[1]地中海食と認知障害・認知症・アルツハイマー病のリスクのメタ解析
- 発表年
- 2025年
- 研究機関
- ハンガリー・センメルワイス大学
- 掲載誌
- GeroScience
- 研究の種類
- システマティックレビュー・メタ解析関連する試験を決まった方法で集め、結果をまとめて分析した研究。
- 対象
- 研究23件を統合
- 結果の向き
- 良い方向
観察研究23件の統合で、地中海食を守る人は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.89だった。

地中海食を守る人ほど、認知症になる人が少ないことと関連しています。
食事を変えて認知症が減ると確かめた試験はまだありません。最大の試験(604人・3年間)では、対照の食事のグループも認知機能が改善し、差は出ませんでした。
地中海食は、野菜・豆・全粒穀物・魚・ナッツ・オリーブオイルを多くとる食事です。認知症を防ぐ保証としてではなく、ふだんの食事を整える一つの形として取り入れるのは前向きな選択です。日本の高齢者の研究でも、和食を多くとる人は認知症が少ないことと関連していました [4]。持病で食事の指示がある人は、主治医に相談してから変えてください。
この記事は、成分や方法について公開されている研究を整理したものです。特定の商品の効果を評価したものではなく、個別の診断・治療の助言でもありません。
| 項目 | 点 | 配点 | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| 研究デザイン | 24 | 40 | いちばん信頼できる研究の種類 |
| 研究の量 | 20 | 20 | 研究件数と参加人数 |
| 一致度 | 17.5 | 25 | 結果の向きがそろっているか |
| 新しさ | 10 | 10 | 最新の研究が何年以内か |
| 精度 | 5 | 5 | 信頼区間が「差なし」をまたがないか |
合計 76.5 点を、エビデンス強度 C の範囲(30〜64 点)に収めて、スコアは 64 点です。 判定に使った研究は、観察研究 4 本。 論文の著者自身による確実性の評価は「中程度」で、これを強度の上限にしています。
配点の決まりは 評価方法について に公開しています。計算はプログラムが行い、広告や商品のデータは使いません。
地中海食は、イタリアやギリシャなど地中海沿岸の伝統的な食事をもとにした食べ方です。野菜・豆・全粒穀物・魚・ナッツ・オリーブオイルを多くとるのが特徴です。MIND食は、地中海食と高血圧予防の食事(DASH食)を組み合わせて、認知症の予防のために考えられた食事法です。注意点は、研究では食事の頻度を質問票で点数にして「どれだけ守っているか」を比べていて、測り方が研究ごとに少しずつ違うことです。
答えの中心は、ハンガリーのセンメルワイス大学などの研究チームが2025年に発表したメタ解析です [1]。メタ解析とは、複数の研究の結果をまとめて計算し直す方法です。地中海食を守る度合いと、認知症やアルツハイマー病の発症を調べた観察研究23件が集められました。
| 研究の種類 | 観察研究23件のメタ解析 |
|---|---|
| 対象 | 認知症ではない人(2000〜2024年に発表された研究) |
| 比べたもの | 地中海食をよく守っている人と、あまり守っていない人 |
| 結果 | 認知症のリスクが低かった(ハザード比0.89)。アルツハイマー病ではハザード比0.70 |
研究間のばらつきが大きく、観察研究なので、食事が原因だとは言えません。
ハザード比0.89は、追跡中に認知症になる割合が、守っていない人より1割ほど低いという意味です。高齢者65,955人を調べた21件のメタ解析も、オッズ比0.89で同じ向きでした [2]。MIND食では、コホート研究11件・224,049人のメタ解析で、点数が最も高いグループは最も低いグループよりリスクが低くなりました(ハザード比0.83)[5]。
「守っている人に認知症が少ない」ことと「食事を変えたら認知症が減る」ことは別の話です。食事を変えた人を追う試験で確かめる必要があります。
最大の試験は、アメリカのラッシュ大学などが2023年に発表したものです [3]。認知症の家族歴があり、BMIが25を超える高齢者604人を、MIND食か対照の食事に分けて3年間追跡しました。認知機能の総合スコアの差は0.035で、差とは言えない範囲でした(95%信頼区間は-0.022から0.092)。
認知機能は、MIND食のグループも対照の食事のグループも上がりました [3]。
注目したいのは、対照の食事のグループも認知機能が改善していたことです。MIND食のグループは0.205標準化単位、対照のグループは0.170標準化単位上がりました。対照の食事にも軽いカロリー制限と減量の支援がついていたため、食事の指導を受けること自体が両方のグループに効いた可能性があり、MIND食だけの効果は切り分けられていません。脳のMRIの変化にも差はありませんでした。
食事の質を上げる介入のランダム化比較試験12件をまとめた2022年の解析でも、結果は同じ向きです。記憶と実行機能は統合すると改善しましたが、ばらつきの大きい研究を除くとどちらも差がなくなり、著者は効果ははっきりしないと結論しました [6]。
小さな試験では、記憶が良くなったという報告もあります。認知症のリスクがある57〜76歳の104人が、地中海食に切り替える支援を24週間受けた試験では、対照より全般的な認知機能と記憶が改善しました [7]。ただし認知機能は主な評価項目ではなく、人数も少なく、認知症の発症を調べた試験ではありません。
観察研究は、もともと食事を整えている人を比べます。そうした人は運動や受診の習慣など、食事以外にも違いがあり、その差がリスクに表れている場合を取り除けません。一方、試験は食事だけを変えますが、3年間では認知症になる人が少なく、認知症の発症そのものは調べにくい面があります。さらに、認知症を調べたイタリアの国のガイドライン用の2026年のメタ解析(45件)では、地中海食を守る人はアルツハイマー病や軽度認知障害のリスクが低かった一方、認知症の有病率や、軽度認知障害から認知症への進行とは関連が見られませんでした [8]。
試験の結果は、対象者を考えて読む必要があります。最大の試験の参加者は、認知機能に問題がなく、認知症の家族歴があり、BMIが25を超える高齢者604人でした [3]。ほかの人に同じ結果が当てはまるかは、この試験からは分かりません。また、観察研究の「守っている度合い」は質問票の自己申告で、実際の食事とずれることがあります。食事を大きく変えるときは、持病や服薬がある人、食事の指示を受けている人は、医師や管理栄養士に確認してください。
運動や睡眠、血圧の管理など、ほかの生活習慣も含めて考えましょう。
地中海食を守る人には認知症が少ない傾向がありますが、食事を変えて認知症が減るとは、試験でまだ確かめられていません。
結果を自分に当てはめるときは、観察研究の関連と、試験の結果を分けて読んでください。
認知症の予防だけを目的にせず、野菜・魚・豆・オリーブオイルなどを取り入れる食事の整え方として試すのがよいでしょう。
MIND食は地中海食と高血圧予防の食事(DASH食)を組み合わせ、認知症の予防のために考えられた食事法です。どちらも野菜・豆・ナッツ・魚などを多くとる点は共通しています。認知症を減らすかどうかは、どちらも試験では確かめられていません。
日本人を対象にした研究は、地中海食ではなく和食を調べたものが中心です。和食の点数が高い人は認知症が少ないという関連が報告されていますが、観察研究のみです [[27356978]]。
この記事の研究は食事全体のパターンを調べたもので、オリーブオイル単独の影響は確かめていません。オリーブオイルと心臓病の関係は [オリーブオイルは心臓病の予防に効く?](/evidence/olive-oil-cardiovascular) で扱っています。
始める時期ごとの違いは、研究では確かめられていません。
観察研究23件の統合で、地中海食を守る人は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.89だった。
高齢者65,955人(21件)の統合で、地中海食を守る度合いが高い人は認知症のリスクが低く、オッズ比は0.89だった。
高齢者604人を3年間追った試験で、MIND食と対照の食事の認知機能の総合スコアに差はなく、どちらも改善した。
高齢者14,402人を5.7年追った研究で、和食の点数が最も高い人は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.80だった。
コホート研究11件・224,049人の統合で、MIND食の点数が最も高い群は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.83だった。
RCT12件の統合で、ばらつきの大きい研究を除くと記憶も実行機能も差がなくなり、著者は効果ははっきりしないと結論した。
104人の24週間の試験で、地中海食に切り替える支援を受けた群は全般的な認知機能と記憶が改善した。
45件の統合で、アルツハイマー病・軽度認知障害のリスクは低かったが、認知症の有病率とは関連が見られなかった。
愛知県の高齢者1,504人の追跡で、和食の点数が最も高い群は認知症のリスクが低く、ハザード比は0.58だった。
判定「良い関連がある」は、公開している評価方法に沿ってプログラムが算出しています。