[1]時差ぼけの予防と治療に対するメラトニンのレビュー
- 発表年
- 2002年
- 研究機関
- イギリス・コクランセンター
- 掲載誌
- The Cochrane database of systematic reviews
- 研究の種類
- システマティックレビュー関連する研究を決まった方法で集め、結果を整理した研究。
- 対象
- 研究10件を統合
- 結果の向き
- 良い方向
試験10件のうち9件で、現地の寝る時刻近くのメラトニンが時差ボケを軽くした。

軽くなります。現地の寝る時刻に飲むと、本人の感じる時差ボケのつらさが軽くなります。
5つ以上の時差を越える飛行の話です。短い時差や、薬を使わない対策の効果は別の話です。長期の安全性は、この結果からは言えません。
試すなら、現地の寝る時刻 (夜10時から真夜中) の近くに飲む方法が、研究の条件に近いです [1]。量は多いほど効くわけではなく、0.5〜5mgで効果は同程度でした。持病や服薬がある人は、医師か薬剤師に相談してからにしましょう。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 40 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 7.2 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 25 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 87.2 点を、エビデンス強度 B の範囲(55〜84 点)に収めて、スコアは 84 点です。 判定に使った研究は、RCT のメタ解析 2 本・観察研究 1 本。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
メラトニンは、夜になると体の中でつくられ、眠りの時刻を知らせるホルモンです。時差ボケでずれた体内時計を合わせる目的で、飲み薬として使われ、海外ではサプリとして売られています。日本では医薬品扱いで、海外のサプリを個人輸入する場合は、品質や量が確かでないことがあります。注意点は、飲む時刻と量で結果が変わること、眠気が出ることがある点です。この説明は一般に知られていることで、研究で確かめたものではありません。
答えの中心は、オーストラリアのシドニー大学などの研究チームが2021年に発表したメタ解析です [2]。メタ解析とは、複数の試験の結果を数字でまとめ直す方法です。飛行機での移動の症状に効くとうたう食品やサプリの成分が調べられ、メラトニンの研究は10件ありました。
| 研究の種類 | 空の旅の症状に効くとされる成分を調べたメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 健康な大人 (メラトニンの研究は10件) |
| 比べたもの | メラトニンを飲んだ人と、飲まなかった人の自己評価 |
| 結果 | 東向き・西向きのどちらの飛行でも、時差ボケの自己評価が軽かった |
標準化平均差とは、物差しの違う研究を同じ尺度にそろえた差のことで、マイナスが大きいほどメラトニンの群が軽かったことを示します。
2002年の Cochrane のレビューも同じ方向です。イギリスのコクランセンターの研究チームが集めた試験10件のうち9件で、現地の寝る時刻 (夜10時から真夜中) の近くに飲んだメラトニンが、5つ以上の時差を越えた飛行のあとの時差ボケを軽くしました [1]。
国際線の客室乗務員52人の試験では、帰国後にメラトニンを飲んだ群は時差ボケと睡眠の乱れが軽くなりました。一方、到着の3日前から飲み始めた群は、回復が悪い傾向がありました (有意差ではありません) [3]。この試験では、着いてから飲んだ群で改善が確かめられました。
到着の3日前から飲み始めた群は、回復が悪い傾向がありました (有意差ではありません)。
ニュージーランドとロンドンを往復した20人の試験では、メラトニン5mgを飲んだときの時差ボケの感じ方は2.15で、プラセボの3.4より軽く、睡眠が元に戻るまでの日数も2.85日と、4.15日より短くなりました [4]。
光の対策は、メラトニンと組み合わせた実験で体内時計が早まる研究もあります。実験室で夕方に飲んだメラトニンは体内時計を0.72時間早め、翌朝の光と組み合わせると1.04時間早まりました [8]。ただし実際の旅行での効果を測ったものではありません。
メラトニンの安全性を調べた研究では、副作用は少なく、多くは軽いものでした [9]。一日10mg以上の多い量では、眠気・頭痛・めまいなどが1.40倍に増えていました。重い副作用については、低リスクの4試験では増加が見つかりませんでしたが、データが少なく確かではありません [10]。時差ボケの試験で使われた量は0.5〜5mgなので、多く飲む必要はありません。Cochrane のレビューは、てんかんのある人とワルファリンを飲んでいる人で害が報告されているとしています [1]。妊娠中や持病・服薬中の人、運転や機械の操作をする人は、医師や薬剤師に確認してください。
早い時刻に飲むと眠気が出て、現地時間に慣れるのが遅れることがあります。
飛行機で長い時差を越えるなら、メラトニンは時差ボケを軽くします。
効くのは、現地の寝る時刻の近くに飲んだときで、量は多くなくて構いません。
次の旅行では、到着後の最初の夜から試すかを、持病や服薬も踏まえて医師・薬剤師と決めましょう。
Cochrane は西向きでは効果がやや小さいとみていますが [[12076414]]、メタ解析では東向き (研究5件) も西向き (研究4件) も、時差ボケの自己評価が軽くなりました [[33809656]]。
Cochrane のレビューでは、一日0.5〜5mgで効果は同程度で、5mgを超えても上がりませんでした [[12076414]]。
客室乗務員52人の試験では、到着の3日前から飲み始めた群に回復が悪い傾向がありましたが、有意差ではありません [[8513037]]。帰国後に飲んだ群では、改善が確かめられています。
時差ボケとは別の話です。普段の睡眠への効果は、[メラトニンは睡眠に効く?](/evidence/melatonin-sleep) で解説しています。
試験10件のうち9件で、現地の寝る時刻近くのメラトニンが時差ボケを軽くした。
東向き5件・西向き4件のメラトニンの研究で、時差ボケの自己評価が軽かった。
客室乗務員52人で、帰国後に飲んだ群は軽く、到着3日前から飲んだ群は回復が悪かった。
20人の試験で、メラトニン5mgの群は時差ボケの感じ方が2.15対3.4と軽かった。
薬を使わない対策を調べた研究13件のうち、9件は差がなかった。
男性13人で、睡眠の乱れは和らいだが運動の成績は回復しなかった。
選手22人で、明るい光の対策は時差ボケの症状をあまり減らさなかった。
実験室で、メラトニンと翌朝の光の組み合わせは1.04時間体内時計を早めた。
37件の試験で、副作用は少なく多くは軽いものだった。
一日10mg以上で、眠気・頭痛・めまいなどが1.40倍に増えた。
系統的レビュー4本・ランダム化試験11件をまとめた解析で、メラトニンの飲み薬は時差ボケの症状をおそらく減らすと結論していた
判定「効く」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。