歯医者のフッ素塗布は虫歯を防ぐ?

歯医者のフッ素塗布は虫歯を防ぐ?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

防ぎます。子どもの新しい虫歯が、バーニッシュで43%、ゲルで28%少なくなりました。

根拠

16歳までの子どもを1年以上追った比較試験をまとめたコクランレビューが、塗らない・偽の塗布と比べて、フッ素バーニッシュで43%、フッ素ゲルで28%、大人の歯の新しい虫歯が少なかったと報告しています [1] [2]。ただし未就学児に限ると、バーニッシュの効果は小さく不確かです [3]。根拠の確かさは低めです。結果のばらつきが大きく、年齢で効き方も違うためです。

この答えの範囲

主に16歳までの子どもの話です。

じゃあ、どうする?

フッ素入り歯みがき粉は続けたうえで、子どもは受ける価値があります。3歳前後では差が出ない試験もあるので、期待しすぎずに。回数は研究で決められていないため、歯科医院でその子の虫歯のなりやすさに合わせて相談を。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。13 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量19.420研究件数と参加人数
一致度17.925結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 92.3 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 3 本・観察研究 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

歯医者のフッ素塗布とは

歯医者のフッ素塗布は、歯科医院で歯にフッ素を塗り、虫歯を防ぐ処置です。ふだんの歯みがき粉より濃いフッ素を使い、ニスのように塗るバーニッシュと、ゲルを塗る方法が研究の中心です。注意点は、歯が黒く染まるフッ化ジアンミン銀は別の薬で、ふつうのフッ素塗布とは分けて考えることです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、イギリスのロンドン大学クイーン・メアリー校などの研究チームが2013年に発表したコクランレビューです [1]。コクランレビューとは、決めた手順で比較試験を集め、結果をまとめる方法です。16歳までの子どもを1年以上追った比較試験22件が集められました。

研究の種類比較試験をまとめたコクランレビュー
対象16歳までの子ども(22件・12,455人)
比べたものフッ素バーニッシュと、塗らない・偽の塗布
結果大人の歯の新しい虫歯が43%少ない
まとめて分析した結果フッ素バーニッシュで、大人の歯の新しい虫歯が43%少なくなりました [1]。

乳歯では37%少なく、フッ素ゲルを調べた2015年のレビューでは28%少なくなりました [2]。

ゲルの結果は試験ごとの差が大きく、「効く」という向きはそろっていますが、減る幅は試験によって違います。根拠の確かさは低めです。

未就学児では、効果が小さい

ここが、自治体の資料などで見落とされやすい点です。未就学児を調べた2019年の系統的レビューでは、バーニッシュで新しい虫歯ができる子の割合は0.88倍にとどまり、著者は効果が小さく不確かとまとめています [3]。

  • 北アイルランドの歯科医院で、虫歯のない2〜3歳児1,248人を3年間追った試験では、6か月ごとの塗布と歯みがき助言を受けた群で虫歯になった子が34%、受けない群で39%でした。統計的な差はありませんでした [4]
  • スコットランドの保育園で、3歳児1,284人に6か月ごとにバーニッシュを塗った試験では、虫歯が悪化した子が26.9%と31.6%で、差はありませんでした [5]
  • 6歳未満で比べた8種類の歯医者のフッ素塗布のうち、対照より虫歯を防げたのは、3か月ごとのフッ化シランと、6か月ごとの5%フッ化ナトリウムバーニッシュの2種類だけでした [6]

未就学児を調べた試験では、差がはっきり出ないものが目立ちます。

よく言われていることは本当?

  • 子どもの虫歯を防ぐ効きます。 バーニッシュで43%、ゲルで28%少なくなりました [1] [2]。未就学児では効果が小さくなります。
  • 大人にも効く60歳以上の歯の根元の虫歯には効きます。 高齢者を調べた7件のレビューで、歯の根元の虫歯の予防率は5%フッ化ナトリウムバーニッシュで64%、フッ素ゲルで32%でした [7]。働く世代の歯の表面の虫歯は研究が足りません。
  • なりかけの虫歯が治る上乗せの効果は見られません。 初期虫歯の比較試験9件のうち5件は効果を示しましたが [8]、フッ素入り歯みがき粉での歯みがきと比べた試験では上乗せがはっきりしませんでした。フッ素ゲルの98人の試験でも、偽のゲルと差がありませんでした [9]。
  • 歯みがき粉と組み合わせると効果が高まるわずかに高まります。 子どもでは、洗口液・ゲル・バーニッシュのどれかを足した試験をまとめると、歯みがき粉だけより10%少ない程度です。バーニッシュだけで差が出たのは小さな試験1件で、偶然の可能性があると著者は書いています [10]。保育園の試験でも差が出ませんでした [5]。
  • 半年に1回受けるとよい研究が足りません。 塗る回数どうしを直接比べた研究は少なく、6歳未満では6か月ごとの5%フッ化ナトリウムバーニッシュと3か月ごとのフッ化シランが効きました [6]。
  • 歯の質を強くする研究が足りません。 しくみの説明であり、人の虫歯の数を測った研究の主張ではありません。

大人は、歯の根元の虫歯が中心

高齢者の研究では、歯の根元の虫歯が対象です。2020年の分析では、対照と比べて、5%フッ化ナトリウムバーニッシュ、1.2%フッ素ゲル、フッ化ジアンミン銀が2年後の根元の新しい虫歯を減らしました [11]。ただし、唾液が減るシェーグレン症候群の大人78人を24か月追った試験では、偽のゲルとの明確な差は確認できませんでした [12]。

フッ化ジアンミン銀は別もの

フッ化ジアンミン銀は、虫歯の進行を抑える薬で、塗った部分が黒く染まるのが特徴です。2024年のコクランレビューでは、高齢者の歯の根元の新しい虫歯が、塗らない・偽の塗布より平均0.79面少なくなりました(3件・439人) [13]。効果はありますが、見た目の変化があるため、ふつうのフッ素塗布とは分けて、歯科医師とよく相談してください。

02注意点

研究の中心は、1年以上の追跡で、バーニッシュやゲルを年に数回塗る方法です。2〜3歳の子では結果が割れているため、年齢に合った方法を歯科医院で確かめてください。持病や服薬がある人、塗布のあとに気になる症状が出た人は、歯科医師に相談してください。

塗布は、歯みがきの代わりではない

毎日のフッ素入り歯みがき粉を続けたうえで、上乗せとして考えてください。

03まとめ

歯医者のフッ素塗布は、子どもの虫歯を減らすと研究で言えます。
未就学児は効果が小さく、初期虫歯の再石灰化には上乗せの効果が見られません。
塗る方法や回数は、歯科医院でその子の虫歯のなりやすさに合わせて決めましょう。

04よくある質問

Q塗れば虫歯にならなくなりますか?

なりません。大人の歯の新しい虫歯が、バーニッシュで43%、ゲルで28%少なくなる結果で、ゼロにはなりません [[23846772]] [[26075879]]。

Q何か月ごとに受ければいいですか?

研究では確かめられていません。塗る回数どうしを直接比べた研究は少なく、6歳未満では3か月ごとのフッ化シランと、6か月ごとの5%フッ化ナトリウムバーニッシュが効いた結果があります [[34780874]]。

Q大人も受ける意味はありますか?

60歳以上の歯の根元の虫歯には効きます [[36058347]]。働く世代の歯の表面の虫歯は、研究が足りません。

Qフッ素入り歯みがき粉を使っていれば不要ですか?

歯みがき粉に洗口液・ゲル・バーニッシュのどれかを足すと、子どもで10%少なくなる程度です [[14973992]]。毎日の歯みがき粉が土台で、塗布は上乗せです。詳しくは[フッ素入り歯みがき粉の記事](/evidence/fluoride-toothpaste-cavities)をどうぞ。

05参照した論文

判定に使った主な論文(13本)

[1]子ども・青年のフッ素バーニッシュのコクランレビュー

発表年
2013年
研究機関
イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリー校
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
9,595人
結果の向き
良い方向

16歳までの子どもで、フッ素バーニッシュを塗ると大人の歯の新しい虫歯が43%少なかった。

[2]子ども・青年のフッ素ジェルのコクラン・レビュー

発表年
2015年
研究機関
イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリー校
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
8,479人
結果の向き
良い方向

16歳までの子どもで、フッ素ゲルを塗ると大人の歯の新しい虫歯が28%少なかった。

[3]未就学児のフッ素バーニッシュと虫歯の系統的レビュー

発表年
2019年
研究機関
ブラジル・リオデジャネイロ州立大学
掲載誌
Caries research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究17件を統合
結果の向き
良い方向

未就学児では、バーニッシュで新しい虫歯ができる子の割合は0.88倍にとどまった。

[4]歯科医院での虫歯予防のランダム化比較試験

発表年
2017年
研究機関
イギリス・マンチェスター大学
掲載誌
Journal of dental research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
1,096人
結果の向き
差なし

2〜3歳児1,248人を3年間追った。虫歯になった子は34%と39%で統計的な差はなかった。

[5]保育園でのフッ素バーニッシュのランダム化比較試験

発表年
2020年
研究機関
イギリス・グラスゴー大学
掲載誌
Caries research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
1,150人
結果の向き
差なし

3歳児の保育園で、虫歯が悪化した子は26.9%と31.6%で、統計的な差はなかった。

[6]幼児の虫歯予防のフッ素塗布のネットワークメタ解析

発表年
2022年
研究機関
香港・香港大学
掲載誌
Journal of dentistry
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究24件を統合
結果の向き
結果が割れている

6歳未満で比べた8種類のうち、対照より虫歯を防げたのは2種類だけだった。

[7]高齢者の虫歯を防ぐ歯科医院のフッ素塗布の系統的レビュー

発表年
2022年
研究機関
中国・香港大学
掲載誌
Journal of dentistry
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究7件を統合
結果の向き
良い方向

60歳以上で、歯の根元の虫歯の予防率は5%フッ化ナトリウムバーニッシュで64%だった。

[8]歯医者のフッ素塗布は初期虫歯に効くかの系統的レビュー

発表年
2022年
研究機関
ブラジル・ペロタス連邦大学
掲載誌
Brazilian oral research
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究9件を統合
結果の向き
結果が割れている

初期虫歯の比較試験9件のうち5件が、フッ素塗布で治まる可能性を示した。

[9]初期虫歯を止めるフッ素ゲルの効果の比較試験

発表年
2022年
研究機関
ブラジル・サンタマリア連邦大学
掲載誌
Brazilian oral research
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
98人
結果の向き
差なし

初期虫歯のある学童98人で、すべての歯面では偽のゲルと変わらなかった。

[10]子ども・青年のフッ素の併用と単独のコクランレビュー

発表年
2004年
研究機関
ブラジル・Marinho VCほかの研究チーム
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,026人
結果の向き
良い方向

洗口液・ゲル・バーニッシュのどれかを歯みがき粉に足すと、新しい虫歯が10%少なかった。

[11]根面う蝕を防ぐフッ素の使い方のネットワークメタ解析

発表年
2020年
研究機関
香港・香港大学
掲載誌
Journal of dental research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
4,030人
結果の向き
良い方向

比較試験9件(4,030人)で、2年後の歯の根元の新しい虫歯が減った。

[12]シェーグレン症候群の人へのフッ素バーニッシュの比較試験

発表年
2016年
研究機関
中国・汕頭医学院第一附属病院
掲載誌
BMC oral health
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
78人
結果の向き
差なし

大人78人を24か月追い、偽のゲルとの明確な差は確認できなかった。

[13]フッ化ジアンミン銀の虫歯予防のコクランレビュー

発表年
2024年
研究機関
イギリス・マンチェスター大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
439人
結果の向き
良い方向

高齢者の歯の根元の新しい虫歯が平均0.79面少なかった(3件・439人)。

ほかに参考にした論文(10本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。