ウガンダの3〜6歳196人に乳酸菌入りヨーグルトを9週間毎日とってもらった試験でも、かぜの症状が出る頻度に差はありませんでした [9]。一方、ベトナムの3〜5歳1003人の試験では、乳酸菌飲料を12週間毎日飲んだ子で急性の呼吸器感染症が少なく(15.9%対24.5%)、対照は何も飲まない群でした [10]。
かぜの症状が出る頻度は、発酵させていない乳製品と差がありませんでした。
菌の種類でも差が出ています。生後6〜12か月の赤ちゃん192人に2種類の菌のどちらかを入れたミルクを与えた試験では、医師が確認したかぜは対照の9.4%に対して、一方の菌では0.0%、もう一方では3.1%で差がはっきりしませんでした [11]。60歳以上のRCT8件の系統的レビューも、かぜを減らした菌がある一方で、すべての菌で効いたわけではなかったと報告しています [12]。
「効く」と報告する研究には、菌を扱う企業の研究者によるものが含まれます。日本の高齢者の2つの試験をまとめた研究は、乳業会社の研究です。ヨーグルトを食べた人は牛乳の人よりかぜをひくリスクが低く、オッズ比は0.39でした [13]。健康な成人555人の個人データをまとめた解析も、菌を販売する企業の研究者によるもので、28日あたりのせきの日数が平均0.69日少ない結果でした [14]。企業の研究だから誤りとは言えませんが、第三者の研究も含めて同じ向きかを見ることが大切です。この記事の中心にしたコクランレビューは、企業の研究ではありません。
研究の対象は、おもに健康な人です。例えば大気汚染の多い地域の成人136人の試験では、ビフィズス菌入りのヨーグルト250gを12週間毎日食べ、かぜにかかる人がビフィズス菌を加えていないヨーグルトより少ない結果でした(オッズ比0.38)[7]。免疫を下げる治療を受けている人、重い持病のある人は、乳酸菌のサプリを始める前に医師や薬剤師に確認してください。かぜの症状が長引くときは、乳酸菌に頼らず受診してください。
小さな子どもに乳酸菌のサプリを与える前は、小児科の医師に相談してください。
乳酸菌は、かぜをひく人の割合を少し減らしますが、根拠の確かさは低めです。
子どもでは差がない研究があり、菌の種類によっても結果が分かれます。
食事に足す程度で続け、手洗いや睡眠などの基本と組み合わせましょう。
そうは言えません。発酵乳のまとめは確かさの評価がついておらず、サプリのまとめより確かとは読めません。向きは同じで、どちらが上かは研究では確かめられていません [[34183001]] [[36001877]]。
コクランレビューの多くの研究は、3か月より長くとっていました [[36001877]]。何日目から効くのかは、研究では確かめられていません。
結果が分かれています。子ども・思春期の試験のまとめは根拠が不足と結論し [[28052594]]、ウガンダの3〜6歳の試験でも差はありませんでした [[40108292]]。
研究では、すべての菌が効くわけではないと報告されています [[34200435]]。どの菌が最も良いかは、研究では確かめられていません。
RCT16件・4798人で、かぜを1回以上ひいた人の割合がリスク比0.76と少なかった。確実性は低い。
18〜65歳の成人42件・9179人で、呼吸器の感染症のリスクが相対リスク0.91と低かった。
RCT12件・3720人で、かぜを1回以上ひいた人はオッズ比0.53と少なかった。新しい版に更新済み。
成人のRCT107件(101,751人)の比較。複数の菌の組み合わせで症状の期間が平均0.97日短かった。
RCT22件・10,190人で、呼吸器の感染症のリスクがリスク比0.81と低かった。
インドネシアの高齢者554人で、インフルエンザ様の病気の発生に差はなかった。
成人136人で、ビフィズス菌入りヨーグルトによりかぜにかかる人が少なかった(オッズ比0.38)。
RCT21件・6603人で、発生率が下がるという根拠は不足していた。
3〜6歳の196人で、かぜの症状が出る頻度に差はなかった。
3〜5歳の1003人で、急性の呼吸器感染症が15.9%対24.5%と少なかった。
生後6〜12か月の192人で、医師が確認したかぜは対照9.4%に対し一方の菌で0.0%、もう一方で3.1%。
60歳以上のRCT8件で、かぜを減らした菌もあったが、すべての菌で効いたわけではなかった。
日本の高齢者の2試験で、牛乳より、かぜをひくリスクがオッズ比0.39と低かった。
健康な成人555人で、28日あたりのせきの日数が平均0.69日少なかった。
健康な赤ちゃんに乳児型のビフィズス菌を与えた研究の統合で、呼吸器の感染症はリスク比0.74と少ない傾向だったが、統計的にははっきりしなかった
生後6か月まで乳酸菌(LGG)を毎日与えた赤ちゃん184人で、24か月までのかぜなどのウイルス感染の回数・重さに差はなかった
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。