低周波治療器(EMS)で肩こりは楽になる?

低周波治療器(EMS)で肩こりは楽になる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え

運動に足すと治療直後の痛みが下がり、貼るだけでは差がありませんでした。学術論文としては、まだ断定できていません。

根拠

慢性の首の痛みで、TENS (皮膚の上から当てる低周波) を偽の刺激と比べると、痛みの差は平均 -0.10 点でほぼありませんでした [1]。一方、運動に電気治療を足すと、運動だけより治療直後の痛みが下がりました (SMD -0.76) [2]。どちらも研究の確実性は非常に低いと評価されています。筋トレ用の EMS は、偽の治療より痛みを下げませんでした [3]。

この答えの範囲

慢性の首の痛みがある大人で、治療直後から治療後3か月までの痛みを確かめた結果です。

じゃあ、どうする?

貼るだけで楽になる、とは言えません。使うなら、運動やストレッチの補助と考えるのが研究の形に近いです。筋トレ用の EMS に肩こりの効果は期待できません。ペースメーカーなどの体内の医療機器がある人、妊娠中の人は、使う前に医師に確認を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。限定的
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。9 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 39 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量1720研究件数と参加人数
一致度12.925結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 84.9 点を、エビデンス強度 D の範囲(5〜39 点)に収めて、スコアは 39 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 3 本・観察研究 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「非常に低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を C から D に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

低周波治療器 (EMS・TENS) とは

家庭用の「低周波治療器」は、皮膚に貼ったパッドから弱い電気を流す機器です。肩こりや筋肉痛をやわらげるとされ、パッドを貼る位置や刺激のパターンを選べるものが多くあります。研究では、痛みをやわらげる目的の電気刺激を TENS (経皮的電気神経刺激) と呼びます。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

名前が似ていても、狙いが違います。

  • TENS: 筋肉が動かない程度の、ピリピリする強さで流します。多くの試験は 60〜100Hz の連続した刺激を、毎日 1 回 20〜60 分行いました [1]。
  • EMS (筋肉を動かす電気刺激): 筋肉を収縮させる刺激です。筋トレ用の機器はこちらです。

研究では、この 2 つを分けて調べています。

答えの中心は、ブラジルのコクラン・ブラジルなどの研究チームが2019年に発表した系統的レビューです [1]。系統的レビューとは、決めた手順で関連する研究を集め、結果を整理する方法です。慢性の首の痛みがある大人で、TENS を偽の TENS と比べた試験が集められました。

研究の種類慢性の首の痛みへの TENS を調べた系統的レビュー (7 件の試験)
対象12週間を超えて首の痛みが続く大人 (平均年齢31.7〜55.5歳)
比べたものふつうの TENS と偽の TENS
結果治療後3か月までの痛みの強さ (VAS) の差は平均 -0.10 点で、はっきりした差はなかった
系統的レビューの結果貼るだけの TENS は、偽の刺激と比べて、慢性の首の痛みの強さにほぼ差がありませんでした [1]。

この結論は、研究の確実性が非常に低いと評価されています。

TENS を偽の治療と比べた別の試験でも同じ傾向でした。首の痛みがある144人に 2 週間で 10 回 TENS を使っても、安静時の痛みは偽の治療と差がありませんでした [4]。

運動などに足すと、短期の痛みは下がった

同じ電気刺激でも、ほかの治療に足した場合は結果が変わります。原因のはっきりしない慢性の首の痛みで、運動に電気治療を足すと、運動だけより治療直後の痛みが下がりました (SMD -0.76、7 件・441人) [2]。スペインのアルメリア大学などの研究チームによる2026年のメタ解析です。ただし、首の動かしにくさ (生活の支障) には差がなく、研究の確実性は非常に低いと評価されています。

首の痛みへの電気刺激の RCT 30 件を集めた別のメタ解析でも、ほかの治療に電気刺激を足したほうが、治療直後と短期の痛みが下がりました [5]。この比較の確実性は中程度と評価されていますが、結果は治療を終えた直後から短期のものにとどまります。

EMS (筋トレ用) はどうか

首の痛みへの電気治療をまとめたコクランレビュー (小さな試験 20 件、合計 1239人) では、EMS は偽の治療より痛みを下げませんでした。ただし確実性は非常に低く、EMS を調べた試験はその一部です [3]。肩の筋肉にこりの芯がある41人の試験では、EMS とストレッチの組み合わせで、1 回の治療の直後に押したときの痛みは感じにくくなりましたが、痛みの強さには差がありませんでした [6]。

よく言われていることは本当?

  • 肩こり・首こりを和らげる貼るだけでは、慢性の首の痛みで偽の刺激と差がありませんでした [1]。 運動に足したときの短期の痛みには下がる結果があります [2]。
  • 神経痛・筋肉痛など首・肩の痛みをやわらげる条件によります。 TENS だけをまとめた筋膜性疼痛 (筋肉のこりの芯の痛み) の解析では、はっきりした差がありませんでした [7]。
  • 電気で筋肉をもみほぐす研究が足りません。 首の痛みの試験では、押したときの痛みを感じにくくした結果があります (確実性は非常に低い) [5]。
  • EMS (トレーニング用) でも肩こりが取れる効きません。 偽の治療より痛みを下げませんでした (根拠の確かさは低めです。試験が小さく、結果が少ないためです) [3]。
  • 血行を良くする研究が見つかっていません。 首・肩のこりの人で血流の変化を確かめた試験はありませんでした。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

首の痛みへの物理療法を比べたネットワークメタ解析では、効果の順位は高出力レーザー、衝撃波、干渉波、TENS の順で、TENS は真ん中より下でした [8]。腰痛が中心の別のメタ解析では、使っている最中は偽の治療より痛みが下がりましたが、終わったあとには差がありませんでした [9]。

差がなかった試験首の痛みがある人 144人 (2 週間で10回の治療)

TENS は偽の治療と比べて、安静時の痛みを下げませんでした [4]。

02注意点

研究で使われたのは、首の痛みが12週間を超えて続く大人です。治療後3か月までの結果で、それ以降は分かっていません。肩こり全般 (数日の一時的なこりなど) を調べた研究は少なく、結果をそのまま当てはめられません。

痛みが続く、しびれや脱力がある場合は、肩こりではない病気が隠れていることがあります。医療機関への相談が先です。ペースメーカーなどの体内の医療機器がある人、妊娠中の人は、使う前に医師に確認してください。

運動やストレッチと組み合わせる

運動やストレッチと組み合わせた研究で短期の痛みが下がっているので、電気だけに頼らない使い方が研究の形に近いです。

03まとめ

低周波治療器は、運動などに足すと、治療直後から短期の痛みが下がりました。貼るだけの場合は、偽の刺激と差がありませんでした。
筋トレ用の EMS は、肩こりの対策として研究では効果が示されていません。
使うなら運動の補助として。運動やほかの肩こり対策は 肩こりに効く方法は? も参考になります。

04よくある質問

Q低周波治療器と EMS は同じものですか?

別の狙いの刺激です。痛みをやわらげる TENS は筋肉が動かない強さで、EMS は筋肉を収縮させます。研究でも別々に調べられ、EMS は首の痛みを偽の治療より下げませんでした [[23979926]]。

Qどのくらい続けると楽になりますか?

研究では、毎日 1 回 20〜60 分の TENS を使っても、偽の刺激と差がありませんでした [[31830313]]。使う時間や回数と効果の関係を比べた研究は見つかっていません。

Q湿布と比べるとどうですか?

電気刺激と湿布を直接比べた研究は、今回の調査では見つかっていません。湿布の研究は [湿布(貼り薬)で肩こりや腰痛は楽になる?](/evidence/topical-nsaid-patch-pain) にまとめています。

05参照した論文

判定に使った主な論文(9本)

[1]慢性の首の痛みへの TENS のコクランレビュー

発表年
2019年
研究機関
ブラジル・コクラン・ブラジル
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
651人
結果の向き
差なし

ふつうの TENS と偽の TENS を比べると、痛みの強さの差は平均 -0.10 点で、はっきりした差はなかった。

[2]慢性の首の痛みに運動と電気治療を組み合わせる効果のメタ解析

発表年
2026年
研究機関
スペイン・アルメリア大学
掲載誌
Journal of clinical medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
441人
結果の向き
良い方向

運動に電気治療を足すと、運動だけより治療直後の痛みが下がった (SMD -0.76)。生活の支障には差がなかった。

[3]首の痛みへの電気治療のコクランレビュー

発表年
2013年
研究機関
ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

首の痛みがある1239人で、EMS は偽の治療より痛みを下げなかった。

[4]慢性の首の痛みへの光治療と TENS の二重盲検試験

発表年
2024年
研究機関
ブラジル・サンカルロス連邦大学
掲載誌
Brazilian journal of physical therapy
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
144人
結果の向き
差なし

首の痛みがある144人で、TENS を使っても安静時の痛みは偽の治療と差がなかった。

[5]首の痛みへの経皮的電気刺激の系統的レビューとメタ解析

発表年
2022年
研究機関
ブラジル・サンカルロス連邦大学
掲載誌
European journal of pain (London, England)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究30件を統合
結果の向き
良い方向

電気刺激をほかの治療に足すと、治療直後と短期の痛みが下がった。

[6]筋膜性疼痛への EMS と TENS の比較試験

発表年
2025年
研究機関
イギリス・バース大学
掲載誌
Artificial organs
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
41人
結果の向き
差なし

僧帽筋にこりの芯がある41人で、EMS とストレッチは押したときの痛みを感じにくくしたが、痛みの強さには差がなかった。

[7]トリガーポイントの痛みへの電気刺激の系統的レビュー

発表年
2019年
研究機関
カナダ・トロント大学
掲載誌
Pain medicine (Malden, Mass.)
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究15件を統合
結果の向き
差なし

電気刺激全体では痛みが下がったが、TENS だけでははっきりした差がなかった。

[8]首の痛みへの 6 つの物理療法を比べたネットワークメタ解析

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・サウスイースト・コロラド病院
掲載誌
European spine journal : official publication of the European Spine Society, the European Spinal Deformity Society, and the European Section of the Cervical Spine Research Society
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

効果の順位は高出力レーザー、衝撃波、干渉波、TENS の順で、TENS は真ん中より下だった。

[9]背骨まわりの痛みへの TENS のメタ解析

発表年
2018年
研究機関
ブラジル・セルジッペ連邦大学
掲載誌
European journal of pain (London, England)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

多くは腰痛の試験で、使用中は偽の治療より痛みが下がったが、終了後は差がなかった。

ほかに参考にした論文(2本)

この記事のエビデンス強度は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。