具体的な目標を立てると、やる気や成果は上がる?

具体的な目標を立てると、やる気や成果は上がる?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え効く

成果は上がります。やる気や自信とは、わずかな関連が見られます。

根拠

目標を立てる効果だけを調べた比較試験のメタ解析(141件・16,523人)で、目標を立てた人は目標にした行動が増えました [1]。チームの課題でも、具体的で難しい目標はあいまいな目標より成果が高くなりました [2]。やる気や自信などの心理面は、運動不足の成人1,208人のまとめで、小さな良い関連にとどまりました [3]。この心理面の根拠の確かさは低めです。研究の種類が要旨に書かれておらず、確かめきれないためです。

この答えの範囲

成人や学生が、運動・勉強・作業課題・チーム課題に取り組んだ研究の結果です。やる気の結果は、運動不足の成人を対象にした研究です。

じゃあ、どうする?

目標は、具体的で、少し難しめのものにします。進み具合を紙などに書き残し、人に伝えると、さらに達成しやすくなっています [4]。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。高い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。8 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 96 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量2020研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ610最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 96 点を、エビデンス強度 A の範囲(75〜100 点)に収めて、スコアは 96 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本・観察研究 2 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

目標設定とは

目標設定は、「何を・どれくらい」やるかを先に決めて取り組む方法です。仕事、勉強、運動、ダイエットなどで使われ、やる気や成果を高めるとされます。研究では、「週に3回歩く」のような具体的な目標と、「ベストを尽くす」のようなあいまいな目標を比べてきました。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

成果は上がるのか

答えの中心は、イギリスのマンチェスター大学などの研究チームが2017年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、似た研究の結果をまとめて計算し直す方法です。目標を立てることだけの効果を調べた比較試験が集められました。

研究の種類目標を立てる効果を調べた比較試験のメタ解析
対象運動・食事などの行動に取り組む人(141件・16,523人)
比べたもの目標を立てた人と、立てなかった人
結果目標にした行動が、小さいながらはっきり増えた(効果量 d=0.34)
メタ解析の結果目標を立てた人は、目標にした行動が小さいながらはっきり増えました [1]。

目標が難しいとき、人前で立てたとき、グループの目標のときに、特に効果が大きくなりました。

運動の目標に絞った別のメタ解析(45本・5,912人)でも、運動量が中くらいに増えました(d=0.55)[5]。成績に苦しむ大学生85人が、目標を書き出すプログラムを受けた試験では、4か月後の成績が対照群より良くなりました [6]。

やる気は上がるのか

運動不足の成人1,208人(13件の研究)のまとめでは、具体的な運動の目標は、運動量を大きく増やしました(g=1.11)。一方で、やる気・自信・気分などの心理面は、小さな改善と結びついていただけです(g=0.25)[3]。やる気が大きく上がるというより、行動が増える効果のほうがはっきりしています。この心理面の根拠の確かさは低めです。研究の種類が要旨に書かれていないためです。

よく言われていることは本当?

  • 明確で難しめの目標は、あいまいな目標より成果が上がる本当です。 チームの課題で、具体的で難しい目標はあいまいな目標より成果が高くなりました(d=0.80)[2]。高校生の腹筋運動でも、具体的な目標のグループはすべて、あいまいな目標のグループより伸びました [7]。
  • 具体的な目標を立てるとやる気が上がる小さな関連があります。 心理面の改善はわずかでした [3]。
  • 大きな目標を小さく分けるとやる気が続く研究が見つかっていません。 近い目標と遠い目標を比べたメタ解析や比較試験は、今回の調査で見つかりませんでした。
  • 進み具合を記録すると達成しやすい本当です。 138件・19,951人のメタ解析で、進み具合を記録・確認した人は目標を達成しやすくなりました(d=0.40)。紙などに書き残したときと、人に報告したときに効果が大きくなっています [4]。
  • 目標を人に宣言する・書き出すと達成しやすい効きます。 人前で立てた目標は効果が大きくなりました [1]。
  • 難しすぎる目標は逆効果になる条件つきで本当です。 高校生の腹筋運動では、難しいが現実的な目標(20%アップ)がいちばん伸びました。ほぼ達成できない目標は、4・6週間後の伸びが小さめでした [7]。チームでは、個人の目標が逆効果になった例があります(下の節)。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

チームの課題のメタ解析では、自分の成績だけを上げようとする個人の目標は、チームの成果を下げていました [2]。目標そのものが悪いのではなく、目標が向いている先がチームの成果とずれていたためです。

チーム課題の研究チーム課題を比べた研究のメタ解析

個人の成績だけを狙う目標は、チームの成果を下げました。

また、課題の難しさでも効き方が変わります。125件の研究のメタ解析では、効果は単純な課題で大きく(d=0.76)、経営シミュレーションや研究の生産性のような複雑な課題では小さめでした(d=0.42)[8]。

02注意点

運動の研究では、目標を立てる取り組みは3〜24週間で、ご褒美を出さない取り組みのほうが運動量の増え方が大きくなりました [3]。ここまでの結果は、目標を立てたこと自体の効果を見た平均の話で、一人ひとりの結果を約束するものではありません。チームで取り組むときは、個人の数字だけでなく、チーム全体の目標も一緒に決めると、研究の結果と矛盾しません。気分の落ち込みが続く、目標に追われて眠れないなどのときは、医師や専門家に相談してください。

チームの目標とずらさない

個人の目標だけを追うと、チームの成果が下がった研究があります。

03まとめ

具体的な目標を立てると、成果は上がります。
やる気そのものへの効果は小さいので、目標で行動を増やし、進み具合を記録して人に伝えるところまで進めてみましょう。
仕事のチームでは、個人の目標とチームの目標をそろえるのが、研究に沿った進め方です。

04よくある質問

Q大きな目標を小さく分けると、やる気は続きますか?

この点を直接調べた研究は、見つかっていません。進み具合を記録すると達成しやすくなる結果はあります [[26479070]]。

Q目標は難しいほど良いのですか?

難しい目標は、成果が大きくなる傾向がありました [[29189034]]。高校生の腹筋運動では、難しいが現実的な目標(20%アップ)がいちばん伸びています [[9258843]]。

Qチームで個人の目標を立てても大丈夫ですか?

自分の成績だけを上げようとする個人の目標は、チームの成果を下げた結果があります [[21744940]]。チーム全体の具体的で難しい目標は、成果を高めました。

05参照した論文

判定に使った主な論文(8本)

[1]目標を立てることが行動の変化に与える固有の効果:系統的レビューとメタ解析

発表年
2017年
研究機関
イギリス・マンチェスター大学
掲載誌
Journal of consulting and clinical psychology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
16,523人
結果の向き
良い方向

目標を立てた人は、目標にした行動が小さいながらはっきり増えた(d=0.34)。

[2]目標設定がグループの成果に与える効果:メタ解析

発表年
2011年
研究機関
オランダ・アイントホーフェン工科大学
掲載誌
The Journal of applied psychology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

チーム課題で、具体的で難しい目標は、あいまいな目標より成果が高かった(d=0.80)。

[3]運動不足の成人で、目標設定は身体活動と心理面にどんな効果があるか:系統的レビューとメタ解析

発表年
2024年
研究機関
イギリス・ノッティンガム・トレント大学
掲載誌
Journal of physical activity & health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,208人
結果の向き
良い方向

運動量は大きく増え(g=1.11)、心理面は小さく改善した(g=0.25)。

[4]進み具合の確認は目標の達成を促すか:実験研究のメタ解析

発表年
2016年
研究機関
イギリス・シェフィールド大学
掲載誌
Psychological bulletin
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
19,951人
結果の向き
良い方向

進み具合を記録・確認した人は目標を達成しやすかった(138件・19,951人、d=0.40)。

[5]身体活動を変えるための複合的な目標設定介入の効果:系統的レビューとメタ解析

発表年
2016年
研究機関
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学
掲載誌
Health psychology review
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
5,912人
結果の向き
良い方向

運動の目標を立てると、運動量が中くらいに増えた(45本・5,912人)。

[6]個人の目標を立て、具体化し、振り返ると学業成績が上がる

発表年
2010年
研究機関
カナダ・マギル大学
掲載誌
The Journal of applied psychology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
85人
結果の向き
良い方向

成績に苦しむ大学生85人で、4か月後の成績が対照群より良くなった。

[7]目標の難しさ・具体性と練習間隔が筋持久力に与える効果

発表年
1997年
研究機関
イスラエル・ベングリオン大学
掲載誌
Journal of sports sciences
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

高校生の腹筋運動で、具体的な目標のグループはあいまいな目標より伸びた。

[8]目標の効果を左右する課題の複雑さ:メタ解析

発表年
1987年
研究機関
オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学
掲載誌
Journal of Applied Psychology
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究125件を統合
結果の向き
良い方向

目標の効果は単純な課題で最も大きく、複雑な課題では小さめだった。

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。