扇風機は暑さをしのぐのに役立つ?

扇風機は暑さをしのぐのに役立つ?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え効かない

暑さのつらさは和らぎます。ただ体温を下げる力は小さく、扇風機だけでは足りません。

根拠

高齢者を暑い部屋に8時間おいた試験で、31℃では深部体温の最高値が扇風機ありで0.2℃低く [1]、36℃では体温に差がありませんでした [2]。一方、暑さによる症状の点数は扇風機で下がっています [2] [3]。この体感の話は、根拠の確かさは低めです。試験の参加者が20人前後と少ないためです。

この答えの範囲

気温30℃台の部屋の話です。40℃以上のとても暑い部屋では、体温が下がらないか、逆に上がった試験があります。

じゃあ、どうする?

暑さが楽になる補助として使い、体を冷やす役目はエアコン・水分・涼しい場所に任せましょう。室温が高いときは風を当て続けず、特に高齢の方は涼しい場所へ移動を。体調が悪いときは医療機関へ相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。11 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 74 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン3440いちばん信頼できる研究の種類
研究の量9.220研究件数と参加人数
一致度15.725結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 73.9 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 74 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 3 本・その他のヒトの研究 1 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

扇風機とは

扇風機は、羽根で風を起こして体に当てる家電です。風で汗が蒸発しやすくなり、涼しく感じるとされています。部屋の空気をかき混ぜるだけなので、気温そのものを下げる機械ではありません。注意点は、とても暑いときの使い方です。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、カナダのオタワ大学などの研究チームが2025年に発表したランダム化試験です [2]。ランダム化試験とは、参加者をくじ引きで分けて比べる方法です。36℃・湿度45%の部屋で、高齢者18人が8時間座って過ごしました。

研究の種類ランダム化試験(扇風機の風の強さを変えて比べた)
対象36℃・湿度45%の部屋で8時間過ごした高齢者18人
比べたもの風なし、秒速2m、秒速4mの扇風機
結果深部体温・皮膚の温度・心拍数の8時間の合計は、扇風機なしと差がなかった
試験の結果36℃では、扇風機を使っても体温は下がりませんでした [2]。

同じ参加者で、暑さによる症状の合計点は扇風機なしの0.89倍に下がっています [2]。

体温は、どの気温でどう変わる?

試験の結果は、部屋の気温で分かれます。

  • 31℃: 高齢者20人が天井の扇風機の下で休むと、深部体温の最高値が扇風機なしより0.2℃低くなりました [1]。下がりましたが、小さな差です。
  • 36℃: 体温に差はありませんでした [2]。36.5℃で8時間過ごした若い男性14人では、扇風機で深部体温が下がりましたが、体の水分は多く失われました [4]。
  • 38℃: 若い男性10人の試験で、扇風機だけでは直腸温・心拍数の上がり方は変わらず、汗で失う水分は多くなりました [5]。
  • 40℃: 健康な18〜40歳の42人(女性20人・男性22人)が作業した試験で、扇風機だけでは深部体温は下がりませんでした。扇風機と水分補給の組み合わせで下がったのは男性だけで、女性で下がったのはエアコンだけでした [6]。
  • 47℃・湿度15%: 高齢者23人が3時間過ごした試験で、扇風機を使うと深部体温の上がり方が0.60℃大きくなりました [7]。

42℃で湿度を上げていった実験では、扇風機は若い人9人の体の負担を変えず、高齢者9人では心拍数・深部体温・皮膚の温度を高くしました [8]。これらを検討した総説は、気温が35℃を超えると扇風機では体温を意味のあるほど下げられないと述べ、特に65歳以上には35℃を超えるときは勧めないよう提言しています [9]。根拠の確かさは中程度です。

よく言われていることは本当?

  • 風で汗が蒸発して涼しく感じる31〜36℃の高齢者では本当です。 暑さによる症状の点数は、31℃では扇風機なしが扇風機ありの1.3倍でした [3]。根拠の確かさは低めです。参加者が20人前後の試験が中心のためです。
  • 熱中症の予防に役立つ扇風機だけでは足りません。 熱中症の発生が減るかを調べた試験は見つかっておらず、体温を下げる力が小さいことが分かっているだけです [10]。
  • 気温が高いと逆効果になる条件によります。 47℃の乾いた部屋では体温の上がり方が大きくなりました [7]。
  • 扇風機で室温が下がる人で測った研究は見つかっていません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

体温とは別に、心拍数にも差が出た試験があります。31℃の部屋では天井の扇風機で心拍数が5拍/分低くなりました。ただ、立ち上がったときの血圧などの自律神経の働きは守られませんでした [11]。

差がなかった試験36℃の部屋で過ごした高齢者18人

深部体温・皮膚の温度・心拍数の8時間の合計に、扇風機なしとの差はありませんでした [2]。

02注意点

研究の多くは、健康な高齢者や若い成人を、実験室の暑い部屋で数時間から8時間調べたものです。参加者は10〜20人台で、家庭の暮らしそのままではありません。扇風機は汗をかく力に頼る方法なので、汗で水分が失われます。38℃の試験でも汗で失う水分は多くなりました [5]。持病がある人、薬を飲んでいる人は、医師や薬剤師に確認してください。

暑い日は、水分と涼しい場所を先に

高温の部屋では風を当て続けず、体を冷やす方法を組み合わせてください。

03まとめ

扇風機は、暑さのつらさを和らげる助けになります。
ただ体温を下げる力は小さく、40℃前後では扇風機だけでは足りません。
暑い日は、水分と涼しい場所を使い、扇風機は補助として使いましょう。

04よくある質問

Qエアコンと一緒に使うと良い?

エアコンと併用して節電になるかを、人で調べた試験は見つかっていません。40℃の作業環境の試験では、エアコンで深部体温が下がりました [[41130225]]。

Q窓に向ける・氷を置くと涼しくなる?

窓に向ける置き方を人で比べた研究は見つかっていません。氷については試験があります。38℃の試験では、扇風機の風そのものは体温の上がり方を変えませんでしたが、氷のシャーベット・冷水・足を水に浸ける方法を足すと、上がり方が小さくなりました [[37698186]]。36.5℃の試験でも、扇風機とシャーベットなどの組み合わせが比べられています [[40516396]]。

Qつけっぱなしで寝ると体に悪い?

睡眠中の扇風機と体調を比べた研究は見つかっていません。31℃のベッドで休む試験では、天井の扇風機で心拍数が低くなりました [[42693775]]。

Q高齢者は扇風機だけで大丈夫?

36℃の試験でも体温は下がりませんでした [[40020224]]。35℃を超えるときは勧めないという提言もあります [[38580427]]。エアコンなどを使ってください。

05参照した論文

判定に使った主な論文(11本)

[1]室内の過熱にさらされたベッド安静の高齢者への天井扇風機の効果

発表年
2026年
研究機関
カナダ・オタワ大学
掲載誌
Journal of the American Geriatrics Society
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
20人
結果の向き
良い方向

31℃の部屋で8時間休んだ高齢者20人で、天井の扇風機を回すと深部体温の最高値が扇風機なしより0.2℃低かった。

[2]36℃の部屋の高齢者で、扇風機が症状と気分に与える影響

発表年
2025年
研究機関
カナダ・オタワ大学
掲載誌
Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
18人
結果の向き
差なし

36℃の部屋で8時間過ごした高齢者18人で、扇風機を使うと暑さによる症状の合計点が扇風機なしの0.89倍に下がった。

[3]ベッド安静の高齢者の自覚症状と気分への天井扇風機の効果

発表年
2026年
研究機関
カナダ・オタワ大学
掲載誌
Journal of the American Geriatrics Society
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
20人
結果の向き
良い方向

31℃の部屋の高齢者20人で、天井の扇風機がないと暑さによる症状の合計点が扇風機ありの1.3倍に高かった。

[4]長時間の暑さにさらされた若い男性への扇風機を使った冷却法

発表年
2025年
研究機関
中国・河北職業技術大学
掲載誌
Journal of thermal biology
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
14人
結果の向き
良い方向

36.5℃の部屋で8時間過ごした若い男性14人で、扇風機を使うと深部体温が下がったが、体の水分は多く失われた。

[5]高温多湿で運動する若い男性への扇風機と冷却法の効果

発表年
2023年
研究機関
カナダ・シャーブルック大学
掲載誌
Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
10人
結果の向き
差なし

38℃・湿度60%の若い男性10人で、扇風機だけでは直腸温・心拍数の上がり方は変わらなかった。

[6]バングラデシュの縫製工場を想定した暑さでの冷却法の比較

発表年
2025年
研究機関
オーストラリア・シドニー大学
掲載誌
The Lancet. Planetary health
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
42人
結果の向き
差なし

40℃の部屋で作業した42人で、扇風機だけでは深部体温は下がらず、エアコンなどで下がった。

[7]とても暑く乾いた環境の高齢者への低エネルギー冷却法

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・テキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院ダラス
掲載誌
Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985)
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
23人
結果の向き
悪い方向

47℃・湿度15%の部屋に3時間いた高齢者23人で、扇風機を使うと深部体温の上がり方が0.60℃大きかった。

[8]極端な暑さと湿度での扇風機への体の反応と年齢の関係

発表年
2017年
研究機関
アメリカ・テキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院ダラス
掲載誌
Medicine and science in sports and exercise
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
18人
結果の向き
結果が割れている

42℃の実験で、扇風機は若い人9人では体の負担を変えず、高齢者9人では心拍数・深部体温を高くした。

[9]暑い日や熱波での扇風機の効果を検討した総説

発表年
2024年
研究機関
カナダ・オタワ大学
掲載誌
The Lancet. Planetary health
研究の種類
その他の研究上のどれにも当てはまらない研究。
対象
—
結果の向き
差なし

気温が35℃を超えると深部体温を意味のあるほど下げるには足りないとし、35℃を超えるときは扇風機を勧めないよう提言した。

[10]熱波での健康被害を減らす扇風機(コクランの系統的レビュー)

発表年
2012年
研究機関
イギリス・Gupta Sほかの研究チーム
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

熱波のときの扇風機で死亡や入院が変わるかを調べた試験を見つけられず、使うべきかは決められないとした。

[11]ベッド安静の高齢者の自律神経の働きへの天井扇風機の効果

発表年
2026年
研究機関
カナダ・オタワ大学
掲載誌
Experimental physiology
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

天井の扇風機で心拍数は5拍/分低かったが、立ち上がったときの血圧などの自律神経の働きは守られなかった。

ほかに参考にした論文(11本)

判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。