マウスピースはいびきに効く?

マウスピースはいびきに効く?
読了目安 5〜7分最終更新日 2026.11.01
答え効く

効きます。下あごを前に出す医療用のマウスピースが、いびきを減らします。

根拠

偽の装置と比べたランダム化比較試験で、いびきが少なかったという結果が複数あります。日中の眠気のある大人96人の試験 [1]、重い睡眠時無呼吸の大人150人の試験 [2]、重いいびきの大人28人の試験 (同室の人の報告) [3] です。ただし、偽の装置と差がはっきりしなかった試験もあります [4]。診療ガイドラインも、無呼吸のないいびきの治療を希望する大人にマウスピースを勧めています [5]。

この答えの範囲

下あごを前に出す医療用の装置と、いびきをかく大人の話です。口を閉じるタイプや歯ぎしり用、子どもは確かめていません。いびきが何%減るかを示すまとめもありません。

じゃあ、どうする?

いびきが気になるなら、歯科や医療機関で合わせてもらう装置は試す価値があります。オーダーメイドと既製品で、無呼吸の減り方の差ははっきりしませんが、オーダーメイドのほうが使い続けやすいようです [6]。呼吸が止まっていると言われる、日中の眠気が強いときは、先に受診して検査を。使い始めはあごが痛みやすいので、調整しながら続けましょう [7]。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。中程度
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。17 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 71 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン3640いちばん信頼できる研究の種類
研究の量1320研究件数と参加人数
一致度16.125結果の向きがそろっているか
新しさ610最新の研究が何年以内か
精度05信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 71.1 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 71 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 8 本。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

マウスピースとは

いびき対策のマウスピースは、寝ている間に口に入れ、下あごを少し前に出して、空気の通り道を広げるとされる装置です。歯科で型を取って作るオーダーメイドと、お湯で形を合わせる市販品があり、睡眠時無呼吸の治療にも使われます。舌を固定するタイプや、口を閉じるだけのタイプもあります。注意点は、あごの痛みや歯のかみ合わせの変化が出ることがある点です。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、スウェーデンのウメオ大学などの研究チームが2015年に発表したランダム化比較試験です [1]。ランダム化比較試験とは、くじ引きのように参加者を分け、本物の装置を使う人と偽の装置を使う人を比べる方法です。いびきを調べた同様の試験は全部で8件・439人分ですが、結果を1つの数値にまとめたメタ解析はありません。

研究の種類ランダム化比較試験
対象日中の眠気があり、いびき、または軽〜中等度の睡眠時無呼吸のある大人96人
比べたものオーダーメイドの調整式マウスピース / 偽の装置
結果マウスピースの人のほうが、偽の装置の人よりいびきが少なかった
試験の結果いびきは、偽の装置を使った人より少なくなりました [1]。

ただし、日中の眠気は偽の装置と差がありませんでした。

重い睡眠時無呼吸の大人150人の試験では、いびきなどの症状が偽の装置より改善しました [2]。重いいびきの大人28人の試験では、同室の人の報告でいびきの頻度と大きさが減りました。大きさが減ったと答えた同室の人は84%で、全員ではありませんでした [3]。

いびきは、同室の人の報告、機械での測定、本人の評価と、試験ごとに測り方が違います。測り方ごとの結果の例です。

  • 同室の人の評価: 無呼吸のないいびきの人50組(完了は42組)で、「とても良くなった」「良くなった」と評価された割合は、マウスピースが91%、鼻と寝る姿勢の対策を組み合わせた方法が58%でした。差は33ポイントで、偽の装置との比較ではありません [8]。
  • 機械での測定: 大きないびきが習慣の57人で、マウスピースを着けた夜は、眠っている間の毎分のいびきが平均11.0回から9.0回に、50dB以上の大きないびきの割合が42.0%から26.2%に減りました [9]。

対象も測り方も試験ごとに違うため、「いびきが何%減る」と1つの数字にはできません。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

マウスピースも、かみ合わせを少し高くするだけの対照の装置も、いびきの症状を減らし、両者に差がなかった試験があります [4]。軽〜中等度の睡眠時無呼吸の人を調べた試験でも、本人の評価ではいびきが良くなった一方、機械で測ったいびきでは偽の装置との差がはっきりしませんでした [10]。どちらも人数が少なく、効き方に幅があります。

差がなかった試験無呼吸のないいびき、または軽い無呼吸の52人(完了は38人)

4週ずつ使い、いびきの症状の減り方に差はありませんでした。

よく言われていることは本当?

  • いびきが減る・家族の悩みが減る研究で確かめられています。 同室の人の評価でも頻度と大きさが減りました [3]。
  • 睡眠時無呼吸の治療になる研究で確かめられています。 Cochrane のメタ解析では、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数が対照の装置より平均10.78回少なくなりました [11]。ただし、無呼吸を下げる力は鼻マスクで空気を送る治療 (CPAP) のほうが大きいです [12]。
  • ぐっすり眠れて日中の眠気が減る睡眠時無呼吸の人では、効きます。 ランダム化比較試験21件のメタ解析で、偽の装置との比較では眠気のスコアが平均0.91点下がりました [13]。一方、いびきや軽い無呼吸が中心の人を調べた試験では、日中の眠気がある人を集めた96人の試験 [1] も、52人の試験 [4] も、偽の装置などとの差がありませんでした。根拠の確かさは低めです。検査で測った眠気が偽の装置より改善した試験は6件中1件だけで、多くの試験の参加者はもともと検査上の眠気がなかったためです [14]。
  • オーダーメイドのほうが市販品より効く効くとは確認されていません。 22件のメタ解析で、無呼吸の減り方の差ははっきりしませんでした。オーダーメイドのほうが長く着けて使い続けられていました [6]。
  • 舌を固定するタイプでいびきが止まる研究が足りません。 吸い付けるタイプが対照の装置より呼吸の乱れを1時間あたり4.9回多く減らし、いびきも減った試験があります [15]。6人の試験では、一部の音量のいびきしか減りませんでした [16]。
  • 口を閉じて鼻呼吸にし、いびきを防ぐ口を閉じるだけのマウスピースでいびきを調べた、人の比較試験は見つかっていません。

02注意点

いびきの背景には、睡眠時無呼吸があることがあります。呼吸が止まっていると指摘される、日中の眠気が強いなどがあれば、装置を選ぶ前に受診して検査を受けてください。

副作用では、5年以上使った研究のうち、同じ装置を使った研究に絞ったまとめで、上下の前歯の前後のすき間が平均1.43mm、重なりが平均1.94mm小さくなっていました [17]。使い始め(6か月未満)はあごの痛みが増え(オッズ比4.49)、1年以上では増えていませんでした [7]。どちらも研究が足りず、長期の影響は確かではありません。持病や歯の治療中の人は、歯科医や医師に相談してください。

研究の対象と、自分の条件を分けて考える

試験の多くは、歯科や医療機関で調整した装置を使った大人が対象で、子どもや口を閉じるだけの装置にそのまま当てはめることはできません。

03まとめ

下あごを前に出す医療用のマウスピースは、いびきを減らすという結果が多くの試験でそろっています。
眠気や舌を固定するタイプは、いびきほど確かめられていません。無呼吸の症状がないかを先に確かめましょう。
気になるときは、歯科や医療機関で装置を合わせてもらう形から始めましょう。

04よくある質問

Q歯ぎしり用のナイトガードでもいびきは減りますか?

研究では確かめられていません。ここで見たのは、下あごを前に出す医療用の装置です。

Qお湯で形を合わせるタイプでも同じように効きますか?

睡眠中の呼吸の乱れがある35人を、オーダーメイドとお湯で形を合わせるタイプで4か月ずつ比べた試験では、オーダーメイドのほうがいびきを大きく減らしました [[17673699]]。一方、22件のメタ解析では、無呼吸の減り方の差ははっきりせず、オーダーメイドのほうが使い続けやすい傾向でした [[40057893]]。

Q長く使うと歯並びは変わりますか?

5年以上の使用で、前歯のかみ合わせが少しずつ小さくなる研究があります。研究が足りず、長期の影響は確かではありません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(19本)

[1]日中の眠気を伴ういびき・軽〜中等度の無呼吸へのマウスピースの試験

発表年
2015年
研究機関
スウェーデン・ウメオ大学
掲載誌
JAMA internal medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
96人
結果の向き
良い方向

日中の眠気があるいびき・軽〜中等度の無呼吸の大人96人で、偽の装置よりいびきが少なかった。

[2]重い睡眠時無呼吸へのマウスピースと血管の働きを調べた試験

発表年
2017年
研究機関
フランス・ブルターニュ・ロワール大学
掲載誌
American journal of respiratory and critical care medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
150人
結果の向き
良い方向

重い睡眠時無呼吸の大人150人で、偽の装置よりいびき・疲れ・眠気の症状が改善した。

[3]重いいびきへのマウスピースを調べたランダム化比較試験

発表年
2001年
研究機関
イギリス・クイーンズ大学ベルファスト
掲載誌
European journal of orthodontics
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
25人
結果の向き
良い方向

重いいびきの大人で、同室の人の報告ではいびきの頻度と大きさが偽の装置より減った。

[4]いびき用マウスピースの交差試験

発表年
2010年
研究機関
イギリス・ニューカッスル大学
掲載誌
Clinical otolaryngology : official journal of ENT-UK ; official journal of Netherlands Society for Oto-Rhino-Laryngology & Cervico-Facial Surgery
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
38人
結果の向き
差なし

無呼吸のないいびきまたは軽い無呼吸の52人(完了38人)で、マウスピースも対照の装置もいびきの症状を減らし、差はなかった。

[5]無呼吸といびきへのマウスピース治療の診療ガイドライン2015年版

発表年
2015年
研究機関
アメリカ・メイヨー・クリニック
掲載誌
Journal of clinical sleep medicine : JCSM : official publication of the American Academy of Sleep Medicine
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
—
結果の向き
良い方向

米国睡眠医学会などのガイドラインは、無呼吸のないいびきの治療を希望する大人にマウスピースを勧めている。

[6]オーダーメイドと既製品のマウスピースの比較

発表年
2025年
研究機関
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学
掲載誌
American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics : official publication of the American Association of Orthodontists, its constituent societies, and the American Board of Orthodontics
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究22件を統合
結果の向き
差なし

無呼吸の減り方の差ははっきりせず、オーダーメイドのほうが長く使い続けられていた。

[7]マウスピースが顎関節症に与える短期・長期の影響

発表年
2026年
研究機関
日本・東京科学大学
掲載誌
Journal of prosthodontic research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究14件を統合
結果の向き
結果が割れている

使い始めはあごの痛みが増え、1年以上では増えていなかった。根拠の確実性は非常に低い。

[8]いびきへのマウスピースと鼻・姿勢の対策の組み合わせの比較

発表年
2024年
研究機関
アメリカ・ワシントン大学セントルイス校
掲載誌
JAMA otolaryngology-- head & neck surgery
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
42人
結果の向き
良い方向

無呼吸のないいびきの人50組で、同室の人が良くなったと評価した割合はマウスピースで91%、鼻・姿勢の対策の組み合わせで58%だった。

[9]いびきと睡眠時無呼吸に使う下あご前方固定装置の検査

発表年
1995年
研究機関
オーストラリア・サー・チャールズ・ガードナー病院
掲載誌
American journal of respiratory and critical care medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
57人
結果の向き
良い方向

大きないびきが習慣の57人で、マウスピースを着けると毎分のいびきが平均11.0回から9.0回に減った。

[10]軽〜中等度の睡眠時無呼吸へのマウスピースの交差試験

発表年
2015年
研究機関
スペイン・ビオアラバ研究所
掲載誌
Medicina oral, patologia oral y cirugia bucal
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
38人
結果の向き
結果が割れている

本人の評価ではいびきが良くなったが、機械の測定では偽の装置との差がはっきりしなかった。

[11]睡眠時無呼吸に対するマウスピースのCochraneレビュー

発表年
2006年
研究機関
イギリス・ロイヤル・サリー郡病院
掲載誌
The Cochrane database of systematic reviews
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
745人
結果の向き
良い方向

睡眠時無呼吸の大人で、対照の装置より1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数が平均10.78回少なかった。

[12]マウスピースの効果をまとめたアンブレラレビュー

発表年
2025年
研究機関
インド・アムリタ・ヴィシュワ・ヴィディヤピータム
掲載誌
JBI evidence synthesis
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究27件を統合
結果の向き
良い方向

マウスピースは無呼吸や眠気を改善したが、CPAP のほうが無呼吸を下げる効果は大きかった。

[13]睡眠時無呼吸の非手術の治療を比べたメタ解析

発表年
2022年
研究機関
インド・キング・ジョージ医科大学
掲載誌
Journal of Indian Prosthodontic Society
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究21件を統合
結果の向き
良い方向

偽の装置との比較で、マウスピースは日中の眠気のスコアを平均0.91点下げた。

[14]マウスピースと検査で測った日中の眠気の系統的レビュー

発表年
2025年
研究機関
フランス・ボルドー大学病院
掲載誌
Journal of clinical sleep medicine : JCSM : official publication of the American Academy of Sleep Medicine
研究の種類
システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
対象
研究11件を統合
結果の向き
差なし

検査で測った眠気が偽の装置より改善した試験は、6件中1件だった。

[15]舌を吸い付けて保つ装置の交差試験

発表年
2008年
研究機関
カナダ・カルガリー大学
掲載誌
Sleep & breathing = Schlaf & Atmung
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
—
結果の向き
良い方向

吸い付けるタイプは、呼吸の乱れを1時間あたり4.9回多く減らした。

[16]舌安定装置を調べた小さな試験

発表年
2002年
研究機関
ニュージーランド・ダニーデン医学校
掲載誌
Sleep & breathing = Schlaf & Atmung
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
6人
結果の向き
結果が割れている

6人の試験で、一部の音量のいびきだけが減った。

[17]マウスピースの長期使用とかみ合わせの変化

発表年
2022年
研究機関
Karadeniz Cほかの研究チーム
掲載誌
The Angle orthodontist
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究12件を統合
結果の向き
悪い方向

5年以上使った大人で、上下の前歯の前後のすき間が平均1.43mm、重なりが平均1.94mm小さくなっていた。

睡眠時無呼吸へのマウスピースを調べたランダム化比較試験

発表年
2002年
研究機関
イギリス・クイーンズ大学ベルファスト
掲載誌
European journal of orthodontics
研究の種類
ランダム化比較試験(クロスオーバー)参加者が順番を変えながら複数の条件を体験し、結果を比べる試験。
対象
20人
結果の向き
差なし

睡眠時無呼吸の大人で、いびきの頻度・大きさはマウスピースのほうが低かったが、偽の装置との差ははっきりしなかった。

いびきを抑えるマウスピースの夜間測定

発表年
1998年
研究機関
イギリス・チャーチル病院
掲載誌
The European respiratory journal
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
15人
結果の向き
良い方向

すでにマウスピースを使っている15人で、着けた夜は1時間あたりのいびきの回数が中央値193回から20回に減った。

ほかに参考にした論文(24本)

判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。