地中海食のような食事で認知症は防げる?

地中海食のような食事で認知症は防げる?
読了目安 6〜8分最終更新日 2026.11.06
答え良い関連がある

地中海食を守る人ほど、認知症になる人が少ないことと関連しています。

根拠

地中海食を守る度合いと認知症を調べた観察研究のメタ解析が、認知症のリスクが低いと報告しています。23件のメタ解析ではハザード比0.89 [1]、高齢者65,955人のメタ解析ではオッズ比0.89です [2]。ただし食事を切り替えた3年間の試験では、認知機能に差が出ませんでした [3]。根拠の確かさは低めです。観察研究が中心で、研究ごとの結果のばらつきが大きいためです。

この答えの範囲

食事を変えて認知症が減ると確かめた試験はまだありません。最大の試験(604人・3年間)では、対照の食事のグループも認知機能が改善し、差は出ませんでした。

じゃあ、どうする?

地中海食は、野菜・豆・全粒穀物・魚・ナッツ・オリーブオイルを多くとる食事です。認知症を防ぐ保証としてではなく、ふだんの食事を整える一つの形として取り入れるのは前向きな選択です。日本の高齢者の研究でも、和食を多くとる人は認知症が少ないことと関連していました [4]。持病で食事の指示がある人は、主治医に相談してから変えてください。

この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。

根拠の確かさ

エビデンス強度研究の種類・数・結果のそろい方から、根拠の確かさを「高い・中程度・低い・限定的」の4段階で示します。低い
根拠の論文判定に使った論文の数です。まとめ論文 (多くの試験を集めたもの) も 1 本と数えます。9 本
研究間の一致研究どうしの結果が、同じ方向にそろっているかを示します。一部で結果が異なる
判定の内訳を見る(スコア 64 / 100)
項目点配点何を見るか
研究デザイン2440いちばん信頼できる研究の種類
研究の量2020研究件数と参加人数
一致度17.525結果の向きがそろっているか
新しさ1010最新の研究が何年以内か
精度55信頼区間が「差なし」をまたがないか

合計 76.5 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、観察研究 4 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「中程度」で、これを強度の上限にしています。

配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。

地中海食とは

地中海食は、イタリアやギリシャなど地中海沿岸の伝統的な食事をもとにした食べ方です。野菜・豆・全粒穀物・魚・ナッツ・オリーブオイルを多くとるのが特徴です。MIND食は、地中海食と高血圧予防の食事(DASH食)を組み合わせて、認知症の予防のために考えられた食事法です。注意点は、研究では食事の頻度を質問票で点数にして「どれだけ守っているか」を比べていて、測り方が研究ごとに少しずつ違うことです。

目次
  1. 01研究でわかったこと
  2. 02注意点
  3. 03まとめ
  4. 04よくある質問
  5. 05参照した論文

01研究でわかったこと

答えの中心は、ハンガリーのセンメルワイス大学などの研究チームが2025年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。地中海食を守る度合いと、認知症やアルツハイマー病の発症を調べた観察研究23件が集められました。

研究の種類観察研究23件のメタ解析
対象認知症ではない人(2000〜2024年に発表された研究)
比べたもの地中海食をよく守っている人と、あまり守っていない人
結果認知症のリスクが低かった(ハザード比0.89)。アルツハイマー病ではハザード比0.70
まとめて分析した結果地中海食をよく守っている人は、認知症になるリスクが低いことと関連していました(ハザード比0.89)[1]。

研究間のばらつきが大きく、観察研究なので、食事が原因だとは言えません。

ハザード比0.89は、追跡中に認知症になる割合が、守っていない人より1割ほど低いという意味です。高齢者65,955人を調べた21件のメタ解析も、オッズ比0.89で同じ向きでした [2]。MIND食では、コホート研究11件・224,049人のメタ解析で、点数が最も高いグループは最も低いグループよりリスクが低くなりました(ハザード比0.83)[5]。

食事を切り替えた試験では、差が出ていません

「守っている人に認知症が少ない」ことと「食事を変えたら認知症が減る」ことは別の話です。食事を変えた人を追う試験で確かめる必要があります。

最大の試験は、アメリカのラッシュ大学などが2023年に発表したものです [3]。認知症の家族歴があり、BMIが25を超える高齢者604人を、MIND食か対照の食事に分けて3年間追跡しました。認知機能の総合スコアの差は0.035で、差とは言えない範囲でした(95%信頼区間は-0.022から0.092)。

差がなかった試験認知症の家族歴がある高齢者604人(3年間)

認知機能は、MIND食のグループも対照の食事のグループも上がりました [3]。

注目したいのは、対照の食事のグループも認知機能が改善していたことです。MIND食のグループは0.205標準化単位、対照のグループは0.170標準化単位上がりました。対照の食事にも軽いカロリー制限と減量の支援がついていたため、食事の指導を受けること自体が両方のグループに効いた可能性があり、MIND食だけの効果は切り分けられていません。脳のMRIの変化にも差はありませんでした。

食事の質を上げる介入のランダム化比較試験12件をまとめた2022年の解析でも、結果は同じ向きです。記憶と実行機能は統合すると改善しましたが、ばらつきの大きい研究を除くとどちらも差がなくなり、著者は効果ははっきりしないと結論しました [6]。

ほかの研究では、結果が異なる場合も

小さな試験では、記憶が良くなったという報告もあります。認知症のリスクがある57〜76歳の104人が、地中海食に切り替える支援を24週間受けた試験では、対照より全般的な認知機能と記憶が改善しました [7]。ただし認知機能は主な評価項目ではなく、人数も少なく、認知症の発症を調べた試験ではありません。

結果が食い違って見えるのはなぜ?

観察研究は、もともと食事を整えている人を比べます。そうした人は運動や受診の習慣など、食事以外にも違いがあり、その差がリスクに表れている場合を取り除けません。一方、試験は食事だけを変えますが、3年間では認知症になる人が少なく、認知症の発症そのものは調べにくい面があります。さらに、認知症を調べたイタリアの国のガイドライン用の2026年のメタ解析(45件)では、地中海食を守る人はアルツハイマー病や軽度認知障害のリスクが低かった一方、認知症の有病率や、軽度認知障害から認知症への進行とは関連が見られませんでした [8]。

よく言われていることは本当?

  • 地中海食を続けると認知症になりにくい観察研究では、認知症の少なさと関連しています。 ただし食事が原因とは確かめられていません [1] [2]。
  • MIND食で認知症を防げる防げるとは確かめられていません。 観察研究ではリスクが低いことと関連していますが [5]、3年間の試験では認知機能に差が出ませんでした [3]。
  • 地中海食で物忘れ・認知機能の低下を遅らせられる大きな試験では差が出ていません。 小さな試験で記憶の改善の報告はあります [3] [7]。
  • アルツハイマー病の予防に特に効く観察研究では関連が強めです(ハザード比0.70)。 ただし観察研究だけで、予防できると確かめた試験はありません [1]。
  • 和食も認知症予防に良い良い関連が報告されています。 宮城県の高齢者14,402人の追跡でハザード比0.80、愛知県の1,504人の追跡でハザード比0.58でした [4] [9]。観察研究のみです。
  • オリーブオイル・ナッツ・青魚など個別の食品が効くこの記事では確かめていません。 食事全体のパターンを調べた研究だけを扱っています。

02注意点

試験の結果は、対象者を考えて読む必要があります。最大の試験の参加者は、認知機能に問題がなく、認知症の家族歴があり、BMIが25を超える高齢者604人でした [3]。ほかの人に同じ結果が当てはまるかは、この試験からは分かりません。また、観察研究の「守っている度合い」は質問票の自己申告で、実際の食事とずれることがあります。食事を大きく変えるときは、持病や服薬がある人、食事の指示を受けている人は、医師や管理栄養士に確認してください。

食事は認知症の予防策の一つに過ぎません

運動や睡眠、血圧の管理など、ほかの生活習慣も含めて考えましょう。

03まとめ

地中海食を守る人には認知症が少ない傾向がありますが、食事を変えて認知症が減るとは、試験でまだ確かめられていません。
結果を自分に当てはめるときは、観察研究の関連と、試験の結果を分けて読んでください。
認知症の予防だけを目的にせず、野菜・魚・豆・オリーブオイルなどを取り入れる食事の整え方として試すのがよいでしょう。

04よくある質問

QMIND食と地中海食は何が違いますか?

MIND食は地中海食と高血圧予防の食事(DASH食)を組み合わせ、認知症の予防のために考えられた食事法です。どちらも野菜・豆・ナッツ・魚などを多くとる点は共通しています。認知症を減らすかどうかは、どちらも試験では確かめられていません。

Q地中海食は日本人にも合いますか?

日本人を対象にした研究は、地中海食ではなく和食を調べたものが中心です。和食の点数が高い人は認知症が少ないという関連が報告されていますが、観察研究のみです [[27356978]]。

Qオリーブオイルだけでも認知症の予防になりますか?

この記事の研究は食事全体のパターンを調べたもので、オリーブオイル単独の影響は確かめていません。オリーブオイルと心臓病の関係は [オリーブオイルは心臓病の予防に効く?](/evidence/olive-oil-cardiovascular) で扱っています。

Qいつから始めれば認知症の予防になりますか?

始める時期ごとの違いは、研究では確かめられていません。

05参照した論文

判定に使った主な論文(9本)

[1]地中海食と認知障害・認知症・アルツハイマー病のリスクのメタ解析

発表年
2025年
研究機関
ハンガリー・センメルワイス大学
掲載誌
GeroScience
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究23件を統合
結果の向き
良い方向

観察研究23件の統合で、地中海食を守る人は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.89だった。

[2]地中海食と認知症・アルツハイマー病の関連の系統的レビューとメタ解析

発表年
2024年
研究機関
イタリア・ブレシア保健機構
掲載誌
Aging clinical and experimental research
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
65,955人
結果の向き
良い方向

高齢者65,955人(21件)の統合で、地中海食を守る度合いが高い人は認知症のリスクが低く、オッズ比は0.89だった。

[3]高齢者の認知機能低下の予防を目指したMIND食の試験

発表年
2023年
研究機関
アメリカ・ラッシュ大学
掲載誌
The New England journal of medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
604人
結果の向き
差なし

高齢者604人を3年間追った試験で、MIND食と対照の食事の認知機能の総合スコアに差はなく、どちらも改善した。

[4]日本の高齢者の食事パターンと認知症の発症:大崎コホート2006

発表年
2016年
研究機関
日本・東北大学
掲載誌
The journals of gerontology. Series A, Biological sciences and medical sciences
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
14,402人
結果の向き
良い方向

高齢者14,402人を5.7年追った研究で、和食の点数が最も高い人は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.80だった。

[5]MIND食と認知症のリスクの関連

発表年
2023年
研究機関
中国・浙江大学
掲載誌
JAMA psychiatry
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
224,049人
結果の向き
良い方向

コホート研究11件・224,049人の統合で、MIND食の点数が最も高い群は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.83だった。

[6]食事の質を上げる介入による認知機能低下の予防の系統的レビューとメタ解析

発表年
2022年
研究機関
アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン
掲載誌
European journal of clinical nutrition
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
研究12件を統合
結果の向き
差なし

RCT12件の統合で、ばらつきの大きい研究を除くと記憶も実行機能も差がなくなり、著者は効果ははっきりしないと結論した。

[7]認知症のリスクがある高齢者の地中海食・運動・認知機能を支援する介入のランダム化比較試験

発表年
2024年
研究機関
イギリス・イースト・アングリア大学
掲載誌
BMC medicine
研究の種類
ランダム化比較試験参加者をくじ引きのように分け、条件の違いによる結果を比べる試験。
対象
104人
結果の向き
良い方向

104人の24週間の試験で、地中海食に切り替える支援を受けた群は全般的な認知機能と記憶が改善した。

[8]地中海食による神経疾患の予防:イタリア国のガイドライン用のメタ解析

発表年
2026年
研究機関
イタリア・フェラーラ大学
掲載誌
Nutrition (Burbank, Los Angeles County, Calif.)
研究の種類
システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
対象
730,000人
結果の向き
結果が割れている

45件の統合で、アルツハイマー病・軽度認知障害のリスクは低かったが、認知症の有病率とは関連が見られなかった。

[9]和食のパターンと認知症の発症の20年間の追跡研究

発表年
2023年
研究機関
日本・国立長寿医療研究センター
掲載誌
European journal of nutrition
研究の種類
コホート研究生活習慣などの違いで集団を分け、長い期間追いかけて比べる研究。
対象
1,504人
結果の向き
良い方向

愛知県の高齢者1,504人の追跡で、和食の点数が最も高い群は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.58だった。

ほかに参考にした論文(11本)

判定「良い関連がある」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。