[1]介護施設で起きる肺炎を防ぐ口腔ケアのコクランレビュー
- 発表年
- 2022年
- 研究機関
- 中国・四川大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 5,018人
- 結果の向き
- 差なし
介護施設の入所者5018人で、専門的な口腔ケアとふだんのケアの間に、肺炎にかかる割合の差があるとは言えなかった。

肺炎による死亡は減ります。肺炎にかかる人が減るかは、確認されていません。
介護施設の高齢者の研究が中心です。比べた相手はふだんのケアで、口腔ケアなしではありません。入院患者の研究は高齢者に限りません。
毎食後の歯みがき、毎日の入れ歯の清掃、毎週の専門的なケアの組み合わせが、レビューで最もよい方法とされました [2]。家族の口腔ケアは、肺炎で亡くなるリスクを下げる行動として続ける価値があります。むせる、熱が出るなどがあれば、医師や歯科医師に相談を。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 18.1 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 15.5 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 2 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 85.6 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 1 本・RCT のメタ解析 5 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を B から C に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
口腔ケアは、歯みがきや入れ歯の清掃で、口の中を清潔に保つことです。歯科医師や歯科衛生士が行う専門的なケアもあります。誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物、口の中の細菌が気管に入って起きる肺炎です。口の中の細菌を減らせば防げると期待され、介護の現場で広く行われています。
答えの中心は、中国の四川大学などの研究チームが2022年に発表したコクランのレビューです [1]。コクランのレビューは、決めた手順で研究を集め、結果をまとめる方法です。専門的な口腔ケアとふだんの口腔ケアを比べた比較試験6件・6244人が集められ、肺炎の発生を比べた5件・5018人が主な分析の対象です。3件は日本の研究でした。
| 研究の種類 | 介護施設の口腔ケアを調べた比較試験のレビュー(コクラン) |
|---|---|
| 対象 | 介護施設などの入所者(5件・5018人) |
| 比べたもの | 専門的な口腔ケアと、ふだんの(本人が行う簡単な)口腔ケア |
| 結果 | 肺炎にかかる割合の差があるとは言えなかった |
集められた研究はすべて偏りのリスクが高く、口腔ケアをしない群と比べた研究はありませんでした。
ここで分かったのは「ふだんのケアに加えて専門的なケアをしても、肺炎の発生に差があるとは言えない」ことです。「口腔ケアをまったくしなくてよい」という意味ではありません。一方、肺炎で亡くなる人は、2件・454人の統合で、24か月の間にリスク比0.43と少なくなりました [1]。根拠の確かさは低めです。対象が2件だけで、人数も少ないためです。
コクランのレビューに含まれる日本の介護施設11か所の試験では、毎食後の歯みがきと毎週の専門的なケアをした人で、肺炎と肺炎による死亡が少なくなっていました [6]。介護施設で歯科衛生士が行う専門的なケアについて、肺炎・誤嚥性肺炎を防ぐ効果があると結論した2023年の系統的レビューもあります [7]。
一方、別の研究(2513人)では18か月の時点で肺炎による死亡に差があるとは言えませんでした。原因を問わない死亡全体も、3件の研究で差があるとは言えませんでした [1]。つまり、肺炎による死亡が減るかは研究で分かれ、死亡全体が減るとは言えません。
入院患者の研究も、結果が分かれています。ただし対象は入院中の成人で、高齢者に限りません。
オーストラリアの3病院・8870人の試験では、口腔ケアを強化した病棟で、人工呼吸器を使っていない人の院内肺炎が減っていました(ハザード比0.40)[9]。
結果が割れる理由は、まだ分かっていません。研究ごとに、対象者、比べたケアの内容、研究の質が違うことが一因と考えられます。
日本の介護施設11か所の試験では、看護師や介護者が毎食後に歯ブラシで歯を清掃し、歯科医師・歯科衛生士が毎週、専門的なケアを行いました [6]。この量のケアを家族だけで続けるのは大変なので、施設の職員や訪問歯科に相談する方法があります。集めた研究の要旨からは、口腔ケアの副作用の数字は確認できていません。持病がある人、飲み込みに不安がある人は、医師や歯科医師に確認してください。
食事の形や姿勢の工夫など、誤嚥を防ぐほかの方法の効果は、ここでは扱っていません。
口腔ケアで、肺炎で亡くなるリスクは下がります。
肺炎にかかる人が減るかは、研究ではまだ確認されていません。
毎食後の歯みがきと入れ歯の清掃は続けつつ、専門的なケアは歯科に相談しましょう。
研究によって違います。比較試験4件の統合ではリスク比0.61でした [[25857604]]。ただしコクランのレビューでは差があるとは言えず [[36383760]]、決まった数字は言えません。
毎食後の歯みがき、毎日の入れ歯の清掃、毎週の専門的なケアの組み合わせが最もよい方法と思われる、とレビューは結論しています [[22390255]]。
電動歯ブラシで肺炎が減るかを調べた研究は、今回集めた中にはありません。歯への効果は[電動歯ブラシは手みがきより歯にいい?](/evidence/electric-toothbrush)で扱っています。
研究では確かめられていません。飲み込みに不安がある人は、やり方を医師や歯科医師に確認してください。
介護施設の入所者5018人で、専門的な口腔ケアとふだんのケアの間に、肺炎にかかる割合の差があるとは言えなかった。
毎食後の歯みがき、毎日の入れ歯の清掃、毎週の専門的なケアの組み合わせが最もよいと結論していた。
比較試験4件の統合で、口腔ケアをした人は肺炎にかかるリスクが低かった(リスク比0.61)。
比較試験6件・3891人の統合で、口腔ケアの強化で肺炎が減るとははっきり言えなかった(リスク比0.89)。
59人で、介護者が毎食後に口腔ケアをした群はせきの反射がよくなった人が多かった(オッズ比5.3)。
日本の介護施設11か所で、口腔ケアをした人は肺炎・発熱の日数・肺炎による死亡が減っていた。
介護施設での専門的な口腔ケアは、肺炎・誤嚥性肺炎の予防に効果があると結論していた(13件)。
入院中の成人を対象にした15件・10742人のメタ解析。人工呼吸器を使わない人では肺炎がはっきり減るとは言えなかった。
3病院・8870人で、口腔ケアを強化した病棟では人工呼吸器を使わない人の院内肺炎が減った(ハザード比0.40)。
判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。