[1]首の痛みに対する運動のコクラン・レビュー
- 発表年
- 2015年
- 研究機関
- カナダ・マクマスター大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 2,485人
- 結果の向き
- 良い方向
慢性の首の痛みで、首・肩甲骨まわり・腕の筋トレにより痛みが中程度から大きく減った。

運動は効きます。ストレッチだけは効きません。マッサージと温めるのも効きます。
研究の多くは「肩こり」ではなく「首や肩の痛み」を測っています。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 18.3 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 98.3 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 3 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
肩こりは、首から肩、背中にかけての筋肉が張り、重く感じたり痛んだりする状態の呼び名です。同じ姿勢の長い時間、運動不足、ストレスなどが関わるとされ、病名ではなく症状を指す言葉です。対処には、運動、ストレッチ、マッサージ、温めるなどの方法があります。注意点は、しびれや腕の力が入りにくいときは別の病気が隠れていることがあり、医療機関に相談することです。
答えの中心は、カナダのマクマスター大学などの研究チームが2015年に発表したコクラン・レビューです [1]。コクラン・レビューとは、無作為に分けて比べた試験をまとめる方法です。
| 研究の種類 | 試験を集めたコクラン・レビュー |
|---|---|
| 対象 | 慢性の首の痛みがある大人(試験27件・解析2485人) |
| 比べたもの | 首・肩甲骨まわり・腕の筋トレ / 運動をしない場合 |
| 結果 | 終了直後の痛みが中程度から大きく減少(SMD -0.71) |
その後の短期の追跡でも、同じ向きの結果が報告されています [1]。
SMDは、異なる尺度の結果をそろえて比べる数値です。「71%楽になる」という意味ではありません。
2026年にイランのシャヒード・ベヘシュティ大学などが発表したメタ解析でも、座りがちな働く人が職場などで行う短い運動で、首・肩の痛みが減っています(効果量g=-0.79)[7]。オフィスワーカーだけを調べた2024年のメタ解析でも痛みは減りましたが、8件とも結果に偏りが出やすい作りで、確実性は低いと報告されています [2]。
痛みがまだない大人を調べた2023年のメタ解析では、運動をした人は12か月以内に首の痛みが新しく起こる確率が下がっていました(オッズ比0.49)[9]。
ストレッチだけでは、首の痛みも機能も変わらないと、コクラン・レビューは報告しています [1]。筋トレを組み合わせたプログラムでは、痛みが減っています。
ストレッチの群は一日二回・週五日、4週間続け、姿勢の説明だけの群より痛みの点数が1.4点多く下がりました [3]。
1件だけで「効く」とは言えません。ストレッチだけに頼らず、筋トレと組み合わせるのが堅実です。
カナダのマクマスター大学などが2024年に発表したコクラン・レビューでは、偽のマッサージと比べて痛みは100点満点で平均3.43点下がりましたが、差ははっきりしませんでした(8件・403人、確実性は低い)[5]。偽のマッサージとの比較の多くは、施術が1回だけで量が少ない試験でした。施術の量が多い試験に絞ると、臨床的に意味のある差があったという分析もあります。
アメリカのインディアナ大学などの試験では、退役軍人290人がマッサージ師による60分のマッサージを週二回・12週間受け、3か月後の痛みの強さが順番待ちの人より1.3点低くなりました [4]。家族など身近な人が習って行う方法でも、203人の試験で3か月後の痛みが1.3点低くなりましたが、この群の45%は講習に来ずに途中でやめています [10]。
オーストリアのグラーツ医科大学などの2026年の系統的レビューは、温熱シートの試験2件・67人をまとめ、勧めるとも勧めないとも言えないほど根拠が少ないと結論しました [6]。
運動に塩のホットパックを足した高齢者35人の試験 [11] と、リハビリに温泉療法を足した60人の試験 [12] でも、足した群で痛みが減っています。どちらも運動やリハビリに足した形で、家庭での温め方そのものを調べたものではありません。
病院のマイクロ波で体の奥を温める治療は、運動などに足しても上乗せの効果がありませんでした(149人)[13]。体の表面を温める方法とは別のものです。
対象者には偏りがあります。マッサージの試験は米国の退役軍人が対象で、女性は15%でした [4]。
しびれ、腕の力が入りにくい、痛みが長引くといった場合は、別の病気が隠れていることもあります。医療機関に相談してください。持病や服薬中の人は、始める前に医師・薬剤師に確認すると安心です。
研究が測ったのは痛みで、こりの感じ方ではありません。
首・肩まわりの筋トレを含む運動が、研究では一番しっかり痛みを減らしています。
ストレッチだけは効かず、マッサージと温めるのは、試験の数や比べる相手で見え方が変わります。
まず筋トレから始め、症状が続くときは医療機関へ相談しましょう。
コクラン・レビューでは、ストレッチだけでは痛みが変わらないと報告されています [[25629215]]。筋トレと組み合わせた形では、痛みが減っています。
試験では、60分のマッサージを週二回・12週間受けた退役軍人で、3か月後の痛みが順番待ちの人より低くなりました [[40875586]]。肩こり向けの最適な回数は、研究では確かめられていません。
温熱シートなどで首を温めた試験では、痛みが減っています。ただし2件・67人と少なく、家庭のカイロや蒸しタオルの研究はありません [[42311469]]。
慢性の首の痛みで、首・肩甲骨まわり・腕の筋トレにより痛みが中程度から大きく減った。
筋トレで首の痛みが減ったが、偏りのリスクが高く確実性は低い。
ストレッチを4週間続けた人は、姿勢の説明だけの人より痛みの点数が1.4点多く下がった。
週二回・12週間のマッサージで、順番待ちの人より3か月後の痛みが1.3点低かった。
偽のマッサージと比べて、痛みの差ははっきりしなかった。
温熱シートで首を温めた試験2件で痛みは減ったが、根拠は少ない。
座りがちな働く人の短い運動で、首・肩の痛みが減った。
休憩を足しても、首の痛みが新しく起こる割合ははっきり変わらなかった。
首の痛みがない大人(8割がオフィスワーカー)で、運動をすると12か月以内に首の痛みが新たに起こる確率が下がる可能性が高い(予防の研究)
退役軍人203人で、3か月後の痛みが1.3点低かった。45%は途中でやめた。
運動に塩のホットパックでの温熱を足した高齢者35人で、安静時と動いたときの痛みが運動だけの人より減った。
リハビリに温泉療法を足した60人で、痛みと日常の支障がリハビリだけの人より減った。
運動などにマイクロ波の温熱治療を足した149人で、足さない人と比べて上乗せの効果は無かった。
腕を支える台と工夫したマウスで、首・肩の不調が新しく起こるリスクが約半分になった。
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。