住まいの断熱を良くすると冬の血圧は下がる?

住まいの断熱を良くすると冬の血圧は下がる?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え良い関連がある

断熱改修をした家の人は、冬の朝の上の血圧が3.1mmHg低いことと関連しています。

根拠

日本の全国調査で、断熱改修をした942世帯1578人と、しなかった67世帯107人の冬の家庭血圧を改修の前後で比べたところ、改修した人の朝の上の血圧が3.1mmHg低くなっていました [1]。英国の集合住宅の改修研究でも、改修した棟の住民の血圧が下がりました [2]。根拠の確かさは低めです。くじ引きで分けた試験がまだなく、研究の数も少ないためです。

この答えの範囲

冬の家庭血圧の話です。

じゃあ、どうする?

冬の朝の血圧が気になるなら、断熱改修を考える価値があります。すぐ始められる方法として、朝に居間を先に暖める方法は、高齢者の試験で起床後4時間までの上の血圧が4.43mmHg低くなりました [3]。降圧薬を飲んでいる人は、自己判断で変えず医師に相談してください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。11 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 59 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン2040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量3.220研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ610最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 59.2 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 59 点です。 判定に使った研究は、その他のヒトの研究 1 本・観察研究 1 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

断熱改修とは

断熱改修は、断熱材を入れたり窓を替えたりして、家の熱の逃げにくさを高める工事です。冬の室温が上がりやすく、寒さによる体への負担が減るとされています。工事の内容は家によって違います。ここまでは一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、日本の東京工業大学などの研究チームが2020年に発表した全国調査です [1]。断熱改修の前後で血圧を測り、改修した家と改修しなかった家を比べました。くじ引きで分けた試験ではありません。

研究の種類断熱改修の前後を比べた全国調査(くじ引きなし)
対象改修した942世帯1578人、改修しなかった67世帯107人
比べたもの冬に改修の前後で2週間ずつ測った家庭血圧と室温
結果改修した家の人は、朝の上の血圧が3.1mmHg低かった
全国調査の結果改修した家の人は、しなかった人より冬の朝の上の血圧が3.1mmHg低くなりました。

朝の室温は1.4℃上がり、高血圧の人では下がり幅が大きく、7.7mmHg対2.2mmHgでした [1]。

改修した人としなかった人の人数が大きく違い、人を無作為に分けていません。このため、血圧の差が断熱改修だけによるものとは言い切れません。「低い結果が見られた」と読むのが正確です。

ほかの研究では

英国グラスゴーの集合住宅4棟のうち2棟を、暖かく乾いた状態に改修した研究があります [2]。改修した棟の住民は上と下の血圧がはっきり下がり、改修しなかった棟では変化がありませんでした。2008年の短い研究報告で、人数は要旨に書かれていません。

英国の改修研究集合住宅4棟の住民(人数は要旨に記載なし)

改修した棟だけ、上と下の血圧が下がりました。

室温と血圧の関係

断熱で室温が上がることが、血圧が低い理由の一つと考えられています [1]。断熱改修を予定していた日本の約2900人の調査では、57歳の場合、室温が10℃低いと朝の上の血圧が8.2mmHg高い関連がありました [4]。朝に居間を暖めるよう指示された高齢者359人のくじ引き試験では、室温が2.09℃高くなり、上の血圧が4.43mmHg低くなりました [3]。ただし、これは暖房の試験で、断熱改修そのものの試験ではありません。

よく言われていることは本当?

  • 断熱すると冬の血圧が下がる関連しています。 改修した家の人は朝の上の血圧が3.1mmHg低い結果でした。根拠の確かさは低めです [1]。
  • 部屋が暖かいと血圧が上がりにくい研究で確かめられています。 朝に居間を暖める試験で、上の血圧が4.43mmHg低くなりました [3]。観察研究14件のまとめでも、室温が1℃低いほど上の血圧が0.38mmHg高い関連でした [5]。
  • ヒートショックを防げる研究では確かめられていません。 断熱改修でヒートショックや入浴中の事故が減るかを調べた研究は見つかりませんでした。
  • 結露・カビ・ダニが減り、ぜんそくが良くなる呼吸器の健康は良くなる結果が出ています。 コクランの系統的レビュー39件で呼吸器の健康が良くなりうると示され [6]、ニュージーランドの補助を受けた住民は呼吸器の病気での入院の増え方が小さい結果でした(比0.85)[7]。ただしカビやダニの量そのものは測られていません。
  • 風邪をひきにくくなる研究では確かめられていません。 家の環境を変える試験14件のまとめで、呼吸器の感染症は減る傾向でしたが、解析によって差がはっきりした場合としない場合に分かれました [8]。台所や水回りなど断熱以外の改修も多く含まれます。
  • 冷暖房費が下がるこの記事は健康の研究を集めており、光熱費は主題ではありません。 ただ、ニュージーランドの試験では断熱した家のエネルギー消費が断熱しない家より少なく、オーストラリアの試験でもガスの消費が減ったと報告されています [9][10]。
  • 医療費が減る一部の試験で減っています。 オーストラリアの暮らしに困っている高齢者1313人のくじ引き試験で、冬の前に改修を受けた人は冬の医療費が1人あたり平均887豪ドル少なくなりました [10]。日本での確認は、この記事の研究にはありません。

02注意点

断熱改修の研究は、冬に寒い家に住む人が中心です。日本の調査では、改修前の血圧を測ったうえで、改修前後に2週間ずつ家庭血圧を測っています [1]。すき間をなくした家で換気設備がないと、かえって健康を損なうことがあるというまとめもあります [11]。持病や服薬のある人は、工事の前後で血圧の測り方や薬について、医師に確認してください。

降圧薬は自己判断で変えない

家を暖かくしても、薬の量を減らしてよいかは研究では調べられていません。

03まとめ

断熱改修をした家の人は、冬の朝の上の血圧が低い結果ですが、根拠の確かさは低めです。
当てはまるのは冬に寒い家に住む人で、ヒートショックが減るかは確かめられていません。
血圧が気になる冬は、断熱の前に、朝に居間を先に暖めることから試せます。

04よくある質問

Q窓だけの断熱でも血圧は下がりますか?

研究では確かめられていません。全国調査の改修は断熱材や窓などの工事を含み、窓だけの結果は分けられていません [[32555002]]。

Q高血圧の人のほうが変化は大きいですか?

全国調査では、高血圧の人で下がり幅が大きい結果でした。7.7mmHg対2.2mmHgです [[32555002]]。

Q断熱をしなくても暖房で同じ結果になりますか?

暖房だけでも血圧が下がる結果はありますが、断熱改修と直接比べた研究は、研究では確かめられていません [[26372318]]。

05参照した論文

判定に使った主な論文(11本)

[1]冬の断熱改修が家庭血圧に与える影響の全国調査

発表年
2020年
研究機関
日本・東京工業大学
掲載誌
Journal of hypertension
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

断熱改修をした人は、しなかった人より冬の朝の上の血圧が3.1mmHg低かった。

[2]寒い集合住宅の改修が血圧と健康に与える影響

発表年
2008年
研究機関
イギリス・Lloyd ELほかの研究チーム
掲載誌
Journal of epidemiology and community health
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

英国の集合住宅を改修した棟で、住民の上と下の血圧が下がった。

[3]高齢者への暖房の指導が室温と血圧に与える短期の効果

発表年
2015年
研究機関
日本・奈良県立医科大学
掲載誌
Journal of hypertension
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
359人
結果の向き
良い方向

朝に居間を暖めた高齢者は、上の血圧が4.43mmHg低かった。

[4]冬の室温と家庭血圧の関係の全国調査

発表年
2019年
研究機関
日本・慶應義塾大学
掲載誌
Hypertension (Dallas, Tex. : 1979)
研究の種類
横断研究ある一時点での生活習慣と健康状態の関係を調べる研究。
対象
2,900人
結果の向き
良い方向

室温が10℃低いと朝の上の血圧が8.2mmHg高い関連があった。

[5]周囲の気温と大人の血圧の系統的レビュー

発表年
2017年
研究機関
中国・中山大学
掲載誌
The Science of the total environment
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究14件を統合
結果の向き
良い方向

室温が1℃低いほど上の血圧が0.38mmHg高い関連があった。

[6]住まいの改善と健康・社会経済への影響

発表年
2013年
研究機関
イギリス・医学研究評議会
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究39件を統合
結果の向き
良い方向

暖かくする改修で呼吸器の健康などが良くなる結果が示された。

[7]住宅の断熱と入院率の関連

発表年
2020年
研究機関
ニュージーランド・オタゴ大学
掲載誌
BMJ (Clinical research ed.)
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

断熱改修を受けた住民は呼吸器の病気での入院の増え方が小さかった。

[8]呼吸器感染症を防ぐ家の環境改善の系統的レビュー

発表年
2021年
研究機関
マレーシア・マレーシア保健省
掲載誌
Reviews on environmental health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

家の環境を変える試験14件で、呼吸器感染症は減る傾向があったが、解析により差の出方が分かれた。

[9]既存住宅の断熱が健康の格差に与える影響のくじ引き試験

発表年
2007年
研究機関
ニュージーランド・オタゴ大学
掲載誌
BMJ (Clinical research ed.)
研究の種類
ランダム化比較試験(クラスター)学校や病院などの単位でくじ引きのように分け、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

ニュージーランドの4407人のくじ引き試験で、断熱した家では寝室が冬に0.5℃暖かくなり、ゼーゼー (喘鳴) の訴えが減った (コクランのレビューの検索期間より前の研究のため数に入れない)

[10]ビクトリア州の住宅改修プログラムのくじ引き試験

発表年
2025年
研究機関
オーストラリア・シドニー工科大学
掲載誌
BMJ open
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
1,313人
結果の向き
良い方向

改修を受けた高齢者は息切れが少なく、医療費が一人あたり平均887豪ドル少なかった。

[11]エネルギー使用・燃料貧困・省エネ改修と健康の系統的レビュー

発表年
2022年
研究機関
スウェーデン・ウプサラ大学
掲載誌
International journal of environmental research and public health
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

換気設備のない断熱は健康を損なうことがあるとまとめられた。

ほかに参考にした論文(14本)

判定「良い関連がある」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。