[1]寒さ(8°C)での休憩と運動中の重ね着:着た人の反応と生地の性質の比較
- 発表年
- 2014年
- 研究機関
- ニュージーランド・オタゴ大学
- 掲載誌
- Ergonomics
- 研究の種類
- その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
- 対象
- 10人
- 結果の向き
- 良い方向
男性10人の試験で、服を2枚重ねると1枚のときより肌の温度が高く、生地の検査の差は着たときの差より大きく見積もられていました。

ウール・ポリエステル・綿の暖かさの差は、わずかです。暖かさは、素材より厚みと重ね着で増します。
健康な大人が、寒い環境でウール・化学繊維・綿の服を着て確かめた結果です。厚みと重ね着は、人が着た試験と人体模型の測定で確かめています。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 30 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 11.3 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 19 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 6 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 71.3 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 71 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・その他のヒトの研究 6 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
答えの中心は、スウェーデンの国立労働衛生研究所などの研究チームが1996年に発表した着用試験です [3]。健康な男性10人が、ウールまたは化学繊維でできた冬用の重ね着(保温量はほぼ同じ)を着て、-10°Cの部屋のランニングマシンで歩きました。運動の強さや気温を途中で変える2種類の条件で測っています。
| 研究の種類 | 冬用の重ね着の着用試験 |
|---|---|
| 対象 | 健康な男性10人 |
| 比べたもの | ウールの重ね着と化学繊維の重ね着(保温量はほぼ同じ) |
| 結果 | ウールは運動中の平均の肌の温度が約0.3°C高かったが、暖かさの感じ方に差はなかった |
8°Cの部屋で男性10人と女性11人が運動と休憩をした試験でも、メリノウールとポリエステルの下着で暖かさの感じ方は変わりませんでした [8]。
ウールが有利な点はあっても、肌の温度で約0.3°Cのわずかな差で、本人の感じ方には出ない試験が多い、と読むのが正確です。研究は6本(63人)で、ランダム化の記載がない着用試験と測定実験が中心のため、根拠の確かさは低めです。
ウールが有利に出た研究もあります。アメリカのノースカロライナ州立大学などの研究チームが2024年に発表した試験では、男性12人がウール・綿・ビスコース(レーヨン)・ポリエステル(各100%)の長袖Tシャツを着て、15°C・湿度50%の部屋で自転車をこぎ、そのあと風のある環境で服を乾かしました [9]。
ウールのシャツは、ほかの3種類より胴の肌の温度を高く保ち、温度の感じ方にも差が出て、着心地も良いと評価されました。
一方、3種類の生地の上着を着比べた男性10人の試験では、ウールの天竺編みが暑い部屋(32°C)でも寒い部屋(8°C)でもいちばん成績が良かったものの、肌の温度や暖かさ・快適さの感じ方に差はありませんでした [10]。
ウールの編み地の成績はいちばん良く、肌の温度や暖かさの感じ方には差がありませんでした。
素材そのものの測定では、ダウン・ウール・ポリエステル・ポリオレフィンの保温性は、同じ方法で測るとどれもほぼ同じでした [4]。これは人が着た試験ではなく、素材を測った1982年の実験(間接的な根拠)です。生地の検査で出る素材の差は、実際に着たときの体の反応や感じ方の差より大きく見積もられていた、という試験もあります [1]。
服を重ねたり厚くしたりすると、暖かさは増します。こちらの根拠の確かさは中程度です。ただし、ランダムに分けた試験は心不全の患者を対象にした1本だけ(下の「注意点」)で、健康な人で服の枚数を比べた試験は10人ほどの小さなものです。
「厚い1枚と薄手の重ね着のどちらが暖かいか」を直接比べた研究は、見つかっていません。
防寒の服を人に渡して比べた試験は1本あります。ブリスベンの大きな公立病院で、50歳を超える心不全の患者91人を、防寒の服(靴下・上着・帽子)を受け取る47人と通常のケアの44人にランダムに分け、冬のあいだ比べました。夜の服の保温量は平均0.13clo増えましたが、冬の入院日数ははっきりとは減らず、多くの人は両グループとも保温量が足りず、18°Cより寒い室内で過ごしていました [18]。対象は心不全の患者で、この記事の健康な大人とは違います。心臓や血圧の持病があり、冬の冷えが体調に響く人は、主治医に相談してください。
研究の多くは10人ほどの健康な人の短い試験なので、極寒の屋外や長時間の活動には当てはまらないことがあります。
ウール・化学繊維・綿の暖かさの差は小さく、感じ方に出ない試験が多いです。
暖かさを分けるのは、厚み・重ね方・体と服のすき間です。
じっとしている場面は薄手を重ねて厚手に、汗をかく場面は厚みを調整して濡れたままにしないことから始めましょう。
湿気を吸うときに熱が出る現象は、暑い環境の実験で実際に測られています [[11394256]]。ただし寒い環境で暖かさが続くかを人で試した着用試験は見つかっておらず、商品そのものを調べた研究も見つかっていません。暖かさについては、厚みや重ね方のほうが結果がそろっています。
18°Cの部屋で防寒の肌着を1枚着ると、肌着なしの23°Cの部屋と体の中心の温度は同じに保てましたが、手足の肌の温度は低くなりました [[12672980]]。体質としての冷えは別の話で、[冷え性に生姜は効く?](/evidence/ginger-cold-sensitivity)で扱っています。
条件によります。-10°Cで休んだり歩いたりした女性9人の試験では、綿とアクリルの下着で体温や暑さ寒さの感じ方に差はありませんでした。ただし汗をたくさんかいた人では、素材の違いが出る可能性がありました [[8043154]]。汗をかく場面では、濡れたままにしないことが大切です。
素材の差を比べた試験で、子どもや高齢者を対象にしたものは見つかっていません。冬の防寒着を渡した試験は、50歳を超える心不全の患者が対象で、素材の差は比べていません [[28993390]]。比べた試験の対象は、健康な大人が中心です。暮らしの疑問は[暮らしのカテゴリ](/evidence-category/home)にまとめています。
男性10人の試験で、服を2枚重ねると1枚のときより肌の温度が高く、生地の検査の差は着たときの差より大きく見積もられていました。
毛布や救助用寝袋12種類を人体模型で測ると、風が弱いとき保温量は厚みとともに大きくなり、風が強いと大きく下がりました。
男性10人が-10°Cの部屋で歩いた試験で、ウールは化学繊維より肌の温度が約0.3°C高かったが、暖かさの感じ方に差はありませんでした。
ダウン・ウール・ポリエステル・ポリオレフィンの4つの素材の保温性を同じ方法で測ると、どれもほぼ同じでした。
衣装39組で、服と体のすき間が大きいほど保温量は増えましたが、37.8mmを超えると逆に下がりました。
シャツの上にベストを重ねると、服が大きいほど保温量が増えましたが、大きすぎると風が通って下がりました。
濡れた下着は体をはっきり冷やし、その影響は繊維の種類より下着の厚みのほうが大きくなりました。
8°Cの部屋で運動と休憩をした男女で、メリノウールとポリエステルの下着の間に、暖かさの感じ方の差はありませんでした。
15°Cで運動したあと風に当たる場面で、ウールのシャツは胴の肌の温度を高く保ち、着心地も良いと評価されました。
男性10人が3種類の生地の服を着比べ、ウールの天竺編みの成績が良かったものの、肌の温度や暖かさの感じ方に差はありませんでした。
男子学生6人で、防寒の肌着を1枚着ると18°Cの部屋でも23°Cの肌着なしと同じ快適さを保てましたが、手足の肌の温度は低くなりました。
女性7人の実験で、綿の服は湿気を吸うときに熱を出し、湿度を上げると服の表面の温度が綿で2.2°C、ポリエステルで0.5°C上がりました。
少し寒い環境で、水を吸いにくい生地のグループのほうが、水を吸いやすい生地のグループより暖かく感じていました。
服が湿気を吸うときの熱の出入りを計算モデルで再現すると、暖かさの感じ方を良くする効果はわずかでした。
女性7人で、休憩中の肌の温度はポリプロピレンの下着のほうが綿より高く、濡れた感じはポリプロピレンのほうが強くなりました。
女性8人で、汗を吸う綿の下着はポリプロピレンより回復中に体が作る熱が少なく、差はとても小さいが体に良い方向でした。
女性9人が-10°Cで綿とアクリルの下着を着比べ、体温・肌の温度・汗の量・感じ方に差はありませんでした。
50歳を超える心不全の患者91人で、防寒の服を配ると夜の保温量が平均0.13clo増えましたが、入院日数ははっきりとは減りませんでした。
20人が4つの室温で快適な服を自分で選ぶと、服の保温量は服の重さや上半身の重ね着の枚数が多いほど大きくなりました。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。