骨盤底筋トレーニングで頻尿や尿漏れは改善する?

骨盤底筋トレーニングで頻尿や尿漏れは改善する?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.06
答え効く

女性の尿漏れには効きます。頻尿や急な尿意は、尿漏れより根拠が弱めです。

根拠

尿漏れのある女性の試験3件・290人をまとめた Cochrane のレビューで、「治った」と答えた人は35%で、何もしない人などの6%を上回りました [1]。60歳以上の女性でも、尿漏れの重さが軽くなっています [2]。根拠の確かさは低めです。60歳以上に絞った解析は確実性が非常に低いと評価されたためですが、向きは女性全体の結果と同じです [3]。

この答えの範囲

主に女性の尿漏れの話です。前立腺の手術後の男性は、12か月後には差がありませんでした。

じゃあ、どうする?

女性の尿漏れなら、試す価値があります。専門家の指導を受けると効果が出やすいと報告されています [4]。頻尿が主な悩みなら、泌尿器科で原因を調べてもらいましょう。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。14 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。おおむね一致
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン4040いちばん信頼できる研究の種類
研究の量17.120研究件数と参加人数
一致度2525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 97.1 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 3 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「非常に低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

骨盤底筋トレーニングとは

骨盤底筋トレーニングは、骨盤の底で膀胱や尿道を支える筋肉を、意識して締めたりゆるめたりする運動です。ケーゲル体操とも呼ばれ、尿漏れの最初の対策として使われます。注意点は、やり方を間違えると効果が出にくいことで、指導を受けて行う研究が多いことです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

女性の尿漏れ

答えの中心は、カナダのモントリオール大学などの研究チームが2018年に発表した Cochrane のレビューです [1]。Cochrane は、決めた手順で試験を集めて結果を整理する国際的な組織です。

研究の種類比較試験をまとめた Cochrane のレビュー
対象尿漏れのある女性(3件・290人)
比べたもの骨盤底筋トレーニングと、何もしない・効果のない対照
結果「治った」と答えた人は35%対6%
まとめて分析した結果骨盤底筋トレーニングをした人は、「治った」と答えた割合が何もしない人などの5.34倍でした [1]。

せきやくしゃみで漏れる腹圧性尿失禁の女性に限ると、「治った」と答えた人は56%対6%でした。

このレビュー全体では、14か国の31件の試験・1817人の女性が集められています。ほかの研究とも向きはそろっています。Cochrane のレビュー29本をまとめた2022年の総まとめは、どの種類の尿漏れでも、治る・よくなる人が多く、生活の質も上がると、確実性が高いと結論しました [5]。2022年のレビューでは、トレーニングを受けた997人のうち50.5%で尿漏れがよくなり、21.8%は漏れがなくなりました [6]。

60歳以上でも効く?

効きます。2026年に中国の研究チームが発表したレビューでは、60歳以上の女性2002人・RCT20件で、骨盤底筋トレーニングは通常のケアより尿漏れの重さを軽くしました [2]。歩く力・筋力・転倒予防の運動を組み合わせたプログラムも効果がありました。

ここで、2つの評価が食い違って見えるかもしれません。2025年のネットワークメタ解析(60歳以上の女性のRCT43件・8506人。多くの治療を比べる解析)では、骨盤底筋トレーニングを中心とした理学療法は、対照より「治った」人の割合が高く(オッズ比7.20。4件・310人)、重い有害事象は報告されませんでした。ただ、この結果の確実性は非常に低いと評価されました [3]。一方、女性全体を対象にした総まとめの確実性は高いと評価されています [5]。対象の広さと比べ方が違う評価で、どちらも向きは「効く」です。高齢の女性に限ると、確かさはまだ低めだと読むのが正確です。

頻尿・急な尿意は?

尿漏れより根拠が弱くなります。

  • 過活動膀胱の女性を対象にしたRCT11件のレビューでは、症状がはっきり減ったのは5件、トイレの回数が減ったのは1件、急な尿意での尿漏れが減ったのは4件でした。著者は「症状を減らすかもしれないが、はっきりとは言えない」と結論しています [7]
  • 2012年のレビューも、尿漏れは減ったが、トイレの回数や夜間頻尿がよくなるかはデータが足りないとしました [8]
小さな試験で改善が見られた例急な尿意で漏れる高齢女性88人(平均75歳)

運動に骨盤底筋トレーニングを加えると、昼間のトイレが7.6回から5.3回に、夜中のトイレが2.1回から0.7回に減りました [9]。

こうした小さな試験では改善が見られますが、レビューはまとめて「はっきりしない」としています。前立腺肥大と過活動膀胱のある男性142人の試験でも、薬に骨盤底筋トレーニングを加えると、24時間のトイレの回数が1.95回減り、薬だけの0.90回より大きく減りました [10]。

前立腺の手術後の男性は?

条件によります。前立腺がんの手術後の男性1208人(9件)のメタ解析では、骨盤底筋トレーニングは手術の1・3・6か月後の回復を早めましたが、12か月後には差がありませんでした [11]。専門家の指導つきで効果がはっきりし、指導なしの自己流ではトレーニングなしと変わらなかった、という解析もあります [12]。ただ、Cochrane のレビュー(25件・3079人)は、効果はまだはっきりしないと結論しています [13]。

よく言われていることは本当?

  • せき・くしゃみでの尿漏れが改善する本当です。 腹圧性尿失禁の女性で「治った」人は56%対6%でした [1]
  • 高齢になってからでも尿漏れ対策になる効きます。 60歳以上の女性でも尿漏れの重さが軽くなりました。根拠の確かさは低めです [2]
  • 頻尿・急な尿意が減る尿漏れほどは言えません。 小さな試験では減りましたが、レビューは「はっきりしない」と結論しています [7]
  • 約7割で頻尿・尿漏れが改善するこの数字の根拠は研究では見つかりませんでした。 実際のレビューでは、トレーニングを受けた997人のうち、尿漏れがよくなったのは50.5%、漏れがなくなったのは21.8%でした [6]
  • 男性(前立腺の手術のあと)の尿漏れにも効く条件によります。 12か月後には差がありませんでした [11]
  • 続ければ効果が出る・正しいやり方でないと効かない正しい指導は大切で、指導つきで効果がはっきりしました [12]。 期間の長さ別に比べた結果は、今回集めた研究にはありません

02注意点

研究の多くは、専門家の指導のもとで続けています。2022年の研究では、12週間のプログラムが組まれていました [9]。60歳以上の女性を対象にした解析では、骨盤底筋トレーニングなどの保存的な治療で重い有害事象は報告されませんでした [3]。やり方は、骨盤底筋そのものをくり返し締める練習が、ほかの筋肉の運動より生活の質を少しよくするかもしれないとされています [14]。血尿や痛みがある、急に症状が悪くなったなどのときは、膀胱の病気が隠れていることがあるため、受診してください。持病や服薬がある人は、医師に確認を。

頻尿が主な悩みなら、先に原因を調べる

頻尿の理由は人によって違うので、泌尿器科で相談してから始めると安心です。

03まとめ

女性の尿漏れには、骨盤底筋トレーニングが効くという結果がそろっています。
頻尿・急な尿意と、前立腺の手術後の男性は、同じ強さでは言えません。
指導を受けて始め、頻尿が中心なら先に受診しましょう。

04よくある質問

Q60歳以上でも効きますか?

60歳以上の女性でも、尿漏れの重さが軽くなったという結果があります [[42229075]]。ただし、60歳以上に絞った解析の確実性は非常に低いと評価されています [[41307301]]。

Q夜中のトイレの回数も減りますか?

高齢女性88人の小さな試験では、夜中のトイレが2.1回から0.7回に減りました [[34309740]]。ただしレビューは、夜間頻尿への効果はデータが足りないとしています [[22246576]]。

Q男性にも効きますか?

前立腺の手術後は、1・3・6か月後の回復を早めましたが、12か月後には差がありませんでした [[39104234]]。

05参照した論文

判定に使った主な論文(14本)

[1]女性の尿漏れに対する骨盤底筋トレーニングと無治療などの比較

発表年
2018年
研究機関
カナダ・モントリオール大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
290人
結果の向き
良い方向

尿漏れのある女性290人(試験3件)で、トレーニングをした人は「治った」と答えた割合が35%で、何もしない人などの6%より多かった。

[2]高齢女性の尿漏れに対する理学療法の系統的レビュー

発表年
2026年
研究機関
中国・健康・リハビリテーション科学大学
掲載誌
Archives of gerontology and geriatrics
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
2,002人
結果の向き
良い方向

60歳以上の女性2002人・RCT20件のレビュー。トレーニングは通常のケアより尿漏れの重さを軽くした。

[3]高齢女性の尿漏れ治療のネットワークメタ解析

発表年
2025年
研究機関
カナダ・モントリオール大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
310人
結果の向き
良い方向

60歳以上の女性のRCT43件・8506人で治療を比べた。理学療法は対照より「治った」人の割合が高かった。

[4]女性の腹圧性尿失禁の有病率・診断・治療の総説

発表年
2025年
研究機関
ベルギー・ルーヴェン大学病院
掲載誌
European urology
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

骨盤底筋トレーニングは最初に選ぶ治療とされ、しっかりした説明と指導があるときに改善がみられるとされた。

[5]女性の尿漏れに対する保存的治療のCochraneレビュー総まとめ

発表年
2022年
研究機関
イギリス・グラスゴー・カレドニアン大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

Cochrane のレビュー29本の総まとめ。どの種類の尿漏れでも、トレーニングで治る・よくなる人が多く、確実性が高いと結論した。

[6]女性の尿漏れに対する骨盤底筋トレーニングの系統的レビュー

発表年
2022年
研究機関
フランス・オルレアン地域病院
掲載誌
International journal of environmental research and public health
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

トレーニングを受けた997人のうち、50.5%で尿漏れがよくなり、21.8%は漏れがなくなった。

[7]過活動膀胱の女性への骨盤底筋トレーニングの系統的レビュー

発表年
2020年
研究機関
ノルウェー・アーケシュフース大学病院
掲載誌
Physiotherapy
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究11件を統合
結果の向き
結果が割れている

過活動膀胱の女性のRCT11件のうち、症状がはっきり減ったのは5件。著者は「はっきりとは言えない」と結論した。

[8]急な尿意で漏れる女性への骨盤底筋トレーニングの系統的レビュー

発表年
2012年
研究機関
アメリカ・ペンシルベニア大学病院
掲載誌
International urogynecology journal
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
—
結果の向き
結果が割れている

尿漏れは減ったが、トイレの回数や夜間頻尿がよくなるかはデータが足りないとされた。

[9]高齢女性の転倒リスクと急な尿意による尿漏れへの骨盤底筋トレーニング

発表年
2022年
研究機関
スロバキア・P・J・シャファリク大学
掲載誌
Zeitschrift fur Gerontologie und Geriatrie
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
88人
結果の向き
良い方向

急な尿意で漏れる高齢女性88人で、運動に骨盤底筋トレーニングを加えると昼間のトイレの回数が7.6回から5.3回に減った。

[10]前立腺肥大と過活動膀胱のある男性への骨盤底筋トレーニング

発表年
2024年
研究機関
スロバキア・P・J・シャファリク大学
掲載誌
World journal of urology
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
142人
結果の向き
良い方向

男性142人で、薬に骨盤底筋トレーニングを加えると、24時間のトイレの回数の減り方が1.95回で、薬だけの0.90回より大きかった。

[11]前立腺全摘後の尿漏れへの骨盤底筋運動のメタ解析

発表年
2024年
研究機関
中国・武漢大学人民病院
掲載誌
Archivos espanoles de urologia
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
1,208人
結果の向き
結果が割れている

男性1208人(9件)で、手術の1・3・6か月後の回復を早めたが、12か月後には差がなかった。

[12]前立腺全摘後の指導つきと指導なしの骨盤底筋運動の比較

発表年
2022年
研究機関
ドイツ・ケルン大学
掲載誌
Disability and rehabilitation
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
2,188人
結果の向き
良い方向

男性2188人(RCT20件)で、トレーニングをした人は尿漏れが治った人の割合が12〜25%多かった。指導つきで効果がはっきりした。

[13]前立腺手術後の尿漏れへの保存的治療のCochraneレビュー

発表年
2023年
研究機関
イギリス・ニューカッスル大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
3,079人
結果の向き
結果が割れている

男性3079人(試験25件)のレビューで、骨盤底筋トレーニングなどの効果ははっきりしないと結論した。

[14]骨盤底筋トレーニングのやり方の比較

発表年
2024年
研究機関
ニュージーランド・オタゴ大学
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

骨盤底筋そのものをくり返し締める練習は、ほかの筋肉の運動より尿漏れの生活の質を少しよくするかもしれないとされた。

ほかに参考にした論文(4本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。