[1]水仕事による手荒れを防ぐ方法のコクランレビュー
- 発表年
- 2018年
- 研究機関
- ドイツ・ドレスデン工科大学
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 507人
- 結果の向き
- 差なし
手荒れのない働く人507人(試験3件)で、保湿剤を使った人は13%、使わない人は19%に手荒れが出たが、偶然の差の可能性があった。

治った手荒れの再発は遅らせますが、荒れる前の予防には効きません。
手が水や洗剤にぬれる仕事の人の研究です。予防の効果が確認できていないだけで、効かないと決まったわけではありません [1]。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 13 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 19.2 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 2 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 84.2 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、ランダム化比較試験 4 本・RCT のメタ解析 1 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「低い」で、これを強度の上限にしています。 この上限により、強度を A から C に下げました。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
手荒れ(手湿疹)は、水や洗剤、手洗いで皮膚の表面の守りが傷み、かさつきや赤み、ひび割れが出る状態です。保湿剤(ハンドクリームなど)は、皮膚の水分を保って荒れを防ぐとされています。ひどくなると、皮膚科での治療が必要になります。
答えの中心は、ドイツのドレスデン工科大学などの研究チームが2018年に発表したコクラン・レビューです [1]。コクラン・レビューとは、決めた手順で同じ種類の試験を集めて結果をまとめる方法です。手荒れのない人を対象に、保湿剤を使う場合と使わない場合を比べた試験が集められました。
| 研究の種類 | 水仕事による手荒れの予防を調べたランダム化比較試験のコクラン・レビュー |
|---|---|
| 対象 | 手荒れのない、仕事で手が水や洗剤にさらされる人(507人・試験3件) |
| 比べたもの | 保湿剤を使う場合と、使わない場合 |
| 結果 | 手荒れが出たのは、保湿剤を使った人で13%、使わない人で19%。差は偶然の範囲 |
信頼区間は0.46〜1.09で、1をまたいでいます。
「差が出なかった」と「効かないと証明された」は別の話です。コクランの著者も、結論は「今ある対策が効かないという意味ではない」と述べています [1]。予防効果がはっきり確認できていないこと、差の幅が広いこと、研究の質が低いことが理由です。
看護の現場でも同じでした。英国の35の病院・大学で、アトピー体質のある看護学生と集中治療室の看護師2040人を調べた試験では、保湿クリームの配布と行動を変えるプログラムを受けた職場と、ふだんどおりの職場で、手湿疹の割合に統計的な差はありませんでした [2]。オランダの病院の医療従事者を調べた別の試験でも、ハンドクリームのディスペンサーを置いて使用量を知らせた病棟と、そうでない病棟で、12か月後の手湿疹の重さの変化に差はありませんでした [5]。
保湿剤の良い結果が出たのは、予防ではなく、すでに荒れた手の再発でした。
健康な人の前腕に保湿剤を長く塗り続けると、刺激物に対して肌のバリアがかえって弱くなった実験があります [7]。手荒れそのものを調べたものではなく、保湿が常に守りになるとは限らない、という一例です。
手荒れの予防を直接調べた試験ではありません。
目玉は、通説と逆の結果です。手荒れは「アルコール消毒のせい」と言われますが、試験では石けんでの手洗いのほうが荒れやすい結果でした。
観察研究のまとめでも、アルコール消毒を使うことと手湿疹のなりやすさに、はっきりした関連はありませんでした [10]。対象は主に医療従事者で、保湿成分入りの消毒剤の話です。
研究の対象は、手が水や洗剤にさらされる仕事の人です。たとえば91人の試験は、毎日10回の手洗いを28日続けるという条件でした [8]。家庭での手洗いに同じ結果が当てはまるかは、確かめられていません。赤みやかゆみ、ひび割れが続くとき、持病や服薬があるときは、皮膚科の医師や薬剤師に相談してください。
顔や体の肌荒れと保湿の関係は、保湿すると肌荒れしにくくなる?で扱っています。
荒れが繰り返すときは、ケアを足す前に、洗う回数と洗い方を見直しましょう。
手洗いのあとの保湿で、荒れる前の予防ができるとは、今の研究では言えません。
手荒れは石けんでの手洗いのほうが起こりやすく、洗う回数が多いほど関連が強まります。
洗う回数を減らせる場面は消毒に置き換え、保湿は荒れたあとの再発を遅らせるために使いましょう。
荒れる前の予防の効果は、試験では確認されていません。ただし、いったん治った手湿疹の再発までの期間を延ばした試験はあります [[21057743]]。使うこと自体が悪いわけではありません。
看護学生に手の守り方を3年間教えたグループは、手洗いの回数が減り、手の皮膚の変化が少なかった研究があります。保湿クリームの使用量は変わりませんでした [[16650095]]。
研究では確かめられていません。コクラン・レビューでも、手袋の効果を調べた試験は見つかりませんでした [[29708265]]。
予防の効果でほかのクリームより優れるかは、研究では確かめられていません。手の皮膚炎のある人の治療では、セラミド入りのほうが改善しやすかった試験があります [[36939821]]。
手荒れのない働く人507人(試験3件)で、保湿剤を使った人は13%、使わない人は19%に手荒れが出たが、偶然の差の可能性があった。
看護師2040人の試験で、保湿クリームの配布と行動を変えるプログラムを受けた職場とふだんどおりの職場に、手湿疹の割合の統計的な差はなかった。
看護師119人で、アルコール手指消毒剤を使った期間は、消毒薬入りの石けんで洗った期間より手の肌の状態が良かった。
手湿疹が治った53人で、尿素5%の保湿剤を塗った人は再発までの期間の中央値が20日、何も塗らない人は2日だった。
ハンドクリームのディスペンサーを置いた病棟と、そうでない病棟で、12か月後の手湿疹の重さの変化に統計的な差はなかった。
手術室の看護師35人で、セラミド入りの乳液を毎日塗った人は、手の潤いが増え、乾燥の点数が改善した。
健康な人の前腕で保湿剤を長く塗り続けると、刺激物に対してかえって肌のバリアが弱くなった。
91人に毎日10回の手洗いを28日続けてもらうと、手指消毒剤の人の手荒れの点数の上がり方がいちばん小さかった。
保湿成分入りのアルコール手指消毒剤は、石けんでの手洗いより手の刺激や乾燥が少なかった。
観察研究のまとめで、毎日8〜10回以上手を洗う人は手湿疹のリスクが1.51倍、毎日15〜20回以上では1.66倍と関連していた。
保護クリームは塗る量が少ないと、刺激から肌を守る効果が出ないことがあった (背中の皮膚での実験)
判定「効かない」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。