胃腸炎のとき経口補水液は回復を助ける?

胃腸炎のとき経口補水液は回復を助ける?
読了目安 4〜6分最終更新日 2026.11.06
答え

胃腸炎で脱水になった子どもでは、点滴とほぼ同じくらい脱水を治せます。入院日数は1.20日短くなります。

根拠

胃腸炎で脱水になった子ども1811人(17件の試験)のまとめでは、経口補水液と点滴で脱水を治す力に大きな差はなく、入院日数は1.20日短くなりました。一方、結局点滴が必要になった子どもは4%多く、25人に1人でした [1]。先進国の子どもの胃腸炎の治療法を調べたまとめ(経口補水液と点滴の比較は、そのうちの一部)でも、入院する割合に差はありませんでした [2]。根拠の確かさは低めです。試験の質が低い〜中くらいのためです。

この答えの範囲

軽い〜中くらいの脱水になった子どもで、経口補水液と点滴を比べた結果です。大人の試験と、薄めたジュースなどと比べた試験は、本文にまとめています。

じゃあ、どうする?

吐き気や下痢が続くときは、水分と塩分を補う手段として経口補水液は使えます。飲めない、ぐったりしている、尿が出ないときは、早めに医療機関へ。脱水が軽ければ、薄めたジュースなど好きな飲み物も選べます [3]。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。限定的
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。7 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。結果は混在
判定の内訳を見る(スコア 39 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量16.620研究件数と参加人数
一致度025結果の向きがそろっているか
新しさ310最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 64.6 点を、エビデンス強度 D の範囲(5〜39 点)に収めて、スコアは 39 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 1 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

経口補水液とは

経口補水液は、水に塩分と糖分をちょうどよい割合で溶かした飲み物です。下痢や嘔吐で失った水分と塩分を口から補うために、医療の現場で使われてきました。胃腸炎そのものを治す薬ではなく、脱水を防ぎ、治すためのものです。飲み物を点滴の代わりに使う方法を「経口補水療法」と呼びます。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

ここでの「点滴」は、静脈から水分を入れる治療のことです。この研究では、飲んで補う方法と点滴を比べています。

答えの中心は、Hartling らの研究チームが2006年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、似た試験の結果を集めて、まとめて分析する方法です。胃腸炎で脱水になった子どもの試験が集められました。

研究の種類子どもの経口補水療法と点滴を比べた試験のメタ解析
対象胃腸炎で脱水になった18歳までの子ども(17件・1811人)
比べたもの経口補水療法と点滴
結果脱水を治す力に大きな差はなく、入院日数は経口補水療法のほうが短かった
メタ解析の結果経口補水療法は、点滴と同じくらい脱水の治療に使えました [1]。

入院日数は点滴より平均1.20日短く、下痢の続く期間には差がありませんでした。

カナダのカルガリー大学などが2015年に発表した、先進国の子どもの胃腸炎の治療法を調べたまとめでも、経口補水療法と点滴を比べた部分で、入院する割合と救急外来への再受診に差はありませんでした [2]。アメリカのフィラデルフィア小児病院などの試験では、中くらいの脱水の子ども73人のうち、4時間後に脱水が治った割合は、経口補水療法と点滴のどちらも半分ほどでした [4]。経口補水療法のほうが、始めるまでの時間は短くて済みました。

点滴に切り替わる子どもも一部いる

点滴が必要になる子どもの割合だけを見ると、経口補水療法のほうが4%多い結果でした。25人に1人は、結局点滴が必要になった計算です [1]。「点滴と全く同じ」ではなく、「ほぼ同じくらい使える。ただし一部の子どもは点滴に切り替わる」と読むのが正確です。

結局点滴が必要になった子ども胃腸炎で脱水になった子ども1811人(17件の試験)

経口補水療法のほうが4%多く、25人に1人にあたります。

よく言われていることは本当?

  • 経口補水液で脱水を治せる本当です。 軽い〜中くらいの脱水の子どもで、点滴と同じくらい治せました [1]。根拠の確かさは低めです。
  • 経口補水液を飲めば入院や点滴をしなくて済む半分本当です。 入院する割合は点滴と差がありませんでした [2]。一方で、25人に1人は点滴に切り替わっています [1]。
  • スポーツドリンクやジュースは代わりにならない脱水が軽ければ、ほぼウソです。 脱水がほとんどない軽い胃腸炎の子ども647人では、半分に薄めたりんごジュースと好きな飲み物のほうが、経口補水液より治療の失敗が少なくなりました(16.7%対25.0%)[3]。大人75人の試験でも、スポーツドリンクと経口補水液で便の回数や体重の改善に差はありませんでしたが、スポーツドリンクでは低カリウムが続きました [5]。中くらい以上の脱水には当てはまりません。
  • 経口補水液で胃腸炎が早く治る研究が足りません。 経口補水液と何も飲まない場合を比べた試験は見つかっていません。点滴と比べて、下痢の続く期間には差がありませんでした [1]。
  • 吐き気が強いときは少しずつ何度にも分けて飲む研究では確かめられていません。 各試験で使われている手順ですが、飲ませ方そのものを比べた試験は見つかっていません。

今の経口補水液は、昔のものより下痢が短い

塩分と糖分を薄めた今の経口補水液は、10歳未満の子どもで以前の標準のものより下痢の続く期間が短い結果でした(確実性は中くらい)[6]。予定外の点滴は、2002年のレビューでは少なかった一方、2024年のレビューでは差がありませんでした [7] [6]。どちらも対象は下痢の子どもで、2024年のレビューは10歳未満に限っています。ただし、経口補水液の種類を比べた結果で、飲むか飲まないかを比べたものではありません。

02注意点

主な研究は、脱水になった子どもが対象です。経口補水療法の試験は、病院の救急外来や外来で行われたものが中心です [2]。軽い胃腸炎の子どもの試験では、7日以内に点滴・入院・再受診などが必要になった割合を「治療の失敗」としています [3]。家庭で飲ませる場合も、ぐったりしている、飲んでも吐き続ける、尿が出ない、血便があるなどのときは、早めに医療機関を受診してください。乳幼児や持病のある人、服薬中の人は、医師や薬剤師に確認してください。

脱水が強いときは、飲むだけに頼らない

経口補水液はあくまで水分補給の手段で、重い脱水では点滴が必要になることがあります。

03まとめ

経口補水液は、子どもの脱水を点滴とほぼ同じくらい治せるというのが、研究の答えです。
脱水が軽いなら、薄めたジュースなど好きな飲み物も選べますが、中くらい以上の脱水は経口補水液や点滴の出番です。
飲めない・ぐったりしているときは、自己判断で続けず受診しましょう。

04よくある質問

Q大人でも経口補水液は役に立ちますか?

大人の研究は少ないです。ウイルス性胃腸炎で入院した大人75人の試験では、スポーツドリンクと経口補水液で便の回数や体重の改善に差はありませんでした [[16931613]]。

Q水やお茶だけではだめですか?

水やお茶と経口補水液を比べた試験は、今回の検索では見つかっていません。研究で確かめられているのは、点滴や薄めたジュースなどとの比較です。

Q経口補水液を飲めば下痢は止まりますか?

経口補水液は下痢を止める薬ではありません。失った水分と塩分を補う飲み物です。点滴と比べて、下痢の続く期間には差がありませんでした [[16856044]]。

Qどんなときに病院へ行けばよいですか?

飲んでも吐き続ける、ぐったりしている、尿が出ない、血便があるときは、早めに受診してください。飲ませ方の研究は少なく、症状が重いときは医師の判断が優先です。

05参照した論文

判定に使った主な論文(7本)

[1]胃腸炎による脱水の子どもで、飲む補水と点滴を比べたメタ解析

発表年
2006年
研究機関
Hartling Lほかの研究チーム
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,811人
結果の向き
結果が割れている

脱水の子ども1811人(17件の試験)で、経口補水療法は点滴より治療の失敗が4%多く、入院日数は平均1.20日短かった。

[2]先進国の胃腸炎の治療法を比べたメタ解析

発表年
2015年
研究機関
カナダ・カルガリー大学
掲載誌
PloS one
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
差なし

先進国の救急外来・外来の子どもの胃腸炎の治療法を調べたまとめで、経口補水療法と点滴とで入院する割合に差がなかった。

[3]薄めたりんごジュースと経口補水液を比べた試験

発表年
2016年
研究機関
カナダ・カルガリー大学
掲載誌
JAMA
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
647人
結果の向き
良い方向

軽い胃腸炎の子ども647人で、薄めたりんごジュースと好きな飲み物のほうが治療の失敗が少なかった(16.7%対25.0%)。

[4]中くらいの脱水の子どもで、飲む補水と点滴を比べた試験

発表年
2005年
研究機関
アメリカ・フィラデルフィア小児病院
掲載誌
Pediatrics
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
73人
結果の向き
差なし

中くらいの脱水の子ども73人で、4時間後に脱水が治った割合は経口補水療法と点滴とで同じく半分ほどだった。

[5]大人のウイルス性胃腸炎で3種類の飲み物を比べた試験

発表年
2006年
研究機関
アメリカ・アイオワ大学
掲載誌
JPEN. Journal of parenteral and enteral nutrition
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
75人
結果の向き
差なし

入院した大人75人で、3種類の飲み物の間に差はなかった。スポーツドリンクの群では低カリウムが続いた。

[6]子どもの下痢に対する低浸透圧の経口補水液のメタ解析

発表年
2024年
研究機関
パキスタン・アガ・カーン大学
掲載誌
Journal of global health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

10歳未満の急な下痢の子どもで、低浸透圧の経口補水液は以前の標準のものより下痢の続く期間が短かった。

[7]下痢の子どもへの低浸透圧の経口補水液のコクランレビュー

発表年
2002年
研究機関
イギリス・ヨーク大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究8件を統合
結果の向き
良い方向

8件の試験の統合で、低浸透圧の経口補水液は以前の標準のものより予定外の点滴が少なかった。

ほかに参考にした論文(3本)

この記事のエビデンス強度は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。