胃腸炎のとき乳酸菌・プロバイオティクスで下痢の期間は短くなる?

胃腸炎のとき乳酸菌・プロバイオティクスで下痢の期間は短くなる?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

短くなります。子どもの急性胃腸炎で、下痢の期間が短くなります。

根拠

子どもの急性胃腸炎を調べたメタ解析が、プロバイオティクスで下痢の期間が短くなると報告しています。25件・5170人の解析で短くなり [1]、酵母のサッカロミセス・ブラウディは23件・3450人で平均1.06日短くなりました [2]。根拠の確かさは低めです。結果のばらつきが大きく、偏りの少ない試験6件・3058人に絞ると8.64時間短いものの差ははっきりしないためです [3]。

この答えの範囲

主に乳幼児・子どもの話です。北米の大規模試験2件では差が出ませんでした。

じゃあ、どうする?

整腸剤は補助の位置づけです。基本は水分と塩分の補給で、整腸剤で下痢が1日前後短くなる研究がある、と考えてください。菌の種類で結果が違うため、「乳酸菌なら何でも同じ」とは言えません [4]。血便、高熱、ぐったりして尿が少ないときは受診を。子ども、大人とも、飲む前に医師か薬剤師に相談すると安心です。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。15 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量19.320研究件数と参加人数
一致度20.525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 94.8 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 5 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「非常に低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

プロバイオティクスとは

プロバイオティクスは、とると体によい働きをするとされる生きた微生物です。乳酸菌やビフィズス菌、酵母のサッカロミセス・ブラウディなどがあり、整腸剤やサプリ、乳酸菌飲料に使われます。菌の種類(菌株)ごとに働きが違うのが特徴です [4]。注意点は、胃腸炎を治す薬ではなく、水分補給の代わりにもならないことです。この節は一般的な説明で、研究で確かめたものではありません。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、アメリカのセント・クリストファー小児病院などの研究チームが2025年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、条件に合う試験の結果をまとめて計算し直す方法です。急性胃腸炎の子どもで、プロバイオティクスとプラセボ(偽薬)を比べたランダム化比較試験(くじ引きで2群に分けて比べる試験)25件が集められました。

研究の種類ランダム化比較試験25件のメタ解析
対象急性胃腸炎の子ども(5170人)
比べたものプロバイオティクスとプラセボ(偽薬)
結果プロバイオティクス群は下痢の期間が短い(平均差-7.76)
まとめて分析した結果プロバイオティクスを飲んだ群は、プラセボ群より下痢の期間が短くなりました [1]。

脱水のある子どもの12件・1907人では、平均21.33時間(約1日弱)短くなっています [5]。

酵母のサッカロミセス・ブラウディだけを調べたメタ解析でも、23件・3450人で下痢の期間が平均1.06日短くなりました [2]。プラセボ対照の二重盲検34件・4911人の解析も、同じ向きでした [6]。向きはそろっていますが、研究ごとの差が大きく、「何時間短くなる」と一つの数字では言えません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

偏りの少ない試験に絞ると、様子が変わります。コクランレビュー(2020年)の主な解析は6件・3058人で、下痢の期間は平均8.64時間短いものの、差ははっきりしませんでした。確実性は非常に低いと評価されています [3]。サッカロミセス・ブラウディのメタ解析も、きちんと盲検化された試験は1件だけでした [2]。

北米の大規模試験2件は、この絞り込みに含まれます。アメリカの救急外来の幼児971人では、乳酸菌を5日間飲んでも下痢の期間は中央値49.7時間対50.9時間で差がありませんでした [7]。カナダの886人も、乳酸菌2種類の組み合わせで52.5時間対55.5時間と差がありませんでした [8]。

差がなかった大規模試験救急外来に来た幼児971人(アメリカ)と886人(カナダ)の二重盲検試験

下痢の期間は、飲んだ群とプラセボ群でほぼ同じでした。

つまり、小さな試験をまとめると短くなり、大きく偏りの少ない試験では差が出ていません。この食い違いが、根拠の確かさが低めという評価の理由です。

ノロウイルス・ロタウイルスでは?

上の2件の試験を病原体別に分けても、ノロウイルス・ロタウイルスなどどの病原体でも、下痢の期間に差はありませんでした [9]。ロタウイルスの下痢だけを集めた2015年のメタ解析(14件)は期間が短くなったと報告しており、古い小さな研究が中心です [10]。

大人は?

研究の大半は子どもです。コクランレビューの対象のうち、大人は412人でした [3]。2012年のまとめでは、大人の急性下痢で効果が支持されませんでした [11]。ウイルス性の下痢の大人46人の小さな試験では、4日目に良くなったと答えた人が酵母群で70%、プラセボ群で26%でした [12]。ただし、これは本人の実感で、下痢の期間は測っていません。

よく言われていることは本当?

  • 整腸剤で胃腸炎の下痢が早く治る子どもでは短くなります。 ただし偏りの少ない試験に絞ると差ははっきりしません [1] [3]。
  • 下痢が2日以上長引くのを防ぐ条件によります。 偏りの少ない2件・1770人では、48時間以上続く人の割合に差がありませんでした(リスク比1.00)[3]。脱水のある子ども1093人の解析では、4日目以降も続く割合が低くなっています [5]。
  • ノロウイルス・ロタウイルスにも効く大規模試験では差がありませんでした。 ロタウイルスだけの古いメタ解析は短縮です [9] [10]。
  • 毎日飲むと胃腸炎にかかりにくくなる研究が割れていて、予防ははっきりしません。 インドの1〜5歳3758人では、乳酸菌飲料で下痢の発症が14%少なくなりました [13]。入院していない健康な大人の研究20件・6994人では、リスクの低下ははっきりしませんでした [14]。
  • ビフィズス菌が腸内の悪い菌を抑え、腸の粘膜を守るしくみの話で、動物実験が中心です。 胃腸炎の人で、このしくみが下痢の期間を変えるかを確かめた研究は、この記事では扱っていません。
  • 胃腸炎のときはヨーグルトを避けたほうがよい研究が見つかりません。 ヨーグルトと整腸剤を比べた子ども930人の試験では、治療後24時間の便の回数に差がありませんでした。食べない群との比較ではありません [15]。

02注意点

研究で飲まれたのは、たとえば生後3か月〜4歳の子どもが、乳酸菌を1日2回、5日間という使い方です [7]。大人の根拠は少なく、免疫が弱い人や持病・服薬中の人は、医師や薬剤師に確認してください。この記事では副作用の大きさは評価していません。

水分補給が先、整腸剤は補助

下痢の期間が短くなる程度の差で、脱水を防ぐ水分と塩分の補給の代わりにはなりません。

03まとめ

子どもの胃腸炎では下痢の期間が短くなりますが、根拠の確かさは低めです。
大人や、ノロウイルスなど病原体別の大規模試験では、差は確かめられていません。
使うなら水分補給を土台に、補助として。血便や高熱、ぐったりしたときは受診しましょう。

04よくある質問

Q大人の胃腸炎でも乳酸菌は効きますか?

研究では確かめられていません。大人の急性下痢のまとめでは効果が支持されませんでした [[22309079]]。

Qヨーグルトでも同じですか?

ヨーグルトと整腸剤を比べた子ども930人の試験では、便の回数に差がありませんでした。食べない場合との比較は、研究では確かめられていません [[35576292]]。

Qどの菌を選べばよいですか?

効果は菌の種類で違うと報告されています [[42080229]]。酵母のサッカロミセス・ブラウディは1.06日短縮の報告がありますが、確実性は非常に低い評価です [[32056266]]。

Q病院に行く目安はありますか?

血便、高熱、ぐったりして尿が少ないときは受診してください。整腸剤を飲んでいても、これは変わりません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(16本)

[1]子どもの急性胃腸炎で、プロバイオティクスが下痢の期間と重さを減らすかのメタ解析

発表年
2025年
研究機関
アメリカ・セント・クリストファー小児病院
掲載誌
Journal of pediatric gastroenterology and nutrition
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
5,170人
結果の向き
良い方向

子ども5170人(RCT25件)で、下痢の期間がプラセボ群より短かった(平均差-7.76)。

[2]子どもの急性胃腸炎に対するサッカロミセス・ブラウディのメタ解析(2020年更新)

発表年
2020年
研究機関
ポーランド・ワルシャワ医科大学
掲載誌
Alimentary pharmacology & therapeutics
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,450人
結果の向き
良い方向

子ども3450人(RCT23件)で、下痢の期間が平均1.06日短かった。

[3]急性の感染性下痢に対するプロバイオティクスのコクランレビュー

発表年
2020年
研究機関
イギリス・リバプール熱帯医学大学院
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,058人
結果の向き
差なし

偏りの少ない試験6件・3058人では、平均8.64時間短いが差ははっきりしなかった。

[4]子どもの急性胃腸炎に対するプロバイオティクスのアンブレラメタ解析

発表年
2026年
研究機関
中国・山東省第三病院
掲載誌
Journal of integrative and complementary medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究36件を統合
結果の向き
良い方向

メタ解析36件のまとめで、効果は菌株ごとに違った。

[5]脱水のある子どもの急性下痢に対するプロバイオティクスのメタ解析

発表年
2021年
研究機関
中国・重慶医科大学附属小児病院
掲載誌
Journal of paediatrics and child health
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,907人
結果の向き
良い方向

脱水のある子ども1907人(RCT12件)で、下痢の期間が平均21.33時間短かった。

[6]子どもの急性下痢に対するプロバイオティクスとシンバイオティクスのメタ解析

発表年
2019年
研究機関
中国・中国人民解放軍の第940病院
掲載誌
Medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,911人
結果の向き
良い方向

子ども4911人(二重盲検RCT34件)で、下痢の期間が短かった。

[7]子どもの急性胃腸炎に対する乳酸菌1種類とプラセボを比べた試験

発表年
2018年
研究機関
アメリカ・ワシントン大学
掲載誌
The New England journal of medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
971人
結果の向き
差なし

幼児971人で、下痢の期間は中央値49.7時間対50.9時間で差がなかった。

[8]子どもの胃腸炎に対する2菌株の組み合わせの多施設試験

発表年
2018年
研究機関
カナダ・カルガリー大学
掲載誌
The New England journal of medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
886人
結果の向き
差なし

幼児886人で、下痢の期間は中央値52.5時間対55.5時間で差がなかった。

[9]救急受診した子どもの胃腸炎で、病原体別にみたプロバイオティクスの効果

発表年
2022年
研究機関
カナダ・カルガリー大学
掲載誌
Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
差なし

ノロウイルス・ロタウイルスなど、どの病原体でも下痢の期間に差がなかった。

[10]Efficacy of probiotic use in acute rotavirus diarrhea in children: A systematic review and meta-analysis.

発表年
2015年
研究機関
イラン・Ahmadi Eほかの研究チーム
掲載誌
Caspian journal of internal medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究14件を統合
結果の向き
良い方向

ロタウイルスの下痢の子どもで、LGGなどのプロバイオティクスは下痢の期間を短くした(14件)

[11]急性下痢に対するプロバイオティクスの効果のメタ解析と系統的レビュー

発表年
2012年
研究機関
イラン・テヘラン医科大学
掲載誌
Inflammation & allergy drug targets
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
3,867人
結果の向き
結果が割れている

子どもでは下痢の期間が短くなったが、大人では効果が支持されなかった。

[12]Effectiveness of Saccharomyces Boulardii CNCM I-745 probiotic in acute inflammatory viral diarrhoea in adults: results from a single-centre randomized trial.

発表年
2023年
研究機関
メキシコ・Salazar-Parra MAほかの研究チーム
掲載誌
BMC gastroenterology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
46人
結果の向き
良い方向

ウイルス性の急性下痢の大人46人のRCTで、4日目に良くなったと答えた人はサッカロミセス・ブラウディ群70%、プラセボ群26%だった

[13]Role of probiotic in preventing acute diarrhoea in children: a community-based, randomized, double-blind placebo-controlled field trial in an urban slum.

発表年
2011年
研究機関
インド・国立コレラ・腸管感染症研究所
掲載誌
Epidemiology and infection
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
3,758人
結果の向き
良い方向

インドの1〜5歳の子ども3758人のRCTで、乳酸菌飲料(ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株)を毎日12週間飲むと、下痢の発症の予防効果は14%(95%信頼区間4〜23%)だった

[14]Orally Ingested Probiotic, Prebiotic, and Synbiotic Interventions as Countermeasures for Gastrointestinal Tract Infections in Nonelderly Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis.

発表年
2023年
研究機関
アメリカ・米国陸軍環境医学研究所
掲載誌
Advances in nutrition (Bethesda, Md.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
6,994人
結果の向き
差なし

入院していない健康な大人(研究20件・6994人超)で、プロバイオティクスを予防のためにとっても、胃腸の感染症にかかるリスクの低下ははっきりしなかった(リスク比0.86)

[15]Comparison Of Efficacy Of Yogurt Versus Probiotics For The Management Of Acute Diarrhoea.

発表年
2022年
研究機関
パキスタン・Anjum BAほかの研究チーム
掲載誌
Journal of Ayub Medical College, Abbottabad : JAMC
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
930人
結果の向き
差なし

急性下痢の1〜5歳の子ども930人で、ヨーグルトと整腸剤(乳酸菌)を比べると、治療後24時間の便の回数に差はなかった

サッカロミセス・ブラウディの年齢別評価(子どものRCTと大人の観察研究)

発表年
2026年
研究機関
中国・ハルビン第四病院
掲載誌
Journal of visualized experiments : JoVE
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
186人
結果の向き
良い方向

子ども186人のRCTで、ロタウイルス陽性の子どもの下痢が2.1日対3.9日と短かった。

ほかに参考にした論文(15本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。